No.3 魔王様方と自宅で歓迎会!あれ、荷物多くし過ぎましたかね

「おーい、おいって、起きろー」

「うーん。おてて、温かいです……はっ!」


眠っていたアギーを焔の魔王が起こす。


「あれ、お食事されてたんですね。ということはさっきまでのは夢!皆様が実は魔王様だったり、兵士さん達を千切っては投げてたのは夢!なーんだ、どおりで情報が密過ぎたわけですね……」


彼女が外の空気を吸おうと外に出るとそこには兵士たちの鎧などが転がっていた。

先の戦闘で殆ど肉体は残ってはいなかったが血痕などは至る所に、これだけでもどれほどの事が起きたのかは想像できるだろう。


「あ、へ、兵士さん達が……」

「はーい、また気絶しちゃダメよ。こっちに来ましょうねー」

後ろから、黄金と紫煙の魔王がアギ―の目をふさぐ。



「えーと。つまり皆様は……」


「ああ、魔王だ」

「魔王がこんなにいるのは確かに異常ではあるが。事実だ、我々は各々の世界で魔王としてそこを支配していた」

「こちら、炎の羽がチャーミングな焔の魔王ちゃんに氷の角がイカしてるのが冰の魔王さん、そしてこの美しい黄金と紫煙を纏っているのが私たち耀と闇の魔王よ」


アギ―は説明を聞いてある言葉が強く引っかかった。


「各々の世界ということは皆様はこの世界が出身じゃないんですか?」

「ああ、よその世界からここに連れて来られて封印された、まあそんな感じだ」


「えーっと、つまり皆様は別の世界から連れて来られて、何故かここに封印されて……?」


「そんな事よりも、早く動いた方が良いのではないか?」

「そうね、食事も終わった事ですし」

アギーと魔王達は祠の間から外に出てしばらく歩く。




「ここで少し待ってて下さい、お母様!お父様!アギーです!今戻りました!」

そう言ってアギ―は何もない空間に向かって話しかけた。


「どこに向って話しかけておる。まだ祠から少しばかり離れただけではないか……」


「え?お母様とお父様ですけど」

彼女がそう説明すると話しかけた空間に輪っかが現れ、そこから二人の人物が顔を見せた。


「会いたかったぞ!我が愛娘よ!!」

「おかえりなさいアギー!はぁこんなに立派に成長して……ママ感激で涙が……!」

輪っかを通ったアギ―は両親に抱き着いた。


「なんだこれ」

「感動の再会というやつか」

「美しい家族愛ねー♡」

同様に輪っかをくぐった魔王達。


「お母様、お父様!こちらが祠に封印されていた、魔王様方です!」

アギ―は両親を魔王達に紹介した。


「あら、これはこれは。うちの娘が御世話になりました」

「はは!どうぞこちらに、もてなしの準備は既に済ませておりますゆえ……」


「「ってえええええ!」」

二人は娘と同じように驚く。


「まあ、そういうこともありますか!はっは!」

「そうですね。ささっ、魔王様にとってはあばら家みたいなところでしょうが、歓迎させて下さい」


切り替えの早い両親はそう言って魔王達を案内した。


「さっきのは転送魔法か?あんたらがやったのか」

「ええそうです、炎の如き魔王様。あの子が祠に出向く際も、祠に一番近い徒歩15分の所に。本当はもっと祠まで直が良かったのですが、強力な魔力が入り乱れて、全く安定しなくて」


「ええッ!?15分!?多く見積もっても再開まで1時間程度じゃねぇか!よくあのテンションで再開できたなぁッ!」



「あ!見えました!あそこが私達のお家です!」


「お家って……」

そこに建っていたのは明らかに城だった。


「城じゃねえか!!」

「あらぁ、綺麗なお城♡」

「ほぉ、これはこれは」



再び歓迎会という事でたっぷりと食事を提供された魔王達。


「うっぷ、流石にもう食えない……」


「転送魔法か、通りでそんな軽装で来れたわけだ」


「まさかお姫様だったなんてねー」


黄金と紫煙の魔王がアギーの頭を撫でる。


「お姫様だなんて……」

照れるアギー。



「で、あんたらは助けてほしいんだよな?」

焔の魔王は爪楊枝を咥え、アギーの父に再度、封印を解いた目的を訪ねた。


「ええ、この世界に現れた魔王はあなた方の力を利用してこの世界を牛耳っています……それと」

アギーの父は息吸って真剣な面持ちになる。


「娘と……旅をしてほしい!!」


「はッ!?」


「魔王をどうにかするからには旅をするのでしょう?ですからぜひ、娘も一緒に!我々はこの城から出ることが出来なくて……この子にもっと広い世界を見せてあげたいのです!」

そう言って父、母も同様に頼みこむ。


「おい、魔王を倒してほしいんだよな、この世界の?旅行じゃないんだぞ」


「まあまあ、ついでで良いので!それでは頼みましたぞ!」

焔の魔王に向かって、手を擦り合わせてアギーの両親はそういった。


「どの道、そなたらの娘とは共に行動しなければならないのだ」

食後のお酒を嗜みながら冰の魔王はそう話す。


話を聞いたアギーとその両親はポカーンとした顔をした。

「「「?」」」


「おまえらなぁ……」

「気付かなかった?私達は既にアギーちゃんと魔力的な繋がりが出来てるの。恐らくは呪いみたいなものかしら。私達が外に出て、好き放題出来ないように、実際私達の力相当抑えられてるしね」

黄金と紫煙の魔王はそう言って自身の指をみる。


「つーか転移魔法でちょちょっと魔王のとこに送ってくれればいいじゃないか」


「それが無理なのです。ここは魔王の影響が及ばないように結界に守られております、その結界の外では転移魔法もまともに機能しないのです」

申し訳なさそうに語るアギ―の母。


「なるほど、結界の範囲ギリギリまで転移し、残りは自分たちで行けって事か」

「まあ、楽しみましょー♡」


「それでは荷物まとめてきますね!」

アギ―は食器を片付けるのを手伝い、荷造りをしに部屋へ戻った。



それから少しして、城の入り口で待っている魔王達の元に彼女の身の丈よりも大きな鞄を背負ってアギ―が現れた。


「旅なんてワクワクしますね!」


「お前はメンタルが弱いのか強いのか分からねぇな」

「とりあえずその荷物は多すぎないか」

「何が入ってるのかしら~」


とりあえずアギ―は荷物を減らすことにした。

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