No.2 召喚された英雄様は魔王様でした、そんな事もあるんですねぇ
「ガハハハッ!遊んでやるぞ人間どもッ!!」
封印から解き放たれた者達は眼前の兵士集団めがけ飛び出す。
幼い頃より、そこには世界を救った救世主がいる、そのような話を聞かされて来た。
だがその者達は自らを魔王と名乗った。
それを聞いた召喚士の少女、アギ―はただ呆然と立ち尽くしていた。
「え……皆様が、魔王……!?」
魔王達は、既に戦闘を繰り広げていた。
「このおお!!」
焔の魔王に剣を振り下ろす兵士。
剣が魔王の体に触れると瞬く間に溶けていった。
「なっ!?け、剣がっ!」
「あああ?なんだこのナマクラは!」
魔王は相手の頭を掴む。
掴んだ手が一瞬光ると相手は炭になってしまった。
「やっぱ魔力出すのに制限かかってるな。面倒くせぇ封印だ。でもまあ……」
「オラァァァァ!がっ!!」
斬り掛かって来た別の兵士を掴み上げる魔王。
もう片方の人差し指を光らせ、相手の身体に突き刺した。そしてその者を向かってくる集団に投げ飛ばす。
「お、おい大丈夫か!?」
「だ、だずげで、がらだが、がらだがあぢい!」
投げられた兵士は激しくのたうち回る。
その直後、体が赤黒い光を放つ
「ガハハハッ!にんげん爆弾だァッ!!!」
膨れ上がった相手は周囲を巻き込み爆散。
「うーん、もう少し派手に行きたかったんだがな」
焔の魔王が起こした人間爆弾をみて冰の魔王は眉間にしわを寄せる。
「煙と埃っ!まったくもう少し美しく静かな戦い方は出来んのか」
冰の角を持つ魔王は人差し指を相手に向ける。
「何かしてくるぞ!防御態勢!!」
兵士たちは大楯を前に構え整列。
「今は指先から魔力を出せる程度か。では更に出口を絞り、針の穴ぐらいで良いか」
そう言って冰の魔王は軽く指を横に方向にはらう。
「え……?」
「何か今、され、た、の……か?」
彼に退治した兵士たちは鎧や盾ごと真っ二つになり地面に転がる。
「ひ、ひイイイ!!」
遠目でこれを見ていた者が腰を抜かす。
「火などではない、水だ」
「なんだ冰の、火が欲しいのか?」
「お呼びでない焔の、ほら向こうで暴れてこい」
「お!向こうにまだ残ってる!」
腰を抜かした兵士に手を伸ばす冰の魔王。
「貴様らの鎧、よく見れば中々良い趣向をしているな。ふうん、我が国の程ではないが。美しい」
相手の鎧に施された装飾をその冰の指でなぞり話す冰の魔王。
「その鎧と共に、永久の時を過ごすが良い」
相手は一瞬で氷像にされてしまう。
「なんなんだよ!アイツら!」
次々と兵士が消えていくのをみて取り乱す相手。
「援軍申請だ!早く本部に連絡を!」
そのうちの一人、恐らく現場の指揮官だろうか、部下に命令する。
「は、はい!」
部下がすぐに鞄から水晶玉を取り出す、これで通信をするのだろう。
水晶玉を取出し、応援要請をしようとしたその時。
「あ、あれ、水晶玉がない?」
先程まで掴んでいた水晶玉が無くなっていた。
「援軍、普段なら大歓迎なのだけれど。今は美味しいご飯が待ってるからね♡」
黄金と紫の煙の身体を持つ魔王が、兵士の背後に立ち、見下ろしていた。
その手には水晶玉が。
「き、貴様!さっきまで向こうに立っててッ!」
「あら?ご存知でない?光って……」
黄金と紫煙の魔王がちょんっと兵士に触れる。
次の瞬間、兵士は雷にうたれ黒焦げに。
「とーーーーっても速いのよ♡」
黒焦げになり口から煙を吐きながら兵士は倒れた。
「ま、本来の力に比べたら全然なんだけどね。まあ、でもー」
押し寄せてきた集団に向けて手を向ける。そして人差し指と小指以外を折り曲げた。
すると人差し指と小指の間に光の刃が出現した。
「これくらいなら訳無いわ♡」
迫る集団を光の刃でいとも容易く切り裂く。
黄金と紫煙の魔王が周りを見渡す、震えながらも武器を構える兵士達が取り囲んでいた。
「あら♡まだこんなにいるのね。ねぇ!焔の魔王様と冰の魔王様!そろそろ終わらせましょ!」
「そうだな、そろそろ飽きてきたし」
「確かに、些か遊びすぎたな」
ほか二人の魔王は呼び掛けに反応する。
「おい!また何かしてくるつもりだぞ!」
兵士達が構える。
すると焔の魔王が笑う。
「ハハハっ!悪ぃな。もう既にした後だ」
「貴様らの周りに転がっている、兵士だった物は我々の魔力を帯びている」
「つーまーりー。もうおしまいってこと♡」
三人がそう言って指を鳴らす。
焔の魔王に炭へとされた者のからは爆炎が
冰の魔王に氷漬けにされた者から赤い氷の刃が
黄金と紫煙の魔王に感電させられた者からは眩い閃光が
同時に至るところで炸裂し、瞬く間にその場にいた残りの兵士たちを飲み込んだ。
「へ、寝覚めの運動にもならねぇな」
魔王達が祠の場所に戻るとアギーが泡を吹いて倒れていた。
「そう言えばこの娘は言ってたな」
「スプラッター苦手って。これでも気を使ったつもりなのだけれど」
冰の魔王と黄金と紫煙の魔王は倒れてる彼女の顔を覗き込む。
「まったく、本当もったいねぇ奴」
目を回しているアギーを見て焔の魔王はそう言った。
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