英雄様をお招きしたら、魔王様が増えちゃいました。
きゅりおす
No.1 英雄様(?)と素敵な冒険の始まりです!
お母様、お父様、お元気ですか。
「はぁ、あっついッ!汗が止まらないです!うわっ!服に火が!なんで!?」
私、アギーが旅立ってだいぶ時が経ちましたね。
「うっ、今度は寒い!いや寒い超えて痛いでず」
伝説の祠を目指すこの旅は、とても有意義なものでした。
「まぶし!おめめを閉じてても眩しいです!」
大変でしたが、学ぶことは多かったです。
「え、何ですかここ!?暗い!何も見えない!怖いです!自分の手すら見えない!」
そんな旅も、もう終わりを迎えようとしています。
「こ、これが伝説の祠……!!」
私のご先祖様が建てられた祠。
世界へ繁栄をもたらした、崇高な英雄様が祀られている……的な伝説がある祠。
「パッと見は普通の石造りの祠ですね。さてと!」
祠に辿り着いた私は、まず祠の掃除をしました。
「ちゃーんと石用の洗剤で拭いておかないとですね」
おうちから持ってきた洗剤のお陰で祠はピカピカキレイになりました。
「よし、キレイになりましたね!お招きするのですから、これぐらいはしておかないとですね!」
そうして私は本を取り出して、封印を解くための呪文を唱えます。
勿論間違えないように付箋をしっかり貼って置きました、それに読み辛いところはフリガナをふってあるので準備万端です!
「えー、【いにしえ】の王たちよ、今こそ、【せつじょく】を果たす時、我が声に応じて【けんげん】せよ。【なんじ】の力で我が道を阻むものを焼き払え、我が【おんてき】を凍てつかせ道を作れ、我が行く先を照らせ、我が【おんてき】を深き底に沈めるのだ……あ、ここでお供物ですね。にしてもなんでこんなに難しい言葉がおおいのでしょうか?」
私は風呂敷を広げて大きなアップルパイをそこに置きました。ちゃーんと食べやすいように切り分けてます!
ゴゴゴゴッ!
「うわわ!じ、地震!?頭とお供物守らなきゃ!」
突然地鳴りと共に地面が揺れ始めました。
すると突然眩しい光が!
それと冷たい風と暑い風も吹きました。寒暑かったです。
「ハハハッ!右腕の6が3枚!ワタシの勝ちだ!」
「残念、私達は胴体の6が3枚。引き分けかしら」
「ほう、我のは頭の6が4枚だ。勝者は我だな」
何やらカードで遊んでる方々が現れました……
「なっ!?冰りの!イカサマしただろ!」
「それはお互い様だろう、焔の」
「やめろ、二人共見苦しい……」
「私達も強気のイカサマすればよかったわね」
突然現れたこの人たちが……
「あ、あの!」
「ああん?なるほど、おまえか」
「ふうん、我らの封印を解き召喚した者か」
「あら、随分と可愛らしい子が来たのね」
私をお三方が囲み、私をみてそう言いました。
炎みたいに光って揺らめく羽の尾をお持ちの方。
まるで綺麗な氷で出来たような尻尾と角をお持ちの方。
体に黄金と紫のしま模様がありご自身が宝石みたいなお方。
不思議で美しい外見をされていました。
それと皆様とても背が高かったです。
「すんすん、おい、おまえが手に持ってるのは?」
「あ!これお供物です!私アギーと申します!」
私が差し出したアップルパイをみて、羽のお方がため息を付きました。
「おまえなぁ、お供えモンって言ったら生きた羊や大量の鶏とか、或いは取れたて新鮮な人間の心臓とかだろ!?」
羊さんや鶏さん、それに人をフレッシュな状態で……盲点でした。
「そうなんですか!?ごめんなさい、私スプラッター苦手で。お魚とかならギリ捌けるのですが……アップルパイはダメですか……?」
「ダメなんて一言もいってねぇだろッ!」
「余計な事をしていない自然な甘さが良い。我の舌にあう」
「んー♡生地のサクサク感と爽やかなリンゴが素敵、クセになるわ♡」
皆様椅子に座ってアップルパイを召し上がっていました!
全然気付かなかったです。
どうやら気に入って頂けたようで良かったです!
「ん!おまえ!他にもメシの匂いがするぞ!まだあるんだろ?出せ!」
「はい!皆様とても長い間ここにいるって聞いてたので、沢山作ってきました!」
私はカバンから魚料理、肉料理、サラダ、それとケーキをお出ししました。
「そのカバンの何処にこれだけの料理を納めてきたのか。だがこの料理も美味だ」
「そういえば貴女はなぜ私達の封印を解いたの?」
黄金と紫の方にそう言われて、大事なことを思い出しました。
「そうでした!助けて欲しいんです!この世界を悪い魔王から救って下さい!お願いします!」
「……」
「……」
「……」
あれ?
皆様目を見開き、口を閉ざされてしまいました。
「プッ!アッハハハっ!」
「なんとも……くくっ、悪い魔王とは、ふふ」
「ふふふ、だめお腹痛いわ!こんなに笑ったのは久しぶりよ!!」
転げ回って大爆笑されました、何か変なことを言ってしまったのでしょうか。
「悪い魔王から救うっておまえなぁ……」
「おい!ここだ!侵入者だ!!!」
外から誰かが怒ったような声が聞こえてきました。
「どうやってここに!?周囲の環境も変わっているし、何が起きているんだ」
「とにかく侵入者を捕えるぞ!嫌な予感がする」
外を見てみると大勢の兵隊さんが並んでこちらに武器を向けていました!
「へぇ、やる気じゃんアイツら」
「ここの警備兵か」
「あらあら」
「へ、兵隊さんがあんなに……!どうすればッ!」
私は思わず近くにいた羽のお方にしがみついてしまいます。
「ああ?何いってんだ、おまえ戦わねぇのか?」
「ムリです!私の戦力は皆無に等しいです!」
「ならここで少し待っててね、お嬢様」
「こやつらを片付けたら食事の続きだ」
他のお二方が私の前に立ちました。
そして羽のお方も前へ。
「魔王からこの世界を救ってとか言ったな。そこでお知らせだ」
「ワタシは」
「我は」
「私達は」
「「「魔王だ」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます