サポちゃん爆誕!世界滅亡?

 エディットを終了した俺は広い草原にいた。

 足元は膝下ほどの草が敷き詰められ遠くには森も見える。

 おかしな事がありすぎて、もう何から突っ込んでいいのかが分からない。

 俺は死んだ。そして生き返った?

 まるでゲームの世界だ。


 目の前を薄緑の光の球が不規則にふわふわ飛んでいく。

 

「異世界だなぁ・・・」


 せっかく生き返ったのだ。思う存分に楽しんでやろうじゃないか。

 まずはステータスの確認だな。


「ステータスウィンドウオープン」


 俺は唱える。我ながら大した順応性だ。

 目の前に半透明の板の様なウインドウが現れる。


*********************

 ルークlv1 人族 18歳


 マナ90 魔力0 筋力0 精神0 防御0 知力120 器用10

 根源値30

 知力の加護 知力ステータス1.2倍 知力のlv補正値1.5倍


 生産系スキル 

  ・創造Lv1・加工Lv1・複製Lv1


 汎用スキル

  ・アイテムボックスLv1・言語理解Lv1・思考加速Lv1


 転生者のみスキル

  ・チュートリアル・ヘルプサポートLv18(サポートキャラ召喚)


『ヘルプサポートLv18の効果』

 ・チュートリアルの間サポートキャラがサポートしてくれる。 

 ・根源値15を消費するとチュートリアル後もサポート可能。

 ・サポートキャラが全スキル使用可能。

 ・サポート装備一式を入手。

 ・チュートリアルで強力な仲間が出来る。

************************


 ステータスウィンドウを確認した俺は空高くガッツポーズをしていた。

 懸念していたスキルの問題はサポートキャラが解決してくれそうだ。

 それに知力の加護も素晴らしい。

 アテナのやつ、やれば出来るじゃないか。褒めて使わそう。


「まずはサポートキャラを呼び出さないとだな」


 ウインドウの『サポートキャラ召喚』を選択する。


・・・


 周囲から目の前に向けて光の粒が集まっていく。

 そして徐々に大きくなり1メートルくらいになっただろうか。

 すると一際、強い光を放つ。

 そこには30センチくらいの羽根の生えた少女がいた。

 栗色の髪に水色のドレス、赤い大きなリボンが特徴的だ。

 背中の半透明な4枚羽は淡く輝きを放っている。


 その姿はまさに・・・ファンタジーに出てくる妖精だった。


・・・


 呆然とその姿を見ていると、その妖精が話し始めた。


「はじめましてーー♪サポートキャラのサポちゃん、爆誕!!」


 ん?何だろう、この滲み出るポンコツ感。

 大丈夫だろうか・・・


「早速、早急、迅速に根源値をよこしやがるです!!」


 大丈夫じゃなさそうだ。


「根源値で何が出来るのか分からないのに使ってしまっていいのだろうか?」


 俺は真っ当な主張をする。


「マスターのステータスでどうやって生きてくつもりですか?」


 最もな意見が帰ってきた・・・。


「確かにその通りだな・・・」


 スキルポイント全部つぎ込んだし消えられると俺も困る。


「でしょでしょ!さぁよこすのです!早急によこしやがるのです♪」


 まるで怪しい勧誘のようだ。

 貰わないとチュートリアル終わりで消えるし必死になるのも仕方ないか。


「サポちゃんが死んだら根源値はどうなる?」


 一応聞いておこう。


「死んでもマスターが生きてれば、マスターのHPを消費して復活出来ますよ♪

 どうしてそんな事聞くんです?殺す気です!?」


 泣きそうな顔で怯えている。

 いや、別にそんなつもりはないぞ?


「俺が死んだら、サポちゃんがはどうなる?」


 こっちの方が重要そうだが・・・


「そうなれば私は晴れて自由の身です♪フリーダムです♪」


 ころころ表情の変わる奴だ。しかしこれは・・・


「むしろ俺が殺されそうな気がして来た」


 仲良くした方が良さそうだな。


「殺しませんよ!多分!!」


 ちょっと考えて、それもありなのではっ!といった顔をしている。

 そこは、ないって言い切れよ・・・。


「チェンジで」


 どうせ無理なんだろうけど。


「出来ませんよ!?させませんよ?」


 何やら含みのある顔で睨みつけてくる。


「冗談だ。悪意があるならわざわざこんな説明しないだろうしな」


 俺は笑いながら揶揄からかう様に言った。


「マスターは意地悪です!」


 サポちゃんは拗ねた顔をしていた。


「根源値を消費する。改めて宜しくな。サポちゃん」


 宣言すると俺の体が少し光り、ステータスの根源値が減少した。


「宜しく頼まれてやるのです♪」


 こうして俺とポンコツ妖精の旅は始まったのだった。


・・・


「さて、まずはどうするか」


 サポちゃんも仲間になった事だし、少し余裕が出てきた。


「まずは適当に魔物を倒して近くの街のギルドで売るのが、

チュートリアルでよくある流れです♪」


 なんだ。意外としっかりサポートしてくれるじゃないか。


「魔物がいるのか。よし!宜しく頼むぞ」


 俺は戦いなんてしたくない。生粋のインドア派だ。


「最初から丸投げですか・・・。

 この辺りの魔物は弱いからマスターでも頑張れば倒せますよ」


 サポちゃんは呆れながら言った。


「俺は出来ない事はやらない主義だ。

 出来ない事は出来ないから出来ないんだ!

 出来るならそれは出来ることだ。出来るやつがやってくれ」


 俺はドヤ顔で、俺の座右の銘を教えてやった。


「何を情けない事を自信満々に言ってるんですか。

 出来るって言ってるんだから頑張ってやりやがれです!

 早速近くにホーンラビットを発見ですよ。突撃です♪」


 どうやら俺がやらないといけないらしい。

 やだなぁ、やりたくないなぁ。


「とりあえずやってみるか・・・。本当に大丈夫なんだろうな?」


 ヘルプサポートで貰った装備をアイテムボックスから取り出し装備する。


「そういえばそんな物もありましたね。

 ホーンラビットくらい素手で倒してほしい所ですが・・・」


 ある物は使わないと勿体ないだろうが。


「俺は出来る事は全力でやる主義だ!最善で挑む」


 これも俺の座右の銘だ。


「ほんといい性格してますね」


 サポちゃんは呆れている。

 ちなみにアイテムボックスには俺が前世で死んだ時の持ち物が入っていた。


********************

ービジネススーツ一式

ーカバン

ー筆記用具

ー手帳

ースマホ

ーチョコ

ークッキー

ー財布

*********************


 あまり物は持たない主義だからな。大した物は無かった。


「で、そのうさぎは何処にいるんだ?」

 

 俺は周りを見渡す。見渡す限りの草原で簡単には発見出来そうにないな。


「あっちの茂みの中ですね。

 マスター弱いから近づいたら、向こうから襲ってくるんじゃないですかね♪」

 

 サポちゃんは笑いながら言う。

 馬鹿にしてやがる。


「いた。見た目は、角の生えたウサギだな」


 数メートル先の茂みで草を食べている。


「強さもウサギと変わりませんよ。

 マスターは無駄にマナが高いのでHP900もあるし、

負ける方が難しいですね♪」


 相変わらず馬鹿にしてるな。


「無駄じゃないだろ。寿命も長くなるし。

 300年は生きれるんじゃないか?」


 こっちの寿命はよく分からんが、かなり多めに振ったはずだ。 

 今度こそ長生きしたいものだ。


「マスターはそんなに長生き出来ませんよ?」


 ん?不意にサポちゃんから、何やら不穏な言葉が出てきた。


「なんでだよ!」


 俺は慌てたせいで、つい大きな声を出してしまった。

 ウサギがこっちに気付く。

 そしてすごい勢いでこちらに突進して来る。いや、逃げろよ!

 マジで舐められている様だ。

 俺はサポちゃんの不意の発言に動揺したため初動が遅れ、右足に突撃された。


「痛え!」


 ウサギの角が右足に刺さり血が流れる。

 激痛が走る。どうやらゲームではなさそうだ・・・。

 俺は冷静に状況を把握しようとする。そして・・・


「このやろう!」

 

 持っていた剣をそのままウサギに突き刺した。


 ウサギはそのまま動かなくなった。


「初戦闘の勝利、おめでとうございます♪

 とはいえウサギぐらいノーダメージで倒して欲しかったですね。

 今後がちょっと心配です」


 サポちゃんはやれやれと言った表情を浮かべている。


「お前が変な事を言うからだろうが!」


 こいつの不穏な発言がなければ余裕だったはずだ、多分。 

 ふと、右足を見ると傷口が徐々に塞がってきている。

 そう言えば、さっきより痛みも引いていた。


「一応ヒールかけときますねー♪ヒール!」


 サポちゃんが唱えると俺の体が淡く光る。

 お陰で傷口が完全に塞がった。

 さっきの一撃でHPが100近く減っていたが、それも回復していた。


「なるほど、これがこの世界の戦闘か・・・」


 ここは本当に異世界なんだな・・・今更だけど。


「HPが残っていれば傷口は徐々に治っていきます。

 腕が千切れても時間が経てば生えて来ますよー♪」


 便利だな、でもあまり怪我はしたくない。

 腕が千切れるとか嫌すぎる。


「さて、さっきの寿命の件だがどうゆうことだ?俺に何か問題があるのか?」


 俺は改めてサポちゃんに質問する。


「マスターに問題はないですよぉ。性根には問題ありそうですが♪」


 ほっとけ。生まれつきだ。


「で、なにが問題なんだ?」


「この世界が、あと200年も持たず滅びまーす♪」


「なんでだよ!」


 俺は意外な展開に思わずベタなツッコミをいれる。


「この世界は8種族の人がいました」


 何だ?唐突に語り口調だな。というか、


「俺は7種族と聞いたぞ?」


 話が違うじゃないか?


「天使族は滅びました♪」


「なんでだよ!!」


 俺はまたもベタなツッコミを入れていた。


「わかりません♪」


 サポちゃんの言い方が楽観的すぎてなんとも緊張感がない。


「でなんでこの世界が滅びるんだ?」


 本題はそこだ。するとサポちゃんは説明を始めた。


「8種族にはそれぞれの種族神がいて、柱として世界を支えています。

 8人の種族神は各々、約200年毎に順番で世代交代をしていきます♪

 守護する神竜を倒し、神域に至り次の種族神になるのが、

この世界に生きる人たちの使命なのです♪」


 なんだよ。あるんじゃないか、使命。


「じゃあ誰かが神竜を倒して神域に行けばいいじゃないか?」


 俺は行きたくないけど。


「同じ種族の神は存在出来ません♪」


 あぁ・・・ん?まさか・・・


「今回の空席が天使族だと?」


 最悪だ。


「その通り!」


 現存する7人の神は現存する7種族の神だから誰も次の神になれない。


「神様って殺せないのか?」


「すぐにその発想に至るマスターはさすがです。ドン引きです♪

 現状殺したらすぐに世界が滅びますけどね」


 サポちゃんは笑いながら言った。

 笑い事じゃ無いけどな。


「神が二人空席になれば世界が滅亡するのか・・・」


「順番としては、次は魔人族の神が消滅しますのでそうなればアウトです♪

 天使族の神が消滅したのはつい最近なので、あと200年くらいで滅亡ですね。

 なのでマスター何とかして下さいね♪」


 サポちゃんは軽く言った。


「いや、どうにもならんだろ」


 現状を聞く限りでは詰んでいる。


「マスターに言わせれば出来るやつがやれ、ですよね?」


「その通りだ」


 なんだ、良く分かってるじゃないか。


「だからマスターに言ってるんです♪」


 サポちゃんは何故か確信しているかの様に言う。


「何か方法があるのか?」


「私にはまったくわかりませんねぇ♪」


「何を根拠に俺に出来ると言ってるんだ?」


「根拠はありません!でもマスターなら出来ますよ。頑張って下さいね♪」


・・・


 『お兄ちゃんなら出来るよ。頑張って!』

 昔、妹によく言われていた言葉を俺は思い出していた。


・・・


 そして少し考えた後、俺は一言こう言った。


「俺は、出来る事は全力でやる主義だ」



「ほんといい性格してますね♪」

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