たんぽぽぱん

藤泉都理

少しだけ元気になる




 冬は活発的に動き、春は消沈して無理して動くこいつはそれでも、誘われているのか、単に家の中に居たくないのか。

 疲れたとぶつぶつ呟きながら桜の元へと向かう。


 いい天気だな。

 嫌な天気だよ。


 桜の木の下で。

 野の原の上で。

 仰向けになるこいつは硬く力を込めて瞼を閉じていた。

 まるで太陽を拒むように。


 いいものを持って来た。

 嫌なものだろうが。

 失礼な、おまえの好きなものだよ。

 そうですか。


 竹籠に入れて来たのはこいつに少しだけ活力を与える、小麦粉、酵母、塩、水(多分)でできているシンプルな食べ物だ。

 ジャムやマーガリンをつけたり、野菜や肉や卵を挟んだり、蜂蜜やシナモンをかけたりしたら一層美味しいが、今は必要ない。


 それを顔に乗せてやれば、根負けして食べ始めた。

 いつものように。


 パッサパッサなんですけどいつのだよこれ。

 おまえの家にあったのを持って来ただけだし。

 げ。

 新しいのがうちにあるけど来る?

 仕方ねえな行ってやるよ。

 来い来い。





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たんぽぽぱん 藤泉都理 @fujitori

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