第5話(終) タイトル

掃除を終えて、コタツでお茶とお気に入りのワサビ煎餅を片手に膝で猫が丸まり居間から見える空を眺める。

「平和だなぁ」

何気ない呟き

45を迎えてから、何だか45年を振りかえる……ではなく、45年経過して出来上がった我を見返す。とは言っても25歳のピチピチからの20年後の我が「すっかり重力に負けた体型になってる」とか「白髪が増えた」「シワが増えた」「水を弾かない」何て事ではない。

45年を振り返るとすると色々な事があったが、この6年が激動過ぎて39~前の記憶が薄らぐ。

結婚して半年で旦那が余命宣言される。

その3ヶ月後に、旦那に浮気される。

その4カ月後、旦那の祖母の面倒を観る。

その半年後、旦那が入院する。

旦那が退院後、2年マトモに働けず。

良く自殺しなかったな自分。と思う。

マトモな神経ではない……我ながらメンタル強い……いつの間にこんなにメンタルが強くなったんだろう……そう思った時、高校時代のイジメを思い出したのだ。あのイジメは本当にひどかった……映画で見るような古典的な事は無かったが、女子高だけにイジメ方が酷い……陰険陰湿ではあった、しかし、自分が悪いので大事な事だけを残して、瓶に思い出をセメントと一緒に押し込み接着剤で口を締め

「記憶の海」とやらの奥深く沈める。

人は亡くなった後49日かけてお釈迦様の元へ行く、その49日「走馬灯」の中を歩くと聞く……その時まで「サヨナラ」と幾つもの「嫌な思い出」を「記憶の海」へ沈めた……しかし、時折奴等は浮上し瓶の亀裂から思い出が漏れ出す。

「耐えられんな」と思った。

この5年を何度も沈めたが、奴等の浮上は早く普段見ない夢にまで見る事があった。

「記憶を無くしてしまいたい」そう思った事もあった。

45の誕生日……お祝いの言葉が無くて、寂しいと思った。でも、無いのは自分が悪かったのだと気づく。他人に興味を持たない代償。


「誕生日カードを自分はほぼ全く送らない」

自分はもらった相手なのに

「おめでとうを言い忘れる」

自分に言ってくれた相手なのに


「記憶の海」に沈めた記憶……全てではないが、自業自得な事が沢山あった。

そう気がついた時、嫌な辛い時間を前を向いて乗り切ってきた、結果、心が強くなった。

辛いを乗り切る強さを持てるようになった。

今の45の自分は、その沈めた記憶で学んだ事があって出来たものだ。

出来る限り相手に嫌な思いをさせない言葉の言い回し、相手を思うならばきちんと話をする事。きつい嫌な事も言える強さを持つ事。

「悪い事は悪い」と自分で認める事。

45の自分は、そうして出来上がった。

猫を撫でながら、お茶を飲んで「うん、無理に蓋して沈めるのは辞めよう❗今の自分が自分で要られる強さをくれた出来事でもあるし」

「誰かと話をしている時に思い出したら、笑いながら話をしよう。49日の道のりで出会い悲しく辛い思いをするのは嫌だし」と、ワサビのお煎餅を頬張りながら空を見て思う。


後何十年か先、この世を去った時見る「走馬灯」人それぞれの人生、人それぞれのタイトル。


ゆっくりとした時間、職場はそれなりに楽しい

旦那も優しいし、友人、仲間にも恵まれている

旦那実家の家族も優しい、私の実家も元気、お金は全く無いが、白いご飯と納豆がある。

暖かい寝床と可愛飼い猫。

お煎餅とお茶。


私のタイトルは……

「笑える思い出(後悔は走馬灯の中で)」かな


と、お茶とお煎餅を食べながら空を見て

飼い猫の鳴き声とクロスしなが笑う。

来年の46の誕生日には、おめでとうと言って貰う努力をしよう❗


かな(笑)


人それぞれのタイトル

もし、有るならば皆がどんなタイトルをつけているのかとても興味深い。


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