第6話 プラットホームの点字ブロックに、注意。止まってくださいを示す物と、進んでくださいを示す物が近くにある。その優しさが、危険なんです。

 視覚障害を抱えた方に限らず、声がけケアは、大切。

 それなのに…!

 コロナ禍が、声がけをさせにくくしている。

 「すみません。私、目が見えないんです。どうか、腕につかまらせてください」

 誰かに声をかけても、無視されやすい。

 「俺に、声をかけないでくれよ」

 「私だって、いや」

 「接触感染を、防ぎたいからな」

 「知らない人の腕を取るなんて、無理」

 コロナ禍は、人を守らせるようでいて、人を傷付ける。

 「おかしいっすよね、ハナさん?」

 「私も、そう思います」

 声がけが大切であることは、間違いないのだけれども…。いわゆる、3密を回避しようや、ソーシャルディスタンスを確保しようという運動により、かえって、声をかけることに、ためらいが生まれている。

 マスクをつけていると、声が、良く、聞きとれないし。

 彼のおじさんは、無事に、帰宅。

 点字資料を持って、再出発だ。

 ここまでは、良かった。

 問題は、最寄り駅のホームで、電車を待っているとき。

 コロナ禍じゃなくても、プラットホームにある点字ブロックが、いじわる。優しいようで、優しくなかったから。

 電車の迫るラインに近く設置される点字ブロックは、本来、こんな意味。

 「この先は、電車がくるので、危ない」

 「ここで、止まって」

 ここまでは、良い。

 問題は、止まってくださいのブロックだけではなく、進んでくださいを示すブロックも近くにあるということ。

 ごちゃごちゃとしていた優しさが、危険に変わる。

 混乱の素。

 「何を信じれば、良いの?」

 プラットホームには、他にも、危険がある。

 柱。

 自販機。

 人、人、人。

これらにぶつかってしまうだけでも、方向感覚を失いやすい。

 「ハナさん?」

 「はい」

 「電車音にも、問題があるらしいっす」

 「電車音?」

問題は、尽きない。





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