第5話 「…コロナ禍は、怖い。誰かを助けようとすればするほど、誰かが傷付きやすくなるから」 この気付きには、ハッとさせられる。

 「当たり前」

 その言葉の意味を、切符、ICカード、駅のポスター、視覚障害を抱えた方への声がけにはじまる気遣いから、考えられるようになりたい。

 おじさんは、うれしかった。

 けれど…。

 何かが、晴れなかった。

 コロナ禍、だから…?

 コロナ禍は、つらいよ。

 おじさんは、何も、言えなかった。本当なら、誘導してくれた女性に、こう言いたかったろうに。

 「…腕につかまらせていただいても、よろしいでしょうか?このほうが、安全です。セクハラのつもりは、ありませんから」

 それが、言えなかった。

 コロナ禍、だから。

 「密になっては、この女性に、迷惑をかけてしまうかもしれない」

 女性とは、少し、距離をとった。

 「できることは…。感謝だけだ…」

 女性には、何度も、礼を言った。

 「ありがとうございました」

 「どういたしまして」

 「本当に、ありがとうございました」

 「こうやって、誰もが人を気遣える社会になれば、良いですよね」

 「ええ。ありがとうございました」

 「…コロナ禍って、本当に、怖いですよね。傷付いた人を助けようとすればするほど、誰かが傷付きやすくなるんですからね」

 これを聞いて、ハッとさせられたことだろう。

 「そうかも、しれんな…。コロナ禍で傷付いた人を助けようとすればするほど、誰かが傷付きやすくなることがあるんだ」

 新しい、恐れ。

 「では、お気を付けて」

 たとえ、手を引いてくれなくても、声をかけ、こちらですよと言ってくれる人がいてほしい。視覚障害を抱えた方は、どれほど、助けられることか。

 誰かを気遣う気持ちを持つことが、大切なんだよ!

 「…でもね、ハナさん?」

 「はい」

 「でも、やっぱり、運の良いケースだ」

 そう。

 現実は、幸運なことばかりとは、限らないっていうこと。

 助け合いからの気付きケースは、理想的すぎ?







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