第2話 ヤングケアラーの子も、失敗をしたことがあります。だから、その反省から、弱い人の相談に乗ってあげようとするんじゃないのかな?

 コロナ禍だからこそ、視覚障害をかかえた方の事故が多くなる。

 「ハナさん?」

 「はい」

 彼は、小学生だという。今どきの小学生は、しっかりしていそう。

 「町では、白杖を使って歩いている人がいます」

 「はい」

 「ハナさんは、実際に、その姿を見たことがありますか?」

 「はい」

 自信をもって、はいと、応えていた。

 ずいぶん前、ある失敗をしていて、忘れられなかったし。

 彼女が、小学生のころ。

 「あれ?」

 目の前に、白い杖をつくおじいさんが、歩いてきた。当時、彼女は、白杖の意味を知らなかった。

 「あ、白い杖だ。珍しいかも」

 何も、できなかった。

 点字ブロックを杖でついて音を確認し、その音を頼りに進むおじいさんに道を空けなかったことを、今でも、悔やむ。大切な点字ブロックを、踏みつけてもいた。

 「…ハナさん?」

 「はい」

 「俺のおじさんと、同じような事故にあった人が、けっこう、いたんですよね」

 「…同じような事故?」

 「ハナさんは、視覚障害の事故について、知りませんか?ニュースとかでも、取り上げられていたんですけど」

 もしかして。

 「それって、駅のホームでの事故では、ありませんか?」

 「ハナさん?」

 「はい」

 「その通りです」

 視覚障害を抱えた方が、駅のホームから転落するという事故が、相次いでいた。

 「その事故ってさ…ハナさん?」

 「はい」

 「コロナ禍に、大きな原因があるらしい」

 「…え?」

 「コロナ禍ならではの、事故」

 「そうなんですか?」

 視覚障害を抱えた方に起きた、駅のホーム事故というのは、次のようなもの。

 「ゴトン、ゴトン…」

 電車が、近付いてきた。

 プラットホームには、何人もの人が並んでいた。

 「白線の内側まで、お下がりください」

 アナウンスが、入って…。



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