第12話 婚儀
頭栗が戻ってきた事で、跋扈の当主は頭栗となった。
「私が帰ってきたからには、もう心配はいらぬ!父上の敵を討とうぞ!」
「おー!」
頭栗は家臣を鼓舞し、そして戦が始まった。跋扈軍は一気に朱坐に攻め入り、一日で相手を降伏させた。和睦協議の結果、朱坐の一部を手に入れて、戦は終わったのであった。
戦が終わり、元の生活に戻ったかに思われた。しかし、剣介の生活は全く変わってしまった。何しろ、嫁が出来たのだから。
「これでお前の周辺も落ち着くだろう。」
と、誰からとも無く言われた剣介だが、房子や峰子達の態度は以前と少しも変わらなかった。
だが、嫁と言ってもまだ子供だった。奈津は正しい言葉遣いも出来ぬほど幼いのだ。なので、寝室はまだ別々なのであった。すると奈津は、
「寝室が別なのは良い。それでも、これでは祝言を挙げた意味がないではないか。」
と、恨みがましく言う。しかし、剣介は何をどうすればいいのか全く分からない。
「意味はあるぞ。」
「どんな意味じゃ?」
「うーん、他の女の人とは結婚しない、と決まった事とか。」
「なるほど、それは良い意味だな。つまり、他の女とは仲良くしない、という意味もあるのだな?」
「奈津。」
「はい?」
「俺は元々、女の人と仲良くしてはいないぞ。」
「そうかぁ?」
奈津が目を細めて剣介を見上げる。しかし、剣介には全くその意味が通じていない。
「では、行ってくるぞ。」
剣介が仕事へ出かけようとすると、奈津が背中から胴体にしがみついた。
「何をしているのだ?」
「べ、別に何も。」
奈津はそう言うが、放さない。剣介は仕方なく、無理に剥がしにかかる。しかし、意外にも簡単に、奈津の手はほどけた。剣介が振り向くと、奈津はうつむいている。
「どうした?」
「・・・寂しい。」
嫁というより、妹か娘のようではあるが、これはこれで可愛い、と思う剣介である。奈津の頭を何度か撫で、仕事に出かけた。
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