第11話 再会
翌朝。
「朱坐を攻める。どこに間者がいるか分からない。一刻の猶予もない。すぐに戦の支度を始めよ!」
美成がそう言い渡し、慌ただしく戦の準備がなされた。剣介も美成に付いて戦場へ行く。美成にとっても、剣介にとっても初めての戦だった。
城を出てしばらく歩き、夜には朱坐との国境に着いた。ここに陣を敷く。小さな寺に美成とその側近が泊まる事になった。寺と言っても小さな建物で、ハッキリ言ってぼろ屋だった。
「美成様、寒くはありませんか?」
剣介が尋ねると、
「ああ、大丈夫だ。」
と、美成が言った。しかし、ビューっというすきま風の音が響き、戸がガタガタっと音を立てると、美成は飛び上がって剣介にすがりついた。
「大丈夫ですよ。風の音です。」
剣介がそう言うと、
「わ、分かっておる。」
決まり悪そうに美成は手を離した。だが、剣介はそんな美成がいたたまれなくなり、美成の事を抱きしめた。
「な、何をする。」
美成が弱々しく言った。だが、特に抵抗するでもなく、抱きしめられたままじっとしていた。風の音にもびくつくくらい、美成はまだ子供なのだ。だが、敵に一番に狙われるのは大将の首、つまりは美成の首なのだ。家臣に守られているとは言え、多くの敵が自分を狙ってくるなど、その怖さは他の誰にも分からないだろう。
壁に寄りかかって座り、剣介は美成の肩を抱いたまま眠った。剣介がふと目を開けると、外が明るくなっていた。戸の隙間から光が差し込んでいる。
「ん、朝か?」
美成も目を覚ました。
「はい、外が明るくなりました。」
まだ剣介の腕の中で目も開けられずにいた美成が、おもむろに立ち上がって伸びをし、首を回した。すると、戸がガタっと音を立てた。剣介はさっと立ち上がり、美成を抱きしめた。
「誰だ!」
美成を背中に回し、剣介は刀に手を掛ける。戸がスーっと開いた。
「剣介か?俺だ、頭栗だ。」
入って来た青年が、そう言った。
「え?頭栗、様?」
現れたのは、美成の兄、頭栗だった。だが、かつてのずんぐりむっくりした体型はどこへやら、すらりとした体型になり、すっかり男前になった頭栗がそこに立っていたのだ。
剣介は数歩近づき、そして跪いた。
「頭栗様、よくぞご無事で。」
「朱坐が跋扈と戦をすると聞いたのでな、逃げてきたのだ。」
「左様でしたか。」
剣介の胸は詰まり、涙が目に浮かんだ。この三年、人質の立場でさぞ苦労も多くあったであろうと慮り、また、命が無事であった事に感無量だったのだ。
「剣介・・・。」
頭栗もまた涙を流し、跪いて剣介を抱きしめた。しばし、二人は涙を流して再会の喜びを噛みしめた。
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