第40話 試合

 俺、橋本 大輔(ダイスケ)は、ソフトテニスの大会にやって来た。


 先日、元顧問の川名津(カワナズ)と肉体的オハナシ合いをした事で、気持ちよく試合に出れる。と思っていたんだが、部長の川上(カワカミ)がウザ絡みして来た。


「橋本、お前よく戻って来れたな」


「戻っては来てないだろ。今回は外部参加みたいなもんだ」


「まぁ、精々頑張れ。練習不足でみんなの前でみっともない所を見せるんじゃないぞ」


「言われなくても分かってる」


 そう言い合いつつ、川上は別のコートに向かっていった。それからは、待合室に向かい独り自分の番を待ちながら柔軟体操をしている。他の部活メンバーは、さっきのやりとりを見ていたからか、話しかけて来ない。


 今日は予選のリーグ試合だから、川上とは当たらない。同じ学校で最初に当たらない様にする大会側の配慮だな。そこから決勝トーナメントはくじ引きになる。


 今日は疲れを残さない程度で勝ちたいけれど、実際どうなるかはやってみないとわからない。最近、ナオパパの所で練習してたせいで練習相手が大人だったから、久々に学生同士の試合だと、どうなるか分からない自分がいて、緊張とやる気を感じて居た。



 ―――――予選試合開始


 先手後手については、ラケットを適当に回転させてどっちに倒れるかで決める方式になった。どっちかと言うと先にサーブしたかったんだが、俺の方に倒れてくれたので望み通りの展開だ。


 ―――ザ ベスト オブ 1セットマッチ 橋本サービス トュー プレイ―――


 審判からの開始の合図があったので、俺は思いっきりサービースエースを…………失敗した。


 ――フォルト――


 球がネットに引っかかってしまったんだ。ちょっと力みすぎてたな……………。


 落ち着いて深呼吸だ……焦るな………コート脇で彼女たちが見ているんだぞ。最近あの娘達と相対する時の緊張感に比べれば、なんてことはないはずだ。


 それに俺は成長したんだ。川名津かわなずもなんだかんだ来てるしな。ナオの隣に居るのが気になるが、先日お見合いしたんだとか言っていた。なぜか感謝の言葉を言われたのが意味分からなくて呆気に取られたが……………


 思い出したら、少し吹き出してしまった。なんで男の事を思い出してリラックスしてるんだか。自分でも良く分からない、なっ。


 スパンッ


 今度はサービスエースが決まった。良い感じだ。この調子で行くぞ。



 ――――それから


 一度リラックス出来たのが良かったのか、1セットも落とさず予選を通過出来た。


 元部活の奴らにも挨拶したが、お互いに距離感が掴めずにいた。それでも、みんなに感謝を伝えてその日は帰宅する事になった。



 ――――帰り道の車の中



 今回もスティーブさんに送って貰ってる俺たち。最近は後部座席で三人で座って、二人と手を繋いでるのが普通になってしまった。


 完全に二股野郎だ。でも、この二股自体が今は期間限定だったりお家限定だったりで、嘘だったりするんだよな…………。


 決着は、テニス大会が終わってからにしようと思う。それか、秋か冬か………ってどんどん後回しにしようとしている自分の思考に気づく。結局どんな反応になるか分からないのが怖いんだろうな。


「先輩♪ 今日はおめでとうございます♡」


「さすが兄さんです。相手を全く寄せ付けてませんでした」


「まぁ、練習相手が良かったから…………と言うか良すぎたから」


「そうでしたねぇ。パパが通ってるテニスクラブ、プロの方も居ますからね」


「だったな。もうボコボコに凹まされたけれど。まぁ当たり前だが」


 思い返しても全く良い所が無かった気がする。その時は、プロのテニスプレイヤーの人が居て練習相手が来るのが遅れるから相手してくれないか? と言う事で、練習に誘われたんだ。


 その時は硬式ボールでやったんだが、スピード感が全く違っていたし。プロがやっぱ気迫が違うな。と感じた。


「それでも、兄さんは最後の方が食いついてたじゃないですか。すごいですよ♪」


「まぁ、最後の方だけな。無理してたからその後、ぶっ倒れたけどな」


 一見和やかな雰囲気の会話をしているんだが、嘘の彼女達に挟まれてる俺。両手とも手を繋いでて、ほんとどうしたんだ………夏の別荘での一件以降、二人とも積極的すぎやしませんか。


「なぁ、二人ともちょっと離れたら……俺、まだシャワーしてないから臭くない?」


「兄さんのなら大丈夫です。むしろご褒美です♪」


「わ、私も大丈夫。マネージャーやってた時に慣れてますから」


 妹よ、ご褒美とは一体どういう事なんだい?

 マネージャーさん、単に臭いのを慣れただけなんじゃないの?


「どちらにしてもシャワー浴びたいな。会場にもあったけど居心地悪かったし」


「それじゃうちに来てください♪ 檜風呂ありますよ♡」


「ダメです。今日は早く寝ないと。寄り道は許しませんよ」


「もう、なんでも良いから今日は、早く帰って寝たい…………」


つづく

----------------------------------------------------

あとがき


投稿少し期間空いてしまいました。

もう少し、お付き合い頂ければ幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る