第37話 チャラ男その②
!勇者アキヒコは、ショッピングモールで元カノを見つけた!
駅前ナンパが失敗し続けて、疲れたんで休憩がてらに行ったショッピンモールで、今はただの同級生のナオを見つけた。
最近はあえて見ない様にしていたから、彼女を見るのが久々な気がする。 ―――ちょっと小動物っぽい感じが相変わらず可愛いなぁ。
そう考えつつ、後ろをついて行ってくとなんだか、ストーカーしてる見たいだな。と自分で思ってしまった。
前回声をかけた時は、隣に居た男に邪魔されて反対側に居た妹ちゃんもダメだったしなぁ。まぁ、あれから状況が変わってるとは思えないがナンパするだけしてみよう。
「あれ? ナオちゃんじゃね。今日買い物?」
「あ、はい」
そう声をかけたら、立ち止まってくれた。相変わらず気の良い子だ。ま、ダメ元で言ってみよう。最初はうまく行ったし。
「ふーん。今、フリーなの? それならまた付き合わない?」
「………彼氏いるって前も言ったじゃないですか………」
「そっか、前に会ったガタイのいいやつ? 長く続いてるんだ?」
そうなんです。って言ってくれればそれで良いそう考えてたんだがどうやら様子がおかしい。なぜか、ナオちゃんが泣き出してしまったんだ。
こんな人通りの多い所で、泣かれてしまったら俺が悪いみたいじゃないか………。
「ど、どうしたん? 俺、なんか悪いこと言った?」
「ごめんなさいっ」
「うん? ナンパをごめんなさいして、泣いてくれるならむしろ嬉しいけど?」
もう、振られるの慣れてしまったんだ。人って慣れるんだな。でも、辛そうにしてるってことは、アイツはやっぱ………
「やっぱ、アイツ二股野郎だったんだよね? 俺そんな事しないよ? 付き合ったら一筋だぜ?」
「それ、前にも聞いた気がする。 ――他の女の子にも同じ事言うなんて、アキヒコくんはバカですね」
そう言ってまだ涙を溜めつつ笑ってくれた。俺ってなんて勿体ないことしてたんだろう……………なんだか周り道をずっとしていた気がする。最初に良い出会いがあったのに。
「やっぱさ、俺たちやり直さない? その方がいいんじゃない?」
「ダメだよ」
「なんでさ」
「だって………………お父さん…………お金……許してない」
あぁぁ〜。お金返してないね! そういや! お義父さんに言ってやり直ししないなら、そのままで良いやって思ってた! 確かに俺はバカだ。
「まぁ、お金はないけど。カフェ行かね?」
「前もそんな感じだったよね。もうそういうのはダメってわかったから」
「そっか」
そうだよな。それが普通だよな。最初の俺たちがおかしかったんだ。それが分かったので、その場を離れようと別れを告げる事にした。
「それじゃ、またな」
「まってっ」
そう言いうが早いか、手首を掴まれてしまった。やめてくれ。勘違いしてしまうじゃないか。もう、俺たちは終わったんだろ……………。
「ど、どうしたん? 話は終わった雰囲気だったよな?」
「ちょっと話したい事があるの。今回は奢りでいいから。これは…………デートじゃないから。それならいいでしょ?」
「まぁ、それならいいんじゃない? ――――本当にお金は出さないよ?」
「大丈夫、自分のお金使うから」
なんなんだ一体!? 表情も迫力あるし。尚文パパンを思い出しちゃうんだけれど。
「でもさ、今彼がこの後出てきたりしない? そういうやつあるよね? ほらドッキリとか?」
「は? なにそれ? ほんとバカなの?」
そう言いつつ、俺を小馬鹿にする様に見下してくる元カノはなんだかとても楽しそうだった。こういう表情も出来るのか。知らなかった。
「それでどこにいくんだよ。カフェとか?」
「個室居酒屋」
「へ? なんでまた」
「他の人に見られたくないから」
「あ、あぁ」
「それじゃ、予約するから先に行って」
「はぁ? 場所わかんねーよ。連れっててくんねーのかよ」
そう言ったら睨まれた。付き合ってない男女で行くのは不味いよな。そうだったな。仕方ないので、スマフォを取り出して場所を聞く事にした。
「IDは前のままだから、ブロックしてねーよな?」
「一応してない。それじゃ場所送るから、あっち行って見られたくない」
「あいよ。それじゃ駅の方へ言ってるよ」
「うん」
塩対応だなぁ。でもなんだか。
「今の方が良いよ、お前」
「え? なに突然?」
「誰にでも、愛想良いんじゃなくてさ。なんか今の方が良いなって思った」
「あっそ」
そっけない態度だけれど。どことなく喜んでる気がした。そういや、俺って前に付き合ってた時にちゃんと褒めてたっけ? なんか自分が楽しいって感情を優先してた気がするな。今、気づくとか本当にバカだな。
そして、指示通りにしていされた居酒屋に行ってナオちゃんが来るのを待ってたんだが、なんか緊張するな…………落ち着かないぜ。
―――――しばらくすると。
ガラガラ
扉が開かれてナオが入って来た。
「ちゃんと来てるね」
「そういう時は『ごめんね。待ってた?』だろ?」
「キモい。やっぱ帰ろうかな」
「待ってくれ! もう飲み物頼んじまったんだよっ!! 金ねーよ!」
そうもう頼んでしまった。だって喉乾いてたんだもん。いや、だもんじゃねーよ。自分でもキモいな。
「ねぇ? この子、大丈夫なの? 本当に雇うの?」
そう言ったのは、一緒に入って来た女性。誰なんだろう? 短めの髪の毛で、切れ長の瞳。鋭利な雰囲気のする大人の女性だった。
「えぇ、お願いします。この人お父さんにお金返さないとならないんですけど。なにもやってないみたいなんで」
「尚文さんにねぇ。それなら手伝ってもいいけれど」
「誰なんだよ。この人?」
「この店の店長の冴島さん」
「どうもー。店長の冴島です。よろしくね♪ うちはいつでも人手不足で歓迎よ♪」
いや、いまさらそんな風にウィンク付きで可愛く言われても騙されないよっ。極端な人だなっ。
「とりあえず、夏休みの間はうちに来なさい。って感じでいいかな? ナオちゃん」
「お願いします」
どうやら、俺の夏休みの予定は居酒屋のバイトで埋まってしまったらしい。
つづく
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あとがき
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