第35話 縁

 新庄先輩がカメラを持って来たので、なぜか撮影会を始めてしまった俺たち。


「なぜこうなった?」


「考える前に感じろですよっ。お兄様♪」


「だから、俺はお前のお兄様じゃーないっ!! いい加減にしろっ」


 新庄先輩は、どうも悪ノリが過ぎる。最初、俺とスティーブさんの圧力のビビってた様子なのに、こうやって強い言葉を使ってもへこたれた様子が無い。………なんだか疲れてきたぜ。


「どう思いますか? 解説のミ○キさん」


「へ? 解説? というか誰ですか? そのひと?」


「すべての男、いえ全人類の嫁にしたい妹ナンバーワンの人ですっ」


「嫁だなんて…………………(それ、本当ですか?)」


「(えぇっ。自信を持ってください。このまま押せ押せで、お兄様はメロメロですよ)」


「(分かりました。ありがとうございますっ♪)」


 新庄先輩とミサキが小声で話しているんだが、不思議と気があうみたいだ。そして、ナオも相沢先輩とずっと話してる。あれ? なんか俺ボッチになってない?

 

「お茶のお代わり入りますか?」


「ちょっと刺激のある物が欲しいですね。コーヒーありますか?」


 執事スティーブが声をかけてくれたので、そのまま彼と話す事にした。


「どう思います?」


「どうと言いますと?」


「二人が、その元々ナンパ男だった先輩達と話しているのが………」


「宜しいのではないでしょうか? 悪い人たちではなさそうですし。それに今は私たちもここにいますしね」


 そう言いつつ、サムズアップしつつ歯を光らせて自分の肉体をアピールしてくるスティーブさん。


 そうだよな。まぁ、新庄・相沢先輩は良いんだ。俺と顔見知りになったし。それに普段は東京にいるからナオとミサキの近くに居るわけじゃ無い。


 そうすると、”あいつら二人”に対して忠告してから地元を離れるべきか。


「スティーブさんちょっと協力してもらいたい事があるんですけど。良いですか?」


「ええ。もちろん! それにしても、急に良い顔になりましたね」


「え? そうですか?」


 自分の顔なんて本人からは分からない。けれど、頭の中のモヤモヤが晴れた気がする。それが顔に表れてるんだろうか?


「それで、何をすればいいんでしょう?」


 こうして、俺とスティーブさんは今後のことを話し合った。この嘘から始まってしまった恋愛に関してどういう結末にするかも、だ。


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 いっぽうその頃


 撮影会は行われていた。ミサキは『えっちなのはいけないと思います!』と言ってたけれど。スタイルの良いミサキが、黒のビキニを着ているから。どうやってもえっちになってしまう。ので、SDカードは全部没収することになってしまった。


 そのSDカードを貰ったミサキは、どこか嬉しそうだった。それにまた新庄先輩と何か話しているし。なんなんだろう?


 ナオについては、何枚かは問題なさそうではあった。肩が出ているが露出は少なめだったからな。でも、俺が微妙な顔をしていたら。新庄先輩がSDカード差し出してくれた。


 ただ、その時言われたのが


「コラージュ画像作りたい物があったら、俺にメッセしてください。秘密は守りますんで♪」


「いや………」


「大丈夫です。これでも、アルバイトで画像編集やってるんすよ。はい。これが俺のQRです」


 そう言いつつ、スマフォの画面を差し出して来た。期待に満ちた目をされてそう言われてると非常に断りづらい。なんだかお尻の方に尻尾が見える気がするし。


 なんというか犬っぽいというか?


「まぁ、気が向いたら」


「あとで、ポートフォリオ送りますよ」


「ポートフォリオって何? それになんで、新庄先輩はそんなにグイグイ来るんだよ」


「あ、すみません。作品集のことですよ。グイグイ行ってるのは、お兄様のお役に立ちたいので♪」


「俺は、男からそんな風に言われて嬉しくなったりはしない」


 なんかちょっと慣れて来てしまったが、何が悲しくて男にお兄様って言われないとならないんだ。ただ、新庄先輩との距離感はそんなに悪くないのかもしれない。


「またまたぁ」


「何が『またまたぁ』なんだか」


「協力して欲しいことがあれば言ってください。多分、役に立てると思いますよ」


 そう言いつつ、楽しげに笑っている新庄先輩。

 ※からかい系ヒロインではありません。


「いや、女の娘ナンパ出来なかった奴が何いってんだか」


「それもそうでした。女性関係以外でお願いしますっ」


「わかった。わかった考えておくよ」


「はい♪ お願いします♪」


「やっぱ、アンタキモいわ。あっち行ってくれ」


「は〜い♪ あ、その前に」


「なに?」


「うちの大学綺麗な子多いですよ? お兄様が居れば、ワンチャンあるかも?」


 俺も一緒にナンパ? もしくは合コンか何かしろって言うのかよ。今の状況で行ったら、デッドエンドが見える。デッドエンドの向こうへ…………。


「いらねーよ。もう十分だ。お腹いっぱいだよ」


「ですよねぇ」


 本当にな……………。


つづく

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あとがき


そろそろ物語閉じて行こうと考えております。

引き続きよろしくお願いいたしますっ。

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