第23話 二人っきりで過ごしたいその②

 俺、橋本 大輔(ダイスケ)はミサキと話した事で、俺たち三人の関係がおかしい事を認識した。ただ、もうどこから解けばいいのか分からない。二人とも傷つけたくないと思っている。思っていたんだが…………。


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 南条家にお見舞いに2人で来た俺たち。そこでナオから言われたのは


「二人とも来てくれてありがとう。でも、ミサキちゃんはリビングで待って居てもらえないかな? 先輩と二人っきりになりたいので♡」


 どこか様子が変わってしまった。ナオだった。それに部屋着も何処か艶やかな感じがする。体の凹凸がわかる様な服装で、その、素材はシルクなんだろうか……艶やかな光沢のある、そんな服を来ていた。


「突然どうしたんだ? そんな事を言い出して、それにその格好」


「彼氏がうちに来たんですから、二人っきりになるのは普通ですよね? なにか違いますか? 私おかしな事言ってますか?」


「おかしくは無いが………それにしても言い方があるだろ」


「兄さん、わたしは構いませんよ。ナナちゃんの家ですし。ここは……ね」


「まぁ、ミサキがそう言うなら……」


「えぇ、大丈夫です。待っていますから♪ でも、くれぐれも、ナナちゃんの体調が悪くなる様な事はしないでくださいね?」


「あぁ、もちろん」


「では、失礼します」


 そう言って、ミサキが部屋を出て言った。その姿はいつもと変わらない様にみえたが、怒ったって良いような場面だった気がする。


「それで、どうして突然そんな事言い始めたんだ? ミサキとは仲よかったよな?」


「そうですね。でも、それとこれとは別です」


「別なのか?」


「えぇ、別です。彼氏と一緒に居たいと言うのは変ですか?」


「間違ってはいないが………」


 だが、この間も3人で出かけたり買い物に行ったじゃないか。なんで、突然………


「それよりも、先輩は今の私をみて何かありませんか?」


 そう言われたので改めて、ナオの姿を見る。いつもよりも肌の露出が多くて、それで居て線の細さが分かるような服装だから、いつもよりも儚く見える。


「そうだな。いつもよりも綺麗だよ。抱きしめたら折れてしまいそうに感じる」


「そうですか……それじゃ抱きしめてください」


「え?」


「できないんですか? 彼氏なのに?」


 そうじゃない。でも、今の服装で抱き合うって言うのはどうなんだ。その、まるで今からシテしまうみたいじゃないか。


「早くしてください。なんだか体が寒くなってきました」


 そう言われたので、ナオを抱きしめた。前に制服姿で抱き合った時よりも、体の柔らかさを感じるし。それに良い匂いもする。この部屋もそうだけれど、アロマか何かを炊いてるようだ。


 ナオも抱き返してくれたので、さっきまで混乱していた心が落ち着いてきた。人と触れ合うのって、なんだか安心する。


「先輩♪ 私のこと好きって言って貰えますか?」


「えっ」


「好きじゃないんですか?」


「いや」


「どうなんですか? ちょっと顔を見せて貰えますか?」


 そう言われたので、お互いに抱き合いながら顔を話して見つめ合った。いつか居酒屋で、お互いに見つめ合った時を思い出させる。そんな雰囲気だ。


 そして、お互いに見つめ合ったことで、あの時に抱いた好意を改めて思い出せたので、漸く言えた。


「好きだよ」


「どれくらい?」


「どれくらいって……」


「ミサキちゃんと比べて、どれくらいですか?」


「えっ、なんでそうなる?」


「いいから答えてください」


「………比べられるものじゃないよ。ミサキはとても大切な家族なんだ」


「そうですか、今はそうなんですね。わかりました」


 そう言って、ナオは離れてしまった。さっきからなんだか、試されて居る気がする。まるで、最初に嘘告白されたその時に戻ってしまったかの様だ。


「それじゃ、今度の旅行の時にミサキちゃんは連れて行きたくないって言ったら、どうしますか?」


「えっ。だって三人で行くって……」


「どうなんですか?」


「俺が決めることじゃないよ。ミサキと話してみるが。アイツも楽しみにしてたんだ」


「ふぅ。まぁわかりました。それで良いです」


 そう言うナオは、ちょっとガッカリしたけれど、それで居て何処か楽しそうな顔をしていた。なんだか、とても居心地が悪い。


「それじゃ、次の話です。今からここで私とシませんか? セックス」


「はぁっ!? 今から!?」


「そうです。今から」


「いや、だってそれは『運命の人』とするんじゃなかったのか?」


「今から、先輩が『運命の人』です。それでいいじゃないですか?」


「よくないだろ。わけがわからないよ」


 なんでこうなった。それにリビングでは、ミサキが待ってるんだぞ。こんな状態で集中出来るわけがない。誘われても、興奮するより混乱の方が強くて、俺の息子も反応してない。こんな精神状態じゃ、初体験が上手く行くとは考えられない。


「男の人って誘われたらすぐシちゃうものなんじゃないですか?」


「普通がどうだか知らないが、その………童貞の俺には無理だ。イキナリすぎる」


「あ、先輩まだ童貞なんですね♪ よかったです。お揃いですね♪」


「あぁ、お揃いだな………」


「それじゃ、キスだけでいいです。それなら良いでしょ?」


「そうだな。それくらいなら良いな」


 お互いに合意をしたので、俺たちはその日、始めてのキスをした。その味は、今まで嗅いだ事の無い甘い香りがした。


つづく

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あとがき


ナオちゃんヤミまみた。

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