第20話 気づき
嘘カノ 南條 奈央(ナオ)視点
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私の彼氏がおかしい。いや、先輩が卒業するまでの期間限定の嘘の彼氏なんだから、おかしいのはあたり前なのかもしれないけれど。やっぱりおかしい。
ダイスケ先輩は、もともと口下手で、私がアプローチを開始した時は素っ気ない反応でした。先輩と嘘でも付き合う事になったあの日、先輩は私の事を本当に好きになりかけていた様に思えた。
けれど、しばらくすると先輩は変わってしまった。
それは、いい方向なのかも知れないけれど。何かが違うんだ。なんと言うか、演技をしている気がする。妙に手馴れている感じがしてしまうんです。
しばらくの間、それは私の事を「運命の人」だと感じてくれたのかと思った。いや、思い込もうとしていました。
しかし、それが違う事を今日確信してしまいました。ミサキちゃんがダイスケ先輩を見る目は明らかに違っていました。二人は、兄妹の筈なのに、ミサキちゃんの顔が恋する乙女………いえ『愛を確信した女の顔』でした。
私は、何か勘違いをしていたのかもしれません。あの日、橋本兄妹にお持ち帰りされた日から。もしかしたら、私は二人にとって居なくても、問題ない存在なのかも知れません。
だって、先輩は私の事を褒めてはくれますが一度だって『好き』とは、言ってくれていません『運命の人』同士は、惹かれ合う物なんじゃないでしょうか?
お婆ちゃんは、お見合い結婚だったらしいですが、それでも最初、お爺ちゃんに会った時に『運命』を感じたと言っていました。
私は、今、先輩の事が好きだと思います。今の所、先輩が卒業する時に別れる事になってはいますが……それをもう無くしたい。と心では感じているんです。
「でも、先輩は私の夢を応援すると言ってくれてるんですよね」
思わず、ため息をついてしまいました。今は、お風呂場で一人浴槽に入りながら物思いにふけっている所です。自宅のお風呂は、ヒノキのお風呂で亡くなったお爺ちゃんのこだわりだったそうです。私も、この匂いが好きなのでとても良いものだと思います。それに昔はお婆ちゃんと一緒に入っていて、良く髪の毛を洗ってもらったんです。
それが、この間、お婆ちゃんが亡くなってしまって、気持ちが沈んだ状態のまま、その時付き合ってた彼氏とデートする事になったんですが、喧嘩してしまいました。
その時の彼は、もう私がデート代を奢るのが普通になっていましたし。悪びれもしてませんでした。その上、落ち込んでいる私の体を抱きしめながらも、どこかいやらしさを感じてしまいました。
そして、お婆ちゃんの顔が思い浮かんでしまって、つい強く拒否してしまったんです。そうしたら、彼は『なんだよ。メンドくさいな。今日は帰るわ。またな』と言って、私を置いて行ってしまいました。
そうしたら、なんであんな人と付き合ってたんだっけ? と思って呆然としてしまいました。最初、彼から告白して私たち付き合ってたんじゃなかったでしたっけ?
もうなにがなんだか分からない。何を信じたらいいんだろう。と言う状態でした。そうして、雨が降り始めていたあの日、ミサキちゃんが私をお持ち帰りしてくれたんです。同じクラスで、話した事はありましたがこんな時にも、凛としつつもどこか優しさを感じるそんな彼女に好感を得ました。
この人が好きになる人はどんな人なんだろう? そう思いつつ、私が彼氏、いえあの人とはもう付き合えないので元彼の話をした所、ミサキちゃんはお兄さんの話をし始めたんです。どうやらダイスケ先輩は、いつも優しくて妹で有るミサキちゃんを助けてくれるヒーローなんだそうです。
私は、部活でのダイスケ先輩しか知りませんでしたが、どちらかと言うと素っ気ない人だな。と思っていました。最低限のお礼はするのですが、他の男性に比べて私に対するなんというか『好感度?』の様な物が低い様に感じていました。
もう、しばらくの間、男性と付き合うのも面倒だな。と考えていた頃、この間まで付き合ってた彼氏と別れた事を部活の部長や顧問の先生が知った様で『また付き合えない』かと聞いて来る様になりました。彼らとは、もう縁が無いと私は考えて居たのですが、どうやら男性側は考え方が違うようです。
そんな状態で、ミサキちゃんが言っていた。ダイスケ先輩は人助けをしてくれるヒーローと言う話と、付き合うとしても最初から嘘の関係なら気楽だと言っていた話がこう頭にすっと入って来たので、実際に行動する事にしました。
そうして、ダイスケ先輩と付き合う事になったのですが、今の状態はどうもおかしい。ミサキちゃんと先輩との関係性について一度、聞いてみたいですが結果を聞くのが怖くもあります。かと言って誰かに調べてもらうのもどうなんだろう………。
相談する相手も居ない事なので、私の思考はぐるぐると回ってしまいました。
そうして、湯あたりしてしまい。その日、風邪をひきました。
明日も先輩とデートだった筈なのに………何をやってるんでしょう。私。
つづく
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あとがき
ナオちゃんが、違和感に気づきました。
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