第14話 挨拶

 俺たちは、無事夏休み中に海に行く為の買い物が出来たので、ナオの家に挨拶をしにいく事になった。ナオが『運命の人』探しをして居るのは、両親も知ってる事と言う事だったので、最初から、今は付き合ってるって事で話して問題ないそうだ………。


 なんだ、そうだったのかと思うと同時に両親に挨拶したのに、一度、別れる事が決まってるんです。だなんて知ったら、両親的にはどう思うんだろう?

『そんな気持ちなら元々付き合うな』とか思われそうだが、その事を聞いても

『両親は理解してくれてますから、話せば分かります』としか言ってくれない。


 もう、そのまま本番に向かうしかないのか、そう思ってると。ナオが手を握ってくれた。人肌が心地よくて心が落ち着いて来た。すごいな。人肌ってのは。


「大丈夫ですよ。先輩なら」


「こんなの初めてだから緊張してきた。テニスの試合よりも緊張してる」


「私は、慣れちゃいました………」


 そう言って、しゅんとしてしまったナオ。彼女にとってはもう、初めての事ではないんだ。そう思うと嫉妬心と共に、こんな事で緊張している場合でもないと感じた。気合いを入れようと思って、思わず強く手を握ってしまった。


「ん、先輩?」


「悪かった。緊張している場合じゃないよな。ただ挨拶するだけだしな」


「はい♪」


 そう、挨拶するだけなんだ。簡単な事なんだ。そう思って居た時期が俺にもありました………会ったらナオのパパさん、めっちゃ怖いんですけどっ!! え、なにあの顔の傷っ。怖っ。ヤの付く人なの!? ヤバい家だったの!? ここ?? ここに来る前にすれ違ったお手伝いさんもどことなく、身のこなしが只者でない感じしたけどっ。


「橋下 大輔(ダイスケ)です。よ、宜しくお願いします。お義父さん」


「あ”ぁ”んん? お前に、お義父さんなんって言われる筋合いないぞ!?」


 えぇー。見た目通りの反応っ。でも、名前なんて知らないよ。

どうしたらいいの? そう思って、ナオの事を見つめると。


「もう、やめてよ、お父さん? それ、毎回やってますけれど………」


「えー。だってぇ、うちのナオちゃんを任せられるか確認したいじゃないか」


「お父さんの顔が怖い……しかも今回はメイクなんてしちゃってるし」


 そう娘に言われたからか、仕方なく顔のメイクを取り始めた。お義父さん。いや、お義父さんなんて呼ぶなって言われたばかりだな。どう声をかけたら良いか悩んでいると。


「ご挨拶遅れました。橋下 大輔の妹の美咲(ミサキ)です。宜しくお願いいたします。おじさま」


「お、おじさまっ。ちょっと家の娘にならないかね? うんそうしよう。うち、お金ならあるよ?」


「おとーさん。ダメですよ! お母さんに怒られるよっ! この間だって、勝手になんか高い猫を買って怒られてたじゃないっ!? お父さん猫アレルギーの癖にっ!」


「え、だって、猫可愛いいよね? 見てるだけなら」


「いや、お母さんが言ってたよ!! 見てるだけなら飼う必要ないって! 『猫カフェ行きましょう♪』って、猫飼うよりお母さんとデートしてよっ」


 ナオのお父さんはどうやら、強面でお茶目な人らしい。でも、今のコントが全部本当とは限らない気がする。さっき感じた凄みと言うか威圧感? は本気だった気がする。


「あの、南条さん。うちのミサキはさし上げられませんし。今回は、別荘を借りるので、挨拶に来ただけですので………」


「ん? あぁ、南条 尚文(ナオフミ)だ。よろしく大輔君と、美咲さん」


「はい、尚文さんそれで毎回やってるんですか? これ?」


「まぁな。最初にナオちゃんが連れて来た奴が、なんか気に入らなかったから、その後、毎回やってるんだ」


 え? と思ってナオの方を見ると「それ、この間の帰りに会った人です」と言って居た。うん。アイツはダメだ。今の彼は、誰でも良いみたいだし。


「そうしたら、正解かも知れませんね。たまたま、会いましたけれど街角ナンパ師になってましたよ。彼」


「ん? そうか! アイツはやっぱダメか! で、君はどうなんだ?」


「まぁ、普通に良い奴だと思いますよ? 自分のことだから分からないですけど」


「そうだな。自分では分からないよな!!」


 そう言って、何かがツボに入ったようで笑いだした。

まぁ、自分では分からないもんだとは思うよ? 他の元彼がどんな奴か知らないけれど。


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妹:橋本 美咲(ハシモト ミサキ)視点


「じゃぁ、そちらの美咲さんに聞こう。彼は良い人かね?」


 そう聞かれたので、わたしは本心を兄さんに聞かせるつもりで話しだした。


「兄さんは、ちょっと真面目過ぎると思います。お願い事をすると断れない性格ですし。でも、ちゃんとわたしの事を守ってくれる。頼れる素敵な男性です♪」


 どう? これで言いたい事は伝わるかな? と思い。兄さんの方を見る。が、兄さんは照れているだけで、伝わってる様子はない。もっと直接的に言わないとダメか……上手く行かないなぁ。


 ナナちゃんは、わたしが言った意見に賛成なのか、コクコク頷いている。そして、こんな事を言い出した。


「そうそう! 部活辞める時も助けてくれたんだよっ! ダイスケ先輩居なかったら大変だったかもっ」


「なんだその話、聞いてないぞ?」


 それを聞いた、ナナちゃんのお父さんの眉間にシワが入って居た……最初、部屋に入った時に思ったけれど、やっぱり怖い人なのかも?


つづく

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あとがき


ナオパパは知らなかった。そうあのロリコン教師の事を!

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