禁断の保健室

「――知らない天井だ」



 というのはウソピョンで、ここは見覚えのある『保健室』だった。


 そっか。

 俺は、比屋根とめぐっちに腕を綱引きにされて……完全沈黙ブラックアウト。死んでいたらしい。あの程度で気絶ダウンしてしまうとは――我ながら情けない。


 起き上がろうとすると体がなまりのように重かった。



 ――え?



 なんか両腕が動かない。おかしい。感覚はあるのだが……? 試しに手を動かしてみる。すると……手に柔らかい感触が――ん!?



「やんっ……」

「ひゃっ……」



 ふたつの甘い声がした。

 って、この声はまさか!!


 空いていた窓から強風が吹くと、シーツが飛んでいく。俺の腕の上には、比屋根とめぐっちが寝ていた。



「うあああああああッ!!」



 なんで!!

 そんな!!

 ところに!!



 保健室のベッドの上で美少女二人に囲まれて寝ている状況とな……。しかも片方はメイドだ。どうしたものかと頭を悩ませていると、古賀先生がカーテンを開けて入ってきた。


「竜くん、起きた~?」

「こ、古賀先生……! これはどういう事ですか!」

「なっ! 追い出したはずなんだけどねー。比屋根さんも縞猫鮫しまねこざめさんも無断で竜くんのベッドに侵入しないこと!」



 二人は怒られていた。

 渋々俺から離れ――ねえ!!

 磁石のようにベッタリくっついて離れなかった。



「比屋根、俺のメイドなら命令を聞いてくれ」

「お世話するって約束だもん。それに、天川くんをめぐっちだけには渡せない」


 どうやら、めぐっちに対抗心を燃やしているようだな。


「めぐっち、離れてくれるよな?」

「残念ですが、私は竜くんの奴隷メイドなので」


 わぁ……素敵な笑顔!

 って、奴隷メイドって本気かよ!


 いやしかし、この状況は困った。こんなところを誰かに見られたら……いや、すでに古賀先生には見られているな。


 でも、先生は関心を失くして椅子に座って静観していた。おい、そこ! この不純異性交遊の現場をなんとかしてくれよッ。


「竜くん、保健室でそういう淫らな行為は……まあいいか」

「よくねーだろ!! やる気ないな、先生」


「ごめんごめん。とにかく、縞猫鮫しまねこざめさんは教室に戻りなさい。あなた、まだ転校してきたばかりでしょ。こんなところを校長先生に目撃されたら、お嬢様学校に逆戻りよ?」


 と、古賀先生は、めぐっちに対して忠告した。ナイスッ!


「……うぅ」


 さすがのめぐっちも顔を真っ青にする。すっごく嫌そうな表情だな。さすがに諦めたようで俺から離れていく。


「竜くん、ごめんなさいです」

「いや、転校初日でまた転校されても困る。めぐっち、俺と比屋根の事は気にせず教室へ戻ってくれ」


「ご迷惑をお掛けしました。竜くん、またあとで。オーナーも」



 謝罪の意味も込めてだろうか、頭を深々と下げた。それから、めぐっちは保健室を後にした。

 直後、比屋根が俺の耳元でこう囁いた。


「天川くん、膝枕してあげよっか」


 な、なんでそんなエロい口調で言うんだよッ! けど、膝枕か。この前、耳かきして貰った時にもしてもらったから、これが初めてではないけれど。


 しかし、古賀先生がいるんだよな。あ……比屋根のヤツ、カーテンしやがった。これで他の生徒が入ってきても見られない。

 古賀先生はいるけれど、別段追い出される気配もないし良いのか。けどな、万が一ということも……。


「そ、その、せめて家で――」

「ごめん、わたしね、天川くんのお世話したくてたまらないの。ドーパミンがドバドバでやばい……」


 気のせいだろうか、比屋根の瞳がハートになっている気が! 息もハァハァと乱れているし、なんか怖いぞ。

 直後、比屋根は俺の頭を“ガシッ”と掴み、スカートの中に突っ込ませる。って、突っ込むなあああああ!! うわ、生足ィ! 生のフトモモがッ!


「うぉい! 俺を亜空間へ導くな!」

「どぉ? 気持ちい?」

「俺のツッコミは無視か。……そりゃ、比屋根の生膝なまひざの上とかモチモチで最高だよ。薄暗くて感触だけだがな」


 これ……良い。

 はたから見たらヘンタイすぎる光景だけど、比屋根のスカートの中……良い匂いで、あったかい。

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