転校生は奴隷メイド
転校生の名は『
ん……あの顔、どこかで見覚えがあるような。なんとなく、比屋根の顔を伺う。すると、彼女は顔を青くしてガタガタ震えて
「ちょ……比屋根、顔色が悪いぞ」
「だ、だって……あの子」
「ああ、転校生? この時期にしては珍しすぎるっていうか、ありえないな。それに、名前も珍しいよな」
だけど、俺の声は比屋根には届いていなかった。なんだ? 様子がおかしいぞ。椅子から立ち上がる比屋根は、ついに叫んだ。
「めぐっちぃいい~~~~~~!?」
え、
今は、他校の制服を着ていたから判別がつかなかった。しかも、赤いリボンで髪をまとめあげて可愛らしい。そうか、よく見たらショートヘアではなく、髪を短くまとめていたんだ。
「こら、比屋根! 今は転校生の自己紹介中だ」
「す、すみません……」
そりゃ知り合いが転校してきたとか驚くだろう。俺も驚いた。昨日、顔を合わせたばかりだぞ。
「はじめまして。転校してきました『
めぐっちが自己紹介を終えると、クラス内がざわついた。
「おぉ、可愛い!」「美少女だなあ」「
やはり、周囲の人間もそう思うか。俺もそう感じていた。それにしても、どうしてこんな四月の終わり頃なんかに転校してきたんだかな。
担任の竝川が席を指定する。
「
そういえば、学年が上がった時から気になっていたけど、なぜか前が空席だったな。不登校か病弱なクラスメイトでもいるのかと睨んでいたが、誰もいなかったらしい。
めぐっちは、こちらに向かって来る。
比屋根を見て一礼して俺の前の席へ。
「よろしくお願いします、天川くん」
「あー…、自己紹介は不要だよな」
「はい、昨日お会いしましたから。これからよろしくお願いしますね……“番犬”さん」
え……
え……
えええええええええええええええええ――――!!!
* * *
一限目の授業が終わり、休み時間。
どうやら、めぐっちに俺の正体がバレていたらしい。俺は気になって前の席に座る、めぐっちに声を掛けた。
「なあ、めぐっち……話があるんだ」
「はい、なんでしょうか、番犬さん」
あれ以来、めぐっちは俺を番犬と呼ぶ。それは特定されるからダメだって!!
「その、俺のことは天川でいいから」
「分かりました。
「い、いきなり名前か」
「私のことは愛称で構いませんよ。それより、なんでしょう?」
「いや、問題は解決した。番犬呼びは止めて欲しかっただけだ。ツブヤイターのアカウントを他人に特定されたら困るんだよ」
なるほどと、めぐっちは納得してくれた。
「では、サクラちゃんと会わせてください」
「めぐっち、君もサクラが目当てだったのか。まさか、それでわざわざ転校とか言わないよな」
「ある意味、間違っていないかもです。お父さん……いえ、校長先生に無理を言ってこの学校に入れて貰ったんです」
マジかよ。めぐっちのお父さんってこの高校の校長なのか。話を聞くと、どうやらお嬢様学校に通っていたらしい。けど合わなかったようだ。それで、しばらくは不登校になってメイド喫茶で働くようになったとか。
それが比屋根との出会いってわけか。
「紆余曲折あったわけか。分かったよ、せっかくの縁だし、仲良くやろう」
「ありがとうございます。良ければ私、竜くんのお世話しますよ?」
その瞬間、隣の席の比屋根が
「めぐっち! どういうつもり!!」
「オーナー、こんにちは」
「こんにちは……じゃなーーーい!! なんで転校してきたの! なんで天川くんを独り占めしてるの!」
俺の右腕を引っ張る比屋根。
めぐっちも対抗して俺の左腕を引っ張る。
――って、そんな強く引っ張ったら……
「あああああああああああああああああああああああ!!」
さ、裂けるぅぅぅうう!!
俺の体が真っ二つになってしまう!!
「オーナー、私はたった今、竜くんの
「な、なんですって!? 天川くんはわたしのご主人様なの!!」
死んじゃう!!
死んじゃうからああああ、それ以上引っ張ると……あ、あ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
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