メイドだってえっちしたい...

 学校前に到着。校門へ入っていくと、誰かに呼び止められた。


たつくん」


 声の方へ振り向くと、そこには保健室の担当である『古賀こが先生』がいた。今日も金髪で見事なギャルっぷりだな。


「おはようございます、先生。こんなところでどうしたんですか?」

「うん、今月も保健室に来るのかなって確認」


 俺は、謎の持病を患っていた。

 突然、激しい眩暈めまいに襲われるんだ。だから、たまに保健室のお世話になっていた。


「今日は気分が良いので多分、大丈夫です」

「そう。それにしても――」


 先生は、比屋根を見つめて珍しそうに観察していた。


「……えっと」

「比屋根さんよね」

「そうですけど」


「ふぅん。貴女、すっごくドキドキしているでしょ」

「……は、はいぃ!?」


 突然、そんな指摘をされて比屋根はギョッとしていた。そうなんか? いつものように明るい感じだけど。


「今朝、竜くんに生着替え……いえ、裸さえ見られてしまったようね」



「「なっ……なんで知っているんですか!?」」



 俺も比屋根に同調シンクロして驚く。

 まてまて、古賀先生って俺のストーカーだっけ!? 部屋に盗撮カメラとか盗聴器でも仕掛けているのか!?


 いや、そんな兆候はなかったはず。そもそも、先生は俺の家を知らないはずだ。なら、なんだ!?



「比屋根さんって、女の子にしては脳内が卑猥ひわいね。こんな可愛い子が、そんな思考を持ち合わせていたなんて、意外」


「……!?(えっ!?)」


「天川くんに対して、ムラムラしている?」


「……!!(ちょっ!!)」


「正直、えっちしたいって考えているでしょ?」


「……!!(な、なんで分かるのよぉぉ!!)」



 先生はまるで人の心を読んだかのように、そう比屋根の秘密を暴いていく。……って、比屋根ってそんな、いやらしい思考だったのか!?

 朝っぱらから何考えているんだよ。それとも、先生の妄言か?


「ひ、比屋根……」

「…………そ、その、天川くん」



 ぷるぷる震える比屋根は、全身を茹蛸ゆでだこみたいに真っ赤にしていた。



「ま、まさか先生の言っている内容って本当なのか?」

「い、いやあああああああああ~〜~!!」


 比屋根は、両手で顔を覆うと全力疾走で逃げ出した。……あの反応、マジかよ。つーか、先生も何者だよ!


「先生、今のはいったい……」

「まあ、読心術とプロファイリングの合わせ技っていうのかな。仕草とかでもある程度は見破れる。そういう仕事をしていたからね」


 そういえば、古賀先生は元々、警察関係者だったらしい。そうか、その時の特殊スキルってわけか。スゲェな。



「じゃあ、また体調が悪くなったら頼りに行きます」

「うん。竜くんは貧弱なんだから無理しないこと」



 手を振って、俺は教室へ向かう。



 * * *



 教室内へ入ると、すでに比屋根が座っていた。顔を伏せて。

 さっきの古賀先生の暴露がよっぽど効いたらしいな。というか、俺も顔を合わせ辛かった。比屋根があんなエロいことを考えているとは思わなかったからだ。


 そりゃ、女の子もそういう気分の時があるだろうけど。


 しかし……比屋根が?

 信じられんな。



 隣の席に座り、俺は比屋根に声を掛けた。



「なあ、さっきの事だけど」

「ム、ムラムラとかしていなしッ!!」



 ガタッと椅子から立ち上がり、大声で叫ぶ比屋根さん。ああ、馬鹿!


 クラスメイトが何事かと一斉に振り向いたぞ。



「ひ、比屋根。みんなが聞いているぞ」

「…………あぅ!」


 今度はしょんぼりして椅子に座る比屋根。忙しいヤツだな。


「気を落とすなって。あとで慰めてやるから」

「うん……今回はお世話して欲しい、かも」


 精神的ダメージ大だな、こりゃ。

 普段はお世話になっているし、たまには俺から何かしてやらないとな。とりあえず、比屋根の頭でも撫でてみようかと手を伸ばしてみるが――



 教室に担任の竝川なみかわがやってきた。その後に続く女生徒。……あれ、見ない顔だな。



「ホームルームをはじめる。みんな、席に着け。……よし、まずは転校生を紹介する」



 なんだって……転校生!?

 こんな春の季節に早すぎだろ!

 それにしても、あの子……俺を見ているような。

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