えっちなマッサージ

 晩飯を完食し、サクラにもご飯をあげた。もちろん、ドライフードのカリカリだ。


「ほら、お食べ」

「にゃー」


 俺は、サクラのご飯シーンを動画として収める。そんな状況を隣で見守る比屋根は、触りたそうな目線を俺に送ってくる。今にも飛びつきそうな勢いだ。


「まて、比屋根。今は食事だ」

「う、うん。それにしても、サクラちゃん可愛いねっ! もふもふでもこもこで、毛並みもすごぉい……ちゃんとブラッシングしてあげているんだね。猫愛を感じる」


 飼い主として当然だ。それに、俺はツブヤイターとか抜きにしてもサクラをとても大切にしていた。ある意味では彼女というよりは、下僕も同然だった。


「美猫だろう。あのクリクリとした目とかさ」

「うんうん。すっごく可愛い! でていい!?」

「もうちょっと待て」



 食事が終わり、俺に寄ってくるサクラ。さすが通じ合っている!



「えー! 凄い信頼されてるんだね、天川くん。さすが飼い主さん」

「おうよ、俺とサクラの信頼関係は誰にも壊せない。こうして頭をでてあげると――」


 俺は、サクラの頭に手を伸ばす……しかし。



「にゃー!!」



 ――ガブッ!!



「ほぎゃああああああああああああああああああ!!!」



 思いっきり噛まれてしまった。



「ちょーーー!! 天川くん、思いっきり噛まれてるよぉ!?」

「……い、良いんだ。これ、甘噛み・・・なんだ」


「え、でも……右手から血がボタボタ流れてる!! 止血しないと!!」


「あは、あははは……」



 腕をあげると、サクラが“ぷら~ん”と持ちあがる。



「あー! このシーンって、あのバズった動画の! って、そうじゃない!! いつもこんな危険な動画を取っていたのー!?」



 そう、動画の裏にはこんな苦労があったのだ。実際は死にそうなほど痛いし、泣きたいくらいに激痛。でも、これはサクラからの愛なのだ。俺は全力で受け止める。

 それに、この噛みつき攻撃のおかげでバズったようなものだし、おかげでフォロワーは百万人。むしろ感謝している。



「……サクラは容赦ないな。だが、そこが良い」

「天川くん、凄すぎでしょ! 汗も凄いけど!」



 比屋根は、タオルを取ってきてくれて血と汗を拭ってくれた。優しいな、比屋根は。しかし、サクラが嫉妬して“シャー”と威嚇いかくしていた。おい、そこ!



「すまんな、比屋根。サクラは、この通り女王様なんだ」

「さ、触らぬ猫に祟りなしだね。うん、でるだけにしておくよ」

「慣れるまでは我慢してやってくれ」

「分かった。それじゃ、天川くんの手当をするね……ていうか、今日は手当ばっかりしている気がする」


 そう言いつつも、比屋根は応急手当をしてくれた。うん、本当に優しいな比屋根。丁寧にアルコール消毒して、ちゃんと絆創膏ばんそうこうも貼ってくれたし……何よりも、笑顔を絶やさない。


 良かった、比屋根を迎えて。



 サクラには、部屋で大人しくしてもらい、俺はさっきの動画を投稿。即いいね5000、リツイート2000を獲得。それから、俺はいつの間にか比屋根から、ちょっとえっちなマッサージを受けていた。床に寝てくれと要求され、何事かと思えばこれだった。


「……あの、比屋根。俺の腰にまたぐ必要はないんじゃ……」

「こ、この方が力が入るから」


 すごく緊張している様子で背中のツボを押してくれる。……おぉ、気持ちいな。しかし、比屋根が俺の背中に乗っているという事実が何とも言えない気持ちになった。


 地味にお尻の感触が伝わってくる。無論、女の子に乗られるだなんて人生で初めて。なにこれ、エロいんですけど……。


 しかも、メイド。

 メイドの比屋根に乗られてマッサージ……とんでもない状況だ。


 だが、それよりも絶妙な指圧加減に俺は眠くなっていた……あぁ、だめだ、あまりに気持ち良すぎて寝落ちする。


 比屋根には申し訳ないけど、寝てしまおう……。

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