お世話してくれる猫耳メイド
VIPルームとやらに入ると、そこは――。
「にゃ~」
猫がいた。黒猫や三毛猫など雑種からスコティッシュフォールド、アメリカンショートヘア、ラグドール、シャム猫、メインクーン、驚くべき事にノルウェージャンフォレストキャットまでいた――!
「こ、これは……猫カフェ!?」
「うん、メイド喫茶と猫カフェを兼ねているわ。実は、このメイド喫茶のコンセプトは、猫耳メイドさんと一緒に猫に癒される~って感じなの」
すちゃっと猫耳のカチューシャを装着する比屋根。魅力度マシマシだねっ。って、そういう問題ではない。まさか、猫がいるとは……これは驚いた。
「比屋根、お前もしかして……」
「うん、猫が大好きなの! だって、可愛いじゃん!」
「ま、まあ、そうだけど……それにしても凄いな」
奥のキャットタワーにも猫がいるし、何匹いるんだか。しかも、随分と大人しい子ばかり。
「凄いでしょ。猫耳メイドさんが迎えてくれる猫カフェ。全国にない事はないと思うけど、珍しいとは思う」
確か、秋葉原にあるらしいけどな。でも、この地域なら珍しい。これは猫好きなら通っちゃうわ。少なくとも俺は常連になってしまいそう。
「いいね、VIPルームはこの部屋を貸し切り?」
「そそ。しかも、わたしがご奉仕させて頂きますっ」
「――なッ! 比屋根が自ら?」
「うん。ちなみに、えっちなオプションはないからね、期待しないでよ~」
ないのかぁ、それはちょっと残念だな。でも、いい。こんな数の猫たちと過ごせる空間ってだけでも最高だ。しかも、猫耳メイドの比屋根と過ごせる!? なんて貴重な時間だよ。
「けどさ、俺お金ないよ?」
「お金はいらないよ。その代わり、サクラちゃんに会わせてっ!」
「それがお代ってわけか」
「いいでしょ? こんな良い場所をタダで使わせてあげるんだから……それとも、えっちなオプション、つける?」
ぼそっと比屋根はつぶやく。
「無いんじゃなかったのかよ!?」
「まあ、天川くんなら特別かな♪」
うわぁ、今の上目遣いは卑怯だ。
でも、えっちなオプションねえ?
聞くだけ聞いてみるか。
「ちなみに、どんな内容なんだ?」
「水着猫耳メイドとか」
「やっぱり、あるんじゃないか!」
「初回のお客様にはないんだよ。三回ご利用以降から、特別なオプションが付くの」
そういう事か。それで、さっきはオプションはないと。今回は、特別らしい。優遇だなあ、俺。
「比屋根の水着かー…」
「そ、そう期待されると、さすがにちょっと恥ずかしいかも……。や、やっぱナシで!」
「え~、いいじゃん。比屋根の水着猫耳メイド、見せてくれよ」
「わ、分かった。でも、お触りは禁止だからね! 変なことすると出禁になっちゃうからっ」
背を向け、更衣室に向かう比屋根。いやいや、そんなルールに反する事はしないって。しばらく猫の相手でもしようっと。
めちゃくちゃ人懐こいアメリカンショートヘアを相手にしていると、比屋根が戻ってきた。
「お、おまたせー…」
……おぉ!
なんてこった、黒のビキニ! しかも紐付き。大胆に肌を露出し、恥じらう比屋根。腕で大きな胸を必死に隠す姿がまた良い。
てか、デカいな。
「ひ、比屋根。そのビキニ……エロすぎね? 胸の谷間が凄いぞ」
「ど、どこ見てるの! だって、この方が受けるって、めぐっちがぁ……」
あの子の提案かよっ。
ナイスだ、めぐっち!
これを比屋根に着させるとか、悪魔的所業だが……しかし、男の身としては眼福。大変、目の保養になっていた。
「それにしても、比屋根って大きいな」
「やっぱり、男の子って胸なの? まあいいけどさ……クラスの男子にもジロジロ見られるし」
観念したのか腕を離す比屋根。
すっかり顔が真っ赤だ。
そんな水着姿の比屋根は俺の方へ座った。
「男なんて、そんなもんさ」
「そかー…。でも、天川くんは割と視線を合わせてくれているよね」
「そ、そりゃな! 比屋根は美人だし、その、一番安全なのが目だからな」
「あはは。天川くんのそういうところ面白い」
俺の抱いているアメリカンショートヘアを撫でる比屋根。どうやら、名前は『しー』というらしい。
「しっかし、良いお店だな。メイドと猫と触れ合えるなんてな」
「癒されるよね~。でも、天川くんをもっと癒してあげる」
「え? これ以上、何かあるのか?」
比屋根は正座して、膝の上を指さした。……ま、まさか!?
「今日付き合ってくれたお礼。どうぞ」
「ど、どうぞって……
「特別大サービスだよ。耳かきもしてあげる」
マ、マジかよ!
お世話されまくりじゃん……俺。
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