5頁~~夏の音~~
強烈な日差しがジリジリとアスファルトに照り付ける。道端のお地蔵様もちっぽけな小屋の中で随分と暑そうだ。
熱気であちこちに蜃気楼が生み出されている、遠くをみれば全てが歪んで見える。まるであまりの暑さに現実と空想が溶け合ってしまったかのようにさえ思えた。
暑い暑い暑い……殺人的なまでの気温はただそれだけで体力を奪っていく、時折吹く風でさえ熱気を孕んでいる。
景色が溶け合うように、僕の思考もまた熱に溶かされていく。瞼を閉じ、まるで眠りに落ちるかのような感覚に苛まれているその時。
――チリン
突然、涼やかな音色が響き渡る。それと同時に僕の意識は覚醒した。
遠くの景色は相変わらず歪んで見えるし、蝉のけたたましい鳴き声は変わらず響き渡っている。にも拘らず、今の僕はどこか涼やかな気分だった。
「この国の人は不思議なものでね、風鈴の音だけで涼しさを感じる事ができるらしい」
そんな言葉をふと思い出した。
――チリン
――カラン
まるで僕に声援を送るかのように今までお地蔵様の小屋で鳴りを潜めていた風鈴たちが風に吹かれ、一斉に騒ぎ始める。
……今夜は風鈴の音を聞きながらカキ氷でも食べようかな、そんな事を考えながら僕は再び歩き出した。
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