第23話
アリスは俺になにかされると恐れ、紗千と結梨と一緒にいた。もちろん適当な理由で二人から引き剥がし、今は壁に追いやり身動きを取れないように囲んでいる。
ちなみにアリスへの精神攻撃効率化のため、ギャルを招集済み。俺達と一緒になって、小さな少女のことを囲んでいる。
こんな体を近づけ、する精神攻撃の方法は……。
「でな、それで俺はこう思ったんだ。ふざけんじゃねぇぞってね。な? そう思わないか? だって最初に始めたのはあいつなんだぜ?」
「兄貴はすごくて、頼りになって……」
「ははは! まじやばいんですけどぉ〜。うち、ほんな……ははは! えぐぅ!!」
どうでもいいことを同時に喋りかける、という誰でもできる方法。
こんなの耳を塞げば脅威にならないのだが、どうやらアリスはバカらしい。何も対策をせず、この攻撃を真正面から受けている。
「えっの……あの……その……」
焦点をくるくるさせ、混乱中。
正直長期戦を覚悟していたのだが、アリスという少女の精神は豆腐だった。
このままいけば勝てる。そう確信したのだが、まさかの横やりが入った。
「ちょっとそこの生徒! こんなところで一人の生徒相手に何してるの!?」
遠くから、この学校の先生らしき人が近づいてきた。
やばい。もしこんなことろを見られたら、勘違いされて最悪停学処分……ということもあり得る。
どうにかしてアリスのことを説得し先生に仲良く喋っていたと誤魔化そうとしたのだが、アリスは予想外の行動に移った。
「あっ! 先生! アリスは大丈夫なです! この人たちに日本のことを色々教えてもらってただです!」
なんと、なんのメリットもない俺達のことを庇ったのだ。
アリスの考えていることがわからない。
「いや、教えてもらっていたとしてもなんだあの一方的なものは。あんな声量で喋りかけられると、頭がおかしくなってしまいそうだぞ……?」
「あの本当にそれは先生の勘違いです。アリス、頭全然おかしないです」
「でも……」
「大丈夫です! 大丈夫って言ってるのにしつこです!」
アリスは先生にしつこく心配され、苛立ったのか声を荒げた。これには先生もこれ以上踏み入ることはせず、「そうか……なにかあったらいつでも相談してくれて構わないんだぞ」と言い去っていった。
俺たちの目の前には、何故か俺たちのことを庇ってくれ息が上がっているアリス。
「なぜだ?」
「なぜって……新しいフラグ、イベントが始まっちゃうかもしれないからじゃない。ただでさえ、今はあなた達に手一杯なんだからそんな余裕ないわ」
アリスはそんなのバカじゃないの、といいたげな呆れた顔で言い捨ててきた。
イベントだとかよくわからないけど、俺は見守ってきた二人のことを害するこいつのことをどうにかするということしか頭にない。
「アリス。お前がどんな目的で、なんでちょっかいを出してきているのか知らないが言わせてもらう。……俺達は紗千と結梨。二人がもっと親密な仲になってほしいんだ。もしそれを邪魔しようものなら、何度でも這い上がって精神的に引きずり下ろしてやる」
「……え? もしかしてそれってアリスに対しての脅迫?」
アリスは俺の顔色を伺うように聞いてきた。
「それはそちら側の受け取り方次第じゃないか? まぁけどただ、邪魔をするなって言ってるんだよ。アリスなら、俺か目指すその先の光景を見てみたいと思うだろ?」
その先の光景、というのは紗千と結梨がくっついた未来。アニメでは描かれなかった、見たことがない未知の光景。この世界がどういう場所なのかわかっているならば、俺が言っていることもわかっているはず。
アリスは俺の訴えに、黙り込み考え思い唇を動かした。
「……ま、兄貴くんが言ってることがわからないこともない。けど、それじゃあアリスはダメなの。本当あなた達に協力したい。……でもアリスにはやらないといけないから。だから、もしアリスがすることが気に入らないのなら全力で止めればいい。止めて見せて」
涙ぐんだ、心からの訴えに言葉が出てこなかった。
「やらないといけないこと」という言葉がまた出てきた。もしかしたらアリスはこの世界で、何かしらの義務があるかもしれない。俺は自由だが、ありゆること。アリスの心の内が聞けた。ならばもうこれ以上、追い詰めることをするのは違う。
「藤原、ギャル。……もういい」
「うっス」
「はぁ〜い」
俺達が離れると、アリスは光の速度で逃げていってしまった。
「兄貴。正直、話の内容全くわからなかったんですが……あいつのこと、これからどうするつもりなんスか?」
「どうもしないさ。あいつも、道は違えどある意味俺達と同じ志をもっている。もしアリスがまた俺達の邪魔をするのなら、何度でもそれを防ぐだけだ」
「兄、貴ぃ……」
「んな、餌待ちの鯉みたいな気持ち悪い口すんじゃねぇよ」
多分こいつは今、感動してるんだと思う。
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