第18話
クーラーがきいた、涼しい部屋の中。
まだ窓から日差しが入ってきているが、そんなことお構いなしにベットに横たわる。
「ふぅ〜……」
ちょっとこらへんで、アニメで見た紗千と結梨の身に起こりゆるイベントを整理しようと思う。
1つ目は、結梨の元彼 の登場。
こいつはアニメの中で、俺の立ち位置のように悪役的なポジション。
仲が良くなり始めた二人の間に入ってくる、異分子。
アニメだと結梨がビンタをし、元彼のことを軽蔑したことでそのイベントは終わったのだが……。
この世界だとどうだろう?
紗千と結梨はもうとっくに仲がいいし、間に入ってきたところで悪役にはなりえない。
すでに二人の近くには俺という異分子があるので、別の方法で悪役として登場するかもしれない。
2つ目は、結梨ママの登場。
アニメの中だと、お泊り会をしたとき結梨ママは紗千のことを強く軽蔑していた。そして紗千に精神的なダメージを負わすことになるのだが……。
もうお泊り会をして、特に変わった様子が見られないのでこのイベントは回避した、と思っていいんだろう。
「兄貴ぃ〜どうしたんです? そんな険しい顔をして……。兄貴のためならこの舎弟藤原、何でもやる覚悟です!」
藤原はベットで寝転んでいる俺とは大違いに、正座しながら言ってきた。
「うちも兄貴ちゃんのためにというか、さーちゃんたちのために、いろんなことを手伝ってあ、げ、るぅ〜!」
藤原と打って変わってギャルは、地面に男らしくあぐらをかきスマホを片手に叫んできた。
ギャルはもともとここに来る予定じゃなかった。
たまたま教室で藤原と作戦会議をする、というのを盗み聞きされ無断でついてきたのだ。
こいつは結局のところ、俺たちと同類なのかそうではないのか、はっきりしてない。
「なぁ、ギャル。ギャルが言ってる、その手伝うっていうのは友達としてなのか? それとも……別のなにかが後押ししてるのか?」
「……なにかってなぁ〜に?」
「そりゃあ、俺たちみたいな恋愛とは別の感情だよ。応援したくなる気持ち、というか……二人が仲良くしてるところを見ると最高、だとか」
「うぅ〜ん……」
眉間にシワを寄せ、ギャルらしくない難しい顔をして真面目に考えている。
「別にうちはただ、まどろっこしい二人が仲良くなってほしいだけで……。見ることが最高、とかいうのはわからないんだけどぉ」
これはあれか。
完全にはこちら側に来ていないが、つま先というか考え方は同じということか。そういうことなら、無理に隠す必要もない。
「実は俺たち二人は、ギャルと同じよ紗千と結梨のことを影ながら応援してるんだ」
「へぇ〜。それ、物語の裏でモブキャラが暗躍しているような感じでマジやばなんですけど」
俺たちのことをモブキャラと重ねられたが、新たな志を目指す人員が確保できそうなんだ。見逃してあげよう。
「まぁヤバいのかはわからないんだけど、ギャル。ギャルも俺たちと一緒に暗躍してみないか? 暗躍もいっても別段、変わったことはしないさ。ちょっとした二人の前にできる障害を排除する役割でね」
「なにそれ。マジやりたすぎる」
「じゃあ、一緒にやろう!」
「いぇ〜い。うちが二人のために暗躍するなんてマジパないんですけど」
そうしてこうして、俺と同じ志を持つ人が舎弟藤原に加えてギャルが増えた。
新しい志を目指す仲間。その絆を深めるため、お菓子パーティーと洒落込もうと三人でスパイ映画を見ていたはずなのだが……。
「オラオラオラオラァ!! 俺ら
気づいたときには結梨の元彼が属している、変な名前のヤンキー集団に喧嘩を売っていた。
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