第15話


 地面に私と紗千ちゃんのお布団を敷き、そこに二人でいる。


 目の前にいるのは、髪の毛をいじっている女子らしいピンクのパジャマ姿の紗千ちゃん。


 ボディーラインが顕になっていて、みるだけで癒やされる。そんな体つき。


 そういえば紗千ちゃんの胸、柔らかかったな……。

 あれ、大きさどれくらいなんだろう? 下着を見て、おかしいくらい大きいっていうのはわかったんだけど。

 また機会があったら揉みたい。


「結梨ちゃん……。なんかいやらしい顔になってるよ。何考えてたの?」


「ん? いや別にぃ〜? ただ、紗千ちゃんのあ、そ、こをまた揉んでみたいなぁ〜って思ってただけ」


「揉む!?」


 やば。紗千ちゃん、揉んでたときもじもじしてたから嫌だったのかな?

 流石にデリカシーなさすぎたのかな?


「ひょんなの、また揉めばいいじゃん!」


「あ、うん。そうする」


 なんでそんなにムキになってるんだろう。

 でも今の感じは、揉むの嫌そうにしてないから揉ませてもらおう。


「そ、そ、そ、そ、そんなことより寝るんじゃないの?」


「そうだった。お母さんに言われてるんだった」


 言われてることは、「寝ろ!」と一言だけ。

 中学生の時、友達とオールしたときの前科があるのでその注意喚起だと思う。


 なのだがもちろん、お昼寝をしたからのがあってか、もちろん眠気など来ていない。


 紗千ちゃんも私と同じようで、目がギンギンだ。


 さてさて。何をしようか。

 スヤブラはもうしたし……。


「結梨ちゃん!」


 らしくもなく真面目に考えていると、紗千ちゃんがスマホ片手に目をキラキラさせながら呼んできた。

 

「なに?」


 どうしたんだろう?


「ゲームしない?」


「ゲームってスヤブラ? でもあれってもう6時間もしちゃったし、飽きない?」


「違う違う。そういうゲームじゃなくて……これ!」


 見せてきたスマホにあるのは、『愛してるゲーム』と言うゲームを解説したサイト。


 これをするってこと? 

 知ってるけど、こういうのって恋人同士でやるものじゃないのかな?


「やるの?」


「うんうん!」

 

 そんな元気な頷かれると、首を横に振る気が失せる。


 ま、いっか。楽しそうだし。

 

 ゲーム内容は簡単。

 お互いに見つめ合いながら「愛してる」、と言い合い先に照れた方が負け、というもの。


「じゃあ、私から」


 紗千ちゃんは私の肩をがしっと両手で固定し、キスする勢いで顔を近づけてきた。

 

 愛してるゲームって、こんなに顔を近づけるものだったっけ?


「愛してる」


 吐息が鼻にかかってきてこそばゆい。

 友達に愛してる、って言われたとしてもこれくらいしか思えないから、このゲームには終わりがないと思う。


 まぁゲームだし。私も言うか。


「愛してるよ。紗千」


「きゅ……」


 あらあらあら。

 一発目でダウンしちゃった。


 なんか照れていて顔を見せたくないのか、紗千ちゃん布団に包まっちゃった。

 

「おぉ〜い。紗千さぁ〜ん。今のは私の勝ちと言うことでいいですかぁ〜」


 布団をめくりながら聞くと、突然飛び出てきた。

 しゃっき、っと正座し私のことを見てきた。

 わお。いきなりやる気になった。

 スヤブラのときのような、紗千ちゃんの負けず嫌いが出てしまったか。


「結梨ちゃんさん」


「はい。結梨ちゃんさんです。どうしましたか? 紗千ちゃんさん」


 なんか呼び方おかしくない?


「今のは結梨ちゃんの反則!」


「え? そうなの?」


「そう……そう! なんなの、あの「愛してるよ。紗千」って! これは愛してるゲームなの! 紗千って……呼び捨てにするのは反則!」


 ん? てっきり反則だって言われたから、言い方がダメだったのかと思ったけど名前の呼び方ね。


 なぁ〜んだ。そうしたからったら、言えばよかったのに。


「じゃあ普段から紗千って呼ぶね。流石に二人でお泊り会するくらい仲いいのに、お互いにちゃん付けって距離感あって嫌だもんね」


「ひゃ? ほぉ?」


 なんか変な言葉出てるけど、ようやくちゃん付けしなくてもよくなって嬉しいってことなのかな?


 言ってくれればよかったのに。


「じゃあ、はい。紗千。紗千も私のこと、ちゃん付けせずに呼んで?」


「ゆ、ゆ、結梨ぃ……」


 あれ? 紗千の目から涙が流れてる気がするんだけど。あれ? 私、なんか悪いことしたのかな?


「ごめん! えっ? えっと……紗千?」


「わっ」


 いきなり抱きついてきた。

 涙で顔がグシャグシャになっている。

 とりあえず背中をぽんぽん、と撫でてあげる。


「結梨、結梨、結梨、結梨ぃ……」


 ずっと私の名前を呼んでいる。 

 それくらい、ちゃん付けせずに呼ぶのが嬉しかったのかな?


 ぐすっぐすっ、っと数分泣いていたのだが落ち着いてきた。


「大丈夫?」


「……うん。急に泣いてごめん。……結梨」


 私の名前を呼んで微笑んだ。

 ちゃん付けじゃなくなった途端、一気に距離が近づいた気がしていい。


 というより可愛い。

 いや、私の名前が可愛いんじゃなくて微笑む紗千が。天使かと思うくらい、いい顔になってる。


 私、紗千とまだ知り合って少ししか経ってないけど結構好き。


「ねぇ、次は何して遊ぼっか?」


 耳元で聞いても、反応がない。

 背中が一定の速度で上下している。 

 まさか紗千。

 試しに体から引き剥がして、顔を確認すると……。


「すぴーすぴー」


 寝ていた。

 紗千って安心したらどこでも寝られるんだね……。

 とろけた寝顔を見て、とりあえず布団に横にしといた。


「カシャ」


 この寝顔はフォルダに保存しておこう。

 さてさてどうしよっか。

 これから長い長いお泊り会の始まり! というところで、紗千が寝ちゃったし……。


「することもないから私も寝よっと」


 無防備な姿をカメラに収められたのは大収穫。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る