第14話
「ふぁ〜……」
大きくあくびをする。
どうやら私はいつの間にか寝てしまっていたらしい。
扉の前には、エプロン姿の結梨ちゃんママ。
隣で雑魚寝している結梨ちゃんのことを起こしてあげて、とジェスチャーしてどこか行ってしまった。
「結梨ちゃ……」
起こそうとしたが、とろけた寝顔を見てやめてしまった。
いつもなら見せることのない、警戒心ゼロの顔。
口からよだれが出ているところが高得点。
「んぁ〜」
寝顔を横になってみていると、異変を感じたのか結梨ちゃんは目が覚めた。
寝転んだまま、目が合う。
「おはよ」
「ぅん……おはよぉ……」
うとうとしている。
もう少し見ていたいのだが、多分もういい時間だろう。結梨ちゃんママから、起こしてとのご命令なので欲望を抑えて起こす。
「結梨ちゃん。起きて。……その、結梨ちゃんのお母さんがなんかジェスチャーしてたよ?」
「ジェスチャー!?」
結梨ちゃんは飛び上がって聞いてきた。
さっきまでの、うとうとはどこにいったんだ?
「……うん。なんか結梨ちゃんのことを起こして、って言う感じのジェスチャーしてたよ」
「私のことを起こすってことは……夜ご飯っていうことだ! 紗千ちゃん! 夜ご飯一緒に食べよ?」
「よ、喜んで!」
と、まぁ私たちはむしゃむしゃいっぱいご飯を食べた。結梨ちゃんパパはいなかった。聞いてみるに、どうやら海外出張中らしい。
あっ、だからこんなお金持ちの家なのかぁ〜……、とひとりでに納得したのはここだけの秘密。
ちなみに夜ご飯は、結梨ちゃんママ特製のカレー。
食べたことのないようなスパイスが効いていて、とてもじゃないが手作りだとは思えない絶品だった。
そんな感じにご飯を食べて、今私は脱衣所に来ている。早いところ、これからお風呂に入るのだ。
普通に入るだけなら、こんなにも緊張していない。
緊張している理由は……。
「紗千ちゃ〜ん。まだ来ないの?」
「い、今行く!」
な、な、な、なんと! お風呂の中に結梨ちゃんがいる!
服を脱いで、下着を脱いでいざ参る。
というところで止まっている。
友達とお風呂に入るのなんて、初めてでどうしたらわからないのが現状。
とりあえず、私の汚らわしい体を見せないためにタオルで体を巻いたけどこれでいいのかな?
なんやかんや脱衣所で5分以上うだうだしている気がする。
「紗千ちゃぁ〜ん! まだぁ〜?」
ええい! もうどうにでもなってしまえ!
意を決してお風呂の中に入った。
「すごぉ〜!」
第一声が、結梨ちゃんへの謝罪ではなくリアクションだった。
自分でも不誠実さを理解していても、なかなかお風呂から目が離せない。
もうこの広さは銭湯そのもの。
色んな湯船があって、奥にサウナまである。
これが一軒家のなかにあるお風呂だと思うと、すごい、の一言しか出てこない。
「あっ! ようやく結梨ちゃん来た!」
右側から結梨ちゃんの声がした。
振り向くとそこには、頭を泡でもわもわにさせている裸体の少女を移している鏡が。
もちろんきめ細かい肌の背中も。
「ご、ごめん。その……いろいろあって」
「いいのいいの。それより、タオルなんてどっかそのへんにおいて体洗っこしない?」
「にゃへ!?」
「まぁ、私の場合はもう髪は洗っちゃってるから体だけになっちゃうけど」
体を洗いっこ!? そ、それって文字通り洗いっこするってことだよね?
そんなこと、友達同士がするの?
したいけど。
なんていうかその……R18っぽい。
「やっぱり、私だけが体しか洗いっこしないっていうのは不公平だよね。わかってるわかってる。……じゃあよかったら、途中からになるけど私の髪の毛洗う?」
「ひゃい!」
「「ぷくぷく……」」
口から空気を出して、湯船の中でぷくぷく言わせている。隣で結梨ちゃんも同じことをしている。
お互い体はつるっつる。
洗いっこしたのである。
結論から言おう。
洗いっこ。……最高だった。
普段触ることのない、結梨ちゃんのあんなところやこんなところを合法的に触ることができたんだから。
私の体も触られたけど……うん、最高だった。
洗いっこしてる時、顔がニヤけてたのは気づかれてないよね?
「ぷくぷく……」
流石に浸かり過ぎたかもしれない。
のぼせそうだ。
上がろっかな? などと思っていたら、結梨ちゃんに後ろに回り込まれていることに気づいた。
「なぬ!?」
振り返ろうとするがもう遅い!
がしっ! っと体を固定された。
そう。両手で胸をがしっ! と。
「にゃにするの!?」
「ふっふっふっ……。ここを掴んだのなら、することは一つしかないでしょぉおおお!!」
「にゅわぁああああ!!」
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