お泊まり会編

第11話



 最近、結梨ちゃんとの距離がわからない。


 自分でもどうにかしてると思う。

 いつも通り、友達として接すればいい。

 けど、けど……。


「あっ。紗千ちゃんじゃん。おっす」


「きゅ〜!!」


 目の前から見ることができず、逃げてしまう。


「はぁはぁ……もう、ちゃんとして! 私!」


 パシッ! と両手でほっぺたを叩く。静かな屋上行きの階段に音が響き渡った。ヒリヒリして痛い。


「何してるの私……」


 さっきまでやる気に満ち溢れていたが、もうこの流れは十数回目だと思い出し、急にナーバスになった。


 そもそもなんで結梨ちゃんの前に立つと、逃げちゃうのか? と考える。 


 恥ずかしいから? いや恥ずかしくなんてない。だってもう、遊園地に遊びに行った友達なんだから。


 友達……? 結梨ちゃんは私の大事な友達。なんで今、疑問に思ったんだろう。


 友達だとは思ってないから? いや、そんなことはない。じゃあ考えられることは……。 


「恋してる?」


 いやいやいや、と首を横に勢いよく振る。


 恋、なのかはわからないけど、結梨ちゃんのことが好きなことは事実。恥ずかしいのは、好きな人を目の前にしたから?


 そう、なのかな?


 私自身、恋なんて一度もしたことないからわからない。なんか考えすぎて体が熱くなってきた。


「ちびて!」


 首に突然、冷たいなにかがあたった。

 隣を見る……。


「紗千ちゃん。最近どうしたの? 私のこと避けてない?」


 いたのは私の首根っこを掴んでいる、結梨ちゃんだった!

 おぎゃ〜! と暴れるが首を掴まれ、動けなかったので観念して白状する。


「その……私、実は最近結梨ちゃんのことを直視できないの」


「へ?」


 結梨ちゃんは深刻なことを言うんじゃないかと思っていたのか、素っ頓狂な声が返ってきた。


「そ、それって……私が紗千ちゃんに無意識に嫌なことをしてたのかな? そうだったらごめんね?」


 なんで結梨ちゃんが謝るの……。


「わっ、わ、わ、わ、わ、私が悪いの! その、結梨ちゃんのことを見ると心の中がぐちゃぐちゃしちゃって……。少なくともこのぐちゃぐちゃは、嫌なことをされたからっていうのじゃないから! 結梨ちゃんとまた遊びに行きたい、って思ってるから! 友達やめないで!」


 返事が返ってこない。

 友達やめないで、なんて気持ち悪かったのかな? 

 勢いで閉じたまぶたを恐る恐る開け、結梨ちゃんのことを見る。


「えっと……」


 言葉に困っているようだった。

 やっぱり、気持ち悪かったんだ。


「ごめん。今のは……」


 言葉を撤回しようとしたら、結梨ちゃんに手で静止させられた。


「もっと、仲が良い友達になるためにこうするのはどう?」


「にゃ、にゃにするの?」


 予想外のことを言われ、猫みたいになっちゃった。


「私の家で二人っきりのお泊り会でもしよ?」


「にゃにゅ!?」


 

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