第8話
「でね? 紗千ちゃんったら、私のことを追いかけてきたの。それも顔を真っ赤にして、息を切らしながら」
「ォオオオ!!」
「二人は仲が良いんだね」
「えぇもちろん!」
二人でお化け屋敷なんて気まずすぎる。
さっきから驚かせてるお化けたちがいるけど、俺たちは無視して喋っている。
アニメの中の結梨は怖いものが大の苦手だったはずなんだけど……。
「な、なぁ。君ってこういうお化けとか怖いのっていける感じ?」
「ふっ。当たり前じゃない。こんな子供騙しに怖がるわけないじゃない。あら? もしかして、あなた怖いのかしら?」
「いやいやいや。そう言うんじゃないさ。お化け屋敷に入ったときから、ずっと話してるから聞いてみただけ」
「そっ」
結梨は俺が聞いた理由に興味がないのか、素っ気ない返事をしてきた。
お化け屋敷に入ってから結梨は、紗千の話しかしてない。いわば惚気というもの。
俺は知らないところで起きた二人の話を聞けて嬉しいのだが、なぜそんなことを俺に話すのかよくわからない。
「なぁ、君って紗千のことどう思ってるんだ?」
「紗千ちゃん? それは、あなたより大切な友達だと思ってるわよ!」
結梨は俺のことをきっ、と睨めつけながら言ってきた。
なんかこの場面はアニメの6話目で、紗千が結梨の友達に嫉妬して怒ってしまったのを思い出す。
いや待て。結梨はさっき「あなたより大切な友達」と、言っていなかったか?
もしそうだったらもしかしてこれ、三角関係なるものになっていると勘違いしてるんじゃないか?
「ははは……。俺は二人のこと後ろから見てて、すごく仲が良いふうに見えるよ」
「そ、そ、そ、そんなこと知ってるわよ!」
結梨は「仲が良い」という言葉に動転して、近くにあったお化け役の人が隠れるような布を思いっきり叩いた。
「ォオオオオ!!」
「きゃやややややや!!」
結梨は叩いた場所からお化けが出てきて、悲鳴を上げながら出口に走っていった。
俺はお化けと対面して動かない。
お化けも全く動かない。
「なぁ、藤原。お前今日ピアノのレッスンじゃなかったのかよ」
「い、いや違うんです聞いてください!」
お化けこと藤原は俺の足にしがみついてきた。
さっき結梨を驚かせたときの気迫はどこにいったことやら。
「……話を聞こうじゃないか」
「あ、ありがとうございます。その実はですね……」
藤原が話したここにいる理由。
それは大したことなく、ただピアノのレッスンをする先生が風邪を引いてすることがなくなったので、たまたま俺たちがいる遊園地でお化け屋敷のバイトをしていたということ。
「許してください!! 俺は……俺は、兄貴のためなら何でもします!! なので今回だけは見逃してください!!」
藤原は俺の足に顔をこすりつけながら、懇願してきた。
俺は藤原にどんなやつだと思われてるんだ。
「バイトが終わるのはいつだ?」
「兄貴たちで俺はもうあがりっス」
藤原はケロッとした顔で言ってきた。
どう考えても、もう仕事が終わるというのをまっさきに言わなかったほうが重大だと思うんだけど。
「じゃあちょっと俺に付き合え」
「い、一体何をするんです!?」
「……お前この前、なんでもお手伝いしますって言ってたよな? 今日がそのお手伝いをするときだ」
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