第2話
「はぁ〜い。まぁそんな感じで、君たち今日から高校一年生だから。どんなところでも自覚のある行動をするように」
キーンコーンカーンコーン
「じゃあちゃんとやれよぉ〜」
どうも。
ピカピカの高校1年生です。
「おい俊介!」
「なに?」
「昨日のバミリアン田中の動画見たか?」
「あぁ。『太平洋で超巨大メントスコーラしてみた』でしょ?」
「そうそれそれ。やっぱり、バミリアン田中やってることヤバくない? 見ててバカおもろいわ」
「わかるぅ〜」
どうも。
机の周りにたくさん人が集まる系の陽キャの高校一年生です。
「……で、あれがさぁ〜」
「まじで!? ヤバ!?」
「はっはっはっ!」
「それはクソすぎだろww」
ちなみに全く話についていけてない。
「ごめん。俺、ちょっとやんないといけないことあったんだった。抜けていい?」
「えぇ〜……もしかして、センコーから頼まれたこと? それだったら別しなくてもいいんじゃね」
「いやそういうわけにもいかないじゃん?」
「って、俊介真面目かよ!」
なんか言われてるけど、陽キャ集団から離れて廊下に出る。俺はこの百合アニメの世界で、主人公とヒロインのことをくっつけるという使命がある。
「と、待てよ」
たしかこの場面は、百合アニメの一話目。
コミュ障で教室に入れない主人公である
隣の主人公がいるクラスの扉の前を見る。
「大丈夫。私は、ちゃんとできる……」
そこには前髪が、目にかかっていて分厚い眼鏡をかけているいかにも内気な性格そうな女の子が。
「やばっ……!」
たしか、このセリフの少しあとにヒロインがやってくる。そこで主人公は、うまく話せなかったのに優しくしてくれたヒロインに好意を持ち始める超大事なイベント。
そんなイベンには、悪役である俺の姿なんてなかった。
ガチャ
「ふぅ。危ねぇ」
見知らぬ3組の教室に入って、なんとか最悪を回避した。
「おうおうおう! ここは俺たち3組の場所だぞゴラァ! てめぇ、誰の許可で入ってきてんだッ!?」
なんか後ろから、金髪で明らかにヤンキーみたいなやつがガンつけてきた。
「てめぇこそ、この俺に許可なく話しかけてくんじゃねぇよ」
「あっ、えっと……」
「俺はなぁ今、超大事なのを目の前にしてんだわ。てめぇのようなヤンキー崩れのやつに構ってる暇ねぇんだわ。この、目立ちたがりが」
ふっ。高校生のときいじめられていた鬱憤を、こんなところで晴らすことができるなんて……ちょっとスッキリした。
て、そんなことより主人公どうなった!?
扉のガラスからバレないようにちょびっと顔を出す。
しーん
誰もいない。もう、主人公とヒロインの出会いが終わったっぽい。
あれ? もしかして見逃した?
「クソっ、クソっ、クソっ!!」
出会いのシーンは、普段誰とも話すことができない主人公が意を決して話しかけてきてくれたヒロインに、口を開くっていうめちゃくちゃ感動するシーンだから見たかったのに……。
それもこれも、あのクソヤンキー崩れのせいだ。
「おい、てめぇ……」
後ろを振り返る。
いたのは睨めつけているヤンキーではなく、土下座をしているヤンキー。
「俺を舎弟にして下さい!!」
「はぁ?」
「俺はあなたに、ヤンキー崩れだと言われ気づきました。自分がいかに惨めなのかと……。なので舎弟になって、色々学ばせてください兄貴!」
「好きにしろ」
「うっす! どこまでもついていきます!」
よくわからないが3組の教室を出ていく。
出会いのシーンを見られなかったけど、まぁ我慢する。なぜならこれから少し経ってお昼にもう一幕、主人公とヒロインの掛け合いが見れるからな。
「くぅ〜楽しみだぜ!」
「おい俊介。もう授業始まってるぞ」
「今行きまぁ〜す」
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