百合アニメのヒロインを寝取り、関係を破滅させる悪役になりました。百合好きの俺は何が何でもリアル百合を見たいので、二人がくっつくためなら何でもします。

でずな

学校編

第1話


「なんだよその終わり方!!」


 俺はいつもリアタイで見ていた百合アニメの最終回を見終わって、テレビにリモコンを投げつけた。


 見ていたアニメは、ある女子高校生が同級生にそれよそれよと同性に恋をしてしまい、お互いすれ違いながらも困難を乗り越えてき……。

 のようなもので最後はハッピーエンドなのかと思っていたが、まさかの最終回はずっと影で主人公のことを嫌がらせをしていた男がヒロインを寝取り終わった。


「ふ、ざ、け、ん、なぁああああああああああ!!」


 もう人生の中で一番喉が壊れそうなくらい叫んでいる。隣人迷惑だとかそんなこと知ったことか。


「くそが」


 とりあえず制作会社にハッキングでもしてやる。と言っても、俺は洋画とかに出てくるすごすごハッカーではなくただの社畜なので無理。


 毎日残業をして、ヘトヘトで帰って来る感じの社畜。


 本当はアニメなんて見ずに早く寝ないといけないのに……それくらいこの百合アニメ、『大好きなあの子』っていうのを見るのが唯一の生きがいだった。


「はぁ〜……」


 そんなこと考えても、終わったものは終わったので何もできることはないと気づいた俺はソファに横になっていた。


 もう、やだ。

 俺、ずっと楽しみにしてたのに。

 明日、仕事無断欠勤してアニメ見返そう。

 

 固く決意してまぶたを閉じた。


 起きた。

 寝心地がいつもの、硬いソファより数倍いい。

 寝てたままベッドにでも移動したのか?


 カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。


「んん……」


 無断欠勤するって決め込んだのに、いつもの社畜癖で早朝に起きちゃったみたいだ。

 

 盛大に寝返りを打って寝直す。

 

「しゅんちゃぁ〜ん! 朝よぉ〜!!」

 

 なんか、女の声が聞こえてきた。

 俺はしゅんちゃんなんて名前じゃない。

 空耳かなにかだろうか。

 無視して寝る。


 ガチャ


 扉が開けられた音がした。

 俺の家には、俺以外いないはず。

 寝起きのぼんやりとした頭でそこまで考えて強盗が入ってきたのだと思い、ここで起きたら殺されるので寝たフリをすることにした。


 トントン……


 俺の方に近づいてきている足音がまる聞こえだ。

 全く、泥棒のくせにぬるい奴め。


「ちょっとしゅんちゃん! 今日から学校でしょ? ほら、高校生初日から遅刻なんて最悪よ?」


「うっ……」


 布団が剥ぎ取られた。

 眩しい。

 目を開けると、黒髪ロングでエプロン姿の女性がいた。とてもじゃないが、泥棒には見えない。


「ほらほらほら! もう、朝ごはん作ってあるんだからとっとと食べちゃいなさい」


「誰だよもぉ……」


「はぁ!? だれって……あなたの母親なんだけど。ちょっと、まだ夢の中にいるわけ?」


「え?」


 俺の母親はこんな若々しくない。 

 段々と意識が覚醒していく。


 目を擦って部屋を見渡す。

 部屋は真っ白な壁紙でポツンと勉強机。あとダンベルだったり、色んな筋トレグッズ。

 

「えぇ??」


 遅刻するとか言ってプンスカ怒ってる自称母親、そして部屋の中がすべて『大好きなあの子』に出てくるヒロインを寝取った悪役と全く同じ。


「母さん」


「なに? ようやく夢の中から抜け出すことができた?」


「俺の名前、教えて」


佐藤俊介さとうしゅんすけだけど?」


 最悪すぎて何一つ言葉が出てこなかった。

 これ、夢なんじゃないか?


「ちょっとちょっとちょっと! そんなにほっぺたつねるともげちゃうわよ!」


 ほっぺたがヒリヒリして痛い。ちゃんと痛覚があるかのでどうやら夢じゃないらしい。


 どうしよう? さっきの母親からの言葉から推測するに、今日から俺は高校生。


 『大好きなあの子』では、主人公とヒロインが出会う超大事なイベント。


 ん? ちょっと待てよ?

 俺がヒロインを寝取る悪役になってるってことは、この世界でを見ることができるんじゃないか? 


 それに、悪役である俺の立ち回り次第で主人公とヒロインが結ばれる最高のにもなりえるんじゃないか?


「よっしゃぁああああ!! やるぞぉおおおお!!」


「きゅ、急にどうしたの!?」


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