第17話
ジローが店から出て来るのを、マサとリョウが煙草を吸い終わるのを付き合いながら待った。全員が揃い、当然の様に駐車料金もマサが支払うのを、先にマサのその自慢の高級セダンに乗り込みながら待った。
マサがハンドルを握り、丁寧に大通りまで車を出す。こういう時のマサの運転はアクセルを思い切り踏んで飛ばしている時とは別人のように丁寧だ。だがマサに限らず、広木のグループ界隈は皆で車を出し合いながら駅前や通りでナンパをといった際も、危なっかしい運転をする者は誰ひとりとしていなかった。だからか次第に広木も女性と遊び慣れている者は車の運転捌きも上手い、そういった自負も含めた思い込みのようなものが根付きつつもあった。マサの女性との情事やプレイにおいてもそうであって欲しいと思う。
マサがアクセルペダルの踏み込みを強めながら、高速道路のインターチェンジに向けて大通りの交差点に差し掛かったところで、誰からともなく口を開く。
「どうだった?」
「オレはぶっちゃっけめっちゃ良かったよ!」
マサが意気揚々とハンドルを捌きながら返す。
「マサくん明日も来たいらしい(笑)」
弟のリョウが、先にマサと店を出て、通りで広木やジローを待ちながら既に聞き出していたらしい情報を皆に告げる。
「金持ちか!」
「ってかマサ、また風俗の女の子に入れ込むパターンじゃん(笑)」
「そういうんじゃないって。でもここ最近では確実に当たりだった!」
「他はどうだった?」
ジローが他の皆にも話題を振る。広木は先に皆の感想を聞いてみたいと思い、他の回答を待った。
「まぁマサくんが言うように、他に当たりと言えば当たりなのかな」
「明日も行きたい?」
「奢りなら(笑)」
「あ、奢りならオレも付き合う(笑)」
「ダメだって、そんな皆の分も毎回出せるわけないじゃん…」
「じゃぁ、マサは明日は一人で行くんだな」
「いやぁ、一人は…」
「明日も同じ子を指名するつもり?」
「いや、そういう訳ではない。だから皆の話も聞いておきたいって感じ?」
「って感じじゃねーよ」
リョウが言うように、普段から通りで声を掛けて同世代の素人女性と遊ぶのと比較するとどうだろう、という印象は確かに否めない。相手はこちらに仕事としてサービスを提供しているというのと、相手もプライベートで同じテンションで遊んで楽しんでいるという状況を比較すると、やはりサービス料を伴わずとも言わば次の日のことだけ意識していれば時間制限もなく遊んでいられる普段のシチュエーションの方が勝ってしまう。マサはそこからは多少置いてけぼりを食っているのかも知れない。
ありきたりな、仲間内との風俗帰りにしがちな会話を楽しみながら、マサは会話の中でのいじられがちなキャラとはやはり別人のようにハンドルを握り、颯爽と自慢の高級セダンを走らせる。
「確かにマサとリョウが言うように当たりと言えば当たり。女の子がどうとかというより、コスパというか行きやすさや店全体の雰囲気含めて」
ジローが続く。
「実際女の子はどうだった?写真とのギャップとかそういうの含めて。そういうの込みでマサは明日も行きたいって感じなのかな」
そのように広木はジローに続いた。何故なら自分が萌のぼかしのかかった写真を選んだ際に、そのぼかしに敢えて冒険してみようとした動機に、顔を晒していてもそこまで目を惹くような女性が並んでいるようには思えなかったというのもある。
「まぁまぁ写真の通りだったとは思うけど」
「実物と比較すると?」
「オレは写真の方が好みだったけど、まぁ実物をみればそっちの方もって感じ」
「それは写真の方が良かったと言っているな」
「広木はどうだったの?ぼかし入った子一人だけだったじゃん」
広木は他の皆にどのように感じたことを共有しようかと少し考えた。
「顔はどうだった?」
「多分皆あのぼかしが無かったら指名していたと思う」
「マジか、じゃぁオレ次その子行こう!」
単純なマサが張り切って乗って来る。
「マサが明日も行くっていうのなら付き合うよ。でもオレは同じ子を指名する。というか、皆でまた行こうってなれば毎回その子の指名で良いと思った(笑)」
「何それ、めちゃハマっているじゃん」
「いやマサ、お前と一緒にするなよ。オレが言っているのは、普段ナンパして外で遊ぶのと比較するとやっぱりナンパで素人外で遊ぶのに上回るはずがないよ。その場で知り合った女の子とあわよくばエッチなことしてるわけじゃん。その後もそういう関係続いたりもするわけで」
「そうそう、それオレも思った。だから金払ってまでまた来たいかみたいな話になると、普段遊んでいる状況とやっぱ比較してしまうよな」
「そう、だから今日の子とも店に行かずに外で会えないかなって思っているんだよな。まぁ何度か通うとか連絡を取り合うという過程は必要だろうけど」
「連絡先交換したの?」
「したよ、もちろん。皆してないの?会話の流れというか、同い年で元S高って言うから、共通の知った顔も何人かいそうだったからそういうノリもあって」
マサは相手の女の子と連絡先を交換し合わなかったことを悔やむように黙り込んだ。
「だからマサが明日も一緒に行く相手探しに困るならもちろん付き合う(笑)」
「ちょっとそう煽られると行くために金の都合つけたり考えてしまうからちょっと待ってって…」
「暫くストリート組とプロ組に遊び方も分かれるのかもな」
「まぁ状況と主義趣向の違いということで(笑)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます