第3話
入学式の後のみんなのソワソワした空気は苦手だ。自分だけがそんな期待を持っていない、浮いた存在なんだと見せつけられている感じがしてどうも好きになれない。
俺は今日を過ぎればそんな新鮮味が徐々に薄れていくのだと、しばらくは耐える時期なのだと、そう心の中を律している。
しかし、そうもしてられるのは自分への好奇の視線が流れてやってこないことという要素も大事になってくる。
(なんで見られてるんだ…)
なるべく…というかかなり大人しくしていたのに何故か視線を感じる。
菅野と話したのを誰かが妬む…みたいな感じか?あいつは今思い出したが、中学の時にバスケでかなりの実力を持っていたはず。クラスの人気者でリーダー格のようなものだったのだと、中学の時に噂が流れていたような…なかったような…
顔がかなり良いのでわるい虫がつくのをよく思わないやつでもいるのだろうか。
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(彼が雄介くんか…)
(あなたから見て彼はどう?)
(流石に心がボロボロだね…)
(しかも、彼…色々と忘れてないかしら…?)
(そうっぽいんだよねぇ…)
今日彼を少し観察しただけだけど、かなり僕の境遇に近いことがわかる。なんなら、僕よりも酷いけど。
(このままだとあなたと同じ運命を向かうわよ)
(…分かってるよ。でも、僕は雄介くんが満たされる未来を作りたいんだ)
(まぁ、あそこはあなたにとって辛かったことが大きかったけれどそれ以上に心の成長が著しかったわよね)
(あぁ、そこに関しては感謝の方が多いよ…かなりムカつくこととかもあったけどね)
「…あの、お二方。何をなされているのでしょうか?」
「…なんだい?
「いや、そんな当たり前のように振るわれてもその奇行は常識的にどうかと思いますが!?」
窓の外を眺めているのはいいが、男の方に女が乗って2人で虫眼鏡で眺めているのだ。ただの変人たちである。
「なんで、虫眼鏡なのですか?ボケてるつもりですか?バカなんですか?」
「智也くん…後輩ってこんなに辛辣だったかしら?私、そんな記憶ないわよ」
「君もかなり記憶が曖昧みたいだね…僕たちは視力が少し異常でね。双眼鏡なんて使おうものなら服についた微生物を視認できるレベルになってしまうんだ」
「すこし説得力があるのが癪ですが認めます…だって」
もう一度変人を見る目をして𣜿葉後輩は言う。
「宙に浮いている人のスペックなんて未知数ですからね…本当に自重してくださいよ、会長」
この奇行の変態…こと宵崎智也生徒会長は…出戻り勇者である。
無気力主人公が異世界に行くまでに復活する…と思う話。あれ?異世界に行くまでに長すぎませんか? 赤井錐音 @detsuterau
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