とても美しい作品でした。
私はリアルで色々鬱屈していた時にこちらの小説を読ませていただいたのですが、満員電車の中にいるというのに感動で泣きそうになりました。
それほどまでに美しい作品だったんです。
ぜひあなたも読んでみてください。
ただひたすらに「美しい作品」だったと繰り返すだけでは芸がありませんし、ここからはこちらの作品の魅力について色々と語らせていただきましょうか語らせてください。
まず第一話のページを開くと勢いの凄まじいポップな文体が目を引きます。
怒涛の修飾語が決して躓かないように見事に均衡を保って配置されていく様は、もはやそれ自体で一種の芸術と言えそうなほどでした。
さらに驚くべきことに、この文体が作品の様々な要素とシナジーを起こして凄いことになっているんです。
例えば、何の理由付けもなしに通学鞄にスーパーコンピューターが入ってるとか「ええ!? 凄すぎるでしょ!」とびっくりしてしまいそうな、でも「そうだったら楽しそうだな」と思わせてくれる設定の数々が、この文体の勢いによって読者に違和感や冷めた気持ちを抱かせる暇もなく、楽しいままでじゃんじゃん押し流されていくんですよ。
これが本当に凄い。
私、作者である狂フラフープさんがどんなタイプの作家さんなのかは正直把握しきれていないんですが「圧倒的な知識があるからこそこんな荒業ができる」パターンでも「圧倒的な文章力と想像力だけでゴリ押している」パターンでも、どちらにしても目が飛び出そうなほどに凄いなあと思いました。
……ですが、恐ろしいほどに巧みで強い引力を有する文体でさえ、この素晴らしすぎる作品においては無数に輝く魅力の内の一つに過ぎないのです。
巧みに配置された情報が開示されていくにつれて明らかになる真実、「ぼく」の切実で美しい独白、こんなに要素もりもりで詰め込まれているのに記憶に残って仕方がない魅力的な登場人物たち……数えれば数えるほどにキリがありません。
なので実際に読んでみてください、どのくらい凄いのか分かると思います。
ちなみになんですがこちらの作品って、小説としてなら第一話だけでも成り立つんですよね。
第二話第三話はその第一話について説明する「額縁」になっている。
私この第二話と第三話がめちゃくちゃ好きで。
ああ一話そういうことだったのかああ、と情緒を破壊されまくる構成になっております。
ネタバレしたくないので何も言いませんが、凄く良いので、最高なので。
読んでください。
ちなみに作者さんの作品後語りはこちら、
https://kakuyomu.jp/works/16817139556860903725/episodes/16817139556860987730