2
Kaya(019):
それで、この後どうなったんですか?
Enagi(012):
どうなったもなにも、それで終わりだね。ページがどこかで抜け落ちたのでなければ
Kaya(020):
なんでですか
Kaya(021):
それはおかしい
Enagi(013):
僕に言われても困る。お話なんだからそういうものだと納得するしかない。とにかくロケットに詰まっていたのはそれで全部だ
Kaya(022):
でもこの、カナコ・シキシマ博士は実在する人物なんですよね?
Enagi(014):
そうだよ。でも関係ない
Enagi(015):
それがフィクションでないなら、どうして僕らが軌道上でその小説の詰まったデブリを回収できたって言うんだ
Enagi(016):
そこに書かれた名前や経歴、出身地に符合する人物が歴史上実在したというだけで、書かれている出来事は実際には起こっていない。三度目と四度目の打ち上げは成功して話題になり、シキシマ博士は大学からの誘いを受けて航宙分野へ進んだ
Kaya(023):
じゃあこれなんなんですか
Enagi(017):
博士になぞらえた創作物を本当に打ち上げる物好きがいたのかもしれないし、あるいは本当に博士かその関係者が事実を元に書いたものである可能性もある
一応言っておくと、続きとは違うけれど用紙の裏に走り書きがある
Kaya(024):
ほんとだ
Kaya(025):
『遥か遠くへ行くきみに、嘘が決して届かないように。』
『飛べ。ぼくの重力を振り切って、どこまでも遠くへ飛べ。』
Kaya(026):
これってつまり、博士が起こらなかったもしもを小説に書いて、打ち上げる前に『ぼく』が読んだってことですか?
それともはじめからこの小説が『ぼく』が博士のフリをして書いたもの?
ここに書かれた起こらなかった失敗が、遠くに捨てたい嘘ってこと?
Enagi(018):
あるいは手の込んだ作り物か
Kaya(027):
なんでそういうこと言うんですか
Enagi(019):
ちなみにシキシマ博士は一度大学からの誘いを断り故郷に留まろうとしている
その上で、後に改めて誘いに乗った理由を、大喧嘩したから、とだけ語っている
Kaya(028):
つまりどういうこと???
Kaya(029):
ちょっと待ってくださいね
Enagi(020):
満足したら大気圏投入の用意をしておくように
Kaya(030):
え
Kaya(031):
これ燃やすんですか
Enagi(021):
デブリは特段の価値が明らかでもない限り、焼却処分する規則になっている
Kaya(032):
コピーぐらいとっても良いですよね??
Enagi(022):
我々が業務上知り得た情報を他言できない守秘義務を負っていて、この会話もログが残っていることは忘れるべきではない
Kaya(033):
主任の
Kaya(034):
おたんこなす
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