第4話 過去では②
「にぃのやりたいことかぁ…。」
七美が頬杖をして箸をクルクル回しながらを呟く。
「七美行儀悪いぞ。」
注意するがまるで聞こえてない様子なのでさらに呼びかける。
「おーい七美さんや。聞こえて───」
「そうだ!!」
「どうした…?」
突然立ち上がった義妹に問いかける。
「にぃもバーチャル配信者やれば良いんだよ!!」
「は?」
この義妹は何を言っているんだろう。
「にぃパソコンとか使えるもんね!?」
「人並みには。」
「だったらもうやるしかないよ!!」
「……とりあえず理由を聞こうか。」
七美には苦労をかけまいと頑張ってきたつもりだが、やはり高校では手が届かない部分があり俺の知らない所でアホの子になってしまったのではないかと心配になってきた。
「人付き合いって選べないじゃん?」
「??????????????????」
手遅れだったのかもしれない。
「なんて言ったらいいのかなぁ!」
七美は『あー!!』といいながら頭を掻いている。七美……お前もう本当に手遅れな子に……。
「学校とか仕事場ってある程度の人数がいるけど、自分にあった人付き合いをするにしても『その中』から選ばないといけないわけじゃん?」
「まぁ…そうだな。」
「にぃはたしかに顔はいいけど、中身は万人受けするタイプではないじゃん?」
「………。」
これ俺ディスられてるのか?
「にぃと波長が会う人やそれを面白い奴って認識してくれる人が少ない集団の中でにぃは生きてきただけだと思うの。」
「それは……いや、本当にそうか?」
「絶対そう!!」
七美は自信満々で言い切り更に続ける。
「でもネットの中だったら?今この地球に住んでる全人類がネットに繋がってるといっても過言じゃないんだよ!?」
急にスケールがでかくなってきた。
「そこでなら絶対ににぃの魅力に気づいてくれる人が集まってくるって!!」
たしかにバーチャル配信者を見るのも見ないのも自由だ。面白い、楽しいと思う配信者を見ればいい。つまらない、自分には合わないと思った配信者は見なければいい。
七美の言ってることと言いたいことは何となく理解できた。
「でもバーチャル配信者って難しいのよ?私も今回の社長さんから聞いて初めて知ったのだけど、始めるための準備や始めてからのこととか。時間もそうだし機材とかのお金もね。」
「にぃに関してはお金は大丈夫だもんね?」
「お前なぁ……。」
たしかに貯金はある。だがこれは七美が大学行く時の入学金やらもろもろに使おうとしているお金だ。大学に行かない時は当面の生活資金として渡せばいいと考えている。
「私さ、にぃがなんで貯金してるか知ってるよ?でも私も小さくないしとっくにバイトだってできるんだよ?」
「バイトなんか始めたら部活どうするんだ。」
「それは……。」
昔から説教する時の雰囲気を出しながら聞くと七美は言い淀む。
「今度2年生に上がって部活に後輩も入って来て、次の夏の大会が終われば3年生が引退して七美達2年生が部を引っ張って行くんだろ。そんな時にバイトなんかやっている時間があるのか?」
あー嫌だ。七美の申し訳ない顔、泣きそうな顔を見る度に心臓が締め付けられる様な感覚になる。それは幼い頃の七美でも今目の前にいる成長した七美でも変わらない。
「わ、私は部活をやめ──」
「七美」
俺は七美の言葉を遮った。
それを言わせるわけにはいけない。
「七美、昔約束しただろ。大事なことは?」
「……嘘をつかない。」
「あぁ」
初めて七美に説教をした時に約束したこと。
『だいじなことはウソをつかない。』
それは俺と七美の間だけではなく、家族としての約束ごとになっている。
「七美は部活が好きなんだろ?」
「…………うん。」
「なら続けるんだ。本当に嫌になったら辞めたらいい。ただ好きな内は絶対に辞めるな。」
「…………うん。」
瞳に涙をためながら頷く七美の頭に手を置く。
昔からの説教の終わりの合図、仲直りのサインだ。
「あのー、
母さんは『今ならいいですか?』と言う顔で聞いてきた。
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