第7話 百合とは何か
『真実の愛はどっちか!? スターライズVSラグナロク!!』
いわゆる百合配信である。
ちなみにこの配信に対して視聴者からはこんなコメントが寄せられていた。
『配信が始まる前から落ちてて草』
……どういう意味かなぁ分からないなぁ。
まあ、ともかくそんな配信が今日、始まる。
参加するのはまず、プロデューサーの高橋麻衣さん。
彼女はM子さんという名前で、配信の進行を行う。
そしてカプ名ラグナロクは一期生のタッグ、イマノキセキとシスター・スルト。
クリスタサイト随一の清楚タッグと名高い二人である。
そんでもって彼女に対する二人は三期生のスターライズ。
星見ゲッカと、茲米子。
そんな二人は自他共に『ビジネス百合』と呼ばれていた。
まあ、だから始まる前から落ちてるなんて言われている訳だが。
『と、言う訳で始めましょうか皆々様」
『あい』
『はい』
『はーい』
『うむ!』
と、M子さんの言葉で配信が始まる。
参加している4人はクリスタサイトの中でも比較的に落ち着いた性格をしている方々なので、進行を邪魔する者はいない。
今のところは、一応。
話が進んで舞台がカオスになったらどうなるかは未知数である。
『では、まずはラグナロクの二人から自己紹介して貰いましょうか――良いですか?』
『はい……みんな、こんにちわ。未知なる道を突き進む軌跡。ラグナロクの片方、イマノキセキです。ちなみに今ここにいないアイマイミイちゃんと二人になるとラッキードールという名前になります』
『あはは……キセキちゃん、今は私と一緒なのだからミイちゃんの話はなしね?』
『あ、ゴメンすーちゃん』
『いえいえ――と言う訳で、新時代を築く巨星、シスター・スルトです。本日はキセキちゃんと合法的にいちゃいちゃ出来ると聞いてきました』
なんか一瞬剣呑な雰囲気が出たな、大丈夫かこの二人?
ちなみに余談だが、一期生が三人集まると『トライアングル』という名前になる。
何故にトライアングルなのか、その理由を語り出すときりがないのでここでは割愛する。
強いて言うなら、割とどろっとした話題です。
『はいでは次に、スターライズ――大丈夫?』
『帰って良いですか』
『おいゲッカ、話が違うぞちゃんと付き合え』
『えー……』
『終わったら米子ちゃん特製のプリン上げるって言っただろ?』
『――はい! みなさまこんよろーっ、星見ゲッカだよぉっ! 今日は一杯っ、こめっちといちゃついて見せるから、皆よろしくねっ!』
『茲米子です、今日はよ』
『声震えているけど、大丈夫ぅ? こめっち、ふぁいとだよぅ!』
『ええいっ、抱き着いてくんなこらていうか私の名前は『茲』米子だから別に声が震えた訳じゃない! てかその撫で声やめろキモチワルイってかその態度の切り替え振りマジで怖いな……』
コメント:初手これは草なんよ
コメント:プリンで買収されるとかゲッカちゃんさぁ……
コメント:買収する方もする方である
コメント:これ勝負の行く末火を見るよりも明らかじゃね?
「……」
コメントでメチャクチャ言われているが、正直同意である。
ていうか米子ちゃん、ビジネスパートナーならどうしてわざわざゲッカの方を選んだんだ?
バンリマツリのガチ百合コンビは選べないとして、もう一人の三期生でありガチゲーマーの戌井巣鈴ちゃん――は、っと。
……あの子はガチのコミュ障陰キャだから頼んだけど駄目だった可能性が微レ存?
なんにせよ、クリスタサイト一の不憫枠としての実力は今も十二分に発揮しているみたいだ。
『……良いですか?』
『はい!』
『大丈夫なのかこれは……』
『と言う訳で、初めて行きましょうか。まず、みなさまにやって貰うのは、『愛してるゲーム』です』
愛してるゲーム。
いわゆる、愛してるって言い合って照れた方が負けと言う奴だが、しかし今回やるのはちょっと違うみたいだ。
一体……?
『お互いに交互に愛していると言って貰い、そしてどちらかが照れるまでそれを継続して貰います。照れたらそこでお終いで、そこまでに愛していると言えた回数を競い合って貰います』
なるほど。
『良いですか――良いみたいですね。では、まずはラグナロクから始めて貰います。では、スタート!』
そしてM子さんの掛け声でラグナロクのターンが始まった訳だが。
『愛してる』
『あはは……なんか、アレだね』
『ん?』
『キセキちゃんに言われると、なんか、ムズムズする』
『まあ、あまり私ってこういう事言わないもんね』
『もっと言っても良いんですよ?』
『そ、それはちょっと、恥ずかし――』
『はい、終了』
『『え』』
なんか一回で終了した。
しかもなんか『愛してる』って言った方が恥ずかしがっているんだが?
……コメントは『てえてえ』で埋まっているが、ゲームとしてこれは良いんか?
『……では、スターライズの二人の番です。では、スタート!』
なんか釈然としないが、とにかく今度は三期生の二人の番だった。
『愛してるぅ!』
『真面目にやれよ』
『あ、い、し、て、るぅ!』
『M子さんこれカウントされんの?』
『ゲッカさん、真面目にやってください』
『嫌どす』
『マジで人選間違えたかこれ……』
『まあ、でも。こんな私でもちゃんと嫌いにならないでくれて、付き合ってくれているこめっちの事、結構それなりに好きだよ』
『え゛』
『も、もう言わないか――』
『しゅーりょー』
『『え゛』』
なんか知らないけど、なんだかんだで『愛してるゲーム』は一回しか言えてないラグナロク側の勝利で終わった。
いや、なんだこれ?
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