え、それってほんとうに冒険者なんですか?
無事に仮通行証発行してもらい街に入った新一。
街に入るとその光景に興奮する。
魔法の絨毯と思わしき物に乗る人や剣や杖を持っている人。
見たこともないモンスターらしきものに馬車を引かせている人などようやくここが異世界だと実感できる。
(これだよ!これ!こういった感じのが見たかったんだよ!)
ようやく目をすることができた異世界ファンタジーに興奮が収まらない新一は早く冒険者になるべくギルドに向かって走り出す。
(この流れはもう決まってる!今まではただのチュートリアル、冒険者登録したら隠された能力が見つかったりすごい職業になれたりしてチヤホヤされるやつだ!)
そんなことを思いながら冒険者ギルドの前に辿り着く。
少し古びた感じだがとても大きく立派な建物、出入りする人も強そうな人ばかりだ。
(いざ入るとなると緊張してきたな、だがここから俺の本当の異世界物語が始まるのだ!)
そんなことを思いながら冒険者ギルドの扉を開く。
扉を開けるとまさに圧巻の光景だ、武器や防具をつけた男女が大勢いて酒を飲んだり話し合いをしたりしている。
(おお!やっぱり異世界はこうでなくちゃ!)
期待通りの光景に胸を躍らせる。
辺りを見渡し受付と思わしき所に足を運ぶ。
分かりやすく女性の所に混んでいて男性の所が空いてるのは冒険者にはやはり男性が多いのだろうと思った。
新一もその洗礼に習って綺麗な女性の所に並ぶのは当然だ。
「すいません、冒険者登録をしたいのですが」
「はい、承りました。では、カードを作るのでいくつかの質問に答えてください。」
この世界の文字が読み書きできない新一にはありがたいことだ。
いくつかの質問に答えていき、ある程度質問が終わったところで、
「では、カード発行の為の1000ルナいただきます。」
「え、」
「はい?」
想像していなかった言葉に驚くが綺麗な女性の前で変な醜態を晒す訳にはいかないのでなんとか落ちつきを保つ。
(ルナって言うのは恐らく金のことだとわかるがまさか冒険者になるのに金がいるとかどうなってるんだ)
冒険者に登録するには金がかかるとは思っても見なかった新一だがどうにか冒険者になれないか受付の人に聞いてみる。
「えっと、この街に来る時に色々あって今無一文なんですがどうにかなりませんかね…」
「すいません。規則ですのでこればかりはどうにも」
「ですよね…すいません、出直してきます…」
そう言い新一は背中に受付の女性の哀れみの視線を感じながら離れていく。
(まさか冒険者に登録すらできないとか詰んでるだろ!どうなってるんだ!)
そう思う新一だが冷静に考え落ち着きを取り戻していく。
(やばい、金はないからこのままだと夜が来たら確実に詰む、腹も減ってきたしこのまま野宿してそのまや餓死したりガラの悪いやつに襲われるなんてことも…)
そんなことを考えると急に怖くなる。
最悪なイメージばかりが頭を過ぎるがなんとか打開策はないかと考える。
(よくあるパターンは今着てるこの制服が高く売れたりするものだがこの服を売ったらこのまま野宿することになる可能性を考えると寒さを防ぐのに必要、誰かに金を借りるなんてそもそも知り合いが居ないのに論外、どう考えても詰んでるだろ…)
そんなことを考えながら悩んでいると見覚えのある顔がギルドに入ってきた。
「よう坊主!登録できたか?」
新一に話しかけてきたのはさっきの門番だった。
なんでここに来たのか疑問に思ったが素直に答えることにした。
「それがカード発行の手数料が払えなくて…」
そう素直に告げる新一だがとても悲しくなる。
急に異世界にきて自分なりにどうにかしようと思ったが文字が読めない、書けない、冒険者になろうにもこの世界の金がないから登録すらできない、考えるだけで泣きそうになってきた。
「まあ、身分証がないって時点でそう思ったわ、ほらこれやるからさっさと登録してこい」
そういって丸いコインのような物を渡された。
顔を上げて門番の方を見ると笑顔でコインを押し付けてきた。
「ほら、1000ルナやるからさっさと行ってこいよ。
今度稼げたら酒でも奢ってくれればいいさ。」
その言葉に新一は涙がでそうになる。
身分を証明することも出来ず子供ができることもできない赤の他人である自分にまさか金を貸してくれる人がいるとは思わなかった。
「ありがとうございます!ほんとに助かります!」
「おう!ガキが困ってるなら助けるのは突然よ!」
「絶対この恩は返します!門番さん本当にありがとうございます。」
「気にするなこれぐらいなんでもないさ。あと俺のことはカイと読んでくれ。」
そういって門番の男カイは金を渡した後ギルドを出ていった。
それを見てわざわざ自分を心配してきてくれた事が嬉しくなった。
(何はともあれカード発行の金は手に入ったしこれから俺の冒険者生活が始まるのだ!)
もらった金を握りしめさっきの受付に向かう。
「カード発行のお金持ってきました。」
「はい。ではちょうどいただきますね。」
そういってお金を渡した後いよいよ待ちに待った事が始まった。
「ではステータスを確認するのでこの機械に手を触れてください、そうすることであなたのステータスと選べる職業がわかります、」
(きたきた!これだよこれ、これで俺のとんでもないステータスがわかってすごい職業が出てきてギルド内が盛り上がるパターンだろこれ!)
そんなことを思いながら新一は機械に手をかざす。
少し眩しい光が点ったあと受付の女性がなぜか気まずそうにこちらを見てきた。
「えっとですね…ステータスは知識が少し高いぐらいで後がどれも平均値を下回っているのですが…これだとなれる職業がひとつしかないのですがどうしますか?」
そんな気まずそうな女性の言葉に新一は唖然とする。
(え、知識以外平均値より下ってどういうこと?チートは?無双は?選べる職業ひとつしかないってどういうことじゃゴラ!!!)
予想外の言葉に新一はしばらく固まりようやく我に返った。
「えっとそのなれる職業になりたいのですがその職業てなんですか?」
「その、、、最弱職の無職です……」
「は?」
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