あれ?思ったのと違うんですが
ようやく辿り着いた街の中に入ろうとするが門番に止められてしまう。
「おい!身分証を提示しろ!」
そう言われるがそんなもの持ってる訳もない。
「あの、田舎からきたのでそういったものを持ってないのですが…」
こうなることをあらかじめ予測していたので事前に考えていたセリフだ。
このセリフでいくつのも主人公たちが街の中へ入り親切な門番に冒険者ギルドなんかへ案内してもらうまさにテンプレ!
「はあ?何を馬鹿なことを、いくら田舎でも身分を証明するものぐらい持っているだろ。身分証がなきゃ田舎でもなにもできないだろ。」
「え?」
まさかの展開に新一は驚いてしまう。
まさかこれまで幾人もの主人公たちがやってきた定番パターンが通じないとは思っても見なかったのだ。
(やばい、やばい、やばい、)
テンプレパターンでいけると思ったのだが通じず他になにも考えていないため必死に思考を働かせる。
まさかこんなチュートリアルで詰むとは考えもしなかった。
「おい、どうした?はやく証明する物を見せてくれ」
門番が急かしてくるが新一にはどうすることもできない。
必死に考えた結果ようやく言葉を振り絞る。
「実はここにくるまでに落としてしまったみたいで、どうにかならないでしょうか?故郷に帰るにしてもすごく遠いので街に入れないとさすがに厳しいのですが…」
ここで街に入れないとどうなるかわからないため新一は必死に考え言葉を発する。
こんな訳もわからない世界で野宿など絶対に無理である。
そもそも持っているものなんてスマホと財布ぐらい。
食べ物も飲み物もなにもなくこのまま街の中に入れなかったら飢えて死ぬかモンスターの餌でしかない。
「そうは言ってもな、なら故郷の名前は?」
「日本と言うところなのですが」
「日本?聞いたこともないがどんなところなんだ?」
「すごく小さいところなので知らないのも無理ないと思います。」
「そうか、ならとりあえず仮の通行証でも出してやるからこっちこい」
「はい!ありがとうございます!」
そう言って案内され小屋に入る。
(あぶねえ、なんとか無事街の中に入れそうだ)
(テンプレが通じずにいた時は焦ったがなんとかこれで街の中に入れそうだ)
そう安心していた新一だがやはり現実はそう甘くないを実感させられる。
「はあ?文字が読めないし書けない???どんだけ小さいところなんだよ、今時こんなの小さい子でもできるだろ!」
「はい、ほんとすいません…」
言葉が通じるので文字なんかもどうにかなると思ったのだが全然読めない。
文字の読み書きは必須事項であることは新一にもわかる。
読めなければどこに何があるのかもわからないし、書けなければ宿に泊まったり冒険者に登録することもできなくなる。
さすがにこれには新一も困り果てる。
(まさか、こんなことになるなんて、こういうのって転移したら自動でわかるようになるものじゃないのか?)
そんなふうに困っていると門番がその表情を見て話が進まないと思ったのか提案してくれる。
「はあ…まあ今回は俺が書いてやるから聞かれたことに答えてくれ」
「マジですか!ありがとうございます!」
「仕方ないだろ…まだこっちも仕事があるのにお前にばかり時間をかけていられん」
「ですよね…、ほんと…すいません…」
暗い雰囲気になりながらも門番が質問をしてきて新一はそれに答える。
そうしてようやく仮ではあるが通行証が貰えたのだ。
そうして無事新一は街の中に入ることが許された。
時間はかかったがこれで無事冒険者ギルドに行くことができる。
(よし!何はともあれこれでようやく街の中に入れる!)
(ここから俺の異世界物語の開始だ!)
そう意気込む新一は門番に尋ねる。
「冒険者になりたいのですが、そういったところはどこにありますか?」
新一は尋ねるが門番は少し不思議な顔をして答えてくれた。
「冒険者ギルドなら街の中央にあるがこの時期にギルドに登録とは珍しいな、まあ、ギルドに登録すれば無くした身分証の代わりになる冒険者カードをもらえるし、その通行証には俺が身分をとりあえず保証してやってるから登録もできるからさっさと行ってきな。」
「はい!ほんといろいろありがとうございます!」
門番の珍しいという言葉に少し引っ掛かりを覚えたがようやくきたテンプレ展開に心を躍らせている新一には些細なことだった。
テンションが上がった新一はそのまま気にせず街の中に入っていく。
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