いざ異世界に

憧れの異世界転移のはずが…

「やっぱりつまんねえな」



そう言ってベットに横になる荻野新一が天井を見ながらそう呟く。




本来なら学校にいるはずの時間なのだがもう1ヶ月も学校には行っていない。

暇つぶしとしてスマホを弄っていたがそれも飽きてしまった。




「こんなに異世界に行くのが流行ってるなら俺も異世界に行ってチートで無双しまくりたいわ」



そんなふうに呟くが現実はそんなことがあるはずもなく虚しく時間はすぎていく。




「コンビニでも行くか…」



スマホと財布を持ち出かけようとするが世間体を気にした親から言われたことを思い出す。




「ご近所さんに引きこもってると思われても嫌だから昼間に外にでないでね!」




そんなことを言われたのを思い出し辺りを見渡すと学校の制服があった。



(これを着てけば文句は言われないだろ)


久しぶりに制服に袖を通すが特に何も思うことはなく今度こそ玄関に向かう。



玄関の扉を開け外に出たが実に1ヶ月ぶりの外だ。

幸いご近所さんは外にはいないので急いでコンビニに向かう。




5分ほどしてようやく角を曲がればお目当てのコンビニに着くというところで違和感に気づく。


(なんかこの道おかしくないか?)




本来ならもう看板が見えていいのだがなぜか見えない。

それどころかここに来るまでに誰一人姿を見ていない。

いくら昼間とはいえこれはおかしい。



(道でも間違えたか?)


引き返そうと後ろを見るがそこで一瞬にして景色が変わる。




本来ならそこは住宅街であり舗装された道路や建物が見えるはずだが見えたのは舗装された形跡なんてなにもない草原だった。



「は!?」

「いやいや、どうなってるんだ?」



思わずそんな言葉が口からでてしまった。

自分はさっきまで住宅街にいたはずだ。

なのになんの前触れもなく訳もわからないところにいたのだから無理もない。



「これってもしかしてさっき言ったことが現実におこったのか?」



記憶を呼び起こすと自室で異世界に行きたいと言ったことを思い出す。


この1ヶ月の間に散々ネットで異世界物を読んだのだからこれもそういうパターンのうちの一つだと理解した。



(けどこれほんとにそうなるとか普通思わねえだろ…)




さすがに新一も自分が本当に異世界に行けるとは思ってもない。

少しは期待していたがそもそも科学が発展した現代にそんなことを本気で信じてるのなんて厨二病の連中だけだ。



だが現実を受け止めなければなにも始まらないのは理解している。




「まだよくわからないがとりあえずこの草原からでないとなにも解決しないよな」


「まあ当たり前にスマホは圏外だよな」




電池を無駄にしないためにスマホの電源を落とす。





「とりあえずこういう展開にありがちな街や村を探して歩いてみるか」



新一はそう言い歩き始める。







それから1時間経過したがまだ草原を抜けることはできていない。



(小説なんかじゃ街か村の近くに転移されるのになんでまだ着かないんだ?)




さすがに1時間も歩くと疲労も溜まるし喉も乾く。

だが持っているのは財布とスマホだけで他にはなにもない。



(さすがに疲れたし喉も渇いたんだが辺り一面草原で水なんてなにもないな)



新一の予定では既に村か街に着き情報を集めているはずだった。


そうでなくとも襲われている馬車を見つけたりして助ける的なパターンを期待していたのだが草原から抜けられないのでそれもない。




(そもそもモンスターなんかもいないしここは本当に異世界なのか?)



ここまでなにもないと流石に参ってしまう。

この1ヶ月で読んだ小説では異世界に転移したならすぐに街を見つけたり村を見つけたり、誰かと会ったり、チート能力で楽に進んだりする物だと思っていたがそんなことが起こる気配が何もしない。





(コンビニ行こうとしただけなのになんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ…)



流石に不安になりそんなことを思ってしまう。

まだ高校生の新一にはこの状況は辛いものがあった。



だが流石にこのまま突っ立ているわけにもいかないので歩き続ける。





それからさらに3時間ほど経ちようやく大きい城砦のようなものが見つかる。

遠くからなのでわからないが見た感じよく見ていた定番のパターンな気がしてきた。



(ようやく辿り着いた…)



ここまでくるのに4時間歩き既に足は限界、喉も渇いているがようやく誰かに会えると思うと不思議とまだがんばれた。



「よっしゃ!!ようやく見つけたぞ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る