ずぶりと19発目、耐魔法病

 アドミも忙しいようで、3日間、俺の所には来なかった。

 今日も来ないかなと思っていたら、ドアがノックされた。


「開いてるよ」


 アドミが入って来た。


「診療所に行くわよ。リアとはもう十分仲良くなったでしょ。そろそろ、約束を果たす頃合いだと思うけど」

「そうだな。タイミングを見て実行しよう」


 うがぁ、約束が思い出せん。

 ロウタイドを何とかするのではなかったのか。

 まあいいだろ。

 診療所に行けば、きっとヒントを貰えるさ。

 どうしても分からなかったら、土下座でもすればいい。


 診療所はやっぱり混雑していた。

 今日は怪我をした人が少ないな。

 みんな赤い顔をしてる。

 ヒールからキャアに魔法を切り替えた方がいいかもな。


 診察室に入る。


「この前はありがと。おかげでロウタイドが、絡んでこなくなったわ」

「噂作戦、成功か。役に立って良かったよ。それより今日は怪我より病気の人が多い。キュアに切り換えようか」

「ええ、お願い」


 俺は別室でキュアを量産した。

 頃合いを見て診察室に入る。


「休憩しましょ」


 俺達は雑談を始めた。


「ハイキュアを教えてくれ」

「ええ、かの者の大病を治したまえ、ハイキュアよ」


 リアが教えてくれた。


「覚えた。かの者の大病を治したまえ、ハイキュア」


 俺はしゃがんでいきんだ。

 玉の光がコロコロと転がる。


「あなた、魔法が苦手なんて言ってるけど、習得が早いわね」

「うん、このスタイルしか出来ないけど、なぜか簡単に出来る」

「じゃあこれは。かの者を完治させたまえ、エクストラヒール。この魔法が出来たら私を超えたって事ね」

「かの者を完治させたまえ、エクストラヒール」


 うんこ座りスタイルで力を入れた。

 転がる光の玉。


「嘘っ、出来るなんて、自信を無くすわ。じゃあこれは。かの者を全快させたまえ、エクストラキュア」

「かの者を全快させたまえ、エクストラキュア」


 やはりポロポロと転がる光の玉。


「出来ちゃうんだ。私の今までの人生は何だったの」

「自信を持てよ。お前にしか出来ない事がきっとある」

「そうかしら」


「急病人です」


 看護婦が病人を連れて来る。


「この人は治療したはず。私が誤診したの。キュアで治るはずなのに」


 狼狽した様子のリア。


「しっかりしろ。仕事にプライドがあるんだろ」

「そうよ、私は神官。さっきのエクストラキュアの魔法をさっそく使わせてもらうわ」


 患者に光の玉が埋め込まれる。

 患者の呼吸が楽になって、治ったように見えた。


「大変です。続々と患者さんが押し掛けてます」

「どんどん行くわよ。クリスターは別室でエクストラキュアの量産をお願い」

「ああ、分かった」


 俺がエクストラキュアを量産して病人の群れは何とかなった。

 しかし、しばらく経って。


「駄目です。エクストラキュアで治した患者さんがまた来てます」

「キャアが効かない病気なんだわ」


 リアが医学事典をひもとく。


「どうだ見つかったか」

「あったわ。これよ。耐魔法病よ」


 リアが深刻な顔をして言った。

 リアが病人の舌の裏を確認する。


「やっぱり、ぶつぶつが出来ている。耐魔法病の症状だわ」


「どうすれば治る?」

「薬でしか治らないわ。幸い薬草はこの時期でも採れる。ただ薬師が間に合わないかも」


 よし、こんな時こそ俺のスキルが活躍するはず。


「冒険者ギルドに依頼を出してくれ。薬の材料とスライムの捕獲だ」


 スライムで薬を量産するぞ。

 リアは薬師に連絡を取り始めた。

 そして、この場を持たせるのは。


「シュリン、マム、アドミ。キュアを使ってその場しのぎして欲しい」

「任せといて」

「はいなの」

「仕方ないわね」


 この場はこれで持つだろう。

 あとは時間との勝負だ。

 間に合えば良いが。

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