ずぶりと17発目、診療所
アドミに連れて来られたのは、白塗りの建物だった。
どうやら診療所らしい。
待合室の中は病人で溢れかえっていた。
見たところ、俺の出番は無さそうだな。
もっとも俺は便秘しか治せない。
診療が終わるのを大人しく待つ。
魔力が切れて、診察は終わりましたの札が掛けられる。
どうやら、終わったようだ。
診察室に行くと疲れた様子のリアがいた。
「陣中見舞いよ」
「ありがと。出来れば治療を手伝って貰えない? 診察と治療の指示は私がするから」
「いいわよ」
「私も手伝うよ」
「シュリンもなの」
「俺は魔法は苦手なんだ。すまん」
「3人も手伝ってくれれば、充分よ」
俺は診察室から出された。
治療再開しますの札が掛けられた。
ハブられている気分だ。
このままでいいのか。
苦手な物を克服してこそ、成長なんじゃないか。
成長しなければならないような気がする。
使命みたいなものを感じた。
休憩の札が掛けられ、俺は診察室に入った。
「マムとシュリンをうちのパーティに欲しいのだけど」
「二人が納得するならな」
「私は戦っている方が性に合っている。それにクリスターは仲間であり、ライバルだ」
「ご主人様からは離れられないの」
「そう、残念」
「俺も回復魔法を覚えたい」
「じゃ、私が」
アドミが教えてくれるようだ。
「やるわよ。かの者の傷を癒したまえ、ヒール」
手から暖かい光が出た。
「よし、俺も。かの者の傷を癒したまえ、ヒール」
俺の尻から暖かい光が出た。
くそう、これじゃ、患者が嫌がる。
リアの視線が変態を見る目だ。
わざとじゃない。
出すイメージがこれなんだ。
スキル何千万回とやっているのでそのイメージがこびりついているだけなんだ。
「うーん、男の患者を担当してもらいましょうか。でも尻を患者に当てる訳にはいかないわね。魔法を飛ばせないの」
「やってみる。かの者の傷を癒したまえ、ヒール」
尻からポロポロと丸い光が幾つもこぼれる。
「ぷぷっ、まるでヤギね」
「馬鹿にしやがって。かの者の傷を癒したまえ、ヒール」
尻から広範囲に魔法の光が広がる。
光は診療所を包み込んだ。
「範囲魔法を使えるのね。でも魔力は残ってる?」
「ええと、ステータス」
――――――――――――――
名前:クリスター LV MAX
年齢:20
魔力:8818/9999
スキル:エネマ LV MAX
――――――――――――――
「千ぐらいしか減ってないぞ。残りは9千がちょっと欠けたぐらいだ」
「なんて魔力量なのよ。それを聞いたら、尻からの魔法でも放っておけないわ」
「まあ、やってみるよ。やってるうちに、手から出せるように、なるかも知れない」
俺は患者に尻を押し付けて魔法を使った。
患者が嫌そうなので、接触部分は患者の背中にしたが。
俺の活躍もあり、待合室の患者は全て居なくなった。
「お疲れ様」
リアが俺達をねぎらう。
「ああ、お疲れ」
「久しぶりたくさん魔法を使ったわ。いい訓練になったわ」
「私は疲れてない」
「腹ペコなの」
「飲むのは絶対に駄目よ。今朝、酔いが醒めてから、どれだけ恥ずかしかったか」
シュリンは昨夜、何かやらかしたようだな。
「じゃ、ケーキにしておこう」
「付き合うわ」
目を輝かしたアドミ。
「賛成」
乗り気なシュリン。
「ケーキ好きなの」
と賛意示すマム。
「私もご一緒するわ」
ためらいがちに、リアが言って、締めくくった。
女性は甘い物が好きだな。
診療所を出て喫茶店に入る。
「メニューにあるケーキ全部」
シュリンが席に着くなりさっそく注文した。
「みんなも遠慮なくシュリンが注文したケーキを食べるといい。どうせ俺が払うんだから」
「ご馳走になります」
「遠慮なく食べるの」
「私は1個食べれば十分」
「えー、私のケーキがぁ」
「シュリンは欲張りだな。無くなったら2週目を頼めばいいさ」
「そう言うのなら」
腹一杯になるまでケーキを食った。
苦しがる様子のマム。
マムを抱えてトイレに入った。
出て来ると、リアの視線が冷たい。
「良い人だと思ったのに。女の子をトイレに連れ込むような人だったのね」
「誤解だよ。苦しそうだったから治療しただけだ」
「ごめん、知らなかったわ」
「分かってくれればいい」
でもリアはまだ俺を疑う目つきだ。
マムが聖剣なんだと説明出来たらどんなにいいか。
尻から出る魔法といい、変態のレッテルを張られそうだ。
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