ずぶりと8発目、言ってはいけない

 仕事が一段落。

 ギルドの酒場でくつろいでいると、オペラッティさんが沢山の魔石を持ってきて、テーブルの上に広げた。

 普通の魔石は透き通った赤だが、これは少し茶色い。

 琥珀色というところか。


「これは何です?」

「スキルの能力を付与できる魔道具よ。スキルの対象をこれにしてやってみて」

「じゃあ。【浣腸!】」


 俺は茶色い魔道具の一つに向かってスキルを発動した。

 オペラッティさんその魔道具を拾うと手に握った。


「うん、成功みたい。はうっ。でもスキルより威力が低め。ひぐぅ。できたらいくつかにスキルを込めといて。はぅ、もう駄目」


 オペラッティさんはトイレに駆け込んだ。

 なるほど、これがあれば俺が直接行かなくても、スキルが行使できる。

 ある性癖の男達にもこれを渡せば問題ないな。

 どのように使われようが俺には関係ない。


 よし、頑張って全部にスキルを込めよう。

 そして、オペラッティさんが恍惚とした表情で帰ってくる頃には、全ての魔道具にスキルが充填されていた。


「全部やっといたよ」

「ありがとう。魔力はどうしたの」

「少しレベルアップしたから、他人に補充してもらわなくても大丈夫なんだ」

「そうなの」


「ところでこの魔道具は使い捨て?」

「いいえ、魔力を補充すれば、繰り返し使えるわ。スキルに比べれば、威力も魔力効率も悪いけどね」

「じゃあ、出張の仕事に行く代わりに使いたいんだ。いくつか譲ってくれる?」

「いいわよ」


「シュリン! ちょっと」


 シュリンを呼ぶと、掲示板を眺めていたシュリンがこちらに来た。


「何よ?」

「お使いに行ってほしい」

「何で私が?」


「好きな物を奢ってやるよ。食い放題だ」

「ほんと。何でもやるわ」

「仕事は簡単だ。この魔道具と手紙を持って、あるバーに届けて欲しい」

「簡単なのね」

「頼むぞ」


 シュリンがお使いに行ったので俺は仕事を再開した。

 しばらく経ってシュリンが戻ってきた。


「行ってきたわよ。人間が雌雄どうた……むがむが。何するのよ。雄同士で……」


 俺はシュリンの口を塞いだ。


「そこから先は言ってはいけない。分かったね」


 俺の気迫に押されて、シュリンは素直に頷いた。


「分かった。口に出してはいけない、恥ずかしい事なのね。ドラゴンの産卵みたいなものかな」

「分かれば、よろしい」


 さて、俺のスキルを込めた魔道具が出来たって事は、留守に出来るイコール冒険が出来るって事だ。

 養殖場のおやっさんにも魔道具を渡しておかないとな。


「マム!」


 マムが飛ぶように寄って来た。


「はい、ご主人様」

「剣に戻ってくれるか」

「はい」


 マムが剣に戻る。

 俺は手入れをしようと剣を抜こうとした。


「ぐががが。抜けない」

「封印は資格を持つ物しか解除できませんの。スキルを使った解除はイレギュラーなの」


 これじゃマムを抜くのに時間が掛かってしまう。

 冒険の装備としては役に立たないな。


「マムは俺が他の剣を使ったら嫌か?」

「嫌じゃありませんの。聖剣は邪を斬る物ですの。世俗の物など斬ると切れ味が鈍りますの」

「そうか。人型に戻っていいぞ」


 ダンジョンから持って来た財宝の中に剣は何本もある。

 俺はその中から良さそうな物を選んで身に着けた。


 そうだ。

 依頼受け付けのカウンターに寄る。


「依頼したい」

「はい、どのような用件ですか?」

「俺のスキルを込めた魔道具を作ってもらった。特別室に置くので管理を頼みたい」

「そんな便利な物が! どこで売っているのか教えて!!」


 受付嬢は立ち上がると俺に掴み掛からんばかりの剣幕で言った。


「あれっ、君は常連じゃなかったよね」

「特別室は声を聞かれるのが少し恥ずかしくて」

「そうだよね。排泄音はカットしてくれるけど、声は駄目なんだよね。家で出来たら一番いいか。魔道具はオペラッティさんが売り出すと思う」

「失礼しました。頼んでみます。特別室の管理を承りました」


 これで気兼ねなく冒険にいける。

 ギルドランクはEから上げてないけど、Sランクには少し憧れがある。

 これからは無理のない範囲であげて行こう。

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