ずぶりと5発目、副業

 ギルドに来て入口からこっそり中を窺う。

 やっぱりだ。

 常連が詰めかけている。


「ほぅ、ここがギルドか」

「前に来た時と変わらないの」

「お行儀よくな」

「分かったよ」

「はいなの」


 昨日の午後は仕事しなかったからな。

 たぶん腹が張って辛いのだろう。


 このまま知らんぷりして、宿に帰るのはあまりに不人情すぎる。

 覚悟を決めて仕事に取り掛かるか。

 その時見覚えのある男達が見えた。

 俺をダンジョンに置き去りにしたやつらだ。


 許さん。


「【浣腸!】」


 俺はスキルを連発した。

 男達は尻を押さえて悶えた。

 俺は何気ないふりをしてギルドに入る。


「クリスター、早くぅ。苦しいのよ。お願い」

「昨日は依頼をこなせなくて済まなかったな。ここだと邪魔だ。さあ、特別室に入った入った」


 大挙して特別室に押し掛けてくる女達。

 俺は彼女達を並ばせて10人にスキルを掛けた。


 ふぅ、インターバルを置かないと、トイレが満杯だ。

 特別室を出てギルドのホールに戻ると、ギルドのトイレの前に、悶える男達の長蛇の列が。


「ふぁー、押すなよ。押すと出ちまう。頼むから触るな」

「漏らしたら、一生笑い者だぞ」

「くそう。何が悪かったんだ。昨日の酒盛りが原因か」


 思い知ったか。


「あらん、おいたした悪い子達が列をなしてるわ」

「そうね。もっとお仕置きしちゃいましょ」


 うわっ、ある性癖の男達が集まって来た。

 そして、俺にウィンク。

 ぞわっと来た。


 悶える男達がなすすべなく連れ去られて行く。

 用を足してギルドのホールで恍惚とした表情を浮かべている奴もだ。


「これは貸しよん。後でスキルで払ってもらうわねぇ」


 えー、その性癖の男達には二度とスキルは掛けないと誓ったのに。

 なかった事にしよう。

 後で来るかもしれないが、その時はその時だ。


 ギルドのカウンターに魔力が空になったダンジョンコアとドラゴンの無精卵を置く。


「はわわっ、それをみんなに見せないで」

「これ、どうしたんですか?」

「拾った」


「仔細は聞かない事にします。査定しますね【鑑定】。金貨4654枚です」


 やった、大金持ちだ。


「ギルドの口座に入れておいてくれ」

「かしこまりました」


 働く必要は無くなったが、俺はこの仕事に生きがいと誇りを感じてる。

 これからも続けるぞ。


 特別室に戻って、また10人にスキルを掛ける。

 午後3時までに、なんとか溜まっている人達は捌き終えた。


 さて副業に行くか。

 街を出て湖そばの養殖場へ。

 養殖場で生簀の中で魚が元気に泳いでいた。


「美味そう」


 シュリンがよだれを垂らす。


「お嬢さん目が高いね。ここの魚は美味しいよ。ほっぺたが落ちるぐらいだ」

「おやっさん、今日の出荷分はあそこの生簀に居る奴か?」

「ああ、いつもの奴頼む」


「【浣腸!】」


 俺は魚達にスキルを掛けまくった。

 生簀が黒く濁る。


「何やってるのなの?」

「丸焼きにすると内臓が苦いらしいんだよ。でも内臓が美味いんだな。それで糞抜きだな」

「ほへぇなの」


 この副業は最初のうちにはかなり助けられた。

 毎日仕事がある上に賃金も高い。


「とれたてを焼いてやろう」

「悪いね、おやっさん」


「今日は魔力の補充は良いのか?」

「魔力の問題はなくなったよ。少しレベルアップしたもんでな」


 しばらくすると魚の焼けるいい匂いが漂った。

 魚はジュウジュウと音を立てている。

 シュリンは真っ先に焼けた魚を頬張った。


「熱くないのか?」

「うまうま、私を誰だと思っている。はぐはぐ、ドラゴンだぞ。むぐむぐ、このぐらい屁でもないわ。お替わり」


 マムは食べてない。


「マムは食べられないのか」

「聖剣なの。汚くなるの」


「そうか。洗ってやるから、食ってみろよ」

「そこまで言うのならなの。美味しい。美味しいの」


 俺達は焼いた魚をたらふく食って現場を後にした。

 街に戻る最中。

 マムの眉間に皺がよって脂汗が。


「どうした。病気か。ごめん、俺が無理に食わせたから」

「お腹が痛いの」


「よし、効くかどうか分からないが。【浣腸!】」

「はぅなの。来てるの。凄いの」


 マムはしゃがみ込むと剣の姿に戻り、スポンと剣が抜け。

 鞘から土くれとさびをひりだした。


 剣の輝きが前より強くなった気がする。

 俺は剣を鞘に納めた。

 マムは人型になって、大きく息を吐いた。


「すっきりなの。色々と凄いの」

「何が凄いのか分からないが、良くなって良かったな」

「食べ物の生気を吸収したなの。力が増したの」


 良かったな。

 今度から食う度に排泄させてやろう。

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