ずぶりと3発目 危機からの脱出

「あなたが噂の掘削師」

「ああ、俺がくっさく師だ。くっさく作業の依頼かい。依頼はギルドを通す事にしているが」

「もう、我慢できないの。苦しくって。お願い。スッキリさせて」


「分かったよ。今回はギルドを通さないから。特別に負けて銅貨5枚でいい。俺はクリスター。次からは指名依頼を出してくれ」

「私、エマ。よろしく」

「じゃ、くっさく作業は別室で」


 俺はエマを特別室に案内した。

 あまりに俺に対する依頼が多いので、ギルドが気を利かして特別室を作ってくれたのだ。

 この俺の依頼は銅貨10枚と安いが、多い時はその仕事の数が千を超える。


「じゃ、穴に力を入れて」

「うん」

「行くぜ。【浣腸!】」


 俺は手を組むと人差し指二本を突き出し叫んだ。

 エマのお腹からギュルギュルという音が聞こえた。


「恥ずかしい。うわっ。来た! 来た! 来てる! ふっといのが来てる!」


 エマはお尻を押さえると、10あるトイレのうちの一つに駆け込んだ。

 このトイレは排泄の音は聞こえない様になっている。

 防臭もばっちりで、俺のお得意様である大魔法使いの力作だ。


 もちろんブツは分解され肥料になって出て来る。

 この肥料の利益も大きいと聞いた。

 俺には一銭も入らないけどね。


「やだそんな太いの通らないよ! くっ! はうん! か、い、か、ん!」


 この遮音結界、声は通すんだよな。

 トイレから顔をほんのり赤く染めたエマが出て来た。


「魔力をくれ」

「ええ」


 エマは手を洗ったばかりの、石鹸の匂いのする湿った手で、俺の手を握る。

 そして、魔力を俺に渡した。

 魔力は接触すると受け渡せる。

 緊急の時は意味がないけど、俺みたいなスキル持ちにはありがたい。


 すっきりして満足したエマと俺は特別室を出た。


「くそう、あいつ。遂にエマちゃんを毒牙に掛けやがって。許せねぇ」

「そうだ」


 みんなは誤解している。

 掘削師として名前が通っているものだから、エロい事を特別室でやっていると思っている。

 まあ、ある意味エロいのかも知れないが、俺にそういう性癖はない。


 俺は数百件の仕事を終え一息ついた。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:クリスター LV 1

年齢:20

魔力:10/10


スキル:エネマ LV MAX

――――――――――――――


 ステータスをいくら見ても他のスキルは生えてない。

 5年のあいだ毎日、千回もスキルで仕事をこなしているから、先日、スキルレベルはカンストした。

 千回の数には副業も含まれている。


 昼飯を食おうと、ギルドから出た瞬間、頭にすっぽりと布袋を被せられた。

 手足を縛られ、転移の魔道具を使われたようだ。

 酩酊感がある。


 冷たい地面に放り出されて、袋が取り外される。

 手足のロープも解かれた。


「罪状、沢山の女性を毒牙に掛けた。よって、これからお前の死刑を執行する」


 男がそう言い放った。


「ここは未発見の場所だ。助けをあてにしても来ないぞ。寂しく一人で死んで行くんだな」


 別の男がそう言った。


 おいおい、少し調べりゃ俺の仕事は分かるはずだ。

 勘弁してくれよ。


 男達は転移の魔道具を使うと消えて行った。

 ここはどこだ。


 黒いごつごつとした石の壁、ほんのりと光る天井。

 土が踏み固められた地面。


 あー、ダンジョンだな。

 なんでこんな手を使ったかは分かる

 直接殺すと、嘘判別スキルを誤魔化せないからだ。

 放置したのなら、殺した事にはならない。


 こんな事になるんだったら、客を女性限定じゃなくしとけばよかったか。

 宿屋で仕事を受けていた時には男にもスキルを掛けたんだよ。

 たけど、ある性癖の男達が押し掛けたものだから、やむなく男性お断りにした。

 だってやつら、宿屋である事を良い事に男同士でおっぱじめるんだぜ。

 考えるだけでぞっとして、ケツがむずむずして、落ち着かなくなる。


 とにかく過ぎた事は仕方ない。

 どうにか脱出しないと。


 前から赤い皮膚のオーガが歩いて来る。

 手には丸太みたいなこん棒。

 オーガは俺を見つけるとニヤっと笑った。

 くそう万事休すか。

 モンスターに浣腸かましても、やつら気にしないだろう。

 ほとんど垂れ流しで生活しているやつらだからな。


 そう言えば、ダンジョンも生き物だと聞いた事がある。

 俺はニヤっと笑った。


 手を組み人差し指を突き出し叫ぶ。


「【浣腸!】。やったか」


 ぐぎゅる、ぐぎゅると音がしてダンジョンの壁がのたうつ。

 まるで地震だ。

 立って居られない。

 そして、物凄い勢いで飛ばされ、あっという間に外に出された。

 周りを見ると沢山のモンスター。

 宝箱なんかも落ちている。

 モンスターが一斉に俺を見る。


 くそう、一難去ってまた一難か。

 ふと、足元に輝く球体があるのに気づいた。

 これはダンジョンコアじゃないか。


 このままだとモンスターは周りの村や町を襲うよな。

 阻止しないと。

 俺の責任だからな。

 ダンジョンコアで自爆でもするか。


 ダンジョンコアは自動的に魔力が溜まるところが魔石とは違う。

 ダンジョンコアも生物だという説がある。

 魔力を呼吸しているのだと。


 俺のスキルで何とかなるかも。

 ダンジョンコアを前に俺は叫んだ。


「【浣腸!】。うわっ。眩しい」


 短い人生だったな。

 浣腸されたダンジョンコアは溜め込んだその魔力を解き放った。

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