第21話 塞げばよろしいのでしょう?
ロメリアの瞳は冷たく光り、高位貴族だと息巻くその令嬢たちはヒッと息を飲みわずかに後退った。
「この扉は二度と閉じれないように……あ」
ドンッと大きな音と共に埃が舞い上がり、それが鎮まるとそこには廊下を隔てるはずの扉が消えていた。
「なっ…なっ……」
「ほら、これで自由に行けますよ。あ、皆様のお部屋、希望するなら結界を張りましょう」
「ロメリア大聖女様。わたくしは婚約者に操を立てております。ぜひともわたくしの部屋の扉、そして侍女の貞操もお守りいただきたく」
「わっ、わたくしもっ」
「ぜ、ぜひわたくしもっ」
リリアン公女がスッと腰を屈めると、次々と令嬢たちがロメリアに向かって両手を組んで懇願する。
それに比べてそっぽを向いている令嬢たちも当然いて──ロメリアは完全にそれをスルーした。
「じゃ、これでいいですね」
「ちょ、ちょっと!」
「何か?」
まさか本当に願った者の部屋にだけ扉に侵入者不可侵の個別結界を掛けると思わなかったのか、最後に自分の部屋に戻ろうとしたロメリアを呼び止める声がした。
そちらに顔を向ければ、先ほどまで扉を出て行きたいのか行きたくないのか、ロメリアに突っかかってきたどこかの国の侯爵令嬢である。
「あ、あなたはいったいこの後どうするのよっ?!」
「え?寝ますけど?」
何を当然と言わんばかりにロメリアは軽く頭を動かし、自分にあてがわれた部屋の扉を開けて恭しく待つホムラの横を通り過ぎようとした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あ、あの扉はどうするのよっ?!」
「そのままでいいのでは?どうせ、もともと城主が打ち破ろうとしていたんですから、別に壊しても構わないでしょう」
「なっ……」
暴論である。
後に修繕の手立てのある城主ではなく、今回のはた迷惑な外交が終わればこの地を立ち去ってしまう他国の者がやっていいことではない。
だが──
おそらく『やってくるのならば受け入れる』気はあっても、自ら押し掛けるほどの覚悟があったわけではないらしい小娘たちは肌寒そうに剥き出しの腕を抱えて躊躇っているのを見て、ロメリアは溜息をついた。
「凍れ」
ギュッと一瞬耳が詰まったような感じがして、廊下に佇んでいた女性皆が耳を塞いで身を縮める。
ヒヤリと空気が流れた方角を見れば、先ほどよりも頑丈な氷の扉が先ほどまであった分厚い木の扉と違わぬ物が視線の先にできていた。
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