07-10 虹色の『大魔導士』
時間は少し巻き戻る。
帝国軍の相手をパーチェの使役する魔物軍団に任せたフリーダムとリーベは、そのまま中央突破を試みた。
それはこういった軍は指揮系統があるときは手強いが、指揮官が不在となった瞬間瓦解するものだと、かつての帝国の騎士であったリーベはよく理解していたからだ。
その為、その中央突破の為にアニマの使徒のとっておきの切り札である、キマイラ軍団がここへ投入された。
そしてそれを迎え撃つのはフィリスとルミナスの最強タッグだった。
最初のキマイラをフィリスとルミナスの鮮やかな連携で素早く倒す。
それを見ていたフリーダムはこのままでは分が悪いと判断した。
「リーベ奴らを分断する、そして隙を見てお前は指揮官を目指せ!」
「わかった!」
そして数体のキマイラがフィリスとルミナスの間に割り込んだ。
それを素早く挟み撃ちにしようとした二人の注意が、一瞬リーベから外れた。
「今だ!」
その瞬間を見逃さずリーベは走った、帝国軍中央指揮隊へ向かって。
そしてそれを止めようとした帝国軍の騎士を蹴散らしながら、リーベは突き進む。
それを見たフィリスは決断する。
「ルミナス行って! 私じゃ追いつけない。 ここは任せて!」
そしてルミナスは
「頼んだわよ!」
そう一言だけ残しルミナスは『
常人とは思えないリーベの身体能力の走りに帝国軍は一瞬の足止めくらいしか出来ない、そして突破を許してしまった。
「アイゼン将軍! 突っ込んできます!」
「迎撃しろ!」
アイゼンの命令で親衛隊の中の魔道士が魔術を撃つ、しかしそれをこともなげにリーベは突破する。
そしてアイゼン自身も杖を取り遠距離狙撃魔術で迎撃する。
相当な距離の中、アイゼンは的確に魔術を当て続けた、しかし――
「駄目だ効かん、総員退避!」
しかしその判断は遅かった。
「まずい突っ込んでくるぞ!」
リーベが中央指揮隊まで後百メートルまで迫った時、リーベは吹っ飛ばされた。
ルミナスの『
帝国軍の決死の抵抗がルミナスを間に合わせたのだ。
「くうー⋯⋯けっこう衝撃があるわね」
「また貴様か、魔導皇女!」
そう言ってリーベはルミナスを睨んだ。
「あんたたちは下がってて、こいつに多勢は意味がないわ!」
そのルミナスの言葉に従いアイゼンは指揮隊を下げた。
またしてもルミナスによって邪魔されたリーベだったが、ここで考えが変わる。
この魔導皇女は帝国の象徴ともいえる、それを目の前で惨たらしく殺せば帝国軍にも動揺が走るに違いないと。
「よかろう! まず貴様から殺してやろう魔導皇女よ!」
そう言って突っ込んでくるリーベにルミナスは慌てず『
「『
その水弾を見た時リーベは笑った、そしてそれをそのまま防御する。
「何!? ノーダメージ!?」
「フハハハハ! 魔導皇女よ、アリスティア様によって『進化』した吾輩の肉体は一度食らった魔術に対する、強い耐性を得るのだ!」
「何ですって!」
それが本当かどうかはルミナスには判断できないが、一つ自分の手札が封じられた事だけは確かだった。
しかし『
「『
凄まじい落雷がリーベの体を砕く、しかし再生し始める。
「確かに大した威力だよ、それは認めよう、だがそれももう効かん!」
再生したリーベは筋肉が盛り上がり超人化を終えた、そしてルミナスへの突進を始める。
――捕まったら終わりね。
ルミナスは冷静にこの戦いをそう分析した、自分に残された手札をどう使い如何にリーベの接近を許さず戦い抜くかの勝負。
普段のルミナスは戦う前にしっかり作戦を立てるタイプである。
だが実際に戦うと予定外の事は多いため、作戦通りとはいかなくなってしまうのだ。
そしてそうなったらルミナスはその場の勢いで行動する事が多い、これまでは実力や幸運そして仲間にも恵まれてきた、だからそれでも何とかなってきたのだがこの戦いは違う。
失敗すれば死ぬ、帝国軍も全滅する、そしてその後ろの民たちも⋯⋯
たった一人で全てを背負った
そんなルミナスにお構いなくリーベは接近する、それに対してルミナスは――
「『
自身の周りに大地でできた槍衾を展開する。
「少し早かったな魔導皇女!」
そう叫んだリーベは大きく飛んだ、ルミナス目掛けて。
「死ね!」
しかしルミナスは動じない、予定通りの行動をとるまでだ。
大地の槍がルミナスの意志で天空へと飛んだ。
「何だと!?」
リーベは全身を刺され無様に落ちた。
「【
そしてルミナスは『
「馬鹿な⋯⋯この速さでこんな強力な術を連射⋯⋯だと」
大地の槍によって出血する、その流れ出る血液自体にルミナスは『解放』した『
「まずい! このまま頭まで凍ったら⋯⋯」
リーベは全身が氷漬けになる前に、自分の首を切り落とした。
「何ですって!?」
「ふう危ない⋯⋯この頭さえ無事なら吾輩はいくらでも再生できるし、進化する」
「ならその残った頭を焼き尽くすまで!」
ルミナスは自身の最大の切り札を切る――
『
宙に浮かぶリーベの生首は、その灼熱の火の鳥に飲まれた。
「フハハハハ! 吾輩は不死身だ、この炎からでも甦って見せる!」
リーベは残された全エネルギーを、再生につぎ込む。
そして耐えきった、髪も皮膚も焼けつくされていたが、それでも生き残ったのだ。
「馬鹿な⋯⋯皇女殿下の全ての奥義に耐えきっただと」
遠くで見ていたアイゼンにはどうする事も出来なかった。
「火、土、雷、風、氷、水⋯⋯全ての属性魔術を耐えきった⋯⋯吾輩の勝ちだ、貴様を食い殺し再び再生するのだー!」
飛んでくるリーベの生首に対しルミナスは避けようとしなかった。
「
次の瞬間真っ二つに裂けた――
リーベの首が⋯⋯
「は!? なぜ?」
リーベは何故自分が死んでいくのか理解できなかった、最後にそのルミナスの手から霞のように消えていく、闇の刃を見ながら⋯⋯
「『
消えていく、その手の刃を見つめながらこれで
帝国軍から歓声が上がっていた。
そしてリーベとパーチェが死んだ事をフリーダムは知ったのだ。
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