ごめんなさい

第1話



 【絶対に見ないで下さい】

 





 ”私”は、呪いなんてものは信じない。


 まぁ元々、幽霊だとか呪いだとかいったジャンルのものは怖いとすら思えなくて。

 だって、見たことも体験したこともないから。だから信じられないのなんて、当たり前だよね。


 そういえば、小学生の頃【呪いの手紙】なんてモノが流行ったことがあった。みんなも、一度は耳にした事があるんじゃないかな? その手の話しって、ある一定の周期でブームになるから。

 とくに子供は、その手の話しが好きだからね。


 内容に多少の違いはあれど、その手の話しは各地で存在しているはず。

 勿論、私もその【呪いの手紙】をもらったことがる。


 あれは確か……小学五年生の頃だったかな。面白半分で貰ったはいいけど、三日以内に十人に同じ内容の手紙を送れっていう、例のアレが凄く面倒で。

 ……あの後、結局どうしたっけ? たぶん、放置してそのままなんじゃないかな。


 でもご覧の通り、”私”は今も元気に生きています。

 だから”私”は、未だに呪いなんてものは信じていない。



 一昨日。友達の麻美と電話で話していた時に、ちょうどその【呪い】の話しがでて……。その時も、私は勿論信じなかった。



(へぇ〜……。また、その手の話しが流行ってるんだ)



 くらいにしか思わなかった。だけど、そうは思っても興味はあったから、『どんな話し?』って麻美に聞いてみた。


 麻美から聞いた話しはとてもシンプルで。【呪い】を信じなかった女の子が、信じなかったせいで呪われて死んだ、という、それはなんともつまらない内容で、全く怖くもない話しだった。


 なんでこんなのが流行ってるの? ってぐらいにつまらなくて。なんでこんなつまらない話し、聞いちゃったんだろうって後悔すらした。


 ”呪われて死ぬ”って聞くと、何故か逆に知りたくなる。怖いもの見たさ、っていうのかな。

 見ちゃダメって言われると、逆に見たくなるのと同じ。そんな心理が働いたんだと思う。

 でも——私は、本当に後悔した。


 だって昨日、麻美が亡くなったから。


 三日以内に十人にこの話しをしなければ、次に死ぬのはおそらく私。

 だからといって、身内や友達、顔見知りの知人に”呪われて死ぬ”話しを教えるなんて事はできない。



(どうしよう……)



 私は思い悩んだ挙句、泣きながら携帯を手に取った。



『ごめんなさい』



そう何度も呟きながら、涙を流して携帯を操作する。


 ——そう。

 私は今、小説を書いている。小説として、この話しをネット上にあげてしまえばいいのだ。


 幸いな事に、私は普段から趣味である小説を書いてはネット上にあげている。それを利用すれば、少なからず身近な人にこの話しをしないで済むのだ。


 そうはいっても、やはり良心がとがめる。いくら見知らぬ人とはいえ……。



 だから、「絶対に見ないでください」って書いたのに——。









 本当に、ごめんなさい。



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