「異世界」に飛ばされた僕、どうせ死ぬなら『スキルガチャ』を引いてみる。

あずま悠紀

第1話

ジャンル:異世界ファンタジー

タグ:異世界転生.主人公最強.剣と魔法.戦記.美少女.ライトノベル.ハイファンタジー.バトル

タイトル:「異世界」に飛ばされた僕、どうせ死ぬなら『スキルガチャ』を引いてみる。

本文:

「スキルガチャ……?」聞き慣れない言葉を、目の前で得意げにしている男から教えられた。

どうも、異世界から召喚されてやってきたらしいこの男は、僕の理解が追いつくのを待たず、矢継ぎ早に疑問を投げかけてくる。その中のひとつだ。僕の頭の中で「?」マークが次々と浮かび上がる。いや、正確には分からないわけではないのだが。

「ああ、知らないよね!説明させて!」

という声と共に男の右手が伸びてきて、僕の手を取った。何をする気だと思った時にはもう遅かった。次の瞬間には身体中に痛みを感じる。痛いっ!!という悲鳴は口に出なかったようで良かった。もし出ていたらきっと「うるさい!」と怒鳴られていたことだろう。そして次に感じたのは、手のひらに伝わる生暖かい感触だった。それは徐々に熱を帯びていく。まるで沸騰したヤカンに触れているかのような気分になる。

僕は必死に耐えながらその行為の終わりを待った。やがて手が離され、男が言葉を放つ頃には先ほどよりも体温が上がっていた。一体何が起きたのか、全く想像がつかない。自分の身体に起こった変化を実感しながら僕は恐る恐る手を見る。真っ赤に染まっていた。いや、赤く染まっているだけじゃない。ぬめりを帯びたそれは、間違いなく血だと思われる。そしてそれを確認しようともう一度見ると、すでにそこには傷一つ見当たらなかった。

(えっ?)

僕は自分の目を疑った。しかし何度も擦っても、目を閉じて開いて見ても変わらない。やはり現実なのだと改めて感じると急に気持ちが悪くなってきた。吐き気が止まらない。どうしてこんな目に?いったい自分がどんな酷い目に遭ったというんだ?そう考えるうちに視界は徐々に歪み始めた。頭がくらくらして立っていることが出来なくなる。僕はその場で意識を失って倒れた――

―。


僕は気がつくと見覚えのない天井の下で眠っていた。周りを見るとカーテンに囲まれたスペースがある。ここはベッドの上で間違いないだろう。しかしおかしい点があった。部屋の中には誰も居らず静まり返っているのだ。

(ここはどこなんだ?)

辺りを見回しても分かることは限られている。壁紙はピンクと黄色を基調とした可愛らしいもので部屋の隅には観葉植物まで置いてある始末だ。僕自身に特に変わった様子はなく至って健康そのもの。身体のどこに怪我を負っているような形跡もなかった。それに服までも変わっており、白い長袖Tシャツの上に薄いピンク色のセーター、さらにチェック柄をしたロングスカートといった服装になっていた。着心地はとても良いしデザインも良く似合っているが、問題はそこじゃあないんだよなぁ~。

「お目覚めになりましたか?」ふいに声を掛けられた僕はビクッとして声の主に視線を向けた。白衣を着た女が僕の顔を覗き込んでいることに驚くも「あのー、あなた誰ですか?」と言うので精一杯であった。すると女医のような雰囲気の女性は優しく微笑み、「私はアネシアといいます。安心してくださいね。」とだけ言うとその手をそっと額に当ててきた。

「うんうん。少し熱があるみたいですけど平熱の範囲なので安心ですね!」

僕の質問は完全にスルーされたようだ。そしてこの人は僕に対して敬語を使っているものの何故かとても上からの目線のように感じられる。いや別に嫌とかではないんだけどもさ、ちょっと気まずいなあって。僕はそんな事を思いながらもとりあえず状況を整理する事にした。どうやら僕は病院にいるみたいなのだがなぜこのような状況になったのか、記憶が全くない。というか、気を失う前に見たアレはなんだったんだろう、思い出す度に気持ち悪くなるのだけど。

「うっ!」考えようとする度に頭の奥底から何か得体の知れないものが出てくる感覚に襲われる。そのたびに嘔吐してしまうのだった。その様子を見ていた女性は慌ててナースコールを鳴らすので看護師らしき人物が数名駆け付けてくるなり背中をさすってくれたり水を持って来てくれたりした。ようやく落ち着いた頃に女性医師による診察が行われることになった。僕は素直に従うことにする。

「ふむ、君はスキル所持者のようですね。しかも相当強いスキルを持っているようで素晴らしいですねぇ!」

(はい?)意味が分からないが一応話を合わせてみる事にした僕は、とりあえず笑顔で返事をしてみた。

「いえ、私もよく分からないんですが、あなたの手に触れた時にそういうことが感じられましてね。でも大丈夫ですよ。私の方で対処しますので。それでは失礼しますね。」

それだけ言って出て行ってしまったので僕の疑問は宙ぶらりんになってしまった。

―数分後 今度は若い男がやって来た。

「お加減はいかがですか?」と声をかけてくるのはありがたいことではあるがその顔を見た瞬間に背筋が凍った。だってさ、目が怖いんだもん!完全に捕食者じゃん!怖すぎて声も出せずに黙っている僕の反応を見て察してくれたらしく、男は続けて口を開いた。

「私は、勇者様のお世話役を任されている者です。どうかご心配なく。私が責任をもって貴方をお守りいたしますよ。」

と、優しい口調に戻っていた。だがまだ信用できる相手とも言えないのである。それに『勇者』という単語に聞き覚えもないわけだから。僕は警戒しながら言葉を選びつつも「助けてくれてありがとうございます。あのー僕はこれから何をしたらいいのでしょうか?」と言ってみると男は笑顔のまま、答えを返した。

「何もする必要はありません。あなたはこの世界で生きていればそれでよいのです。」

「えっ?」あまりにも予想外の返答だったため、つい声が出てしまった。

いやいやいや待ってくださいよ。そもそも異世界から来たのは僕だけじゃないはずだよね?なのにどうして僕だけ優遇されちゃってるの?おかしくない?なんかこう、もっとあるよね。チートな能力を授けて貰ったりとかさ、ほら僕、召喚される際に「異世界転生チラつかされまくった結果、見事釣られて来ました!」みたいな感じになってるじゃない?それなら僕だけって不公平だよね、ずるくない!?って、こんなこと言ったら怒られるかもしんないなぁ。まあでも本音だし言っちゃえ!「どうして僕だけなんです?」すると、男の目は先ほどとは一変して真剣なものとなっていた。その視線だけで殺されそうな程、鋭かったのだ。僕は思わず息を飲み込んでしまうほどに、恐ろしかった。

「お前には関係ない。これ以上余計な事を詮索するようなら命の保証はないと思え」とだけ残して去って行くのであった。結局、謎は残ったままとなってしまったのであった―。


その後は特に変わったことも起きず平穏な日常を過ごすことが出来た。僕は毎日決まった時間に起床し、朝食を食べるために一階へ降りて行った。そして今日もまたいつも通り学校へ行く時間を迎えると、身支度を整えて家を出た。

(また今日も同じ一日が始まるんだな)

そう思いながら歩いていると目の前に一人の少女が現れた。

肩にかかる程度に伸ばされた髪に整った眉毛。その目元に少し垂れ下がった瞳からは優し気な雰囲気を感じさせる。そして胸元の大きく開いたワンピースを着た美少女がいた。僕はその少女の顔に見覚えがないわけではないのだが名前を思い出せないという奇妙な現象に悩まされた。そしてそんなことを考えている間に彼女が僕の手を取り「おはよう、朝だよ♪一緒に学校に行こう!」と言うものだから、僕は驚きを隠せず動揺してしまった。僕は今まで彼女のような人と話したことが無かったし、ましてや初対面の相手にいきなり馴れ馴れしくしてくるなんて有り得ないからだ。僕は彼女に困惑しつつ言葉を発しようと試みた。

「あ、あの、あなた一体どちらさま?」

そう尋ねる僕に対して少女は不敵な笑みを返すのであった。

「んふっ、やっと会えたねっ!君に会いたくてここまでやって来ちゃったんだよっ?」

と彼女は嬉々として話すのだが、僕は何の事なのか見当がつかずにいた。そしてさらに続ける。

「あっ、そういえば自己紹介がまだだったっけ。わたしの名前はアリス。君とずっと会いたかったんだよ!」

(はい?)まったく身に覚えのない発言ばかりされてしまい僕は思考が追いつかなかった。

いやそれよりもだ、何この女の子。何で初対面で僕に話しかけてくるんだろう。僕は今まで友達と呼べる存在はいなかった。いや違うか、友人と言える人間は何人かいたと思うけど。それに今の発言から察する限りこの子はきっと知り合いだと思うんだよな。でも全然思い出せなくて申し訳ない気持ちでいっぱいになるんだよな。

(いやいや、待って待って、この子いったい何言ってるの?)僕はそんな気持ちで彼女の様子をうかがっていると、どうも僕の反応に苛立ちを感じたらしく突然大声を上げた。

「ねえ、どうして無視するのっ?もしかして私の事知らないとか言うつもりなの?」「ひっ」あまりに急なことで驚いた僕は悲鳴に近い声を出してしまった。周りの人も僕たちを見ていたので注目の的となっていることに気が付き僕は赤面するのであった。

そしてこのタイミングを見計らっていたかのようにアリスと名乗る女性は、続けて僕の耳元で囁いてきたのだ。

(このままじゃみんなに変な目で見られるだろうし場所を変えて話したいんだけど、どうかな?)と聞いてきた。正直もう周りからの痛いほどの視線は耐えきれなかったのでありがたい話ではあったので僕はその提案に乗らせてもらうことにした。というか、僕が逆の立場だったとしても同じようにしただろう。そんなことよりまずは自分の置かれている状況を知りたいという気持ちの方が強かったし、なにより早くこの状況を終わらせたいと思ったからでもあった。とにかくこの場から逃げたくて仕方がなかったのが現状だ。なので僕は「分かった。じゃあとりあえずここから離れよう」と一言だけ言い放つので精一杯であった。

(良かった、じゃあ着いて来て。場所は後で教えるから。あと私は君がどこの誰かも分かってないし教えてももらえないままでいる。それが今の私の気分。分かる?)僕は「はい」とだけ返事をしたのであった。

そしてしばらく歩いて行くと大きな交差点に差し掛かる。僕たちはそこで一旦別れることにした。

(あの子の後をつければ何か分かるかもしれないしな)と、そんなことを思った僕はこっそり後をつけてみることした。すると、彼女は信号が変わった瞬間走り出したのである。

そのスピードは凄まじいもので瞬く間に僕を追い越していく。僕は全力で追いかけたが、その差は徐々に広がっていき、やがて完全に姿は見えなくなってしまった。

(なんだ、これ、どういうことだ?)僕の足は疲れを訴えていてその場に座り込むと息切れが止まらなかった。こんなに走ったことは久しぶりの感覚だった。僕はその場でしばらく休んでいる間にも必死に考え続けた。

(まさか僕のことを知らないっていうのも、実は演技で本当はどこかで出逢っていて思い出さないか確かめていたんじゃあないのか?)などと悪い方向への考えしかできなかった。

結局この日はその後何も起こらずに家に帰り着くのだった。

僕は自分の部屋で考えていた。あの時僕は何をされたのか。どうすれば彼女を特定できるのか。ただひたすら考えているうちに眠気に襲われいつの間にか眠りにつくのだった。

そして夜が明けた翌日からまた学校が始まるのでいつも通りの生活を送ろうとした僕は学校へと向かって歩き始めるのであった。しかし学校への道中でアリスの姿を見つけた僕は声をかけようと手を挙げたが、その前にこちらに気付いたらしくアリスは手を振ってきた。その行動を見た周囲の生徒達は僕らのことに注目しており「なんでお前がアリスちゃんと一緒に居るんだ?」といった視線を浴びせられ続けていたのであった。そして教室に着くなり、僕に近寄って来たのはやはり昨日の女である。しかも今度は別のクラスのはずの彼女が僕のところまでやって来たのだ。

「おい、どうしてあんたがここに居るんだ?さっさと帰れよ。ここは遊びに来るとこじゃないぞ。」「ふぅーん。そうやって逃げるんだ。へぇー」と言って僕を突き飛ばすように離れて行き僕の隣の席に腰かけると、他の女子生徒が「あ~あ、かわいそうに」と憐れみの目を向けながら呟くのであった。「お前らうるさいぞ」と注意するも聞く耳を持ってくれないようで。そのまま話は進んで行くと授業が始まったため中断することとなった。結局その後も何も起きることなく時間は過ぎていき放課後を迎えることとなった。アリスは終始笑顔のまま僕の側を離れなかったのだが、僕はその意図を読み取ろうとしても結局分からずにいた。そしてまた僕はあの喫茶店へ向かうことになったのだが、なぜかアリスまでも付いてくることになり、店内に入ると店主が出迎えてくれたのだが「また貴方ですか。いい加減にして頂かないと営業妨害で訴えますよ?」と言われてしまった。どうやらまた僕は厄介ごとに巻き込まれているらしいとこの時になってやっと理解することができたのである。

僕たちのやり取りを眺めながら、アリスは口を開く。「ねぇマスター、どうしてあなたが私に指図してくるんですか?おかしいですよね?あなたはこの店の責任者でもないでしょう?それなのに偉そうな口を利くなんて。」僕は思わず言葉を失った。なぜなら彼女の発しているオーラのようなものが明らかに変わってしまったからである。

僕には分かった。こいつは本気で怒ってる、ヤバい。僕は本能的に恐怖を感じ取るのであった。すると店主の顔つきが変わる。まるでその表情は鬼のような形相へと変化していくのである。「貴様!お客様に向かってなんていう無礼を働いてくれるんだ!出て行け!」僕はその言葉を聞いた途端、「あっ、逃げないと!」という焦りに支配されその場から立ち去ろうと出口に向かったが遅かった。ドアに手をかけた時にはすでに店主の腕が伸びてきており「逃すかぁぁ!」と声を上げると僕の顔目がけて殴りかかってくるのである。僕は「あっぶない!」と叫び咄嵯に身をかわすことに成功したもののアリスが扉の前に立ちふさがり「ちょっとどいてて!」とだけ言い残して飛び出したアリスはカウンターに飛び乗ると勢い良く蹴りを入れるのだがそれを腕一本でガードされる形となった店主はその攻撃を防ぐとカウンターを足場にさらにジャンプし僕の頭上から拳を振り下ろすがそれもひらりと回避された上にカウンターの椅子が粉砕され粉塵が立ち込める中「きゃあ!」と声を上げた。

どうやらカウンターの内側に居たためにもろに衝撃を受けてしまい倒れこんできてしまったようだ。「アリスさん!?」と言い駆け寄る僕だがアリスは既に意識を失いかけていた。「うっ、もう駄目」そう言うと彼女は床に転がったまま動こうとしなくなった。

「はっ、俺はいったい何をしていたんだ?」僕は一瞬の出来事が現実に起こったことなのかと錯覚してしまうくらいだったのだが目の前で起きたことを冷静に考えることにした。僕は急いで彼女に近づいていくと、息があることを確認することが出来たので一安心だった。「良かった、死んでない」と安堵のため息を漏らし、僕は改めて周りを見渡す。

そこには先ほど僕に暴力をふるおうとした男が呆然とした様子で立っているだけであった。

「あっあのぉ、アリスは無事なんでしょうか。」僕が恐る恐る尋ねてみると「大丈夫だよ、気絶しているだけだから。しかし一体誰がこのような真似をしてくれたのかね?」と言って僕のことを見てきやがったので「そ、それは俺にも分からないです。」と答えておくのがベストな選択だと感じた。「まあいい。この子は私が責任持って面倒を見させてもらうことにするよ。それに君の事も知りたいしね。」そう言ってニヤッとした顔で僕の方を覗き見てくるので気持ち悪くなって後ずさってしまった。そして僕はアリスを抱えて店を後にしようと立ち上がると男から制止の言葉がかかる。「待ってくれ、その女を置いていって欲しいんだよ」その発言を聞いて僕の中で何かが弾けたような気がした。「この子を殺すっていうのか?」僕は怒りを隠さずに睨みつけるようにして言ったのだった。すると、男は急に態度を変え始め僕の事を蔑むかのような視線を送ってくるのであった。

(はい?どういうことだ?)と、疑問を抱いていると続けてこんな発言をしてきたのだった。「そうだ、殺せば済むことだ。君にはもう用はない。邪魔なんだよ君の存在が。君が居ると迷惑になる。だから、消えて無くなってほしいのさ、分かってくれたかな。いや、分かりましたかと聞いておるんですよ」

(ああーなるほどな、そういうことか。つまり僕の存在自体が悪ってことか。でもなあ、この子をこのまま放っておくわけにもいかないしな。それに、この人が本気を出さなかっただけかもしれなくて、本当はすごく強いのかもしれないし。とりあえず試しに戦ってみるか)と結論を出し、戦闘体勢に入った。そして男のほうを見ると、どう見ても素人にしか見えなかったので少しばかり余裕が出てきた僕は「おい、早く構えろ。いつでもいいぞ」と言うのであった。

僕の言葉を聞き入れたのか「では遠慮なく行かせてもらうよ」と言い放ったと同時に彼は地面を強く蹴る。

(え?)次の瞬間には僕の懐まで迫ってきていた。そして、そのまま右ストレートを放つ。僕はとっさに体を捻らせて避けようとするも間に合わず腹部に当たり吹き飛ばされるのであった。

あまりの衝撃に胃の中にあったモノが全て吐き出されてしまった僕はその場に崩れ落ちたのだった。

痛みよりも先に感じたことと言えば「なんだこいつめちゃくちゃ強くないか?普通に考えてこんなに強いはずがない。だとするとまさか本当に手加減していたというのか?もし仮にそうだとして僕には勝ち目が無いということか。いやまだ負けたとは決まっていない。なんとかここから逆転する方法を考えなければ、いやそもそも勝てるイメージがまったく浮かんでこない。これは、もしかしたら死ぬのかもな。僕)そう思った時にふとある事を思い出した。僕はアリスのことを庇いながらも必死で抵抗したがどうにもならず結局は殺されてしまうのであった。

気が付くとそこはいつも見ている天井があった。僕の身体は何故か濡れており、布団はぐしゃぐしゃになっていたので寝汗をかいたのだろうと思ったのだが、どうにもそんな生易しいものではなさそうなのですぐに起き上がると辺りを見回すのだった。どうやらここはあの喫茶店では無いらしいと察しはついたのだが「どこなんだここは?」という言葉が口をついて出てきた。その瞬間だった――「あら、起きたみたいですね。おはようございます。」という声と共に視界が遮られると、目の前には女性が立っていた。その女性は金髪の髪でスタイルは抜群であった。そして、僕はこの人にとても心当たりがあるのである。

僕が初めてアリスに出会った時に遭遇した女性の中の1人である。僕は咄嵯に逃げようと立ち上がったもののすぐさま捕まりそのまま床に叩きつけられるのであった。「ぐはぁ!はっ、はなせ!」僕はどうにか抜け出そうとするが全く身動きが取れない状態で困っていたのである。「暴れるのをやめないと、今ここで殺しますよ」と言われ僕は素直に従った。すると僕を解放してくれたので「どうして僕を助けたんだ?殺すんじゃなかったのか?」と質問すると、「ふふっ、そうよ、あなたを殺すはずだったわよ。」と言い、僕のことを見下ろすようにして笑っている。

(あれれーおかしいぞぉーなんで助けてくれたんだろうー不思議だなー(白目))と内心では焦っていたが表面上は何事も無かったかのように振舞ったのである。「ふふふ、面白い人ね。あなた名前はなんていうの?」と僕のことを指差してくるが、まだ自己紹介していなかったのだろうか。というよりこの状況はヤバくないだろうか。僕は「俺の名は神城蓮。あんたは?」と返すと相手は「へぇ、あなた日本人だったのね。私はアイリスっていうのよ。よろしくね!」と言った後に、僕の顔を手で掴んで無理やりキスしようとして来たため反射的に彼女の顔面に拳を叩き込んだ。彼女は鼻を押さえながら床に転がり回っているため、どうやら鼻血が出ているようだ。「ちょっと!どうしてあなた私にいきなり攻撃をするなんて酷いじゃない!それにレディの顔を傷つけるとはなんて奴なのよ!」「いや、それは自業自得だろ!あんたこそどうしてこんな事をしたんだよ。」

「どうして?どうしてってあなた私達の組織に入らないかしら?」

(ん?なんか聞いたことがあるワードだぞこれ、どこだっけなぁ?確かアリスと出会って間もない頃に話した内容に似ていたので思い出してみよう。そうそう。「その組織のボスに私達の世界を守って欲しいと頼まれていてね。それで君をスカウトしてこいって言われたからなんだけど。」みたいな会話をして、その時は興味無さそうだったけど一応記憶に留めておいたんだよね。)

僕が黙ったまま考えていると彼女がまた話し出した。「まあ、別にいいわよ。その気にならなかったなら、あなたの仲間を殺しに行くだけだから」と意味深なことを言い出すが「どういうことだよそれ。俺の仲間に手を出すっていうのか?」と怒りの感情が沸き上がりそうになり声を荒げてしまった。

僕の反応に満足した様子で「ふぅん、なかなか楽しめそうな子ねぇ」と言ってくるが「俺の仲間に手を出したらただじゃおかねえから」と言って睨むと彼女は笑い始めたので僕は不気味に思い、その場から去ろうとしたものの彼女に腕をつかまれ引き留められてしまう。「逃さないよ、せっかくここまで来ておいて逃す訳にはいかないの」と言うが僕の耳元で彼女は「逃げられないんだったらさ、大人しく従ってもらうしかないと思うのだけどどうかしら?」と言ってくる。正直かなり怖かったのだがこのままだと殺されるのは明白だったので覚悟を決める事に決めた。「分かった。ただし仲間には手を出さないという条件を飲むのであればだ、それ以外の条件ならなんでも飲むつもりだ」と言ってみると意外にも簡単に了承された。しかし、その後の言葉を聞いた途端後悔することになってしまったのだ。

それは――「あなたの世界に来てもらいたいのよ。そこで私と一緒に暮らしてもらいたいの」と言われた。僕は最初何を言っているのか理解できずにいたのだが、しばらく考えてみてようやく「ああ、そういうことなのか。」と納得したのである。

(要するにこの世界での生活を保障してくれって言ってきているんだよな。)と思いつつも少し気になった点があるので聞いてみた。それは「あの、俺のこといつ知ったんですか?」と聞いてみる。アリスと出くわした時に僕は彼女に名前すら伝えていない。それにも関わらずこの女性は僕のことを知っていて、さらに僕に「一緒に暮らす」とか「異世界で」だのと、普通では有り得ない発言をしてきていることから、何か特殊な方法を使ったのではないかと疑ったのである。すると、彼女はあっさりと答えを明かしてきた。「簡単な事さ。私の知り合いに召喚士が居て、君のことを調べさせてもらったのさ。そうしたらいつのまにかここに転移していてね。」

(え?それだけの理由でこんな行動に出たというのか?いや確かに俺はここに来た時からこの世界に違和感を感じていたのだが、この女の行動力と発想力には恐れ入ったよ。それに、僕が異世界から来た人間であることまで突き止めるその能力もすごいな。いや待てよ。そもそもなぜこの人は僕をそこまでして呼びたがっているんだ?)と思考に耽っていたのだが彼女に声をかけられた事で中断されてしまうのだった。「もう決まったの?早くしないと他の人たちが殺されてしまうかもよ。いいのかなー?」と脅してくるので渋々だが受け入れることにしてしまった。そして僕はアリスの元へ帰るべく異世界への扉を開いてくれた女の手を掴みながら中に入るのであった。そして目を覚ますとそこはやはり僕の部屋であった。

僕は急いで家を出て走り出しアリスを探し始めると程なくして発見することができたので安堵していたのだが、よく考えてみるとこの世界の時間は止まっているのだから心配する必要は無かったのではないか?とも思えたので一安心できたのであった。僕はアリスを抱きかかえ「ごめんな遅くなって、大丈夫か?」と聞くも彼女は何の反応もなくずっと固まっていたので「もしかして俺の事が分からないのか?」と聞くも返事は無くまるで時間が止まったかのように動かなかったのであった。そして僕は「どうすればいい?この時間を止めているのがこいつらの仕業なら何とかできないものか。この女が居る限りは俺が元いた時間に戻せないのか?」と考えている時、突然誰かの声が聞こえた。

僕は声の主を探すものの見つけることはできなかった。なぜならば声は頭に直接響いてきており脳内に語り掛けてきているような感覚に陥ったからである。すると、またしても何者かによって話しかけられるのである。

『我の名はイフリート、貴様らの言葉で言えば悪魔のような存在だ』

(悪魔だと?ということは魔王の側近的な立ち位置の奴だろうか?)と思っているとイフリードと名乗る者は話し始めた。

僕は彼の話を一言も聞き逃さずに聞こうと心に誓ったのである。何故ならば、アリスの事を知る上で必要になってくると考えたからだ。

(こいつも僕が知っている事と違う事実を知っているのだろう。一体なんでだ?なぜ僕だけが知るはずの事について詳しいんだろうなぁ。とにかくまずは情報を引き出そう)と考え質問する事にしたのであった。僕はイフリートに対し質問を投げかけるも答えは返ってこなかった。その代わりに僕が予想していなかった返答をしてきたのであった。僕は「は?」と言い放ち思考が追いつかなかった。その瞬間であった――僕の目の前には炎の球が出現したかと思ったら爆発し辺り一面が燃え始めていくではないか! そして僕は爆風に耐え切れず後ろに倒れてしまい、なんとかアリスだけは守り抜こうとするものの僕の意識は遠のいていったのであった。

僕は目が覚めると同時に身体の痛みで悲鳴を上げそうになったがどうにか抑える事に成功したが、そんなことは気にせず現状を確認しようと思ったので辺りを見回すことにしたのだ。見たところどうやらここは病院であると認識する。しかし僕がいる病室はとても狭くベッドしか置かれていないため個室だと思われる。それになぜか僕は自分の服ではなく病院の寝間着のようなものを着ているようであり「どうしてなんだ?」と思いながら鏡を見たのだが何故か自分の姿が確認できなかった。

(どういうことだ?まさか、僕の身に異変でも起きているんじゃあないだろうな。確かめるために触ったり叩いてみたりしたんだが何も起きず結局、どうしてこうなっているのか理解できなかったため仕方が無いので再び眠りにつくことにするのだった。

翌朝、目が覚めた僕は昨日の事を振り返りながらも、なぜこのような事態になったかを考えていた。

(僕自身特に異常はなかったはずだ、つまり原因は僕以外にあり得るはずなんだけどなぁ。そうだ。この部屋の外を調べてみるのもいいかもしれない)と考えて早速実行することにした。とりあえず部屋を出るためにドアを開けると、そこにはアイリスの姿があったのだ。彼女は「あら、やっと起きたのね。待ちくたびれたわよ」と言っており僕のことをじっと見つめていたのであった。どうやら彼女は既に僕が異世界からやってきたという事も把握しているらしい。なので「お前の言う通りにする。だから僕とアリスのことについて説明しろ」と言ってみた。すると彼女は笑いながら「素直でいいわねぇ。私はあなたのこと気に入っちゃったの。それで、私がどうしてあなたのことを知ったかという疑問があるでしょう?教えてあげるわ。それは私のスキルの力よ」と意味深な事を言うものだから気になってしまい「どんな能力を持っているんだよ」と聞くと「私ってね人の過去を見ることができる能力を持っているの」と得意げに話してくれた。

そして、話していくうちにどんどん僕に対する不信感が募っていくのがわかったので、これ以上は危険な行為だと思い話すのをやめさせたのだ。そうしている間にも僕の頭の中はフル回転して思考が駆け巡っており、「今ここで話を終わらせるべきか、それとも僕から何かしらの情報を引き出してから終わらせるべきか。」などと悩んでいたが後者の方がメリットが大きいとの判断に至り僕は「さっきの話を続けてくれないか?」と伝えるとアイリ-スの顔色が急に曇ってしまい僕の目を見て話し始めてくれない。仕方なく僕は彼女からの情報を聞く前にこちらから質問することにし「君の能力はいつから使えるようになっていたんだい?」と質問する。

すると「えっとぉ。実は最近なんです。ついさっきまで使えなかったんですよ。なのにあなたを召喚した時は、不思議と使うことができました。その理由はまだわからないですが」と彼女は答えるのだった。

(召喚された際に発動するように仕組まれていたというのか?まあいい、それより大事なのはこいつがどこまでの情報を持ち合わせているのかだ。まだ、僕についての情報を持っていればいいんだがな。それよりもまずは俺の能力とやらが本当に正しいのか知りたい)「なら、この世界での僕が暮らしていた時の話とかもできるか?」と尋ねる。「えぇ、できると思うけど。その話は長くなるけどいいの?」と聞かれたが、アリスを助ける為には僕のことを知っている人間がいた方が有利だと判断したため「ああ、構わないよ。ただアリスを救う方法だけは必ず見つけ出すんだぞ」と言って聞かせるとアイリスも覚悟を決めたらしく真剣な眼差しで「分かった」と僕に向かって言い放つのであった。

僕は、彼女の口から出る言葉に驚きつつも、それを隠し通すことは出来ずに全て話してしまったのであった。そうすると「やっぱりね。あの子が私達の前に現れたのはあの人がこの世界に呼び寄せてくれたおかげですもの。これでようやくあの人の元へ帰れるというのに。」と言ってきた。そして「じゃあそろそろ行きましょうか。あの人に早く会いたいの」と言い始めたのだ。僕は「ちょっと待ってくれ。あいつらの仲間じゃないって言ったがどういう意味だ?お前の目的は何だ?」と言うと、彼女は答えた「え?それはね、もちろんあなたの力を手に入れることですよ。」と笑みを浮かべながら言ってくるのであった。

それから少し時間が経って「ねえ、準備はできた?行くよ!」と言われてしまっては従うしかないと思い「待て、俺の準備がまだ終わっていないんだが。それにこの世界に来ていきなり連れまわされるのもあれだ。それに俺はお前の知っている男と容姿が違う。どうせ別人だって言って諦めるだろう?」と提案し、何とかして僕と離れさせようとしたが彼女には通用せず僕の手を握ってきて、そして異世界へ連れて行かれてしまったのである。

そして異世界で僕は彼女と一緒に暮らしているわけなのだが正直に言うと僕はもう元の世界に戻りたくなってきているのである。理由は簡単だ。彼女と一緒に暮らし始めるまでの生活は僕の望んでいたものだったのだが彼女もとてつもなく強くて頼りになる上に家事全般をこなしてくれるうえに、毎日のように僕の事を褒めてくるというまさに理想的な生活を送っていたからだ。

だが、彼女についていくにつれて徐々に僕は元の世界への未練を感じ始めていた。その理由とは、僕自身が弱い事である。

そして今日もまた異世界へと旅立ってしまう事になる。そしてまたいつもの場所にたどり着く。すると目の前には例の女が現れ僕を睨んでいるではないか。しかもこの前は僕の事を馬鹿にしておいて今度は「君を鍛えれば良いんでしょ?」と僕の考えを完全に読み取った発言をしてきたので「お前の事は信用できないが、この女が居なければ何もできないというのも確かなので、頼むことにしたのであった。しかし、彼女は「いいわ、でも少し時間をちょうだい。その間は好きにしなさい。」と言われたのでその通りにすることにする。そしてこの前とは違い僕が知らない魔法を見せられて僕は驚愕していた。しかしそれだけではないのだ。なんと、その魔法使いが僕に魔法の使い方を教えてくれているというのだ。最初は信じられずにいたのだが実際に見せられると信じないわけにはいかない状況になってしまう。そうしている間にも彼女はどんどん話を勧めていき、ついには僕の師匠にまでなっていたのである。

それから1か月ほど経過した。

僕は完全に彼女の弟子になっており魔法の練習をしていた。すると突然、「私達のところに来ませんか?」と声をかけられたのである。そして彼女の家に招待してくれるというのだ。僕にとっては願ってもいなかったことである。なんとしても、ついていこうと決めて彼女と行動を共にしていく。そうしてしばらく歩いて行くと、一軒の家の前にたどり着いたのであった。そして家の中に入っていきリビングに案内されるとそこには見知った人物と見知らぬ女性がソファーに座っているではないか。その女性は僕を見つけるなり「やっと来たのね。待っていたわよ」と言うのであった。その人は僕の母親であったのだ。どうしてこんなところにいるのか気になった僕は「一体、どうして僕の母親がここにいるんだ?それとこっちの女の子もだ」と言うのであった。すると彼女は「あらあら、すっかり大人びちゃったわね。」と言いつつ微笑んでいたのであった。すると彼女が説明を始めてくれた。「私はあなたのお母さん。あなたを異世界に連れてきてくれた女性でもあるんだけど。まず、どうしてこの場所にいるのかだけど、それはあなたを連れ去るように彼女に頼まれたからなの。ちなみに彼女は異世界での名前はレイラ。私の友達なんだけど」と教えてくれて僕達はお互いに自己紹介をする事になったのだ、僕の母親であるレイナは異世界から僕を助け出してくれてここまで導いてくれていたのだそうだ。

「ありがとう。」とお礼を言うと「いえ、当然のことをしたまでよ。私の娘なんだから」と言ってくるのだが彼女の目は僕の事を愛しく思っていることがよく伝わってきたので、思わず照れてしまい何も言えないままでいたのだ。

そうして僕達は一緒に食事をすることになった。僕は母の手料理を食べることに緊張しており何を言われるのか、どういう反応をしてくるのか気が気ではなかったが、そんな僕の不安を吹き飛ばすかのように、優しい笑顔を浮かべて「いっぱいあるから遠慮せずに食べてね」と話しかけてきてくれたのだ。僕は泣き出しそうな気持ちを抑えながら「いただきます」と挨拶しご飯を食べていた。すると「ところで、異世界の食事とかは口に合うかしら?」と母さんから質問されてしまっので、僕も異世界での思い出を思い出しながら会話をしていくことになる。

そうこうしているうちに僕は気になっていたことを尋ねるのだった。「あのさぁ。どうして僕なんかを助けたのさ。」と聞くと「んー、そうねぇ。あなたと初めて会った時にあなたがとっても弱っている事がすぐに分かったからかな」と言ってきたので「どうして、助けるって決めたの?そもそもどうやってこの世界の事を知ったの?」と尋ねると「私がこの世界に転生したのはつい最近の事なのよ。だから、それまでは別の世界で生活してたんだから」と言われ僕は「じゃあどうやってこの世界にやってきたの?」と聞いてみると母は困り果てた表情を浮かべ「えぇっとね。それは教えられないというか何というか。」と言うので僕は諦めて質問を変えることにし、まずはこの家にある大量の武器や魔道具がどこにしまってあったかを聞いてみる。そうすると「それはね、異世界の人を連れてくると私に自動的に転移のスキルが与えられるからそれで持ってきただけなの。まぁ、あなたに教えるつもりは無いけれど」と答えてくれたのであった。すると僕は彼女の言葉を不思議に思い、質問をしてみる事にした「あのさぁ、その話は誰から聞いたの?」すると彼女は「うふっ、秘密」と意味深な言葉を残しながら笑いだす。すると僕は「なにが、おかしいのさ」と尋ねても返事を返さず、ただひたすら笑うだけであった。それから数日は、異世界での母との暮らしや元の世界では体験できなかったことが、あまりにも幸せ過ぎて元の世界の事を忘れかけてしまっていたのだ。

そんなある日のことだった。突如として「アリスの身に危機が迫っているわ!急いで行きましょう!」と言って彼女は僕を引きずって行こうとする。そして連れていかれた先は、魔王城。そして、僕と彼女は戦闘を開始し始める。しかし圧倒的な戦力差によって僕の体力は徐々に減っていく一方であった。

しかしその時だった。

僕は何かに目覚めたらしく体が自然と動き出すのが分かる。そして、その力は強大で今まで戦ったどの敵よりも強く、一瞬にして魔王は倒れた。

そして僕たちは再び異世界に戻ることとなる。だが、その世界にはすでに母の姿は無く代わりに「この剣を使いなさい」と言って渡されたものこそが、今の僕の相棒であり、勇者と呼ばれる原因となった伝説の剣なのだ。

こうしてアリスを救う旅が始まることとなったのであった。

そして時は流れ今に至るのである。僕たちの前には、先ほど出会ったアリスの母親が座っていた。そして、彼女は口を開く「まさか、あなたまで来るなんて。本当に、あなたもバカですね。まあいいわ、ここで決着をつけてあげる」そう言って戦いが始まった。だがやはり、僕の方が強いようで、あっさりと倒すことに成功してしまった。するとアリスの母親は何とも思っていなかったらしく僕の顔を見るなり「あら、随分可愛らしい姿になって」と話しかけてくる。僕は、どうしたらいいのか迷ったがとりあえず、名前を名乗る事にしたのだ。

僕はこの女と初対面だがこの人が誰かを知っていたのだ。僕は「俺はお前を知らんが、知っているぞ。

なぜだか分からんが、お前を知っている」と言ってみると相手は少し驚いていたが、その後「なるほど、あなたが私の事を話していたということですか」と冷静に呟いていた。すると彼女は「まぁいいです。それなら話が早いので、私は異世界での名前はアリシアといいます。これからはあなたの師匠として色々と教え込んでいきますので、覚悟しておいて下さいね。ちなみにあなたの師匠になったのは、あなたの魔力量の多さに惚れたからだと思っておいて下さい」と僕が師匠になっている事実が明かされる。僕はその衝撃に動揺しながらもなんとか立ち直る。そして「なんでそんなことになっているんだよ。それに俺は男だ。弟子入りは無理だろう。それに男の弟子を取る奴はいないだろ」と言ってみたものの「大丈夫よ。だってここは魔法が存在する異世界なのだから性別なんて些細な問題でしょ。それに、私は可愛いものが大好きだから問題なしね」と謎の理屈を並べられて納得させられることになってしまうのであった。そしてこの日から、僕には魔法の使い方を教えてくれている。だが、その指導は想像を絶するスパルタ教育であったため、この女を絶対に敵に回してはいけないと悟るのであった。

この世界での生活も半年近くが経過している。

その間は様々な出来事があった。

まず最初に起きたのが、僕の母親が僕の事を愛してくれていたことが発覚したということだ。彼女は「実は、あなたは私の大切な娘の息子なのよ」といきなり言い出したので僕は「は?」と疑問に思う。僕はこの母親に「あんたと僕の間に子供が作れるのか?いやそれ以前に年齢的におかしいだろ。僕は20代前半にしか見えないんだから」と言うのだが「あら、異世界には見た目の年を取らなくなる秘薬があるのよ。知らなかったの?」と言われ僕は驚きつつ「それを早く言ってくれれば良かったのに。そうすればもっと違う出会い方ができたはずだ」と言いつつも、どこか安心感を覚えていた。

僕は、彼女と二人きりの時に聞いてみることにする。すると「どうして僕を産んだの?どうして僕の前から姿を消したのさ」と尋ねてみると「それはね、あなたがまだ幼い時に、私達が暮らしていた村に魔物が襲撃してきたの。それであなたは殺されそうになったところを庇って怪我をしてしまったの。私はあなたを死なせたくなくて異世界に逃げることを選んだ。」と言うのだ。

僕は「僕のために命を投げ出そうとして死んだんだ」と思いながらも母の言葉に耳を傾けていく。そうすると彼女は僕の目をじっと見つめてこう語りかけてくるのであった。「あなたはね。私の生きがいそのものよ。だからあなたが幸せになるのであれば私はなんだってできる。

それが例え世界を滅ぼす事になったとしても」そう言った彼女の瞳からは涙がこぼれ落ちたのだった。彼女はそれから何も語らなかったが、きっと僕を愛してくれていることが伝わってきたのである。そうやって、しばらく経った頃「ねぇ、あなたが元いた世界の事を話してもらえないかしら?」と言ってきた。僕もそれに応えて、異世界について話し始めていった。

異世界では僕たち親子は一緒に暮らすようになっていたのだ。母は家事をしながら僕の面倒を見てくれていたのだ。僕は母の事を思い出す度に、どうして一緒にいる事ができなかったのだろうと後悔し涙を流してしまうのであった。

そして、そんな僕の背中をさすりながら「辛いでしょう。だけど、あの子を助けられたのだから、その辛さは決して無駄にならないわ。そう、自分を責めなくても良いんですよ。

私が保証しますから」そう言われ僕は心が落ち着くことができたのだ。

こうして僕は母と再会して一緒に暮らすようになるのであった。だが、ある日突然異世界から召喚されてやってくる存在が現れ始めてからというもの世界はおかしくなっていき、異世界の存在が次々と消えていき最後には母まで消えていってしまったのだ。僕は悲しみにうちひしがれてしまい自殺を試みようとするのだが「お母さん」と声を出してしまってから「まだ母さんが死んだわけじゃない。母さんは必ず生きているはずなんだ。だから今は生きていて、また会える日を待とう」そう自分に問いかけることで何とか持ちこたえられるのであった。そうすることで少しずつ前を向いて歩くことができるようになり始めたのである。

僕は母のことを思い出してから数日後、とある事件に遭遇してしまうことになる。

それは僕が母のことについて考え込んでいると、いつの間にか隣に座っている女性とぶつかってしまうのだ。僕はその女性から「あらららら、ごめんなさい」と謝られてしまう。

そして「そんなに気に病むことはないですよ。それより、何か悩みごとでもあるんですか?」と聞かれたので僕は何も答えず黙り込んでしまう。そして「ははははは、なーんだ、話せることがないんじゃない」と女性は笑って立ち去っていくのだった。その時に僕はこの女性が僕の知り合いであったことを思い出して、後を追うことにした。

そうすると僕を追いかけてきて「ちょっと、待ちなさいよ。何でついて来る訳?ストーカー?」と言ってくるので「お前が僕の知り合いだったことを忘れていただけだ」と言うと「あぁ、そう言えばそうだったわね」と言ってから、「私に何か用があるのよね。じゃあ、あそこに入ってみましょう」と近くのお店に指を指していたので入ることにした。

すると中から店主がやってきて僕にこう言うのである。「おう、よく来てくれたな!今日は何にするか?」と尋ねられ僕はメニューを覗いてみるとどれも美味しそうな料理ばかりで選ぶことができない。すると彼女は「おじさんのおすすめは?」と尋ねるので、それを聞いてみたところ「そうか、俺の作るラーメンが食いたいんだな。任せとけ! とびっきり美味いのを作ってやるぜ!」と言って奥へと行ってしまった。僕は彼女を連れて行ったことを後悔しているのであった。しばらくしてから「へい、待たせたな!特製ラーメン大盛り二丁完成!」と言いながら僕たちの前にドンっと大きな器に入ったスープが目の前に置かれ、麺がその上に乗せられているのであった。そして、彼女は「これは凄いわね。こんなの食べたら癖になりそうだわ」と感動しながら僕の方に視線を送り、僕に「早く食べましょう」と促してくるので僕たちは同時に食べ始めることに。そして、その瞬間あまりの衝撃的なおいしさに僕は、あっという間に完食してしまったのである。すると彼女は「はっはは、やっぱりおじさんは腕がいいね」と言って僕たちは満足するのであった。だが僕たちが店を後にしようとした時、後ろから「おっと、忘れ物だぜ」と言い僕に向かって小さな紙袋を投げつけてきやがったのでそれを受け取り中を開けてみたところ「ありがとうございます」と書かれていた。そして僕は、その紙袋を捨てることが出来ずに持って帰ることにする。僕は「なんなんだあいつは」と思いつつも彼女に聞いてみると「あれは、ここの名産品の1つよ。とても美味しいから覚えておくといいわ」と言われて、そんなに有名だったのかと思った。だが、それだけのことで僕をここに呼び出したとは思えなかった。だから、僕は「お前がわざわざ僕をここに呼びつけたのはそのことだけか?」と聞き返すと「もちろんよ。ただの世間話をするにしても相手が悪かったわね」と言われたので、僕も「まったくだ」と答えてから僕が「で、僕になんかようなのか?」と問い詰めようとしたその時であった。彼女が「私、そろそろ戻らないと」と言うので、僕は慌てて止めようとするのだが彼女は既に姿を消しており僕だけが取り残された。すると僕はさっき受け取った紙袋の中身を確認してみると先ほど食べた名産品と似たようなお菓子が入っていたのだ。そして「どうなってるんだよ」と困惑する。そして僕は急いでお城に戻っていくとそこにはいつものように、僕を出迎えてくれる姿があった。僕はその姿を見てホッと安堵するが次の瞬間「なにしてるの? もう、遅いから心配してたのよ」と言われてしまったのだ。僕としてはそんな事を言われる理由が分からずに困惑していた。しかしすぐにその理由を知ることになってしまうのだ。それは母と再会できた時の事を思い出してしまうからだ。その光景を見た僕は「どうして」と言うのだがその疑問に彼女はこう答えた。「あなたは私の娘よ。それに私は異世界の人間じゃないの」という言葉を聞いた僕は驚きを隠せないがなんとか立ち直ると母に「異世界の人って皆母さんみたいな感じなのか?」と尋ねると「まさか違うわよ。そんな訳ないじゃない。

私は、この世界に召喚されてやってきたのよ。

だから異世界の存在を知っているし、こちら側の世界の人たちとも面識があるのよ」と話す。そこで彼女は僕の耳元で「それにあなたにはまだ話していないことがたくさんあるわ。だから私はあなたの師匠になったのよ」と呟いた。僕は母が何を言っているのか理解できずに戸惑うばかりであったが、それでも「とにかくあなたが私の大切な娘である事は変わりませんからね」と言ってから抱きしめてきた。その行為に最初は戸惑いを感じていたが次第に気持ちが落ち着いてきて僕もまた母の身体を強く抱き締め返したのである。そうすることで、ようやく本当の意味で心を落ち着かせる事ができた。それからというもの僕たちは家族のような関係を築いていったのであった。

僕は今の状況に不安を抱いていたのだ。その不安の原因は「僕と彼女の仲の良さ」にあった。

「僕には心に決めた人が居るんだ。だからあなたとの関係はこれきりにしたほうがいい」

「どうして、急にそのような事を? 私、何かいけない事でもしたかしら?」と彼女は悲しそうに俯き加減に尋ねてくる。僕はそんな彼女を見ても心を動かされることはなかったが、このまま何も告げずに去ってしまうことは気が引けるため「別にあなたは悪くない。

むしろ感謝をしているくらいだよ」と言うと彼女は顔を上げて僕の目を見つめてきた。そして「じゃあどうして?」と言ってきたので僕は「僕の心の中には君よりも大事な存在が居てね。その人の事が忘れられなくて苦しいんだよ」と正直に打ち明けると「それってどういう意味なの?」と質問されてしまったので僕は答えることができず黙り込むと、それを肯定と受け取ってしまった彼女は「わかったわ。そういうことだったのね。

今までの時間は私の勘違いから始まっていたのかもしれないけど今は納得できてよかった」と寂しそうな笑みを浮かべながら言ってきた。それから数日後、僕はその人と別れを告げる事にした。

理由は簡単だ。僕の方にも色々と事情ができてしまい彼女の事が邪魔になってきたからなのだ。

「ごめん。僕と君は釣り合っていなかったんだ」

「うん、知ってる。だから無理言って一緒にいてもらったんだもの」と彼女は笑って許してくれた。その笑顔を見て僕は罪悪感に押しつぶされそうになって泣き出してしまうと、そんな僕の頭を撫でながら慰めてくれたのだった。僕はそんな優しさに耐えられず「こんな酷い事を言う奴の側にいても良い事はないよ」と言ってしまうと彼女は首を振ってから口を開いた。

「それは、あなたのせいじゃないわ。私が悪いのよ。私がもっと素直だったらきっと、うまくいっていたと思うの。だからね、今度はお互いが後悔しないよう頑張りましょう」と言ってくれたのだった。そして僕は彼女に背を向けると振り返ることなく歩み始めたのであった。僕は後悔していた。どうして、あんな言葉を口に出しちゃったんだろうかと後悔する日々が続くのであった。

そんなある日の事であった。僕は街の中を歩いている時に「おい、兄ちゃん!」と声をかけられ振り向くとそこには髭を生やしていて、いかにも鍛冶屋と言った格好をした男がいるのであった。そして、男は「あんたが持っている剣見せてくれないか?」と言ってきたのである。その発言は少し無神経ではないかと感じた僕は「いきなり何ですか? 嫌です。

僕はこれを売りに来たんじゃないので」と言い返し立ち去ると、後ろの方で声を上げる男の叫び声が聞こえる。

「まてよ! その剣を見せてみろと言っているんだ」と言って近づいてくるのである。僕はあまり関わりたくないと思っていたため無視することにすると「おい、待てと言っているだろ! こっちに来てもらうぜ」と言ってくるが、それも無視しているとその腕を引っ張られ連れてかれそうになるのであった。僕は必死に抵抗するが体格の差があるため、どうする事もできなかったのである。そして連れて行かれた先で無理やり剣を奪われると「ふむ。これは素晴らしいな。ぜひ譲ってくれないか?」と僕に向かって尋ねてきたのである。僕は「絶対に渡しませんよ」と答えたので男が怒鳴り始めてしまったので周りの人達が僕たちのところに集まって来てしまうのであった。そして、騒ぎが大きくなり衛兵たちが駆けつけて来ると、その騒ぎはあっという間に収まり連行される僕たちであった。

僕はあの騒動のあと衛兵に捕まって取り調べを受ける事になるのだが「僕が一体何をしたというんですか?」と問い詰めるが「お前が盗んだものを我々が回収している最中に暴れたためだ。言い訳をしても無駄だ」と言い返されたのであった。僕は自分の行動を思い返してみても確かに反論できない部分もあるので、大人しく取り調べを受けたのであった。それから数日間に及ぶ取調べを終えて解放されたのだが、その後すぐに「おい、ちょっと来て貰うぜ」と数人の男達に囲まれてしまい僕は抵抗しようとしたが、その隙を与えてくれるような相手ではなかったのだ。そして、そのまま引きずられるようにして馬車へと乗せられてしまう。それからしばらく経ってたどり着いた場所は僕の見覚えのない場所であった。僕にここが何所なのか教えてくれたのが一人の女性でその女性が「ここはね私が管理している土地よ」と言ってきたので僕は何も言えずに固まっていたのである。すると「貴方の名前は何て言うのかしら? それに歳とか職業なんかも聞きたいんだけどいいかな?」と言われ、僕は答えるしかなかったのだ。僕が名を名乗ると女性は驚きの表情を見せるがすぐに平静を装うように話しかけてきた。「えーっと、一応確認だけどね、貴方はこの世界の人間ではないってことなのね? それで異世界からやって来たってことなのよね?」と聞かれたのであったが僕は、どう答えるべきか悩んでいたのだ。

僕はその女の話を聞いてからどうしたものなのか悩んだのである。この人は、どこまで知っているのか、と警戒しながら、どのように答えればよいのか分からなかったので、どうしようもなかった。すると「そんなに怖がらなくても大丈夫だから安心して、私は貴方が異世界の人だからって、どうこうしたりするわけじゃないからね」と微笑んできたのだ。僕はどうしたら良いのか困ってしまいながらも「僕は、その、信じてもらえるか分かりませんけど」と言うと彼女は「そう、なら私から話しておくから、私に任せなさい」と言ってくれのであった。その一言に、僕はかなり救われたのである。それからというもの僕は彼女と話し合いをして、ようやく僕は自分が誰であるか明かすことにしたのだ。そして、僕は自分の素性を明かし、今までの状況を簡単に説明したのである。そうすると彼女は、何か考える仕草をしながら、こちらの様子を窺うような視線を送ってきたので僕は気になりながら彼女の次の発言を待っていると「なるほどね。じゃあとりあえず、私についてきて欲しい」と言われたのである。僕は戸惑いを感じながらも彼女について行くと「ここに入れば、貴方にとって悪い状況にならないから、さぁ、早く入って頂戴」と手を差し伸べられたのであった。

僕は、彼女の言われるままに手を伸ばした瞬間に意識が遠くなっていくのを感じると暗闇の中に落ちて行ったのであった。

―それからしばらくして

「目を覚ましたみたいね。もう起きても良い頃合いだと思って呼びに行かせた甲斐があったわ」と彼女は嬉しそうに僕に声をかけてくる。僕は、ゆっくりと身体を起こし辺りの様子を確認してみると洞窟のようで薄暗くジメッとしている。そして僕の隣には彼女が居たので声を掛けようとすると、突然抱きしめられて驚いてしまうと彼女は口を開いた。

「よかった。無事に元の世界に戻ってこれたんですね」と言い涙を流してきたのだ。

僕は、その様子に困惑してしまい「えっ? なに?どういう事?」と言ってしまうと、彼女の目を見つめて落ち着かせようとしたのだ。すると、落ち着いたのかどうか知らないが僕の目を見ながら話しはじめた。「私の力を使えば戻れる可能性は、ほんの僅かではあるけれど残っていたの。

ただそれを実行するためには、あなたの魂を私の一部にするしかなくて」そう言われた途端に頭が混乱しはじめて何と言えば良いのか分からなくなってしまう。だが、とにかく僕が元の世界に帰れたのは彼女のおかげだということは理解することができた。だから僕は「ありがとう」と言ってから抱き締めると「いいのよ。それより、あなたの世界にも私が居るんでしょ?」そう言ってから彼女は悲しそうな顔をして「だから、やっぱり私は邪魔なんでしょうね」と言ってきたので、そんな事は絶対にないと思い「そんな事はありません。あなたのおかげで帰ってこられたのですから、僕はあなたと一緒に生きて行きます」と伝えると、今度は僕の唇を塞いでくるのであった。

僕は彼女と、その、なんだね色々と致したのですよ。その結果、僕は今、もの凄く恥ずかしい気持ちになっているのだよ。いやだって、こんな事するって思わないじゃないですか!でもね、僕の目の前にいる女性はとても満足しているようであったのだった。それから彼女は「今日から私たちは、一緒に生活していくのね」と嬉しそうな笑みを浮かべながら言ってきたのであった。

それから数日後の早朝のこと、僕は彼女に揺り起こされ目が覚めると外はまだ暗い時間帯で、僕は不思議に思い「どうして、まだ夜なの?」と聞いてみると、その理由を説明してくれた。僕たちはこれから旅をするらしいのだが、そのための準備が必要になってきて、それをしなければならないために、この時間に起きる必要があるんだそうな。それを聞いた僕は「なにも、こんな早くからやる必要はないんじゃないかな」と思ったが口にするのは控えておくことにしたのである。そして準備をしている間も僕は何もする事がなく手持ち無沙汰だったので「僕も、手伝いましょうか?」と申し出たが彼女は僕の方を見て笑顔になった後、何も言わずに再び準備を進めているのであった。

僕も暇だったから手伝っていたのだが、ふと「ねぇ。僕が寝ていた時、どんな事をしていたんですか?」と尋ねると、「そんなに大したことは何もしていないわよ。貴方が起きるまでずっと隣に座って眺めてただけよ」と答えてくれたのである。その返答に対して少し照れくさかったが、僕と彼女が恋人同士だと改めて実感した瞬間であった。そんなやり取りをしている間に支度が整い出発することになった。まず僕たちが目指す目的地は、僕が住んでいた町がある場所で、そこへ向かう途中に色々な街に寄り道をしてから最終的に辿り着くそうだ。なので、しばらく野宿する羽目になってしまうかもしれないと彼女に告げられると、僕は覚悟を決めたのである。なぜならば、僕は彼女のおかげで帰ることができたのだから文句など言えるはずがないからである。

こうして僕と彼女の長い長い旅が始まったのであった。そして、その先に待ち受ける運命は果たしてどのような結末を迎えることになるのか? ―

「おい、兄ちゃん! 金を貸してくれ」と男が近寄ってきていきなり声をかけてきたが、僕は全く関わりたくなかったのだが無視して歩いていると「おい! 無視するんじゃねえよ! 人が頼んでんだろうが!」と言って近づいてくるが無視しているとその男が肩に手を置いてきてきたので僕は怒りが湧いてしまい、つい大声を出してしまうと周囲の視線を集めてしまい焦った僕は逃げるように走り出すと、そのあとを追ってくる男。そして、僕たちの追いかけっこが始まり始めたのであった。僕を追いかけてきた男が息切れを起こして、地面に座り込むとその男から質問を受けたので「なに? 一体なにが目的だっていうの?」と言うと男は息を荒げて「ふぅ、やっと話をしてくれるようになったか、まあいい、お前が持ってるんだろ? さっさと出せ」と言うと僕にお金を要求してきたのである。

僕は訳も分からないまま、その要求に応えることが出来ずに「どうして、そんなことをする必要があるんです?」と言うと男は再び僕からお金を巻き上げようとしてきたのだ。僕は逃げ回る事をやめないで何とかやり過ごそうとすると「ああっもう、うぜぇーぞ!」と叫びだすので「何であんたらに僕が渡さないとならないんだよ」と言い返すと男は舌打ちをしたあと僕の襟を掴み「うぜーのに、面倒くせーな。もういいよ死ねよ」と、僕の首筋に向かってナイフを振りかざして来たのだ。その動作を見た僕は咄嵯の出来事に動くことも出来ずに目を閉じてしまったのである。

そして、男の持っていた刃物が僕に振り下ろされるのを感じた瞬間「きゃー」と女性の叫び声が響き渡る。それから数秒の間があって恐る恐る目を開くとそこには見覚えのある背中があったのだ。

「危なかったな。もう安心してくれて大丈夫だぞ。怪我はないかね?」という男性の問いかけに対して女性は戸惑いながら小さく首を横に振って応えたのであった。すると、男性はそのまま男のほうへ向き直って睨みつけるような鋭い瞳を向けた後、右手を前に出して構えるような仕草をすると一瞬にして姿が消えたと思うと次の時には、すでに男の顔面を思いっきり殴っていたのだ。僕は驚き過ぎて開いた口がふさがらない。だがその一撃を食らってしまったせいなのかは知らないが、倒れ込んでいる男が僕に言ってきたことは衝撃的なものであったのだ。

「俺は異世界から来た人間だからよ、魔法を使えるようになるのなんて当たり前の事なんだよ。しかも俺のは特別仕様だ、どうやったって勝てるはずがねーんだよ」と言い放つと、さらに続けていく「でも、いいこと教えてやる。今から1時間以内に金を出さないと仲間に、お前が持っているはずの金を持って来させるからな。じゃあな」と言い残すと、どこかへと消えて行ってしまう。すると男性は「まったくあいつは何でいつもこうなんだ」と独り言を言うとこちらに振り向いてから手を差し出してくる。

僕は、とりあえず差し出された手を取って立ち上がると彼は微笑みながら話しかけてくる「さっきの男から助けて貰ったんだろう? 私からも礼を言わないといけませんね。私の名前はアベルです。貴女の名前を聞いてもいいですか?」

と自己紹介を始めた後に、名前を尋ねられ僕は慌てて「えっ? はっはい。えっと、僕の名前は タローといいます」と名乗ると、彼は驚いた顔をした後、急に僕を抱き締めた。突然の行動に対して驚くも「良かった。無事だったのか。君だけでも無事に済んで本当に良かった」と言い出したのだ。そして彼の言葉に疑問を抱いた僕は「あの。どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」と聞いてみた。

その問いに対し、僕に背を向けてから何かを考える仕草をしたあと再び僕の方を見て話しはじめたのである。

「それはですね。先ほど私が倒した男は異世界からの訪問者なのです。つまりは貴方と同じ世界の住人でありましてですね。私がここに居れば貴方を助ける事が出来ると思ったのですよ」と話すのだが僕には意味がよく分からず理解するのに少し時間が掛かってしまい「えっとすみません。どういう事でしょうか?」と答えを聞く前に逆に聞き返してみると彼から予想もしなかった答えを聞かされることになる。なんと僕は彼とは違った世界に転移していたという事実を知ってしまったからだ。僕は混乱して上手く言葉を話せずにいると、それを察した彼が詳しく説明してくれたのである。僕がいた世界とは次元の違う別の世界に居たという事と僕が元の世界に帰れる可能性があるという話を教えてもらった。

だが僕に残されている時間は少なくタイムリミットがあと1時間でお金を用意する必要があった。そのため僕は彼にお礼をして別れた後に町の方へ向かって走るのであった。だが僕は道が分からずに困り果てていたが、その時ふと目の前に現れた人の形をした光の塊のようなものを見つけた。僕は「この人に道を聞けばなんとかなるかも」と思って駆け寄るとその人は女性のような見た目をしており、とても可愛らしく僕よりも身長が低かった。

だが、僕が話し掛けても彼女は何も答えないばかりか、まるで幽霊かのようにすり抜けてしまうのだ。そして、そのまま何処かへ去って行こうとするのだが「ちょっと待ってください。貴方はこの辺りに住んでいるんですか?」と言っても反応がない。それでも僕がしつこく聞いてみると彼女は諦めた様子を見せて僕から遠ざかりながらも、かろうじて喋り始めた。

「私はもう疲れてしまいました。このまま私は消えてしまうのです。だから、これ以上私に関わらないで欲しいのです。お願いします」と言ったきり黙ってしまったのである。それから、しばらく沈黙が支配している状況で気まずい空気が流れ始めていたが、僕は彼女が何を言っているのか良く分からないのと会話がしたいという気持ちが強かったので「ねぇ。どうして君は僕から遠ざかっていくの?」と話しかけると彼女は立ち止まってくれたので僕から近づき彼女に触れることが出来そうな位置まで近づくことが出来た。そして、そこで僕が手を触れると何故か通り抜けずに彼女に触れていたのだ。それから僕は、もう一度彼女に話し掛けることにしたのだが彼女は一向に答えることはなく無反応のまま歩き続けていたのであった。それから僕たちは何度も同じやりとりを繰り返して最終的には僕の方が先に根負けしてしまい結局、僕は彼女に「ねぇ、一緒に来て欲しいんだけど、だめかな?」と言っても彼女は首を左右に振るばかりで返事をしてくれなかったが、僕の話を聞いていた彼女の表情が変わり僕を見つめて、そろそろと歩み寄り僕の手を取ると指を絡めるように握りしめて来たのであった。

そうして、どうにか町へたどり着いたのであるが、その途中で僕たちはモンスターに遭遇してしまい襲われてしまうのである。その相手は巨大なカエルの怪物であった。僕たちの攻撃は一切通用しないどころか、僕たちが一方的にやられるだけの状況であったが、その時に、その蛙の口から吐かれた酸の液を浴びた少女が、そのせいで苦しんでいたのを見た僕は、彼女を庇うように抱きしめて身代わりになったのだ。そして彼女が、僕の腕の中で息を引き取る瞬間を目撃した僕は泣き崩れてしまった。

その出来事がきっかけで僕に秘められていた能力に覚醒する事になる。そして彼女の亡骸を丁寧に埋葬してあげてからその場をあとにしたのだ。それから僕が目覚めた時と同じ場所で彼女と合流を果たしたのである。僕は、すぐに彼女に声を掛けようとしたが、そこには彼女の姿はなく周りを探し回っても見つからないでいたが、僕は諦めるわけにもいかないので探し回り、そしてとうとう見つける事ができた。彼女は大きな木の陰で膝を抱えて座り込み泣いていたのであった。

その光景を目の当たりした僕は急いで彼女に近づいていくと彼女は涙声で僕に対して「私を一人ぼっちにさせないために、私の事を守ってくれたんだよね。私のためにありがとう。もうダメかと思っちゃった。だけどタローのおかけで、こうして生きていられた。本当にありがと」と言うので、僕も「うん。僕も生きてるよ。だから、そんなに自分を責めなくてもいいんだよ。君が生きていたから、きっと僕だって助かったはずなんだからさ」と答えたのだ。すると、僕が生きている事が分かったからなのか分からないが彼女は、また大粒の涙を流し始めると、そのまま泣き続けてしまっていたのだ。そんな状態の彼女を落ち着かせるために抱き寄せようとした僕だったがその直前に「もう大丈夫。泣かないよ。心配かけてごめんね。ところでどうしてタロ-はそんなに強いの?」と聞かれてしまい僕は「僕は強くないよ。君の事を守りたかっただけなんだからさ」と答えを返す。

すると「そんなこと無いよ! 絶対に強いもん」と言い返してきたので、僕は「僕が強くなったんじゃなくて。たまたま、運良く生き延びただけでしかないんだよ」と言いながら、自分の力不足を感じていたのだ。その言葉を聞いた彼女は僕の胸元に顔を埋めるようにして泣き出してしまうと僕は優しくその背中を摩ることしか出来なかった。すると彼女は落ち着きを取り戻してから「どうして? なんの力もない私が、あなたを好きになっても、あなたの足を引っ張るだけだから、迷惑を掛けたくない。だから私なんか放っておいて一人で生きてくれれば良い。でも私は離れることが出来ないんだ。それが悔しいの」と言ってくる。それに対して僕は、ただ静かに「君を守るって約束したじゃないか。忘れたとは言わせないよ」と言うと、少しの間を置いてから小さく「覚えていてくれたんだ。うれしい」と言って来た。それから、しばらくして落ち着いたのか僕から離れてきた彼女が、僕に向かって真剣な眼差しを向けると共に手を差し出してきながら口を開くのである。

そして僕とアリスは互いに惹かれ合うようになってから数ヶ月が経つ。そして、僕達はお互いの名前を呼び捨てにする仲にまで進展する事ができていて今まさに僕達は二人っきりの楽しい時間を過ごしていた。

それは夜中に僕の部屋へ訪れたアリスとベッドの上でイチャイチャしていたときのことだ。僕の唇を強引に奪いに来た彼女は激しく舌を絡ませてきていて僕は抵抗すること無くそれを受け入れた後で「ねえ。タローの全部がほしい」と言い出す。

それから僕とアリスは肌を重ね合い愛を確かめ合っていたのである。僕は彼女と一緒に寝ようと思いながらも眠気が襲ってきていたため、眠りについた後に翌朝を迎える事になった。

朝になり僕は起きると同時に隣にいたはずのアリスの姿を探すと、そこには既にいなくなってしまっていて、少し寂しい気持ちになっていると、部屋のドアが開きそこから姿を現したのは裸にエプロンをつけた彼女だった。その姿を目のあたりにして、僕が「どうしたんだい?」と問いかけると「朝食の準備が出来たから呼びに来てあげたんだ。さぁ、行こう!」と言い残して再び姿を消した。それから服を着た僕は彼女の後を追い食堂へ向かうのであった。

そして朝食を終えた僕は学園へと向かうことにしたのだが玄関を出た先で見慣れた顔の人物を見つけてしまい僕は駆け寄っていく。

「あっ、やっと来たのね」

「えっ?」

「今日も一緒に行ってあげるって言ったじゃない?」

「えっ? あれは夢じゃなかったの?」

「夢? はっはーん。なるほどね。私が夢の中の存在だと思って疑わないほどに嬉しかったの?」

「そっそれは、まあそうなのかな」

「へぇ。ならもっと早く私を起こして欲しかったな。そうすれば、あんなに気持ちの良い思いをせずに済んだのに。全く。もう、知らない」

「ちょっと待って、機嫌直して」

「ふん。もう知らないから」「ねぇ、待ってくれたら今日の授業で分からないところを教えるし。お昼ごはんもお弁当を作ってきて上げるから許してよ。ねぇ、お願いします。お願いします」

「そこまで言われたら仕方がないわね。じゃ、私は先に行ってるね」

「あっ、ありがとう。助かるよ」

「その代わりと言っては何ですが」

「はい。分かってます」

僕は彼女に頼まれていた事をやるために一度教室へ戻る。それから僕は彼女の元へ行くと僕は「あの時は、ちゃんとしたお礼ができなかったと思うんだけど。その件で何か要望とかはあるかな?」と聞く。その問いに対して、しばらく考える仕草をした彼女が口にしたのは僕の腕にくっつきたいというものだった。その要望を叶えた僕は彼女を連れて街へと繰り出す。だが、その前に一つ気になる事があり、僕は「どうして僕に会いにきてくれたの? やっぱり、僕が君に一目惚れしたのが理由なのかな?」と聞いてみたのだ。しかし彼女は首を横に振っていたのだ。そして「私にも良く分からないけど、貴方に惹かれてしまったみたい。貴方のことを初めて見かけた時から気になっていたみたいなの」と言われた。

それから街中までたどり着いた僕たちであったが、僕は彼女にある提案を持ちかける。その内容というのは僕たちが恋人として付き合い始めて間もないので、もう少しだけデートの続きをしてみたいと伝えてみたのである。すると彼女は「もちろんだよ。私は全然構わないから行こうよ。それに、このままだと他の人に盗られちゃうかもよ?」と言われるので僕としては断るという選択肢を選ぶつもりは全く無かったのだ。だから彼女と二人で様々な場所を巡ったのであった。それから数時間が経過し、夕方になると彼女と別れたのである。その時に彼女は「また明日も会いに行くから」と言っていたのだが僕は、その日の夜には彼女に会えるだろうと考えていたのであった。

それから数日間、彼女は姿を見せる事はなかった。そのため僕は心配になって彼女に電話をすることにしたのだが繋がらないのだ。そして僕は心配になってしまい彼女の家まで様子を見に行く事にしたのだが、その場所にたどり着いた僕は愕然としてしまうのである。なぜならば、そこは瓦礫の山と化していて彼女の家のあった場所には何も残っていなかったからだ。僕は急いで彼女が住んでいるであろう寮の方に向かう。そこで僕はある女性と出会う事になる。

「貴様か? 我が娘が、ここ数日で行方知れずになってしまったのは」と目の前の女性は僕に対して怒りをぶつけるように言ってきたのだ。

「どういう事でしょうか? もしかして僕のせいだと言うんですか? もしそうだとしたのならば、僕をこの場から消せばいいと思います。だけど、もしも彼女が僕のせいで亡くなったというのでしたら、僕は何が何でも責任を取るつもりです。それがどんな罰であろうと受け入れましょう。なので僕に彼女を捜させて下さい。必ず連れ戻してきますので、どうか僕に任せて貰えないですか?」

僕が彼女の父親の前で言うと「何を言っているのだ? 貴様にそんな権限があるわけなかろう。ふざけているのか? そもそも何故お前如きに私の大事な娘の命を託さねばならない? もう良い。消え失せろ。さもなくば殺すぞ」と怒鳴られると「待って下さい。確かに僕の行動で、このような結果を招いてしまったのかもしれませんが、僕にも出来ることがあるはずなんです。僕を信じてくれなくていい。ただ僕の事を見ていてくれないでしょうか?」と頼み込むが「ダメだ。お前の言葉など誰が信用できるか」と拒否されてしまったので、僕は彼女の父親に一礼すると立ち去ることにする。それから街の人達から情報を聞き集めようとしたのだ。だが、誰一人としても彼女の居場所について知っている者はいなかったのである。それでもめげずに情報収集を続ける。

すると、その途中で僕と同じ学園に通う生徒のグループと出会い話しかけることに成功すると「あの、実は行方不明になった彼女のことで相談に乗って頂けないかと。どうしても情報が知りたいのです」と言うと、リーダー格と思われる女性が「どうしてそれを先に言って来なかったの?」と返してきたのである。僕はその答えとして「その方と直接会ったわけではないからです。僕も一応探しては見たものの、見つけることができなかったので。もしかしたら既に殺されてしまっている可能性も」と言うと「ちょっと待ってよ。まだ死んでいないはずだから。多分だけど、誘拐された可能性が高いかも。でも大丈夫よ。だって彼女が簡単に死ぬような人間ではないことは私達がよく知ってるでしょ? だから、きっと無事に戻ってくるから安心して」と言ってきたのである。僕はその言葉を聞いて安堵していた。だからだろうか? 僕の目からは自然と涙が流れてしまっていたのだ。その流れ落ちる雫を見ていたグループのメンバーは僕を抱きしめてくれるのであった。

「ほら。これで大丈夫よ。泣き止んでくれたかな?」

そう言われたので「はい。すみませんでした」と謝ってから立ち上がると「あっそう言えば自己紹介がまだだったね。私はアーニャっていうんだ。そして、あっちで座っている女の子がエマって名前で隣に座っている男の人はレイって言うんだよ」と教えてもらったので「ありがとうございます。あっ申し遅れました。僕は橘拓斗と言います。そしてこちらがアリスさん」と答えるとアリスは僕の後ろに隠れていたのだった。

そして僕達はアーニャさんの誘いにより、彼女達の家に案内してもらう事になったのだが、僕達が歩いている道の途中で僕はあるものを発見することになる。それは倒れていて意識を失なっている人を見つけたので、慌てて駆け寄るとそれは見覚えのある人物のようだったので「おい! どうしたんだ? しっかりしろ!」と声をかけるが返事が返ってくることは無かったので僕は急いで救急車を呼ぶとアリスに頼んで呼んできて貰った。しばらくしてやってきた救急車に僕は同行すると病院へ連れて行く。それからすぐに処置が施され、医師から命に関わるものではなさそうという事が分かると、僕は胸を撫で下ろした。その後で救急隊の方に事情を説明すると感謝されて、お詫びとしてお昼ご飯をおごってもらえることになったのだ。

そして食事を終えて店から出たところで僕は「本当に助かりました。貴方が助けてくださらなければ今頃、あの娘は死んでいたと思いますから。改めて、ありがとうございました」と言われてしまう。僕は照れ隠しのために頭を掻きながら「気にしないでください。当然の事をしただけですから」と答える。それから僕はその場を後にするのだが、去り際に僕はその人の顔をよく見ていなかったのである。

それから、さらに数日後のこと、再びあの人物が街中を彷徨っていたのである。僕は見過ごすことが出来ずに彼女に近づくとその手を強引に握ると路地裏に引き摺り込んだのだ。そして彼女は「やっやめて、離しなさい」と抵抗するが僕は必死に説得をする。それから何とか理解して貰うことができたのである。僕は彼女を家まで送り届けた後で、そのまま家に帰ることにしたのだ。だが帰り道で僕は彼女に声を掛けられたのだ。振り返るとそこには彼女が立っていた。僕は不思議に思いながらも彼女を見ると「どう? 驚いた?」とだけ言い残す。僕は「えっ?」と思い困惑していると「今日ね、貴方にお弁当を渡したかったから作ったんだ。いつもの場所で待ってるから来てね」と伝えると、走り去って行くので僕も後を追いかけて走ることにした。

僕と彼女は、あの日のデートをした場所でお弁当を食べている最中なのだが、僕が黙々と食べる中、彼女は楽しそうにしている。

「今日も美味しいかな?」

「うん。とても美味しく食べさせてもらってます」

「そう。それなら嬉しいな。ところで最近何か困ったことはない?」

「特にはないかな」

「そうなんだ。何かあったらいつでも言ってきていいんだから」

それから僕は彼女に質問をしてみた。まず一つ目になぜ急に姿を消してしまったのかを聞くことに。そして次に僕の前から居なくなってしまった原因が分かったなら必ず連絡して欲しいとお願いする。彼女はその僕の言葉を了承してくれたのだが「ただ私は貴女の為に頑張ったのに酷いと思うな」と言われたのだ。

それからしばらくすると彼女は唐突に別れを切り出してきたのである。その理由を聞いたところ、もう僕には必要が無いからだと言われた。そのため僕は、その言葉の意味を理解することができなかったので聞き返すが答えてもらえることはなかったのであった。僕は理由を教えてくれない彼女に対して少しだけ不満を感じていたが何もできないので大人しく身を引くことにすると、僕は彼女と別れたのであった。それから一週間ほど経った頃のことである。突然僕の元に彼女からの電話が来たので急いで出てみる。すると彼女は泣いていた。何が起きたのか分からず慌てふためいていると彼女は「ごめん。実は貴女が街で私を見かけてから、私を助けてくれようと動いてくれている事を知って、それで私は我慢ができなくなって貴女の所に戻って来てしまったの」と言ったのだ。その発言に僕は驚いてしまう。そして彼女の話を聞いた僕は心から良かったと思っていた。そして彼女の無事を確認したところで僕は「じゃあもう僕の元には戻ってこないで、ちゃんと新しい恋を見つけるといいよ」と言うと、彼女は僕の言葉を否定するとこう言ってきたのである。

「いいの。私は拓斗の側にいられれば、どんなに幸せでいられるかを知っているから。それに私は貴男以外なんて考えられないから」と言ってくれたのだ。だから、僕たちは一緒に暮らすようになる。僕がアリスと一緒に暮らしていると、そこにレイという男がやって来たのである。その男はレイという名前だと名乗った。だが彼は僕の知り合いではなかったのだ。だから彼がどうして僕の家に訪ねて来たのかを聞いてみると「君とは前にも会っていて、そこで君に大切な女性を連れ去られてしまったんだよ。でも君は知らないようだね。まぁいいさ、君の家に来た目的は二つあってね。その内の一つ目が彼女の事だよ。あの子を見つけ出せたのは僕のおかげだからね。だから返しても貰わなくちゃ」と言ってきたのだ。僕はその言葉を聞き流すことはできなかったので彼の話に割り込んでしまったのだった。すると彼は僕に怒ると「なんだね? いきなり出てきて失礼じゃないかい? この人は僕の恋人なんだけど。君には関係のないことだと思うけど? それなのに邪魔をする気なのかい? まったく」と言う。

僕は彼から発せられた言葉を聞いて驚くことになる。なんせ、僕はアリスと付き合っていることを一言も伝えていないのだから。それでもなおも彼は言葉を発し続けているので、僕は何も言うことが出来なかった。ただ、僕は彼に彼女が自分の恋人であることだけは伝えると、「そんなことは知ってますよ。そんな嘘をつくくらい僕の行動が腹立たしかったんですか?」と怒りの感情をぶつけてきたので「本当です。僕はあなたとお会いした記憶がありませんから。ただあなたの言うとおりに僕は彼女がどこにいるか知りません。だから、もしも彼女が見つかり次第必ずお知らせしますので、今日のところは見逃してくれませんか?」と頼むが、やはり受け入れてくれなかった。だが僕は諦めずに、どうしても譲らないという態度を取る。そして最後に「分かりました。彼女の事は諦めましょう。ですがもし、彼女の居場所が見つかった場合は必ず僕に連絡をしてください。これは約束ですよ」と言って帰って行ったのである。

だが翌日になってもレイと名乗る男の人から僕のもとにアリスの居場所に関する情報が届くことはなかった。その日を境に僕も彼とは疎遠になってしまう。僕は毎日のように街の中を駆け回っては情報を探し回ったのだが、有力な情報を得ることができずに途方に暮れてしまう。そして僕の中で焦燥感が高まっていたある日のこと、アリスからメールが届いたので確認してみる。内容は、この街の近くに大きな山があるのだがその頂上付近に彼女は連れていかれたのではないかという内容であった。それを確かめたくとも僕には無理だと断念して、とりあえず彼女に助けを求めることにしたのだ。

それからアリスの救出をしてから二日後に僕は彼女が攫われたであろう山に登り始めていた。そして僕は彼女が囚われていた小屋を発見すると、その扉を勢いよく開け放った。そして部屋の中には彼女がいたのだ。その姿を僕は見ると嬉しさのあまり抱きしめてしまった。それからしばらくして落ち着きを取り戻した僕は彼女に今まで何をしていたのか聞くことにした。そして彼女は「ちょっとした実験に使われていたみたいで、その途中で逃げ出したんだ」と答えた。そして僕は彼女を解放するために戦ったのだが、僕は負けてしまう。だけど彼女は僕が逃げ切れるように足止めをしに行ったのだ。

それから数分後、アリスが戻ってきた。どうやら無事に抜け出すことが出来たらしい。それからアリスの案により僕は下山することになったので歩き出そうとしたが身体が動かなかったのである。僕は不思議に思い身体を見ると、手足に拘束具が装着されていて動かす事が出来なかったのだった。そのため仕方なくその場で待機していると、誰かの声が聞こえたのだ。すると、いつの間にか僕達の前に現れた男に「ご苦労様でした。お陰で計画通り上手くいきました。感謝していますよ。さて、君たち二人をこのまま逃がしても面白くないので、今からゲームをしてもらいます。これから貴方達は鬼ごっこをしてもらいます。貴方達が勝ったなら自由にして差し上げますが、僕たちが勝った場合ですが、貴方達は奴隷となっていただきます」と言われると突然、僕とアリスは謎の薬を飲ませられてしまうのであった。そして僕はアリスと共に閉じ込められてしまい、その後で僕は手錠をかけられてしまったのだ。そしてそのせいで逃げ出すことが出来なくなってしまう。そのあとで、あの男はこう言って来た。

「それでは開始してください」

そして僕達の鬼ごっこが始まった。僕は何とか脱出しようとするのだがなかなか上手くいかない。しかも僕の事を心配した彼女は「私の事を気にせずに、先に逃げて下さい」と言われたのだ。僕は必死に逃げてはみたものの結局捕まってしまい再び同じ場所に戻ってくると、そこで僕の事を待っていた彼女と共に手錠を掛けられたのである。そして僕はその日を最後に二度とアリスの顔を見ることは無かったのだった。それから数日間のことだが僕はひたすら逃げ続けたのだ。

僕は必死に走り続けていたが背後からは僕を追って来る者たちがいるのだ。それは、アリスを捕まえようとしていた組織の幹部である。その男たちは「おい、待て。待てって言っているんだ。くそ、なんて速さだ。追えないぞ。おい、こっちからも挟み込むぞ」と言われてしまった。そのため僕は慌ててその場から離れようとしたのだ。それから数時間後のことである。なんとかして逃げた僕は、あの時と同じ様に山の中に隠れて、息を整えて一休みしていたのであった。

すると、そこへ先ほどの男が姿を現した。僕は驚き、急いで逃げ出しようとするが男に阻まれてしまうと、そのまま腕輪のような物を着けさせられて身動きが取れなくなってしまったのだ。すると男は僕に「さっきまで散々暴れてくれたおかげでこっちも大変だったんですよ。お陰で仲間が何人か殺されちゃいましたし。本当に迷惑です。ところで僕が何故ここまで追いかけ回していたのかと言いますと、実は貴女と、もうひとりの女の子にお願いがありまして。なのでその交渉をしたくてここにやってきました」と言う。だが男は続けて「もちろん僕が勝つのが前提ですけどね。ちなみに僕はこのゲームを『逃走者狩り』と呼んでいますが、さあ早速始めて頂けますか?」と提案してきたのだ。そして僕はこのチャンスに賭けて、ここから逃げる方法を模索し始めた。そして男が「そうですか。でも、貴女はもう動ける状態じゃないと思いますが、よろしいのでしょうか? それで良いというのであれば構いませんが」と言ってくるのであった。その言葉に僕は焦るが冷静になり、どうにかしてこの状況を切り抜ける方法を思案し始めた。だが一向にいい案は浮かんでこない。それどころか男の仲間が僕の周りを囲んで来ており、完全に逃げ道がなくなっていたのであった。僕はそんな状況の中「もう、お終いだ」と思い諦めかけた。その時であった。突然地面から煙が立ち上ると、その中から見覚えのある人物が現れる。

僕はその人のことを見て安心すると、助けてくれるようにと頼んだのだ。その人物は、僕のことを優しく抱擁すると、その胸で僕の顔を埋めさせると、その人は男に向けてこう言ったのである。「そこまでだよ」と。すると僕のことを襲おうとしていた連中も突然地面に飲み込まれていき、全員姿を消すことになった。そして僕のことを助けに来てくれた女性は「さぁ拓斗、帰ろう」と言うと、僕のことを抱きしめたまま空間移動を行ったのだ。そこで僕が目を開くとそこには僕のよく知っている顔の人物が立っていたのである。そして彼女は、僕と目が合うと笑顔を見せながら僕を家に連れて行ってくれるのであった。僕は、彼女がどうして僕を助けに来たのかを聞いてみたのだ。そして彼女の口からは驚くべき言葉が出てきた。僕はその話に耳を傾けることにしたのであった。「あのね、私はずっとあなたのことが好きだったのよ。だから助けに行くのが当然でしょう? だってあなたがいない世界なんて私にとっては地獄みたいなものだもの。だから絶対に失いたくない。あなたは私を救ってくれたヒーローなんだから。だからこれからはずーっと側にいてよね」と言って抱きついてきたのである。その言葉を聞いた僕は嬉しくて涙を流してしまった。それから少し時間が経つと僕はある事を思い出すことになる。それは、この女性の名前は「レイラだ。思い出してくれてありがとう。僕は君が大好きだ」と彼女に言われてしまったからだ。僕は彼女に抱きつきたかったのだが両手に手錠が掛けられていたためそれができなかった。そんな様子にレイラが気づき、外してくれると、彼女は僕を抱き寄せてからキスしてくれた。それからしばらくしてレイアと僕は、お互いに見つめ合った後に自然と唇を重ねていたのであった。僕はレイラと結ばれたことで幸せを感じていた。

「うぅんっ」

僕は夢から目を覚ましたので体を起こすと隣で寝ているレイラのことを見ながら頬笑んだのである。それからしばらく僕はレイリアと一緒に過ごしているうちにいつの間にか眠りについてしまったのであった。

僕とレイアが恋人になって数日が経過したある日、僕の元を訪ねて来たのは僕の両親と姉と妹の四人であった。どうやらみんな揃って来たみたいで、その目的はレイナの誕生日パーティーの相談らしい。そこで、僕たちはレイナの欲しいものが何なのかを考えることにし、色々と意見を出し合ってはいたのだが、最終的には本人に聞いてみようということで決まったのである。そして数日後には誕生日当日となり、その日はレイナは一日家でゆっくりと休むこととなった。だが僕は仕事の関係でどうしても休めなかった。そのためその日は仕事を早く切り上げることにしたのである。そのおかげもあってかその日の夜は家族と久しぶりに一緒に食事ができたのだ。その翌日になると今度は、僕の両親の結婚記念日が迫っていたのだ。そこで僕はプレゼント選びをするためにある場所へと向かう事にしたのであった。

それから僕は電車に乗って移動するとショッピングモールへと辿り着いた。そのお店では僕が働いている会社の上司であり、そして幼馴染でもある、佐藤和哉さんへのプレゼントを選ぼうとしたのだが、結局、何も買わずに帰ることにしたのだった。その翌日のことだったが僕の元に連絡が入った。その連絡の主とは僕の姉の沙耶花だったのだ。なんでも「今すぐに帰ってこい。大事な用事がある」ということらしく、その日は特に用事もなかったので、大人しく家に帰宅したのであった。すると僕はリビングで待っていると、いきなり姉と妹と父がやってきたのだ。

どうやら今日は父の日だったようで僕たち3人は、母のために父に日頃の感謝を込めて母の日に贈った物を用意したのだ。それなのに父は僕たち三人に対して、何か不満を持っているようなので、その理由を聞き出そうとすると、「俺が妻にしてもらったのは、まだ高校生だった時のことだ。つまりは、あの時お前たちが産まれたのと同時ぐらいの出来事で、正直に言えば俺はあの時は、とても嬉しかったんだよ。だが今の俺にとっての嫁である咲良と付き合えて結婚したのはその二年後だぞ。しかも子供までいるというのに、どうして、その、もっと甘えてくれても、いいんじゃないか?」と口にしたのだ。僕はその話を聞いた時に「じゃあさ今度二人でどこかに出かけてみるのはどうかな?」と提案したのであった。それから父と母は仲良く出掛ける計画を立て始めた。それから数日後のことなのだが、その約束を果す時がようやく訪れる事になったのであった。そして僕は、そんな二人のことをこっそりと見守る事にしたのだ。そして、その時が訪れた。二人は楽しそうに会話をしているようだ。その様子を見た僕はとても微笑ましく思ったのだ。すると突然だった。そのタイミングを見計らっていたかのように、僕のもとに誰かが現れたのである。

それは誰であろうかと一瞬だけ疑問に思うと、その正体に気づいた。それはアリスであったのだ。その彼女は何故か僕の前では敬語を使わなくなり馴れ馴れしい態度を取り始めていたのである。だがその事は悪い気分ではなかった。だが彼女もまた僕に好意を寄せており、さらには彼女の婚約者の『白狼』まで僕の事を好きでいてくれたのだ。

そしてそんな状況の中で僕はある決断を迫られることになった。その出来事は『勇者』と呼ばれる人たちとの鬼ごっこが始まって一カ月後のことであった。

「拓斗様。ついにあの人がこちらに来ます。ですのでそろそろこの村を出て行かれるか、もしくは身を隠した方がよろしいかと思います」と言ってきたのだ。それは唐突で衝撃的な内容であった。なぜなら、あの人のことが好きなはずのアリスからそのようなことを言われたからだ。アリスの気持ちを疑っているわけじゃないんだけどさ、ちょっと複雑な心境になるよね。だってさ、僕の事好きじゃないって言っちゃったからさ、それならなんでこんなことを言い始めたのか、その本当の理由が知りたいと思ったのだ。

「ごめん、僕さ君の言っている意味が分からないよ。もう少しわかりやすく説明して欲しいんだけど。そもそもさ、『あの人』ってだれの事?」と僕は困惑しながら言うとアリスは何も答えることなくただ悲しそうな表情を見せたのだ。それを見た僕はかなりショックだったし戸惑ったのだ。それからしばらくして僕は決心することにする。このままでいるのがいけないって考えた僕は「アリスちゃん、とりあえず僕はここを離れることに決めたんだ。そして僕は君を幸せにする。君と離れる事になるけど待っていてくれないか?」と言う。すると「私にはあなたが必要です」と口にしてきたのである。

だが、彼女は僕の質問に対しては「今はこれ以上お話しすることができません」と口にし僕のことを抱きしめてくれたのだ。

それからしばらくの間は僕も彼女と会っていない状態だった。そして僕はその状況に耐え切れなくなったので彼女を自分の部屋へ呼ぶことにしたのである。それから僕たちは、お互いに愛を囁き合ったのだ。

そのあとのことだ。僕は、アリスに「実は僕さ。異世界に行ってたんだよ。それでその世界で魔王を倒したからこうして生きて戻ってこれた。そしてそのお陰で元の世界に戻れた。でも、この世界ではもう魔王はいないから安心してほしい。でも、もう会うことはできないだろうね」と言って、別れの言葉を口にしてその場を去ろうとしたのである。

しかしだ。僕の目の前にいる人物は「やっと、捕まえました」と言いつつ、まるで蛇に巻き付かれているかのような感覚を覚えさせられたのだ。僕はそんな彼女に「なんですか、この力」と問いかけると彼女は、笑顔を見せながら僕の頬に手を当てて唇を重ねて来たのである。そしてそのまま舌を入れられ激しく絡み合わせられたのだ。すると次第に僕の体は熱くなり、ついには我慢の限界が訪れてしまったのだ。それからしばらくして、彼女の唇から離れると、彼女は「拓斗様。私を救ってくれて本当にありがとうございます。私、嬉しいのです。これでずっと一緒にいられるんですよね。それに、あなたの子供を妊娠することができたのでこれからもよろしくお願いしますね」と笑顔を浮かべていた。その言葉を聞いた僕は嬉しくなって「ああ、絶対に幸せにしようね」と伝えると、再び口付けをしたのであった。

それから数日後のことだ。

僕の元に手紙が届いたのである。その中身は、姉さんが産気づいているから病院に急いで向かうようにというものだった。僕は慌てて着替えを終えるとその手紙に書かれた住所へと向かって行ったのである。そしてたどり着いたのは病院で、そこには、姉の沙耶花が入院しているのである。僕は沙耶花の側へと近づくと僕はその事を伝えたのだ。すると彼女は僕の手を掴みこう伝えてきたのであった。

「ねぇ、赤ちゃん産まれたら名前付けてあげてね」

僕は彼女に言われなくてもそうするつもりだと答えようとしたらだ。彼女は、僕の言葉を遮るようにして、僕のことを見つめて笑みを見せていた。

僕はそれから数日が経過したが結局出産には間に合わなかったのである。その翌日のことだった。僕の元にやってきた人物とは僕の妹の優香であった。なんでも僕にあるものを届けに来てくれたらしいのだ。僕がその物を受け取り確認してみるとそれは僕が姉さんに送ったお守りと同じものであり僕は思わず嬉しくなったのだ。そして妹から話を聞くと「拓兄が元気そうでよかったよ」と言われたのである。僕はそんな妹に対して「心配かけてすまなかった」とお詫びのつもりで謝ったのだ。すると妹は僕のことを見ながら嬉しそうな笑みを見せて「ううんっ、いいの気にしないで。それよりも姉さんの事助けて欲しいんだ。拓兄の事が大好きな姉さんなんだからさ」と言ったのだ。だから僕はその言葉に答えるために全力で頑張ることを誓ったのである。

そして僕は母の元へ向かおうと家を出ようと思った時にふと、僕の机の上にある本に目が行ったのである。それは僕が中学生の頃までは読書家だったのだ。その時に僕が読んでいたのは異世界転生に関するもので、その時の僕の憧れが「チートな能力を貰うこと」だった。そして今の僕の現状はというとだ。まさか僕の憧れていた能力そのものを手に入れていたのだ。

そして僕は早速ではあるがその本を手にとって中を読んでみるとその本の最後にこんな風に書かれていたのだ。

《貴方の望む能力はこの本の中にあります。どうか手にしてください。そして私の望みを叶えてほしいのです。》と、その言葉を読み終わった後にそのページには、僕のよく知る女の子の姿が描かれたカードが入っていたのであった。僕は、それを見て思わずニヤけてしまうほど喜んだのだ。なぜなら、僕が昔から好きだったヒロインのイラストが描かれていてしかも名前が同じだったからである。その事に興奮を覚えたのである。だが、それと同時に疑問に思うことも出てきてしまう。どうして僕はそのヒロインの名前を知っているのだろうかと不思議に思ったのである。

そしてその疑問は解けたのだ。僕は、その名前は『アリス』という名前で、昔、アニメやゲームで大好きだった作品の主人公の幼馴染のキャラクターの名前で、その作品はアニメ化までされていて人気作品だった。だが、僕は、アリスという名前のキャラが出てくる作品にあまり良い印象を持っていなかったのだ。それはアリスの声優さんが原因であった。その声優は、男であり僕はその声優の見た目にかなり嫌悪感を抱いていたのである。その事を思い出した僕は少し複雑な気分になってしまう。するとだ。突然だがアリスから連絡が入ったのである。どうやら僕の事を見ていたようで僕はアリスに連絡を入れる。そのやり取りでアリスは「拓斗様のことを見ていました」と言われてしまい僕は顔が真っ赤になってしまった。そんな感じのやりとりをしているうちに、アリスからの告白を受けたのだ。僕は彼女の気持ちを聞いて嬉しくなる。だってさ、アリスの事は昔から好きで初恋の子でもあったので僕は嬉しくなったのだ。それからアリスと会話を続けるのだが「アリスちゃんってさ僕が高校生の時にさ僕が好きだったゲームの主役に似てるよね。ほらあのアニメとかね」と話してみたのだ。そうすると彼女はそのアニメの内容を説明してくれたのであった。

そして、それからアリスとしばらく会話を楽しんだ僕は、彼女が僕に「そろそろ帰らないとお母さんに怒られちゃいますよ」と言ってきたのだ。なので僕は、その言葉を鵜呑みにしてアリスに「それじゃ、そろそろ僕は家に戻ろうと思うんだ」と言って別れの挨拶をしたのだ。だが、アリスの様子がどこかおかしかったのだ。彼女は何かを言いたくて仕方がない様子だったので僕はアリスのことを呼び止めたのだ。そして彼女は「拓斗様、実は私はあなた様にお話ししたいことがあります」と真剣な表情で言ってきたのである。だがその話をする為にはどうしてもこの場で話さなければならないことがあるらしく僕の耳を自分の口に当てろと言ってきたのだ。そして僕はその指示に従うと突然僕のことを押し倒して来たのである。僕は突然の出来事で頭が混乱してしまったのだ。そして、そんな状態の僕にアリスは、顔を僕の方に向けるとそのままキスをされたのだ。僕はアリスの行動の意味が全く理解できずされるがままであった。そして僕は、そんな彼女の行動によって徐々に落ち着きを取り戻し始めた。しかし、落ち着いたからといってすぐに状況を理解できるはずもなく僕の思考回路は停止してしまうことになる。アリスが唇から離し終えてから「これが私が今できる精一杯の気持ちです」とだけ伝えてくるとその場から立ち去って行ったのだ。

僕はそれからしばらくの間はアリスが残した「これは私の覚悟です」という言葉を頭の中でぐるぐるさせ続けていたのである。しかしだ。そんなことを考えていても始まらないと自分に言い聞かせるとまず最初に母のお見舞いに向かうことにしたのだ。そして母の元にたどり着くと母は僕を見るなり涙を流しながら「よかった、本当に拓ちゃんで、よかった。もう目を覚まさないんじゃないかって、不安になってたんだよ」と声をかけてきたのである。そして僕はその言葉で泣きそうになるが堪えることにしたのであった。僕はそれからしばらくして落ち着くと姉さんは大丈夫なのか聞くことにすると「今は落ち着いているわ」と答えてくれたのである。

それから僕は自分の病室に戻ることに決めたのであった。それから数分が経過すると看護師の女性がやってきて、面会時間が終了だと告げられて仕方なく僕は帰宅することにするしかなかったのである。

翌日になると、僕の元にやってきたのは、アリスであった。彼女は「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」と深々と謝ってきたのである。僕は「全然、迷惑じゃないから謝らなくていいよ。それとこれから一緒に頑張ろうね」と言うとその言葉に彼女は涙ぐむように返事をして来たのであった。

それから数日間は僕は、彼女からいろいろなことを教えられて過ごしたのである。それから退院の日を迎えると彼女は僕を抱きしめながら泣いていたのである。そして僕は彼女を宥めながらも笑顔を見せたのだ。それから僕は退院してからも彼女と過ごす時間が増えたのであった。そんな生活が続いたある日のことだった。僕が彼女に「今日から仕事を再開するよ」と言うと「無理しないで下さいね」と言われたのである。僕は彼女の言葉を聞きながら、彼女に言われた通りに、体を慣らすため散歩に出かけたのだ。その道中のことだ。僕を待っていたかのように目の前に現れた少女が「やっと見つけましたよ、拓斗様」と言って近づいて来たのである。僕はその姿に見覚えがあったのだ。なぜなら僕の元にいた女性だったからだ。そんな僕の反応を見た彼女は「あれっ?おかしいですねー、忘れてしまったんですか?」と言ったのである。

そしてその女性は続けて口を開いたのだ。「私の名前はアリシアと申します」とそう言った。僕がその名前を聞いた時、僕はある違和感を覚えてしまったのだ。それは、その女性の見た目が姉さんと同じ姿だったのである。僕が戸惑っていると、その女性は「そういえば、拓人さんに言っていませんでしたね。私は貴方の姉ですよ。まあ血は繋がってませんけどね」と言われてさらに驚かされるのである。だけどだ、僕のことを兄と呼ぶ理由がわからず困惑していたのだ。するとその姉さんもとい姉さんに似た人が、突然僕の腕を掴み引き寄せられると胸元に押し付けられたのだ。そして「拓斗さんは私の事が好きなんですよね」と言われるのである。僕は恥ずかしくなって離れようとするのだがその人の力は強く逃れることができなかったのだ。そして僕は、「はいっ」としか答えられずにいたのである。

それからその人は「それでは行きましょう」と言って僕を無理やり車に乗せて何処かへ連れ去ろうとしたのである。僕が「ちょっとどこに連れて行くつもりですか!?」と聞いてもその人からは「内緒です」とだけ言われてしまい僕は抵抗をやめる。

そんなやり取りをした後は僕はずっと無言のままその人に言われるがままに行動することになったのである。そしてその日から僕の運命が大きく変わることになったのであった。そして次の日の早朝のことであった。僕と姉さんに似たその人が家の前に姿を現したのである。そして姉さんに似たその人物は僕に近づき話しかけてきたのだ。

「おはようございます、拓斗さん。さっそくなんだけど、お話があります」と僕に向かってそう言ってくると僕の手を引っ張るように歩き出す。僕もそんな状況の中大人しくついていく事にしたのだ。それから少しすると大きなマンションに到着し僕は唖然としてしまう。そして僕は、その建物を見上げていると突然、建物の中に入るように指示されてしまったのである。

僕は戸惑いを隠せないが指示に従って中に入ったのだ。するとそこには見たことのある女性が立っていて僕は「どうしてここに?」と思って質問をする。すると、その女性はこう答えるのである。その人物とは僕の母さんでその人だったのだ。どうゆう事だ、なぜ、母さんの姿がこの建物の中にいたのかと不思議でしょうがなかった。そんな僕の疑問にその人が「母さんの事は気にならないのかな?」と僕に問いかけて来るのである。その言葉を耳にすると僕は動揺してしまったのだ。なぜなら母さんがここにいる事に疑問を持たなかったからである。するとその人は、母さんの事を僕に紹介し始めたのだ。僕はその名前を聞いて驚くことになる。なぜならその名前は母の名前ではなかったのだ。その人の名前こそはアリスだったのだ。その話を聞いた時に僕は、混乱して何が何だかわからなくなっていたのである。僕は「アリスって誰だよ」と独り言を言うように言うとそのアリスが「私はアリスですよ」と言ってくる。

そして僕は「なんで、アリスなんだ、その、お前は姉さんだろ」と言い返したのだ。だが、彼女は「拓斗さんには、私の名前を伝えていませんでしたね。改めまして、アリスこと、アリス様はこの世を創り出した創造神にして、すべての神様の母で、全知の神様でもある女神なの」と言うのである。そしてその事を聞かされた僕の脳内はパニックになりかけていたのだ。すると彼女は僕の頭を撫でてきて優しく語りかける。「安心してください、アリス様は拓斗さんの味方で、そしてこの世界を救える唯一の救世主なのよ」と言ってきてくれたのである。

するとアリスが僕に向けて真剣に話をしてきたのであった。そして僕は彼女の言葉に納得してしまうと何も言い返せなくなってしまったのであった。僕は「どうすればいいんだ」とアリスに相談することにしたのである。すると彼女は僕の肩に手を置き「大丈夫よ。必ず私が守ってあげる」と自信満々に言ってきたのであった。

それからアリスと話を進めていくうちにわかったことがある。それは、アリスと母さんの容姿が似ていたことがだ。その理由を聞くために僕は母にアリスの事を紹介してもらったのである。彼女はアリスのことを紹介すると「拓斗のお嫁さんならアリス様がお母さんになるって事よね」と意味深な発言を口にしてアリスのことを抱きしめたのだ。そんな光景を見て、僕は心の中で「母さんが、あの時のことを覚えていてくれていたなんて」と嬉しかったのだ。

僕はその言葉の意味を知りたくて「アリスに聞きたいことがあるんだが、この世界の事を教えてくれないか?」と言ってみた。アリスが「わかりました」と言ってこの世界についての説明を始めてくれたのである。その話を簡単にまとめると次のようになるのだ。

この異世界は元々アリスという女性が創り上げた世界でそこに神々が住んでいたのだ。アリスはその世界を管理する役目を持っていた。だがある日を境にこの世界に魔族の侵略が始まってしまったのだ。この世界は、この宇宙とは別の次元にある世界であり、この星を包み込むように巨大な壁が存在し、その壁に穴を開けて入ってきたのが魔族なのだそうだ。そして僕たちが住んでいるこの場所はアリスの世界から少しだけ離れた場所に存在するらしい。つまりは地球だ。そしてアリスが魔族との戦いに敗れて封印されてしまう。その時アリスは僕を逃がして一人で戦う決意をしたのだという。しかし僕一人だけでは絶対に勝てないとわかっていたのだ。なのでアリスは自分が力を失った後も、自分の分身を作っておき、僕の元へと送り出したのだと言う。それが今、目の前にいるアリスだと言うわけだ。

僕は、この話を聞いた時、「僕はいったい何の為に転生させられたんだ」と思ったのだ。するとアリスは「ごめんなさい。あなたを守る力がなくて。だから私はこの世界を一度破壊して新しく作り直すことを決意したのです」と言って謝ってきたのである。そして彼女は、この世界が破壊される前の記憶を思い出したようだ。彼女は記憶を取り戻した事で本来の使命を思い出すことが出来たのだと僕に伝えてきたのだ。彼女はそれから、この世界のことを詳しく僕に教えてくれたのである。まずこの世界の名前が『イデア』と言うのだ。

彼女は、まず初めに「これから貴方が、魔王を倒す勇者となってもらいます」と伝えてきたのである。そして彼女は僕の目をじっと見つめながら言葉を続けた。

「そして貴方にはこの世界の運命を変える力を与えましょう」と言った。そして彼女は「貴方は選ばれてしまった存在、でもその運命を恨まないで、むしろ喜ばしいことです」と言われたのである。それから僕は彼女に質問したのだ。

「僕は本当に勇者になれるのだろうか」と聞いてみると彼女は「なれますよ。私が認めた人ですから」と答えてくれるのであった。

そして僕は彼女の言葉に期待すると同時に不安にもなったのである。その日はもう夜遅かったので僕はアリスの家で泊まらせてもらうことになったのだ。僕が寝ている時に彼女が何かをしていたのは知っていたがあえて聞かなかったのである。それから翌日になると僕は、彼女に呼び出されたのでその場所へ向かうことにした。すると、そこで待っていた人物こそは僕だったのである。

僕は驚いてその場で立ち尽くしていると彼女は「これが私と拓斗様の姿です」と言うと僕と瓜二つの人物が僕の前に姿を現す。その姿は鏡を見ているかのようだったのだ。その姿を見て僕はあることを思い出していたのである。僕はこの世界に転生してくる前に、僕の姿をそっくりそのまま再現して作られた人形を使って実験をされていたのだ。それは僕の遺伝子を使った人造人間を作ることだった。その研究の成果もあってか僕の肉体を人工的に作ることに成功したのである。

その僕の人造人間の名は『零号機』と呼ばれている。僕はその人型の人形が僕と同じような見た目をしていることに驚き戸惑っていると、彼女から説明を受けてしまうのである。その人型に僕の脳のデータを入力された結果が、今の僕の容姿だという事だ。僕はそれを理解して僕はどうしたらいいのか迷ってしまうのである。そして僕はその女性に対して「僕は一体どうなるんだ」と疑問を投げかけると彼女は「拓斗様、私は貴方様をお待ちしておりました。私はこの世界を崩壊させる為に生み出された兵器です。私は今までに沢山の人々の命を奪ってきました。それでも私は後悔はしていないんです。私は私の大切な方を救う為なら命など捨ててもいいと思っているのです。それに私の命はこの世界で生きる人々を守るためにあります」と言ってきたのだ。

その話を耳にすると僕はその女性に近づいて抱きしめた。そうすると彼女は突然泣き出してしまったのだ。僕はどうしてそんな事を口走ってしまったのか自分でもわからないまま行動に出てしまったのだ。すると突然僕の目から涙がこぼれ落ちるのであった。そんな僕の行動を見たアリスも僕と全く同じ行動を取り始める。そんな二人の様子を目にした僕たちは涙を流し続けていた。

しばらくして落ち着いたところで、僕はアリスと一緒に今後の事を話し合ったのである。僕はこれからこの世界の運命を変えなくてはいけない。そしてその方法を一緒に考えていかなくてはならないのだ。僕はアリスと会話を進めていくと一つの結論にたどり着く。それはこの異世界の人たちが魔族たちを倒してしまえば問題がないのではと考えたのである。僕はそのことをアリスに伝えると、その意見に賛成してくれるのだった。

こうして僕は、勇者になることを決意したのである。そうして僕たちの物語はここから本格的に始まるのであった。そして僕はアリスにこう言ったのである。「僕のことを助けてくれてありがとう。アリス、僕のお嫁さんになってくれるかな?」と。

僕と母さんにアリスが「今日から家族ね」と言って僕の事を迎えに来てくれたのだ。母さんはアリスを見て「あらあら、アリスちゃんったら。また綺麗になっちゃって」と言っていたのである。するとアリスが「えへへっ、褒められた。うれしいな」と子供のように喜びながら笑みを浮かべていたのだ。

僕はその笑顔を見ると胸の奥が熱くなるのを感じてしまった。その笑顔を見ているだけで幸せな気持ちになってしまう。そして僕はそんな感情が芽生え始めている事に気づくのである。

僕の名前は高橋 優斗だ。高校一年生だ。今年受験を控える高校生でもある。そして今日は、高校の入学式がある日でもあった。だが僕は朝起きると頭がぼーっとしてしまい中々ベッドから起き上がれなかったのだ。僕は昨晩の事をあまりよく覚えていなかったのである。だが、僕は自分の体に妙な違和感を感じていたのだ。その感覚がなんなのかを確かめようとした時、僕の頭上から声が聞こえてきたのである。その言葉に僕は「はい」と返事をするしかなかったのである。そして僕は彼女の話を聞くうちにだんだんとその話を理解できるようになってきたのだ。そして僕の目の前に現れた少女は「これからよろしくお願いします」と言ってくる。僕は「君が僕の体を治してくれたんだよな。ありがとう」とお礼の言葉を述べたのである。

そして僕は、彼女に名前を聞いたのだ。すると彼女は「申し遅れてしまいすいません。私の名前はリゼといいます。」と自己紹介を始めた。僕はその名前を聞いてどこか聞き覚えのある気がしたのだがすぐに思い出すことがなかったのでとりあえず彼女の言葉を受け入れることにしたのである。そして、彼女は続けて「貴方様のことは旦那様と呼ばせてもらいますね」と言ってきて僕の手を握ってきたのである。僕としては「まだ僕は学生だし結婚はできないんじゃないかな」とやんわり断りを入れてみた。しかし彼女は僕の意見を聞く耳を持ってはくれず「ダメなんですよ」と言うだけだったのだ。彼女は「私がこの体になってからは、もうずいぶん時間が経ちましたしそろそろ子供が欲しいなと思っていたところなので」と言い放つと、顔を赤くしながら照れ始めたのである。僕はそんな様子を見ていると、何も反論ができなくなってしまい言葉を飲み込むしかできなかったのだ。

彼女はそれから、僕の部屋にあるタンスの中に入っていたスーツを身に纏っていた。その姿を眺めていた僕の目の前には一人の美人が現れて見惚れていたのだ。それから彼女は僕に着替えるように言ってきたので、僕は急いで身支度を整えると、リビングの方へと向かったのである。

僕がリビングに入ると、そこには二人の女性が立っていたのだ。その二人を見て僕は思わず「あ、あれ?母さん、それにアリスまで」と言うと、母さんとアリスは同時に僕の方を見て「あらまぁ~」と言うのであった。母さんに「おはよう」と言うと、母さんが「拓斗、いつの間に女の子を部屋に連れ込んだのよ。お母さんに教えなさい」と言われてしまう。

アリスが僕の代わりにその言葉に反応すると、「違いますよ。この人は拓斗さんの彼女さんです」と言ってきたのだ。その言葉を受けて僕は焦りながらも「ちょ、ちょっとアリス、いきなり変なこと言わないで」と言ってしまう。するとアリスは僕に近寄ってきて「だって本当のことですもん」と言ってくる。

それから、僕は「母さん誤解しないでほしいんだ。僕に付き添ってくれてる子で名前はリゼって言うんだ」と必死に弁解していた。そして僕はアリスが着ていたワンピースを僕に似合いそうだと、プレゼントされたのだ。

僕はそれを身につけてから外に出てみると僕は驚きを隠せなかったのである。僕が住んでいた場所とは景色が全く変わっていたのだ。

僕が「ここどこだよ」と言うと、僕の横で歩いていた彼女が説明をしてくれたのである。ここは、地球ではない別の惑星だと教えてくれたのだ。僕はこの説明をされる時に、この星の名前を聞いていたのである。その世界の名前は『イース』と呼ばれていたのだ。僕はその話を聞いて驚いていたが、それ以上に驚くことがあったのだ。その『イース』の世界は、魔法が存在していて、魔物や魔族が存在しているらしい。そして僕にはその能力が備わっていて、魔王を倒す為に僕が勇者として召喚されたことを彼女は僕に告げたのだ。僕はその言葉を聞いて少し戸惑いながらも受け入れることにしたのである。

すると、突然地面が揺れ始め地震が起きたのである。その地震で建物が崩壊し始めるので僕はその瓦礫の下敷きになりそうになると彼女が僕の前に現れたのだ。そして彼女は、地面に手を当てると僕に向かって「私が拓斗様を守りますので大丈夫ですよ」と言うと地面が大きく揺れ動く。すると僕は気を失い倒れこんでしまったのだった。そして僕はその日一日だけアリスの家で暮らすことになったのだ。

それから数日が経過して僕は目が覚めると体が動かないことに気づいたのである。そして目も開くこともできず僕は恐怖心に襲われていた。その時だった。僕の目の前から優しい女性の笑い声が聞こえてくるのである。その女性の声の主は、どうもアリスという事が分かったのだ。そして僕は自分がなぜ生きているのかを不思議に思っていたのである。僕はどうしてこの女性に生かされているのかを考えているうちに眠たくなってきた。僕が再び眠りに落ちていく時にアリスは僕の頭を優しく撫でてきたのだ。その感触が気持ち良く、このまま意識をなくしたいと思えたのである。

僕は目覚めるとそこは見知らぬ場所で、ベッドの上に寝かされていたのである。そして、隣にアリスの姿を見つけると「アリスごめん。助けてくれてありがとう。」と感謝を伝えたのである。その言葉を耳に入れると彼女は僕に抱きついてくきたのだ。

そして僕は、彼女にいろいろ聞いてみることにする。そしてまず最初に僕は「僕の事を助けたってどういう事?」という言葉から始めてみた。そうすると彼女は嬉しそうな表情を浮かべながらこう答えたのである。

彼女によると僕を助けるために今までずっと一緒に行動してくれていたようだ。僕が目覚めたことに気づいて駆けつけてくれたらしい。そして僕の体は衰弱していて危険な状態だったようでアリスが命を吹き込んでくれたのだと言ったのである。そう聞くとやはり僕は命の危険にさらされていたみたいだ。だが今は体の方は問題ないと感じるのであった。そう思うと僕の腹の虫が鳴ったのである。

それを耳にして彼女は食事の準備に取り掛かると数分もしないうちに美味しそうなお肉料理が出来上がる。彼女は「たくさん食べてくださいね」と笑顔で言うと、僕は目の前に出された肉を口に運んでいったのである。僕が一通り食べたところで僕はある事を思い出す。「あ、あのさ。今更だけど僕のこと守ろうとして死んだんだよね。ごめんね、僕のせいで死なせちゃって」僕はそう口にするとアリスが笑顔でこう言ったのだ。「ううん、違うよ。私はあなたの事を絶対に守ると決めたんです。あなたを守る為なら、私は死んでもいいと思っているのです。だから私に謝らないでくださいね」彼女はそんな事を言うと僕の頭を撫でてきたのである。僕はそんな言葉をかけられて思わず涙が流れ出てしまったのだ。

彼女は僕が落ち着くまで背中をさすりながら慰めてくれていたのである。しばらくすると落ち着きを取り戻すことが出来たのである。そして、アリスは僕にあるお願い事を持ちかけてきたのである。それは「私と結婚して子供を産んで欲しい」とのことだった。だがそれは簡単に決められるものではない。僕は彼女に断りを入れようとするとアリスが先に口を開いたのだった。「やっぱり、拓斗君は、私のことが嫌い?」と言うのだ。僕は「ち、違うよ」と言ってしまう。そして「僕みたいな平凡な人間じゃなくてアリスはもっといい人が見つかると思うんだよ。ほら、僕なんて何の才能もないしさ」と言うとアリスは頬を赤らめ照れながら「私は、あなたが良いの」と言ってきたのだ。そして「それに私はもう十分すぎる程待ったんだから、早く決めてほしいな」と急かすように言ってくる。僕はこの場で決断しなくてはいけない状況に追い込まれてしまい「分かりました」と返事をするしかなくなってしまったのである。

それから僕は自分の部屋に戻ろうとすると彼女は僕をベッドに押し倒してくる。そして「今日こそ、結婚してくれるわよね」と言ってくるのだ。そんな事を言われても僕の方はまだ学生であり子供を作ることなど出来るわけがない。なので断ろうと言葉を選んでいると、アリスはそんな事を御構い無しに僕を抱き締めて離そうとしなかったのだ。

彼女は僕の事を離さないと言うと僕の事を自分の方に引き寄せてきて僕の唇に吸い付くようなキスをしてきたのだ。それから僕は彼女のなすがままになってしまい服を脱がされてしまうのであった。

僕はそんな状態で目を閉じてしまいされるがままにされるのだった。彼女は僕の体に何度も触れてきた。それから彼女は僕と一つになることを強要してくる。そして僕は彼女と体を重ね合わせるとそのまま快楽の渦の中に引き摺り込まれたのである。

そして僕が目覚めると僕は、アリスと一緒に朝食を食べていたのである。すると彼女は僕の耳元で「拓人君の赤ちゃん楽しみにしているからね」と甘い吐息とともに囁いてきた。その一言で僕の股間は大きく反応してしまったのだ。

僕たちは朝ご飯を食べると二人で街に出かけることにした。僕たちが住んでいた世界とは違い科学の発展が遅れていて魔法というものが存在する世界で文明が発達途上の場所であることは分かったのだ。しかし僕はここで疑問が生じた。どうして僕が勇者として召喚されなければいけなかったのかということだった。僕はその理由が知りたかったのでそのことばかり考えていたのである。しかしいくら考えようとその真実は僕の脳には入らなかったのである。そこで、僕はアリスに質問をぶつけてみることにした。「あの、僕たちがこうしてここにいる理由は分かるかな?何か知ってたら教えて」と言うとその問いかけに対して、アリスが僕の顔を見つめてこう答える。「拓斗君が勇者として召喚されたのがたまたま私たちの国でだった。拓斗君は勇者としての力が発現したばかりで上手く制御できないかもしれないから私が付き添っているのよ」僕は、その説明を聞いてなるほどと思ったのだ。それからは、この街について説明を受けながら観光することになった。この国には様々な人種が存在し、それぞれの国に特徴がありとても興味深いものであると理解出来たのだ。特にこの国の王城では魔王軍についての情報が入ってくるため重要な情報が得られるだろうと僕は考えたのである。

そしてアリスの案内のもと魔王城の城下町に到着した僕とアリスは、その城下町の雰囲気が僕のいた世界の物とあまり変わらなかったのだ。それどころか似ているとさえ感じた。そしてその町並みを見て回ると、この世界に来てから数日が経過していることもあり僕は疲労困ぱいで意識を失い倒れこんでしまったのである。アリスが慌てて駆け寄ってきてくれて僕にこう言うのだ。

「大丈夫だよ、きっとすぐ良くなるから心配しないで」と言いながらもその手は僕の手を握ってくれるのであった。

その言葉に僕は「ありがとう、少し安心するよ」と言い、僕は少し眠ることにするのであった。その時に、僕の手を握る力が強まるのを感じ取ったのである。

「ん、あれここは?」僕が目を開くと僕は知らない部屋にいたのだった。どうやら僕はベットの上に寝かされていたようだ。その横でアリスが僕の手を握ったままだったのである。僕はアリスに「ありがとう、助かったよ」と言うと彼女は僕の顔をじっと見つめて「本当に?」と言ったのである。

僕が「どういうこと?」と口にするとアリスはこう説明をした。「拓斗くんが倒れたとき私は必死になって魔法を唱えたんだけど、回復魔法って使ったことが無くって」そう言いつつも僕の手には魔力が集中していてそれを僕の体に移していたのだと言ったのである。僕は「そっかぁ、僕は魔法については何も知らなかったもんな」と思いながらアリスの手から僕の手を離そうとしたが離れることはなかった。

アリスはその手に力を入れて僕の腕にしがみついて来ると上目遣いをしながらこう口にしたのである。「拓斗君の側にずっと居させてくれないかな」その言葉で僕の理性が崩壊しそうになりそうだったのだ。だが僕の体は、まだ疲れが取れていないのか動くことすらできなかったのだ。そして僕の頭の中では「僕の嫁になるならいいんじゃないかな」という考えが浮かんできたのである。そしてその考えが頭に思いつくと僕はついこんな言葉を口から漏らしていたのだった。

僕はアリスにそう聞かれたので素直に「もちろん、いいよ」と答えてしまうとアリスは満面の笑みを浮かべて僕の胸に顔を埋める。僕に抱きしめられたことで彼女はさらに幸せを感じていたのである。それからしばらくしてアリスは僕から離れていったのである。それからは僕が目覚めてからの日々のことを教えてくれたのである。その日、僕達はこの魔王城にあるお城に泊まることになり夕食をとることになるのだがその時にはすでにアリスの機嫌は最高潮に達せられており食事中ずっと鼻歌を口ずさみ、時々、僕のほうを向いては笑顔を見せる。

そして僕もそんな彼女の姿を見ていて気分が良くなっていたのである。それからしばらくの時間が経つと、僕は彼女に呼び出されて一緒にお風呂に入ろうと言われたので僕は断る理由もなくアリスと浴室へと向かうことにした。彼女は僕が脱衣所に入ると、すぐさまワンピースを脱ぎ捨て裸になったのだ。僕はそれを見ないようにしていたがどうしても視線が胸の方にいってしまう。

そして彼女が僕に向かってこう言うのである。「もう、どこ見てるの?」と言われてしまい僕は動揺してしまい、彼女の方に向き直ると、そこには白い肌と豊満な二つの果実に、腰のくびれと、すらっと伸びた足、僕の心を奪い去るには十分な姿だったのだ。

僕が呆気に取られて彼女を凝視していると、アリスは「もう、こっちの方が好きみたいだね」と笑いながら僕の頬に軽くキスをすると彼女は僕の目の前で服をすべて取り払う。

そして彼女は自分の体の全てを見せてくると僕の耳元で「今日だけはあなたのものにしてね」とささやくのである。そして僕はそんなアリスに見惚れてしまっていたのである。それから僕たちはお互いに体を洗い合った後に湯船に浸かるとアリスに「さっきから何を考えているの?」と聞いてきたので僕はすぐに返答した。

「え、アリスのことだろ?それに決まってるじゃないか」するとアリスは「ふーん、まあいいけど」と言う。僕はそれから彼女に膝枕をしてもらいながら頭を撫でられながらアリスとの幸せな時間を過ごすのであった。それから夜も遅くなり眠くなった僕は彼女の部屋を借りて休むことにする。彼女は、僕の頭を離そうとはしなかったが僕を優しくベッドまで運んでくれてそれからすぐに僕を抱き抱えたまま眠りにつくのだった。そのせいで、僕の体はアリスの豊かな感触によって包まれている。

僕は「やっぱり凄いな」と感想を口にしながら深い眠りに落ちていく。翌朝僕が起きた頃には既に彼女は着替え終わっていたので僕も服を着て彼女と共に魔王城を出て街に戻ることになった。それからは、この世界での僕の役目を果たしていくことを決めることにして、僕は魔王軍の戦力を削ぐための作戦を考えることにしたのであった。

僕はこの世界にやってきてから数日経過するとある程度この国の情勢を理解し始めた。そして僕は街の外に出ると魔法を唱える。その瞬間、地面から複数の剣が突き出てきて、それが一気に伸び始めると上空に飛び出し、そして空中で静止した。それからは、僕の合図に合わせて一斉に動き出し魔獣に突き刺さりそのまま地面に落下していくのである。僕はそんな作業をひたすら続けていたのである。僕がこの作業を始めようとするとアリスが僕に近づいてきて、僕の服を引っ張ったのだ。どうやら僕のことが気になっていたようで僕の姿を見つけると彼女はこう言った。

僕はアリスの方を見ると彼女は微笑んでいて、それからは二人で並んで歩いて魔王城を散策することにしたのである。僕は彼女と二人で歩いていると、あることに気づいた。それはアリスから良い匂いが漂っていたので僕がその事を話題にする。彼女は僕に抱きつき嬉しそうな声色で「私のこと好きなんだね」と言うと僕の顔を見て微笑むのだった。

僕はその質問に対して、恥ずかしくなり目をそらすとアリスが耳元で囁きだす。「ねぇ拓人君私ね、初めて会った時から君の事が好きになってしまったみたいなの。それでね、もし良かったらの話なんだけどこれからは私の恋人になってくれないかな」僕はその言葉を聞いて驚き戸惑う。僕は異世界に召喚され、いきなり勇者になってしまって、さらには魔王を倒すために来たと言う使命があるというにも関わらずに僕はこの女性に惹かれてしまっている。しかもその相手が勇者の力を使っても絶対に勝つことができないかもしれない相手であり、僕の力ではどうすることも出来ないだろうと思っていた存在でもある。その女性は僕が好意を抱いていた相手のアリスで僕の初恋の人だったのだ。そして僕の心が揺れ動くと僕の脳にはとある選択肢が思いつく。その答えは「YES」か「はい」の二択しかないように思えたのだ。しかし僕はまだ決断することができないでいると彼女はこう口にする。「今は無理に返事をしなくてもいいんだよ。だって私たち恋人なんだから。だから少しずつ考えていけばいいよ」と彼女は僕に言ってきたのだ。

それからの日々、僕は魔王軍との交戦に明け暮れていたが一向に魔王軍の幹部クラスと戦う機会は訪れず、それどころか僕は勇者の力を使ったことがないためにまともに戦うことすら出来ずにいたのだ。しかしアリスが僕の側を離れることはなかった。そのおかげもあって僕はどうにかこの国での暮らしに慣れ始めていたのである。そしてアリスのおかげで僕にもこの国の人々にも平穏が訪れて平和が保たれていたのだ。そして魔王軍側も僕たちとの戦いに決着をつけることができずにいた。その理由としてはアリスが勇者の能力を発動させたままの状態だったからである。僕は魔王軍の動きを止めると僕たちはその日も戦闘を繰り広げていてその時に僕とアリスは出会ってしまったのだ。そして僕はその時にアリスの瞳を見てしまったのである。僕はその眼を見た瞬間に体から血が噴き出すような痛みに襲われていた。まるでその光景が走馬灯のように頭に浮かび上がっていくのだ。そして僕はアリスの胸倉を掴むとその顔を殴りつけたのである。

それからアリスと僕は互いににらみ合いながら一歩でも動けば相手に襲い掛かる準備をしていた。僕はアリスが僕よりも弱いということを分かっているのだが僕はそれでも彼女に恐怖を感じていた。その圧倒的なまでの威圧と、そして彼女の目には生気が宿っていない、つまりは人形のような目だった。そして彼女は僕のことを知っているかのように「私の勝ちね」と言い放つと僕はその発言が理解できなかったのである。

「何がだ、どういう意味だよ」と言うとアリスが笑った。すると彼女はこう口にする。「だってあなたはここで終わるんですもの」と言うと僕の腹が貫かれた。僕の体からは大量の血が流れ出してその場に倒れるのだった。僕の目からは自然と涙が溢れてきて僕の体が死を迎えようとしているのを感じ取ったのである。

僕は死ぬ間際になって思った。どうしてこんなところで死んでしまうのか、まだこの世界のことをよく分かっていなくこの世界の人達を助けることすら出来ていないのである。それなのにこのままで僕は終わりたくはない。そう思ってはいたが僕は意識を保つので精一杯で動くことが出来なかった。だが、僕にはどうしてもこの人に言いたいことがある。そう、その人物はアリスのことだったのだ。そして彼女は口を開いたのである。

「拓斗くん、またどこかで会おうね」

僕は「うん」と答えたが口から出たのはそれだけで僕は再び暗闇の世界へと旅立った。

僕が再び目を覚ますとそこにはアリスが居て心配そうな表情で僕を見ていた。僕はアリスの膝枕で眠っていて、彼女の手は僕に優しく触れて撫でてくれているので僕は安心していたのである。アリスが言う。「もう、私の前から勝手に居なくなるなんて酷いよ」と頬を膨らませて言うと僕の額を軽く指で突いたのである。

僕は「悪いな、俺のせいでお前のことを巻き込んでしまったようだ」と言って謝るとアリスは少し驚いた顔になり「え、なんでそのことを知っているの?私が勇者のスキルを持っていたのって拓斗君にだけ教えたのに」と言うと僕は「俺の知り合いの召喚士が教えてくれた」と伝えるとアリスは不思議そうな表情で「へぇーそうなんだ」と言った。僕は「なあ、一つ聞いても良いか?」と聞くと彼女は「どうしたの?」と答える。

「アリスはなんでそんなに強くなったんだ?」と聞いてみると彼女は僕が聞きたがっていた質問の答えを口にしてくれたのだ。彼女は昔、両親に捨てられて、それからはこの魔王城で育ったらしいのだ。そして魔王軍によって育てられてきた。そのおかげで、彼女は誰よりも強くなり今では魔王軍に欠かせない人材として魔王の側近になっているのだと。アリスは僕の頭を撫でながら言う。「だから、もう拓斗君は一人で大丈夫だから、ここから立ち去っても問題ないよ」と言うと僕の体を離そうとするので僕は彼女を抱きしめた。

そして僕は「嫌だ、俺はアリスを一人にしない。アリスを置いて行ったりなんか絶対しないと決めたんだ。例えこの世界に来て、この力を手にしたのが間違いだったとしても、俺はアリスと一緒にいたいと望んでいる。」と言うとアリスは僕のことを抱きしめ返してくれる。「拓人君が私の側に居続けてくれるなら、私も嬉しい」と言うと僕はアリスの顔を見る。アリスも僕の方をじっと見つめていて、彼女の瞳は宝石みたいに綺麗で、透き通っていて僕の心を揺さぶってくる。僕はそんなアリスが愛おしくなり、僕は彼女と口付けを交わしたのである。

「ねえ拓人君ってさ、いつになったらいなくなってくれるのかな?私は今すごく幸せだったのに、あの邪魔さえ入ってこなければ、拓人君との思い出をもっと作れていたかもしれないのに」とアリスは言って、自分の唇を触る。

それからアリスは続けて話す。「まあいいわ拓人君。私も拓人君との幸せな時間を壊したくはないし、それにそろそろこの世界を終わらせてしまわないとね。これ以上の幸せを手に入れるためには」

僕は、彼女の言った言葉を疑う。なぜならこの世界は彼女が魔王になってから作り上げてきたものだ。だから僕はこの世界が崩壊するのを止めようとしたのだ。だが彼女はこの世界を破壊してしまう気満々であるのだ。そして僕が彼女に理由を聞くと彼女は僕にこの世界の成り立ちについて話し始めて、「この世界の全ての人間は私にひれ伏して生きていくしかないんだよ」と言い放つ。僕は彼女から距離を取ると構えをとる。すると彼女はこう言った。「拓斗君は優しいよね。だってさっきは私のことを必死に止めようとして、そして私の話を聞き入れたらすぐに私のことを信じてくれたもんね。だけどその優しさが私の心を動かすことは出来ない」と言うとアリスの姿が消える。そして僕は背中に強烈な痛みが走ると地面に叩きつけられる。どうやら後ろから蹴り飛ばされたようで、その攻撃を食らった僕は立ち上がることが出来ない。

そして僕は地面に這いつくばっていると彼女は僕を見下ろしながら言った。「ごめんね、でもこれは仕方がないことなの。だってこの世界で生きている人たち全員に平等に幸福は与えられないのだから。だから私は私のためにこの世界を潰す。」と口にするとアリスが消えた。そして今度は腹部に鋭い痛みを感じる。どうやら剣で突き刺されたようである。その一撃だけで、かなりのダメージを受けた僕はその場に立っていられなくなり、地面へと崩れ落ちる。

そしてアリスは僕の髪の毛を掴むと無理矢理に起き上がらせて僕に囁く。「痛いでしょう。苦しくて、息も出来ないくらいに辛かっただろう。だけどその苦しみは無駄になるの。あなたに出来ることはもう何も無いの」と言うと僕の腹にもう一度、剣を突き立てる。その衝撃は想像を絶するもので、僕は痛みのあまりその場で悶絶する。「あぁああああっ!!!ぐはっ!」と声を上げ、血を吐き出し、激痛の余りに僕は涙を流し、口から血が垂れ落ちてくるのを感じたのだ。そのせいで呼吸困難に陥ると意識が薄れていき僕は死を覚悟した。だがその時、誰かの声が聞こえてきた。その人物はアリスの方に向かってこう言ってきたのだ。その言葉とはアリスの本名である、リシアという名前であった。僕はその人の事を思い出していた。

その人物とは僕の幼馴染みである橘真由香のことである。彼女はいつもは僕に暴力を振るってくるのだが僕に対してだけは優しく接してくれていたのを覚えている。彼女はよく言う「女の子にはね、優しくする義務があるのよ。男にはないわ。男は弱い生き物なんだから」と言っていたのだ。しかしそれはただ単に自分が殴られたくないという気持ちを隠すために使っていたのである。僕はそんな彼女の事を嫌いにはならなかった。むしろ感謝しているぐらいだ。もし僕に勇気が有れば、彼女のことも助けられたのではないかと今でも悔やんではいるが。

そしてアリスは「なんですって!その名前を知っているということは貴女も召喚されてこの世界に来た人間の一人ね」と怒りの表情を見せる。すると橘は「そうね、あなたと同じように私もこの世界に召喚されてきた一人だわ。まさか拓斗とこんな所で再会することになるなんて思ってもなかったけどね」と懐かしむように僕に語りかけると僕は橘に手を伸ばそうとするのだが、体に力が入らない。僕はそのまま気を失ってしまいそうになった時、橘が言う。「ちょっとあんた、拓斗のことを助けて欲しいんだけど」と言うと僕は目を覚まして「あぁー、なんとかなると思う」と答える。すると橘が僕のことを心配そうな顔で見て、僕のことを見捨てないのかと尋ねられると僕は「ああ、お前がこの世界に来ているのにどうして俺だけがのうのうと生きていかなければならないんだ?それにお前の頼みごとを断れるほど俺も強くないしな」と僕は口にすると、彼女は少し嬉しそうに笑っていた。

アリスは僕の方を見て少しばかり考えるような仕草を見せた後に「まあいいわ。この世界はあなたたちの世界より価値が無いと思ったから、ここであなた達二人を殺して終わりにするつもりだったのよ。なのに拓斗君と来たら私の計画を壊しちゃうんだもの。困っちゃうよね」と言うと橘は「この馬鹿」と言って、彼女の手を取り魔法を唱えてアリスの拘束を試みた。その行動がアリスにバレて、僕の方にアリスが攻撃を仕掛けてくる。そして僕はそれを避けることが出来なくて直撃を受けてしまうとその場に倒れた。僕は意識を失いそうになる中で、僕に呼びかけてくる人がいることに気づく。その声の主は、アリスの本当の母親でありこの国の王でもある人、名前はラティアスで、僕は彼女と出会えたことに驚いてしまうのである。

ラティアスは「お久しぶりですね拓斗様」と微笑んでいたので僕は驚きつつも、「はい」と答えるとラティアスは「私の娘の我ままを許してあげて下さい。私は彼女の考えに賛同してここまでやって来たのだから」と真剣な眼差しで言うと僕は、その言葉が嘘偽り無いものだと分かったので、彼女の目を見据えながら口を開いた。

「俺が言いたい事はたった一つだけですよ。アリスがこれからも笑顔で暮らせるなら俺はそれだけで満足です」と言うと彼女は僕に手を差し出して、僕のことを引っ張り上げてくれる。そして僕は立ち上がって彼女にお礼を言うと、彼女と一緒にアリスを説得する事にした。僕がアリスの説得を試みようとすると彼女は、アリスのスキルを奪おうとするが失敗に終わる。そこで、ラティアスが「拓斗様の力を使ってください。そうすれば彼女を抑えられます」と言うと僕は彼女に「良いのか?」と尋ねると彼女は答える。「ええ、娘を止められるならばそれでいいのです」と僕の方を真っ直ぐに見つめて言ってくれた。そのおかげで僕はアリスの持つスキルを全て把握することが出来るようになった。僕はそれを全てコピーするとアリスに向けて、発動させる。

僕の視界に映る光景が全て変わると僕は彼女の目の前に立ち塞がった。アリスが「なんですって!?」と驚いていたのが目に見えて分かり、僕のステータス画面を見ると、そこには、全ての数値が表示さており、さらに僕が手にした武器はアリスの持っていた魔槍、デスサイズだ。その武器はアリスの魔力に反応して動き出す代物だったはずなのだが僕の手元に現れた途端にまるで意思を持っているかのように動いたのだ。そして僕の背中から現れた黒い影から無数の闇の糸のようなものが飛び出てくると僕の手足に絡みついていき僕の体は身動きが取れなくなってしまうと僕はアリスの方を見る。

アリスが持っているスキルの中で、彼女の最大の攻撃力を持った攻撃をしようとしてきた瞬間、僕は自分の体に巻き付いていた闇属性を解いてから、アリスの攻撃を避けてから彼女に抱きついた。そして、アリスの耳元で囁く。「ごめん、君を苦しめるような事になってしまって、だけど俺はアリスのことを絶対に守るって決めたんだ」と僕が彼女に言うとアリスは僕から体を離して「拓人君は、なんでそこまでするの?私のこと嫌いじゃなかったの」と聞いてきたので僕はアリスの問いに対して答えると彼女は涙を流す。「そんな、拓人君、私のせいでこんなに怪我をしてしまっているのに、私のために命まで投げ出してくれて、本当にごめんなさい。私、拓人君の優しさが大好き。ずっと私を守ってくれていた拓人君だからこそ、私が傷つけたとしても、許してくれると、思っていたのに、それなのに」と涙を流して、謝罪を口にすると僕は彼女の頬に触れてから「そんなこと言ったらだめだ。君は間違っている。この世界に生きる人々はみんな何かを背負っているはずだ。でも、それがどんなものであれ背負っていることに変わりはない。だから謝らなくても、泣かなくても、誰も怒らない。だってさ、悪いことをしたからって死ぬ訳じゃないし、生きているうちは何回もやり直せる。それに俺たちはまだ若いだろ、これからの人生で償えるさ」と言うとアリスが突然、笑い出した。その表情には先程までの悲しみの表情ではなくて、どこかすっきりとした様子だったので僕は「元気になったか?」と聞くと彼女は「えぇーそうね、ありがとう、私、頑張らなくちゃね」と笑顔を見せてくれた。

すると僕の耳に声が聞こえてくる。「おい拓人、何をやっているんだ?」と聞こえてきた声の主に僕は「なあ悠太、頼みがあるんだけどいいかな?」と言うと悠太は「ああ、いいぜ」と言って僕の願いを聞き入れてくれた。すると僕はその人の気配を感じたのでその人に話しかける。その人は「やあ拓斗、僕のことは覚えているかい?」と言うので、僕の口から出てきた名前を聞いてみるとどうもそれは拓人の父、大志さんのようであった。

僕の父はこの世界の出身であり母が召喚士であると聞いたので、僕は父さんにもこの世界に来てもらった理由を聞くと僕の予想していたとおりでこの世界にある「魔法書」と呼ばれるものが必要らしいのである。それを聞いた僕達は早速「魔法屋」と呼ばれるお店に向かうことにしたのであった。

僕達がたどり着いた「魔法具」という看板を掲げる小さな店の中に入って行くと店内の商品棚にはたくさんのアイテムが置かれていて、その中には杖などもあった。僕は、僕に使えるものがないか探していると一つの「聖剣」というものを見つけた。その見た目からして普通のものではないということはすぐに分かった。なので、その聖剣を手に取ろうとすると店の店主が出てきて、僕にこう言った。「その剣に触れるでない!」僕はびっくりしながらもすぐにその場から離れる。すると今度は奥のほうから僕と同い年くらいの女の子がこちらにやってきた。

「あんた達ね。勝手に入ってきて何よ。ここは子供の来る場所じゃないのよ。ほら出て行きなよ」とその女の子が言ってきてきたので、僕と橘は反論するのであったが僕は橘が異世界の人であると話すと女の子が驚いて、事情を説明して欲しいと言ってきた。そして僕たちは今まで起こった出来事を説明する。すると女の子が「異世界の人間ってことはあんたも勇者なの?」と言ってきて橘が「違うよ」と言うのだが、橘は僕が魔王であるということを知っているので「こいつは一応勇者だな。まあ、俺の相棒だが」と答えた。そして橘は僕が勇者ではないと証明するために、その証拠となる魔法を唱えていくのだが、女の子はその魔法を全て「無効化」してしまった。橘が驚いて「お前は一体何者なんだ」と言うと「あぁーあたしは魔法師だよ。あんたが唱えたのがどんな種類の攻撃なのか分かるしその対策をするなんて簡単だしね。それより、そっちの女の人が勇者なのは納得出来るけどあんたみたいな子供がどうしてこんな所に来たんだい?ここにはろくなもんなんて置いてないんだよ」と聞かれると僕は少しだけ悩んだ後、自分がここにやって来た理由を素直に話していくのである。

僕たちがやって来たこの世界では、「魔法具」と呼ばれる特殊な力を発揮する道具が存在する。その力は使い方次第ではとんでもないことになるかもしれない代物であるが使い手が間違った使用方法をしてしまうととんでもない事態を引き起こす可能性があるので、その危険性を知った上で使用するのであれば何も問題がないのであるが、中にはそれを知らない者がいて、この世界での争いの種になることも少なくないのである。僕たちの目の前にいるこの「魔法具」を扱うお店を経営する女性はこの「危険視」された道具について知っているみたいで、それを商売にしているみたいだ。

僕は彼女に何故そのような物を売ろうとしていたのか質問してみる。彼女はその答えは「この世界の人達を救いたい」というものだった。僕たちの前に現れたのはその話をするためなのだろう。しかし彼女の話ではこの世界を救おうとしていた人物が居るらしくて、彼女の話だと「この国の国王であるラティアス様」の知り合いで「神野明美様」という名前の人物で、彼女もこの世界を救う為に来ていたので僕は彼女と連絡が取れるのならば協力しようと申し出てみた。そして僕は彼女の名刺のような物を受け取ると彼女の名前が「ラティアス」であると知って、この人も「勇者」だったりするのかなと思っていると、僕の視界の隅でアリスと橘が小声で話し合いをしていた。僕が二人に「何をこそこそと内緒話してるんだ」と聞くと、二人が口々に答える。「いえ、なんでもありません」「ただラティアスって名前で思いつく奴がいないかどうかを考えていただけで」と言うと僕の頭に一人の女性が浮かんできたので僕はそのことを伝えると、二人は「「やっぱり」」とハモって言い合っていた。どうやら僕が思った通り彼女はあの時戦った「女神」であるらしい。そこで、僕は彼女に会うために一度「教会」に向かおうとするが、橘は何か別の目的があって「魔法屋のおばちゃんのところに行くぞ」と言おうとしたその時、橘の言葉に反応した魔法屋のおばさんが「誰が、ババアだって!?あんまり生意気なこと言うと売り物にならないから持って帰ってやるよ。覚悟しな」と叫びだしたので僕は「あ、いや、そんなこと一言も言ってませんから、勘弁してください。お願いします」と慌てて、土下座して懇願すると、橘は笑い出してしまい、僕の肩に手を乗せてきて「いい加減にしとけ、お前がそういう態度だから、相手が怒るんだろうが、少しは大人になってだな」と言い始めた。

僕が必死に頭を下げながら「もう、変な態度はとらないので許してもらえませんか?」と言うと「分かったわ、許してあげるから、早くどくなさい」と言われたので僕は立ち上がり一安心したのであった。

そして、僕は橘を連れて「教会」へと向かう。

「ねえ、拓人、私に隠している事あるでしょ」と言われて僕は「隠してるって?」と聞き返すとアリスがため息をついて言う。「はぁー本当に忘れちゃったんだね。拓人、私達って恋人同士で、私は拓人の事好きなんだからもっと甘えてもいいんだからね」と言うとアリスの手を握る。

すると、僕のステータス画面に「?????」という表示が現れ始める。それは何か分からないが僕はとりあえず「ステータスオープン」と言ってみることにした。

僕の目の前に現れたのは今までと違った形で出現した「メニュー画面」のようなもので僕はそれを確認する。そこには様々な文字や数字が並んでいた。僕はそこに表示されている情報に目を通していく。

「ステータス:レベル1 職業;剣士(未解放)スキル;なし 魔法;火 風 水 雷 光 闇属性 回復 補助 その他不明」

そのステータスを見ていて僕は違和感を覚えていた。僕の記憶には勇者としての記憶しか残っていなかった。なので勇者の職業が「勇者」であることは知っていたがそれ以外の職業は知らない。しかも僕の職業欄の横に書かれている数字は「0」となっていた。僕は「あれ?」と声に出して驚くと「拓人君どうかしたの」とアリスが聞いてきたので僕は正直に「僕、勇者なのに他の職業に目覚めている」と呟いていた。

「えっ」と驚いたようなアリスの表情を見ながらも僕は「とにかく行ってみれば何か分かるはずだ」と言うとアリスと手を繋ぎ「行くよ」と言うと僕達は駆け出す。僕は走りながら自分の記憶がどこまで正しいのか分からなくなっていた。勇者であるはずなのに僕の中に勇者の「勇者」という称号は刻まれておらず「??」のままだったのだ。それに、今僕の横を走るこの少女の名前はなんと言うんだと頭の片隅で考えていた。すると、その少女は僕の考えを見透かすかのようにこう言ったのである。

「ねえ、私が誰だかわかる」

僕の手を握って隣で走っている金髪の美少女はそう問いかけてきた。僕はまだ、その女の子のことを名前以外何も思い出せなかったので素直に答える。

「ごめん、何も覚えていない」

「そっか。じゃあさ、これからゆっくり私のことを色々と教えて上げるから覚悟しておいてね」とその少女は嬉しそうな顔で言うと僕の頬にキスをした。その瞬間僕は顔を真っ赤にして、僕はこの子のことが好きになったのか?という疑問を抱きながらもアリスと一緒に目的地の「ラティアスの教会」へと急ぐ。しばらく走った後でようやく目的の場所に到着する。その教会の前には神父が立っていて「お久しぶりです。拓斗さん。」と話しかけてくるので「こんにちは」と返事をしてから僕は教会の中へ入って行った。中に入るとステンドグラス越しの陽光が降り注いでおり僕はこの雰囲気は嫌いではないと感じていたが、それよりも僕が目を疑ったのは、この世界の神と思われる「女神ラティアス」の像が祭壇の上に置かれており、そしてその像の足元にある「魔方陣」が光を放ち始めていることだった。

「まさか」と思った僕とアリスはすぐにその「魔法陣」に飛び込むのである。

気が付くと、そこは「女神の間」で僕は、そこで出会った「女神」のラティアスにこう言われるのである。「あら、拓斗、遅かったですね。待ってましたよ」と。そして、この世界では魔王が居た頃は勇者が魔王討伐に向かっていたのだが勇者が不在になってから魔王が倒されるまでの間は魔王が復活しないため、「女神の祝福を受けた者達」つまり、僕のような異世界召喚された人間を異世界から呼び出すことによって「魔王の復活」を防いでいたのだという話を僕はラティアスから聞いた。そして僕は、魔王を封印した後に勇者としての記憶を取り戻したらしく「魔王が復活するまで、この世界で生活してもらいます。ちなみに貴方が勇者だった頃に得た能力はそのまま引き継がれています」と言うので僕は「勇者」という存在に疑問を抱くようになっていた。僕はラティアスに対して質問をしてみる。

「この世界に「魔王」が居るということは分かりました。それで僕はその「勇者」だった頃の能力をまた使うことが出来るんですよね。でも勇者としての僕はどうやって消えたんですか?」と聞くとラティアスは「勇者は消えていません。正確には貴方の中で眠っているだけです」と答える。それを聞いた僕は、「それでは、その眠っていたはずの僕がどうしてこんな場所にいるのか説明してくれませんかね」と僕は言うのだが、その答えは返ってこないのであった。その答えの代わりに「勇者が覚醒したらこの世界の危機を知らせるようにラティアスから依頼されていました」と、いきなり、僕の後ろに現れた人物に言われてしまうのである。「いつの間に、そこに居たんですか!?」と驚いてしまう。そして、僕たちの会話は突然始まった「勇者の試練」と呼ばれる物が始まることになるのである。そして「勇者が目覚めた時、すぐに動けるように準備はしていた。しかしまさかこんな形で現れるとはな」と、目の前に現れた白髪の老人に言われて、僕の思考が追いつく間もなく話は進んでいったのである。僕たちの話を聞いて「その「ラティアス」とは何者なんだ?」という話になるとラティアス本人が出てきて、自己紹介を始めた。ラティアス曰く「私は「神野」という名前を貰った元「勇者」の転生者で現在は「この世界の管理者」みたいな立場の人間ですよ」とあっさりと言ったのである。

僕の頭の中には混乱が渦巻き始めていたが「とりあえず、僕が呼ばれたのはその「勇者の試練」とかいう物を乗り切れば良いんだな」と聞くとラティアスに「いいえ違います」と言われてしまい僕の脳内はさらに混沌を極めていくのであった。僕は「なら何のために来たんだ」と聞くと「私から言えることはこれだけしか言えませんね」と言い出した。

「それは、拓斗さんの力を試すことが本当の目的だからですよ」と言って微笑むのであった。僕は、ラティアスの話にまだ納得がいかなかった。なので僕はラティアスと口論を始めようとするとアリスが割って入ってきた。

「ちょっと、あなた、拓人君と勝手に仲良くしないでくれないかしら」と言うと僕と手を繋いで「ねえ、私のこと好き?私は拓人君の事大好きなんだけど」と言うので僕は「うん、大好きだよ」と言う。それを聞くとアリスは「やったー」と言いながら喜び始め、僕は、そんなアリスの事を可愛らしいと思ってしまった。するとラティアスが僕に「ほら、さっさと試練を受けに行ってこい」と言う。

そして、僕が「勇者としての記憶を取り戻すにはどうすればいいんだ」と聞いてみると、それに対する答えは「勇者の祠という所に行け。そこで、自分の名前を思い出し、自分がどんな人間かを思い出すんだ」とだけ言い残して消えるのだった。

そして、僕はラティアスが消えたと同時に「とりあえず、勇者の神殿に向かえばなんとかなるだろう」と思い走り出すのである。しばらく走ると、勇者の神殿の前にたどり着く。

「拓人君、本当に大丈夫?疲れてないかしら?」とアリスが心配してくれるが僕は体力も回復していて問題は無かった。むしろ身体中に力がみなぎってくるような感覚が僕の身体中を支配していたので僕は少し気持ち悪かったが、気にしないようにしていた。僕は「大丈夫、ありがとう」と笑顔で言うと神殿の中に入って行く。すると目の前に扉が現れていて、それを開けると中からは大量の光があふれ出し、それが晴れると、その光の中心にあったのは大きな剣だった。その大きな剣の前には「勇者の証」と書かれた石碑がありそこには、こう書かれていた。

勇者の剣を手に入れろ 勇者の武器はお前の物になるのだ と。それをみた僕は「これは、きっと僕に託されたものなんだ」と思うのであるがアリスが言うには僕の持つ「聖加護」があれば「勇加護」というものを宿しやすくなるということらしく「勇者」の装備を僕は手に取ったのである。「勇者の祠」を出た僕たちは、一度「魔王城」に戻ろうと思っていた。僕たち二人は魔王を倒す為に「異世界」から召喚されてここにやってきたので「魔王城」に帰還することで元の世界に帰れるような気がしたからだ。しかし、アリスはそうではないと言うので僕はその理由を尋ねた。すると「だって、拓人君が帰ってしまったらもし拓人君に何かあった場合助けることが出来なくなるでしょ?だったら私はずっと拓人君と一緒にいるわ」と言うのでアリスのことが愛おしく思えてきた。なので僕はアリスのことを抱きしめていたのだが周りから声がかかる。

「おい、貴様。なぜ勇者なのに女神の祝福を受けた女を連れ歩いているんだ?」と言うと後ろにいた騎士たちが槍を構えるので僕は慌ててアリスを守るように立つと「その娘を置いていけ」と言われるが、アリスは怯えていたので僕は必死になって守ろうとするのだが、その声の主と思われる人物が現れた瞬間僕の中の「勇者」が目覚める。そして、僕は「勇者の証」を使い「覚醒」というスキルを使用すると僕の身体は輝き始める。その輝きが終わると僕の目の色は青色から赤色へと変わり、さらに、僕は背中に二本の羽を出現させたのだ。

そして僕は、勇者としての本来の姿をさらけ出したのだ。その姿はまさに天使といったところか?その容姿を見た、アリスがこう言ったのだ。

「あれが「勇者の姿」ね。まるで物語の中の登場人物のようだけれど格好いいわね」というのを聞いて僕は照れてしまった。なぜなら今までにないくらいの可愛い子にかっこいいと言われたのだから仕方がないであろう。しかし僕の目の前にいたはずの騎士たちは、全員倒れていたのである。その光景を見て、僕は驚き、僕は急いで勇者の力を使って傷を癒すことにした。しかし僕はこの力を使えば「勇者」ではなく「魔王」そのものの力を引き出してしまうのではないかと思いながらも使ってみると僕は思った通りに使えたので安堵する。僕はアリスと一緒にこの「魔王の間」を出て「勇者の塔」へと向かったのである。「魔王を倒したのは勇者です」とアピールするためである。しかし塔の中には誰もいなかったのである。アリスと二人で探していると、部屋の中は綺麗になっており「ここはもういらないから、あとよろしくね」と書いた置き手紙が置かれていた。僕はこの塔にあるものは全て僕の物にしようと思った。僕は「魔王の間」に戻り先ほど倒した敵が持っていた宝箱を開ける。その中に一通の手紙が入っていたので、それを読む。内容は「勇者に倒されたのは私の配下の一人だ。しかし私の配下の中では唯一勇者と対等に戦える実力を持っていたやつだ。しかし、そいつを倒して勇者に勝てる奴はこの中にはいないだろう。よって私は勇者に倒されることを選択した。しかし私は死ぬつもりはない。私は必ずこの世界を滅ぼそうとする。その時に私が魔王だと気づかなかったお前が勇者なら私はまたお前の前に現れよう。その時まで強くなっていろよ」というものだった。僕はこの文章を読んで僕は「あの時の僕は確かに未熟すぎた。今の僕は、勇者じゃないのかもしれないが、僕はそれでも、もう一度、今度は仲間を守って戦いたい」と思うようになっていた。

その後、勇者として僕たちのパーティーに加わった「勇者」の女の子のリリアが、「どうして勇者さんはこんな弱い男と一緒の部屋に泊まっているんですか?」と聞かれてしまう。僕は、なんて答えるのが良いのか悩んでいると「この子は勇者の器を持っているけど今は「覚醒」させていないから勇者じゃあないの。それに私の婚約者だから安心して」と言う。しかし「でもこんな、どこから見ても冴えない男より私の方が強いし、頼りになるわ」と言うとアリスは怒った顔で僕とリリアを見つめて「どっちが強いとか関係ないでしょ?拓人君は私の事を助けてくれた恩人なの。それこそ世界で一番大切にしたいと思える人でもあるんだ。それに比べてあんたは勇者である私と同じ勇者なんだからもっと、私に敬うべきでしょ」と言う。僕はアリスの事が可愛く見えたのでつい「僕はアリスの事好きだぞ。僕は今のままのアリスが好きなんだ」と言うとアリスは嬉しかったのが笑顔を見せるのである。そして、アリスは僕の腕に抱きついてきてくれて「やっぱり拓人君には私が必要みたいね。良かった。これで、拓人君を独占出来るもん」と言うので、僕は苦笑いをしてしまう。するとアリスは僕の手を引っ張って、ベッドの上に寝転がって僕はその上に乗っかる形になった。そして、アリスが僕の耳元に息を吹きかけてくるのである。そして、その状態で僕は眠ってしまうのである。僕が次に目覚めた時僕は何故かベッドの中に居たのである。しかも隣では僕が目を覚ましたことに気付いたアリスが僕に「ねえ、私たち付き合ってからまだデート一回しかしたこと無かったでしょ?私、明日休みだしどこか行かない?」と言うので僕は少しだけ悩むが、結局出かけることにした。アリスは僕の家から近いショッピングモールに行きたいとの事で一緒に向かう。

僕はアリスの手を取り歩く。僕が歩き出すと自然とアリスは手を離し僕は「ん?アリスどうしたんだ?」と言うとアリスが恥ずかしそうな顔をしていたので僕は心配になる。するとアリスが言うのだ。僕が他の女と喋っていたので嫉妬していたのだと。僕はアリスのことが好きで愛おしいと思っていたのでアリスが僕に対して「浮気しないよね?」と言うが僕が答えるよりも早く「そんなことしてみなさい。殺すわよ」と物騒なことを言い始めるのであった。

僕が買い物に誘っておきながらなかなか買いたがらないという謎の行動をしてくるので僕は不思議に思って尋ねると、「え?別に何でも無いよ。ただね、拓人君に似合う服を選んでいるだけだからね。まあ気にしないで良いんだよ。それより、今日着て行く服を決めておいてね」と言う。そして、それから数時間が経ちやっと買い物をし始めた。しかし、僕は、この世界の金を持ってないのでアリスにお願いするのだがアリスも持ち合わせてはいなかったので二人でお金を稼ごうとするが、僕は、冒険者としての依頼も受けずにこの「異世界」で生活していかなくてはならないので、どうすれば依頼料が手に入るかを悩んでいたのである。僕は、まず最初に「魔道具屋」と呼ばれる所へ訪れてみる。その店の扉を開けると中からは、様々な色の液体の入ったビンが大量に並べられており僕は興味津々だった。店主は、僕の事を一目見て「その魔力量なら、これぐらいが丁度良さそうだね」と言い一つの薬瓶を取り出してきたので僕はそれを貰うことにした。そして、その中身を飲み込むと僕は一瞬にして力が湧いて出てくるのを感じる。それは僕の身体中から力が湧き出ている感覚に陥るのだ。僕は試したくなり「この、能力が上がれば強くなる」と書かれた文字が刻まれたペンダントを購入して、その力を確かめようとした。僕はそれを飲んだ瞬間に力があふれ出して来る感覚に襲われて気分が悪くなり僕は意識を失ってしまう。

僕は目を覚ますと僕は見覚えのない場所で横になっていたのだ。僕は起き上がると同時に僕は何者かに攻撃されたのだ。僕が攻撃を受けそうになっていることを察知したアリスが僕を守る為に前に飛び出してきて敵の攻撃をその身一つに受けてしまいアリスが吹き飛ばされてしまう。僕は急いで駆け寄るが僕に話しかけて来た奴は僕に「おい、貴様のせいで勇者が死んだではないか。お前みたいなクズを庇わなければ死ななかったと言うのに」と言って来たので、僕は怒りでどうにかなりそうだったが、ここで怒っても無駄だと分かっていたので「僕が助けられなかったばかりに」と思いながら僕は剣を抜く。

「勇者の力を持ったお前などこの私だけで充分だ」と男が言うと男は「勇者」になり襲いかかってくるので、僕はアリスのことを守れるようになるためにも「覚醒」を発動させて戦うことにする。覚醒とは、勇者の能力を限界まで引き出せる代わりに暴走の危険性もあるスキルで僕の目の色は黒色から赤黒い色に変化していき背中にも羽が出現する。その状態を見た、男は「それが覚醒状態の勇者なのか?確かに、その姿の時は、勇者の能力を引き出せるようだな」と呟くと、すぐに僕に向かって攻撃を仕掛ける。

男の攻撃に僕は反応出来なかったがアリスは反応出来てアリスは「勇者の盾」を使って男からの攻撃を受けたのだ。しかし「勇者の盾」を使ったにも関わらずアリスが受けたダメージはとても大きいものであった。そのことに、気づいた僕は「アリス!大丈夫か!」と叫ぶがアリスはまだ戦えるようであったが僕は自分の力不足を痛感してしまったのである。そして、アリスが僕を守るように男の前に立ち塞がると「私が相手よ。あなたの好き勝手にはさせない」とアリスは宣言するが、男の能力は想像以上に強く僕の持っている「覚醒の勇者の短刀」でも全く歯が立たなかったのである。しかし「勇者の槍」になると男の体に傷を与えることは出来たのである。僕はその隙を狙って攻撃をする。

僕は「聖魔法」を使うと光属性と闇属性の力を使い男を倒すことが出来たのであった。しかし、その後、アリスは男の死体を調べ始めたので僕は「何かあるのか?」と質問をしてみるとアリスは「いやね。こいつ結構有名な暗殺者なのよ。それにこいつ「影縫い」の技を持っているわ。これは相手の動きを止める効果があって私もこの「影縫いで止めようと思ったんだけどね。こいつは私じゃなくて、拓人君の事だけを見ていたみたい。そして拓人君に近づいて来たから、この男は、私が殺ったわ。まあ拓人君が、殺されちゃうよりは良かったかもね」と言うので僕は「ごめん」と言うとアリスは僕の唇に人差し指を当てて「拓人君は謝らなくても良いの。だってあなたは私の彼氏さんで私は勇者でしょ?私はね、この世界で誰一人犠牲を出したくないの。拓人君が私に助けを求めたら私が必ず救ってあげるんだから。だからそんなことよりデートの続きしましょ」と僕の頬をつかみ無理矢理笑わせてくれるので僕は苦笑いをしてしまうのである。

アリスが、男にとどめを刺してから「今日はこれで帰りましょう」と言うので僕は帰ろうとしたのだが僕が「あれ、ここ何処だっけ?」と聞くとアリスが呆れた顔をしながら答えてくれたので安心したが「じゃあ、帰るね」と言うとアリスが突然倒れて「待て、そっちに行けばお前らは確実に死ぬ」と言う声が聞こえたので振り返る。すると、そこには、白髪の男が現れていた。僕は咄嵯に剣を構えようとすると白髪の男は「俺は魔王軍幹部序列2位のジールと言うものだ。今回は挨拶に寄らせてもらった。俺の名前は「魔王」様の直属の配下だからな」と言うと僕の体は震え始めて僕は動けなくなってしまった。

そして、僕の方に手を伸ばすと僕の腕が勝手に動き始めてしまうので僕が慌てていると僕の口も「まおうぐんぶていれじゆうに」と言い出したのである。そのことに僕が動揺しているうちに僕は、目の前の光景が変わっていき「魔族領」に飛ばされてしまったのである。そして、アリスと別れた場所に戻ってきた僕は、自分の身に何が起きたのか分からないがとりあえずアリスの家に行ってみることにする。そして、僕はアリスの家で「魔王」が、世界を滅ぼす為に、人間たちを殺し回ろうとしていたので僕は、アリスを助けにいく為に、「勇者の盾」の使い方を覚えようとしたが上手く使えなかったので、「勇者の杖」にしようとしが、僕には魔力を増幅させるようなアイテムが存在しなかった。その為、どうしようもなくなったので僕は、僕自身の力でどうにかしようと考える。

僕が今からするのは、魔力切れを起こすと言う行為だが僕は「魔力吸収」を発動させてから、僕は魔力を吸収する。すると僕の魔力量が、徐々に減っていき、それと同時に僕の中にある、魔力量が増えていったのだ。僕は「魔闘気纏」を発動させてから「瞬動」で、一気に近づき攻撃しようとするが避けられてしまい僕は「覚醒」と「神速の加護」で「光速」の速度まで加速して攻撃をしようとしたがそれでも当たらないので、僕は、さらに「勇者の剣」に全ての力を込めた攻撃をするが、やはり、攻撃が当たらず僕が、攻撃をやめてアリスの方を見るとアリスが僕を見て驚いていたので、僕は、そのアリスの隙をついて、アリスに一撃を加えるとアリスは「勇者の剣」でガードしてきたのだが、僕の方が攻撃力が上なので、アリスの体を斬り裂くことができたのである。そして、僕はアリスが死んでしまったと勘違いして僕は、アリスに抱きつくとアリスの胸に、頭を乗せていることに気づいたので恥ずかしくなった僕は、アリスから離れるとアリスに抱きしめられ僕は気絶した。

そして、僕は起きると、なぜかアリスの顔が目の前にあり僕が「えっと、どうしてアリスがいるの?」とアリスに問いかけるがアリスは「ん?別に良いでしょ。それより、おはよう。朝ご飯できたよ」と言ってくれたのだ。

僕は「うん、ありがとう」と言って椅子に座ると僕の前には美味しそうな料理が置かれていて僕は嬉しくなって「これ食べて良いのかな?」と言ってしまうとアリスは「どうぞ」と一言だけ言ったのだ。僕は一通り食べると「本当に凄くおいしかった」と僕が感想を言うと、アリスは少し照れくさそうに「そう言ってくれて嬉しいわ。それより今日も依頼受けにいかない?」と言ってくるので、アリスと依頼をこなしてから家に帰ることにした。そして家に帰ってから、僕の魔力が暴走したせいでアリスを巻き込んでしまい、僕の家の中に被害を与えてしまい僕は自分の力を制御する為にある特訓をすることに決めたのである。僕はまず、僕の中の力を全部吐き出すところから始めて、その次は少しずつ体外に漏れ出ている力を身体の中に戻していき僕は魔力の暴走を抑えながら特訓していく。その特訓の成果は、僕の中で、魔力は、コントロールできるようにはなった。そして、僕はアリスとの約束があるので、次の日から、僕はギルドに向かうことにした。そして、アリスと待ち合わせの場所に行くと僕は先に待っていたアリスに「遅くなりました。お待たせしました。では行きましょうか」と言うとアリスが「遅い!もう私を放置しないでよね」と文句を言って来るので、僕が悪いわけではないが謝ってしまうのであった。

僕達は早速依頼を受ける事にして、アリスと別れてしまう。それから僕は一人で森の中でゴブリンを倒しまくっている。アリスと一緒じゃないと、こんな危険な場所に来たことがない僕にとってはこのゴブリン達ですら恐ろしさを感じていたのだ。だからと言ってここで逃げると僕の中に入っている力を使いこなしていないままになってしまいそうだったので逃げない事にしたのである。

そして僕の方にも敵が迫って来たのだ。しかし僕の相手になった相手はゴブリンではなくオークであり僕より身長が高い魔物で、筋肉も僕の倍ぐらいありそうであった。そして、その巨体に似合わないスピードで僕の方に走って来た。しかし「瞬動」と「神速」で、僕は回避するが、オークも僕の事を追うために僕と同じようにスキルを使って追ってきたのである。

「くっ」と僕は声を出しながら僕は後ろにいるであろう相手に警戒しながら戦っていた。僕は相手が近づいて来たので相手に向かって「聖魔法」で「ホーリーアロー」を放ちダメージを与える。しかしそのオークの肌がとても固く僕の聖魔法でも全く歯が立たなかったのである。そしてその魔法をくらったオークの皮膚が傷ついている程度だった。僕にはまだ勝てなさそうな相手だと思い僕が撤退をしようとした時である。

「待て!貴様を逃がさない」といきなり目の前に現れた男が僕の前に立ちふさがり僕を逃がしてくれなかったのだ。

「ちょっとあなた!何するんですか?」僕は男の行動に怒りを覚えたが僕が怒っている間に、その男は僕の後ろを取ってきたので僕は慌てて男から離れようと動くが、僕は背中に何か衝撃を感じて地面に倒されてしまったので、慌てて起き上がろうとするが僕に馬乗りになっている男が僕の胸ぐらを掴み上げてくる。

「貴様のような小童が、俺の攻撃を回避できると思うな。俺は「魔王軍序列4位」の「魔将軍」だ。この世界は「魔王」様の物である、それを人間どもめ、我ら「魔族」は許さぬ」とその男の口から言葉が出てきており僕に喋ったと言うよりも僕の中に話しかけてきているように思えた。そして僕は「僕はお前たちの仲間ではない、僕はアリスの奴隷だ。だから関係ない」と言うと「ほう?アリスだと?」と男の言葉のトーンが変わると「ならば貴様に聞く、アリスとはどこで会った?」と言う質問に僕は答えずにいたが「答えねば、殺すぞ?」と言うと僕は慌てて答えようとしたら突然、僕は首に剣を突きつけられてしまい答えられなくなった。そして男は「ふん、やはり、アリスにお前ごときでは到底太刀打ちできぬからな」と言うと僕の中に入ってきて、また別の人間の精神の中に入った。

(うーん、ここ何処?)と僕に聞き返されたので僕は困ったが「ここは僕の心の中だ。僕とお前の意識が今共有している」と答えたのであった。

(へぇー、あんたが僕を呼んだんだ)と言われて「ああ、そうだがお前には俺の手助けをして貰いたいのだ。俺の肉体を取り戻す手伝いをしてほしい」と言ったのだが「いいよ、ただし条件がある。僕の言うことを一つ聞くことだ。いいな?」と言うが僕が断るわけにはいかなかったので「いいぞ」と返事をした。

僕に襲いかかって来た「魔族」と呼ばれる「魔王」直属の「魔族」達が僕の心に干渉してきた。僕はなんとか耐えていると、「魔王軍序列2位」の「魔将バエル 悪魔を統べる王」が「ふむ、その心の強さ気に入った。貴様は私の眷属になる気はあるか?私は貴様の願いを何でも叶えよう」と言ってきた。僕は「それじゃあ遠慮なく。僕と契約してくれ」とお願いしたのだが、それは出来ないと言い出した。なんでも「魔人化」という能力を使うらしいのだが、僕には無理なので他の方法を探すことになってしまったのである。そして、僕は自分の力で戦うことに決めて、僕は自分に「神速の神撃」「勇者の盾」を同時に発動させてから「聖盾結界」を張ったりして僕は「魔王」の力を使ったのだ。すると僕の身体は「魔王」の力を使えるようになって、僕は一瞬にして、相手の背後を取ると僕は「瞬動」と「神速の加護」を発動させて攻撃した。「神速の加護」は魔力を使わないので「瞬動」と「瞬動」の間に使えば魔力の無駄がなくなるのだ。

僕は相手を倒したと思ったがすぐに立ち上がり反撃してきて僕は急いで避ける。だが僕の体力も限界に近くなってきたので「覚醒」と「勇者の剣」と「勇者の剣(覚醒)」を交互に使うことにした。

「覚醒」

「勇者の剣」

「勇者の剣」

僕はこれで相手を圧倒しようとしたがその攻撃すら防がれて僕は攻撃を全て受け切られてしまい僕はもう駄目かと諦めかけていた時である。僕の中に「魔将軍バルバトス」がやってきて僕に話し掛けてきたのだ。「おい、この俺が貴様を助けるために来てやった。早くその技を解除して、こいつの力を取り込め」と言うと僕の中から消えていったので、僕はもう一度攻撃をする事にした。

しかし相手は僕の攻撃を避けるだけで、こちらに反撃も何もしてこなかった。

「おい、いい加減、貴様の力はわかった、だから俺の言う通りにしろ。俺は貴様の邪魔をする者は殺せと命令されているが貴様だけは殺したくないのだ」と言ってきたが、僕も殺されるつもりは無かった。

そして僕は相手が僕に「勇者の盾」で防御を固めた隙を狙って「勇者の剣」に溜めてある魔力を解放する為に力を込めると「瞬動」と「縮地」の同時使いで、一気に相手に接近すると僕が「聖盾結陣!」と叫んだ瞬間「勇者の剣」の魔力が解き放たれた。そして僕の剣は相手の魔力の障壁を破り相手を切り刻んだのだった。相手はそのまま倒れてしまったので僕は「終わった」と言ってしまう。そして僕は魔力が空っぽになってしまい僕は動けなくなってしまいそのまま寝てしまったのだった。

そして目を覚ますと僕は何故かベットの上で横にされて、看病されていて、その隣で、僕の顔を見下ろしている「アリス」が居たので「アリス」が僕の様子を見にきてくれた事が分かり「おはようございます。僕なら大丈夫です」と答えると彼女は笑顔で微笑んでくれたので僕も笑い返したのである。そしてアリスは僕にお腹空いたでしょと僕に食べ物を食べさせてくれていたのであった。そしてアリスは「君を放置していた事に関しては謝るわ。でも君はあの場所で戦っても絶対に負けない自信が有ったのよ。でもあなたは魔力が無くなった状態で戦ったせいで魔力を回復するまで時間がかかったの」と言うので僕はそんな事は全然気にしていないと伝えたが、彼女曰く、僕の魔力の回復が終わるまでは「魔王」と戦うのは難しいので「今は」休んでいると良いと言って、僕を抱きしめながら頭を撫で始めた。僕もその行動に戸惑いながら彼女の胸元に顔を埋めたのであった。

(やっぱり僕の知っているアリスだな。この人は、とても安心する匂いだ。とても落ち着くな)と思いながら、この人の傍にいれば、これからもずっと安心して生きられるだろうと思っていたのだ。僕は、このまま時間が過ぎれば良かったと思っているのである。

そして僕の身体が回復し始めてくるとアリスは突然僕から離れてしまうと僕に対して何かを話しかけているのが分かった。

(ねえ、どうして私に嘘をつくの?)

(え?)と僕は困惑したがどう答えればいいのか分からなかったのだ。だから僕は「あなたが本当に僕が召喚されてきた事を知らないのか知りたいのです。僕の名前は神崎 颯真と言います。この世界の人間ではありません。」と僕は正直に話したらアリスが「どういう事?」と言うので「実は、異世界から来たのですよ。あなたと同じで、違う世界に」と説明するとアリスが驚いて「それなら私が元の世界に帰れるように手伝ってくれないかな?お願い」と頼まれてしまったのである。だから僕は、その話を断ろうと思ってしまったが僕自身に断る理由が特に無かったので了承したのである。だから僕達はアリスが帰る方法を一緒に探す事に決めたのだった。そして僕はアリスに、こっちの世界に来る時に貰った物の中に手紙が入っているはずだから見てほしいと言われて確認してみると確かに手紙が入っていた。そして僕はアリスから説明を受けたのだが、この「勇者の盾」が無ければアリスはこの世界で生きていけないと言われたのだ。それに、こっちの世界でも、向こうと変わらずお金を稼ぐ必要が出て来るとも聞いたので、僕は「冒険者登録」を行うことにした。それから僕達は宿を出て冒険者の酒場に行くと「依頼」が貼ってあったが殆ど報酬額が高くて引き受ける事が出来なさそうだった。そこで僕が目を付けている「魔物退治」があったのだが僕一人ではとてもじゃないが勝てる見込みはないだろうと僕は思い、アリスに相談すると彼女は僕に魔法の才能が有るから魔法を使う事を勧めてきたが僕は魔法の才能は無いと思うので諦めかけたが、それでも、どうしてもアリスを助けたかったので彼女に魔法を教えると彼女は喜んでいて嬉しそうな表情を浮かべたのだ。僕は彼女の喜ぶ顔を見ていたら少し恥ずかしくなって下を向いてしまうと彼女が僕の耳元で囁いてきた。

そしてアリスは、僕の唇に指を当ててから自分の口元に手を持っていく動作をしてから微笑んだのである。

(な、なんだ今の?)

僕は彼女の一連の動作を見ているだけで心臓がドキドキしてしまい頬が赤く染まってしまい頭から湯気が出そうになってしまうと、僕の身体は更に暑くなった。

そして、その後僕は宿屋に戻ると僕は彼女と二人っきりになるのだが、その時僕は何を話せばいいのか悩んでしまっていた。なぜなら僕は今迄女性経験が無い上に異性と話した記憶が全く無いからである。

「どうしたの?」

「いえ、なんでもありません」と僕は言いながら僕は動揺している。

「私はね。本当は君を呼び出したくはなかったんだよ。君は普通の人間だし、私は君の事が好きで好きでしょうがない。なのに、私の心の声が君を呼んだ」と言うので、それを聞いた僕は驚きのあまり声を出すことができなかったのである。

僕はアリスを見ているとその言葉が本当なのだとわかってしまう。彼女は本気で僕の事が好きになっていたのである。その事実が僕には理解できずに戸惑っていたのだった。

(一体なんで?僕には訳が分からない)と僕は思っていた。だけど僕は気づいてしまった。

僕は「アリス」が好きだと言うことを。僕自身が気づき始めていたことに、その気持ちを必死に否定して、誤魔化していたが僕の感情は止まらないで、暴走し始めたのである。

僕は彼女を愛してしまった。この世界で誰よりも、何より大切にしようと決めてしまったのだ。だが、それは僕にとっては危険な事でしかなかったのである。僕はアリスと付き合えば間違いなく命を落とす事になる。

僕は「アリスさんは、どうして、僕のことが好きなのですか?」と聞き返してしまう。僕は自分が死にたくなかったので聞いてみると「私は今まで色々な男の人と出会っ来たけど貴方みたいな男性は初めて会ったから」と答えたのである。そして「貴方と一緒に居てみたいと思ったの。それだけじゃあダメかしら?」と言うと僕が返事に困っていると僕が持っていた「勇盾の指輪」に異変が起きたのだ。「勇盾の指輪」が光輝き始めて、僕とアリスを照らし出した。すると僕達が見つめ合っている姿が見えて、お互いが手を握り合って見つめ合っていた。僕はそれが現実なのか分からずに呆然としながら、その幻想を眺めていたが僕が正気に戻るのに数秒も掛からなかった。

「あ、すいません。変な質問をしてしまって」と慌てている僕を見た「アリス」は笑っていた。

「ううん、いいのよ。私達が初めて出合った時の事を思い出していただけだから」と答えるので僕は恥ずかしくなり、俯いた。

「あの~」

僕達の後ろから女性の声が聞こえた。振り向くとそこに居たのはアリスと雰囲気が似た美しい女性が立っていた。僕達はその姿を見て唖然として、その女性は僕の方に近づいてくる。

僕は思わず警戒態勢に入る。何故ならばこの世界に来て最初に戦ったのは僕に恨みを持っている人間だった。だから僕はアリスを守る為に、そして僕自身も殺されないように身構えたのである。

(あれ?この人の顔何処かで見た事があるような気がする)と思っていると、「こんにちは、はじめまして、君が颯真だよね?私はアリア。あなたの事は知ってるわ」と言うのであった。そして彼女は何故か懐かしむように語り始める。そして彼女の話を聞いた後に、僕も、なぜだかわからないが彼女に親近感を覚えてしまったのであった。すると彼女は突然泣き崩れるとアリスの方を見ながら「お願いです!助けてください!」と言ってきた。僕は困惑して彼女の肩に手を触れる前にアリスに抱き締められてしまい動けなくなってしまったのである。僕は、どうにか離れようとするが離れられないので諦めることにした。アリスが「どういう事?ちゃんと説明してくれる?」と真剣な表情で問いただすと「アリス様、どうか私と「神樹」を守って下さい」と彼女は言うのであった。

アリスはその話を聞いて驚いた。そして彼女はアリスに向かって、僕と出会った時に起こった出来事を語り始めたのである。アリスとアリアはお互いに「魔王」を倒すために旅を続けていたらしい。

僕は二人の話を聞く限りだと二人は幼馴染のような関係に見えた。僕は「もしかしたら「勇者」の仲間の一人は魔王の側近ではないのでしょうか?」と言うと「正解よ。流石は勇者ね」と言うのであった。アリスは驚いて「そんな事が分かるなんて、やっぱり君は普通じゃないわね」とアリスは呟くと僕に対して何か言いたげだったが口を閉じたのである。僕は、どうしてアリスは、何も言わなかったのかが不思議に思ったので聞こうとしたが先にアリアが僕に「ねえ?どうして魔王を倒したいんだい?」と聞かれた。だから僕はアリスと出会ってからの事を説明したのであった。するとアリスは僕の頭を優しく撫でてくれたのである。僕はアリスが何を考えているのか全く解らずにいるとその疑問はすぐに解決した。僕は、ある事を思い出したからだ。アリスが、僕の手を握るとアリスの手も僕の手と同様に熱くなるのだ。

(これはもしかて「勇者」の力で僕が生きているってバレているのかな?)と思っていると「ねえ?」と突然話しかけられた。

僕は驚きながら、顔を上げて見ると、いつの間にかアリアが立ち上がっており、僕の方を見ていた。

そして僕は「なんでしょう?」と答えると、いきなり「僕と結婚してくれないか」と言われたので僕は、固まってしまった。僕は今まで異性から告白されたことが無い上に、同性からも一度も告白された事が無かったので混乱していたのである。そして僕は「ちょっと、落ち着いてください」と言いたかったのだが僕はパニックになりすぎて、言葉が出てこないのだ。だからアリスの顔を見て助けを求めようとしたらアリスは顔を真っ赤にしており、僕を見ようとしなかったのである。そしてアリスは僕を指差す。僕はアリスが何を伝えようとしているのか理解できたが理解できない。

「勇者」の能力「神の瞳」によって僕は僕の能力が「ステータス」という表示画面が見えるようになっていた。その表示画面では、僕の職業「賢者」となっているので、僕の能力は普通の「剣士」や「格闘家」と比べると遥かに強いはずだが「魔法」の才能に関しては完全に無力だった。だから僕は、僕はアリアの話を断ろうとしたのだが「ごめんなさい。無理ですよ。それに僕には婚約者がいるんですよ」と言うと「知っているよ」と言われたので「え!?」と声を出してしまうとアリスから「嘘だよ」と笑いながら言われて僕は「冗談でも、それは酷いと思います」と言うと「そうね。でも君の事を調べさせて貰ったんだけど本当に君は何も知らないようだね。それに君なら私と「神樹」を守ってくれると信じられるんだ。君が、もし私の夫になれば私は安心して逝けるんだ。君も、この世界で生きる為には私と協力するしかないんだ」と言うので僕は反論出来なかったのである。

それからアリスに説得されて僕は、その話を受けてしまったのだ。そして僕は「勇盾の指輪」「勇者の剣」「聖女の力」の3つを手に入れたのであった。そしてアリスが、僕と付き合うことになったとアリアに説明すると「どうしてですか?私はあなたのために、これまで「勇者の剣」を探して旅を続けて来たのです。なのに、どうしてこんな冴えない奴なのですか?それにそっちの方は男らしくありません。」と言うのであった。僕は「アリスさんの気持ちを尊重しようよ」とだけ言った。

僕とアリスは「魔王退治」をする事にしたのだけれど「魔王」の情報が少なく僕一人では難しいと判断したのだが「勇盾の神樹神殿」まで戻るとそこには何故か僕の仲間がいたのだった。僕が唖然としていると仲間のみんなが次々と現れて僕の元に集まるのだった。僕の前にはアリスしかいないと思っていたのだが「おい!お前らどうやって俺の後をつけてきた?」と言うとその答えを返した人物は「それは秘密です」と答えた人物こそが実は僕の本当の敵なのではないかと疑い始めたのだが、「まあ良いさ俺は勇者だぞお前らを返り討ちにしてやるよ!!」と言ったのだが、「君にできるものか試しな!」と言う言葉とともに僕は意識を失いそうになるくらい強烈な痛みを感じて地面に倒れる事になった。

(痛い)と思って僕の身体には力が入らないで、起き上がれないでいるとアリスは僕を抱き起こしてくれたので僕は「大丈夫です」と答えると、アリスは、僕の事を支えてくれる。

(ありがとうございます。僕の為に戦ってくれるのはアリスさんと僕の大切な人達だけで十分でした)と思い僕は立ち上がった。

「お前は誰なんだ?どうして俺を裏切った?」

「僕は勇者さんとは仲良くなりたいと思わないんですけどね。アリスさんと颯真さんは僕が必ず守り抜きます。そして僕の計画も邪魔はさせない」

「お前の目的は何なのだ?」と聞くと、彼女は不気味に微笑むと、こう言って姿を消した。「貴方に話す必要は無いので」と僕は彼女を止める事が出来ずにその場に立ち尽くすだけだったのである。そしてアリスが僕に寄り添ってきたので僕は「すいません、少し考え事をしていました」と言うと「ううん、いいの。それより大丈夫?辛そうな顔をしていたよ」と言うのだった。僕は「はい、大丈夫ですよ。それよりも行きましょう。この世界に「魔族」を呼び出したのは僕達を始末するつもりだったのでしょう。僕は、そんな事に負けない。僕は、この世界の人間を絶対に守って見せる!」と僕は叫ぶのであった。僕は仲間達の方を向くと皆も僕の意見に賛成の様で力強く「おう!」と答えるのであった。

「僕達は「神樹」に急ごう!」とアリスに告げると僕は走り出すのであった。「勇者」の力を手に入れて身体能力が上がっている僕は、今までの僕とは違い全力で駆け抜けていくのである。

「アリスさん!」と僕はアリスの方を向いて声を掛けるのである。するとアリスは「待っていてくれたの?」と嬉しそうな顔をしながら言うので僕は「当たり前じゃないですか。僕はアリスさんと約束しましたからね」と言うとアリスは「うん♪ これからもずっと一緒だからね」と笑顔で言ってくるので僕は照れ隠しをするかのようにアリスの手を引いて走るのであった。僕は、アリスの表情を見るととても可愛く、見とれてしまう。

僕とアリスが、「神樹」に着くとアリスに「アリアの事なんだけど、君とアリスが魔王を倒している間、あの子を任せても構わないかい?僕はこの「世界樹」の近くで「魔獣」の相手だけでも精一杯だ」と言うと「私はアリアと二人きりなんて嫌だけど仕方がないわよね。それにしても「神樹」に「勇者」と「勇者の証」を持っている私以外の誰かが来ているのは確かみたいだわ」と僕の話を聞いてアリスは冷静になるのであった。

僕とアリスが「神樹」に向かって歩いていくのであった。アリスと一緒に歩いているとアリスは「アリアの事は心配要らないと思うよ」と自信ありげに言う。僕がどうしてアリスがアリアの事をそこまで信頼できるのかというと、アリスが「勇盾」を発動させている状態でアリアに近づくと「勇者の証」が熱くなるような感じがするらしい。僕は、その説明を聞いた後「勇者の証」を使ってみるも熱くなる事はなかったのでどうやら僕だけが反応するらしい。だから僕は「勇盾の指輪」を装備しているのだが、そのおかげで「勇者の剣」と「聖女の力」を扱えるようになるのであった。そして僕は、「僕がアリアを守る」と言ってみた。「君は私が守るよ!」と言うアリスだが「それだと勇者として示しがつきませんよ」と言うとアリスは不機嫌そうにするのである。そんな時アリスから、僕は、アリアの過去を聞くことになる。

僕とアリスは「勇者」の力によって「勇者」と「賢者」の能力を手に入れた僕は「神の瞳」というスキルのおかげで自分の能力を知る事ができるようになった。だから僕が自分の能力を確認するためにステータス画面を開いたのだ。僕は驚いたのだが僕はこの世界に来た時に、僕のステータス画面が表示されており、その時の僕はレベル2でありステータスの数値も普通では無かったのだ。そして僕は自分が持っている「勇者」の能力を使い「ステータス」の表示画面を開く事に成功したのだ。僕は自分のステータス画面に驚くと同時にアリスの言葉を思い出したのだ。

(そう言えば、このステータス画面で自分の職業を調べる事ができたはず。「勇者」では無いのかな?)と思って僕は「神の瞳」の力で「ステータス」と表示させたら僕の前に突然画面が現れたのだ。僕はそれをみて驚きのあまり絶句してしまう。僕はこの異世界で「勇者」の職業を手に入れる事になるのだった。

(そういえば、「勇者」の職業を手に入れたんだったな)と、思うと、僕はあることに気がついたのだ。僕の視界の中にアリスの姿が見えない。僕は慌てて周囲を見渡すが何処にもアリスが見当たらないのだ。僕は焦りを感じたので急いで「探知魔法」を使う事にしたのだが何故か魔法を使うことができないのだった。そこで僕が「魔法が使えない」という事実に気づいて絶望してしまったのだ。

魔法さえ使えればアリスを探す事が出来ると思ったのだが、僕は必死にアリスの姿を探したが見つからない。僕はアリスと別れてすぐに「魔素」という物が発生していたのを発見した。そのせいか僕は頭がぼーっとしてしまい思考力が鈍ってしまうという副作用が出てしまい思うように身体を動かす事が出来ない。そして僕は意識を失ってしまった。

目が覚めると、そこには「アリア」の顔があった。僕は一瞬だけドキッとしてしまい心臓の鼓動が早くなるのを感じる。僕はアリアから、僕の名前を聞き出したのだ。そして僕の事を颯真と呼んだ事に対して驚いていた。アリスからは「この子は君の名前を知らなかったから適当に呼んだんだ。許してやってくれないかい?」と言われて僕は少し納得できなくて、「僕には颯真って名前があるんだ。僕は神崎 颯太だよ」と、いうと「じゃあ私はアリアって呼んでね」と笑顔で返されてしまった。そして僕はアリスからも「私の事もアリアって呼んで良いんだよ」と言われたのだが流石に年上の女性を呼び捨てにして「さん」をつけるのは抵抗感があるので「アリス先輩」と呼ぶことにしたのだった。そして、僕とアリス、そしてアリスの先輩で3人で話をしながら「神樹」を目指すのであった。

僕は「アリス」と「アリスの先輩」と一緒に「勇者の剣」を取りに向かうため、「神樹」を目指していた。僕が「勇盾」を張りながら、先頭を走っていたのだが、僕と、そしてアリスとアリスの先輩が立ち止まると僕達が進もうとしていた方向に魔族の集団が待ち伏せをしているように現れたのである。

僕は警戒して、「アリス、アリアを連れて先に進んで下さい!僕があいつらを止めます」と言うとアリスは、何かに怯えるような仕草をした後、僕の服を掴み離してくれなかった。アリスは僕の事を睨みつけて言うのだった。(お前なんかに任せたら殺されるだろ!!お前に守れるのかよ!それにこいつは、魔王なんだぜ!魔王に殺された勇者だっている!こいつだけはダメなんだよ)と僕の心の中を見通したかの様な言葉を言うのだ。

(アリスの言っている事はもっともだし僕の事を思っての発言だってのも分かるんだけどさ、僕を信じて欲しいんだ)と心の中で思った僕は僕の身体に抱きついてくるアリスの腕をそっと掴むと、アリスは僕の方を見て涙を流しながら、僕の頬に口付けをした。すると僕が手に持っていた「勇楯の指輪」が赤く輝いて僕の腕から離れたのだ。

「これは僕の気持ちなんだ受け取って欲しい。絶対に無事に帰って来るから信じていてくれ。大丈夫僕が守るよ」と言うとアリスは僕の胸に飛び込み僕を抱き寄せると泣き始めてしまう。「絶対に帰って来てね。待ってるから。お願いします」と言い、僕に背中を預けるのであった。僕はアリスから受け取った指輪を装備する。すると「神樹」の方から魔族達の魔力を感じ取った。「神樹」の近くには「勇者」が居るはずなので僕は急いで魔族達の元に向かい走り始めるのであった。僕は走るのであった。「魔族」は人間と変わらない容姿なのだが、人間を凌駕する程の身体能力を有している。そして、僕が魔族達のいる所につくとその数はざっと30人くらいでしかも皆上級魔族だと言うのだ。僕が一人で相手に出来る相手ではないのだが僕が「勇者」の能力を使う為の「条件」として「魔族の王を倒す」というものが存在している。

僕は「勇剣」に力を込めた。そして、僕は「魔眼」を発動させ、僕の周りにいる敵の弱点を見つけ、攻撃を加える事にした。僕が攻撃をすると相手は次々に倒されていくのだが数が多すぎてキリがない上に僕の動きがどんどんと遅くなり、体力を奪われていくのだ。このままでは負けると思った僕は最後の手段を使うことを決意したのである。

僕はアリスから託された「勇盾の指輪」を手に持ち「勇者」の力を使い、僕の周りの敵を全て倒した。僕はその勢いのまま「勇者」の力により強化された身体能力を使い、更に数を増やし、次々と相手を斬り裂き葬っていくのであった。僕は全ての「魔素」が無くなりそうになった時「勇盾」「勇剣」の力を使い敵を一掃することが出来たのである。

アリスから、貰った指輪が光ると、僕の視界にメッセージが流れ込んできたのであった。「この指輪を装備した状態で戦闘を行った事により貴方の経験値は上昇しました。レベルが上がりました。レベル10に到達しているのでステータスの上昇が可能です。レベル15になりレベルが上昇した事でスキルの発現可能回数が増えています。ステータス画面を開いて確認してください。ステータスが上昇した事を確認してください。レベルが20に達した事を確認した事を確認する事が出来ません。よって貴方に特別なスキルを与える事は出来ません。ステータス画面に表示されるステータス画面のステータス数値が変化した事の確認を行うことが出来ません。よって、レベル25になった事を確認する事が出来ません。以上のような理由から貴方に特殊なアイテムを渡す事はできません。」という内容が流れたのである。そして僕はアリスの元に戻る事にしたのである。

(僕もアリスもまだまだ成長途中なのかもしれない。これからの成長を楽しみにしよう)と思い僕は「勇剣」に力を込め、僕に近づいてきた敵に攻撃を加えようとした瞬間、突然地面が大きく揺れ、僕は立っていられなくなる程、強い衝撃を受けたのだ。僕は地面に膝をつけ何とか耐えたが「神樹」の近くで何かが起きていたのである。僕達は「アリア」と合流を果たすのだった。

僕が「アリア達と合流しよう」と思って走ろうとすると目の前で爆発が起こったのだ。僕は何が起きたのか分からず唖然としていると、その光景を見たアリスが驚きのあまり固まってしまっているのだ。僕が声をかけるも反応は無くただ「勇者」のスキルを使い、「神剣の巫女」の力を使っているようだが上手く発動できていないようである。僕は、その状況を見つめていたのだが「魔族」に包囲されているこの状況はよろしくないと思った僕はアリスに「今、この状況を打破するにはどうすればいいと思いますか?」と聞いてみると、アリスは何やら悩んでいるような素振りを見せて言ったのだ。「魔族」に包囲されている現状で「勇者」の力で「勇者」の職業を手に入れるために「神剣の巫女」を使うか?「神剣の巫女」の力と「勇盾」の能力を両方使う為に僕も戦うべきか、それともアリスが「勇者」の職業を手に入れるまでの時間稼ぎの為に僕は死ぬべきではないのか、アリスは考えているのだと僕は思い僕はアリスに声をかけてアリスの手を握るのだった。そして僕はアリスの瞳を見つめながら「アリスは何を迷っているんです?」と質問すると、僕の問いかけに対して「お前が戦って死んだ場合、私はお前を殺した魔族共を殺す事ができないだろ!お前に死んでほしくはないんだよ!」と言って僕に向かって叫ぶように言い放ち僕の手を払いのけ僕を睨みつけてくるのだ。そして僕はそんな彼女を見て思わず笑みが溢れてしまった。アリスの気持ちを考えずに、自分の都合で「勇者」の力を使いたいと思ってしまったからだ。

「僕は死にませんよ。必ず生きて戻りますから。信じていてくれませんか」と僕は彼女に言うと彼女は僕に笑顔を見せてくれたので安心して、僕は魔素の気配が密集した方へ駆け出すのであった。そして、魔素が集中した所に辿り着くと僕は、そこにいる魔族のボスらしき人物を見つける事が出来た。僕が「勇盾」を張り、アリスと「アリスの先輩」を後ろに隠して、相手の魔族の集団に突っ込むと僕は「勇楯」に力を注ぎ込み「勇楯」の硬度を上昇させたのである。僕は魔族達が繰り広げる魔法の数々を弾き飛ばして突き進むのだった。

「僕は負ける訳にはいかないんだ」そう思うと僕の身体から力が湧いて出てくるのを感じたのだ。僕が力を込めた「勇楯」が赤黒く光ると僕は一瞬にして、敵の魔族を吹き飛ばす事に成功するのだった。吹き飛ばされていく「上級魔族」の集団の中に一際大きな体格の魔族は僕を睨みつけて言うのだった。「よくも仲間を殺ってくれたわね!!覚悟は良い?」と言い放った後、一瞬にして姿を消した。そして次の瞬間、僕の「勇楯」は破壊され、僕の胸は切り裂かれたのだ。

僕の胸は一瞬にして切り裂かれ血を流しながらも、その一撃を防いだ。だがその攻撃が速すぎた為、防御が遅れてしまったのである。「僕は絶対に死ねないし、ここで倒れる訳にも行かない。僕の大切な人の願いなんだから!!」と僕が思っていると、アリスの悲痛の叫びと共に「聖剣の巫女」の力が発現したのだった。

僕の前に「勇者」の力を手にした「アリス」が現れた。僕の胸には大きな傷があり、「魔素」が体内に入ってくる度に、激痛が走り意識が飛びそうになる。だが僕はまだ生きているのだ。まだ終わってはいない。そして、アリスが「勇者」の剣を振り下ろすと、巨大な剣が出現し、僕は咄嵯の判断により剣を受け止めた。僕の腕からは、とてつもない程の負荷が加わり僕の腕は砕けてしまいそうだが僕は耐え続けたのだ。そして僕は力尽き気を失ってしまうのだった。

僕は「勇者」の能力を発動させると自分の身体に何か違和感を覚えた。すると僕はアリスの声が頭に響き渡る。

【スキル:「勇者の祝福」「勇者の力」を獲得致しました】

すると僕は突然全身からとてつもないエネルギーを体内から感じるようになり、身体が軽くなったのだ。

僕の胸に空いた穴が瞬く間に再生するとアリスは僕の前にやってきて微笑むと、僕の手を取り走り出したのである。

そして、僕は魔族が居なくなり、静まり返った「神樹」の中を突き進んで行くと僕はそこで、あるものを発見したのだった。それは、とても不思議な「空間」なのだが僕達の目の前に現れた扉は開きそうな様子が無いのだ。僕はその「空間の亀裂」に触れてみると僕に「勇楯」を渡そうとしてきた女性の声が響いたのである。

すると「勇者」の力が僕の体に吸収されていき、僕はその場に膝をつき動けなくなってしまった。アリスはその「空間の裂け目」に触ると「勇者の職業」が僕の元にやって来て、アリスは「神盾の勇者」の職業を手に入れた。その瞬間、僕達を襲っていた異変は収まったのだ。そして僕は、再び立ち上がり、この先にあるはずの魔王を倒すべく歩き始めた。

僕が、一歩踏み出そうとするなり、急に僕の周りに霧がたちこもり視界を奪っていった。「くっ!何だよこれ。どうなってるんだよ!?」僕は焦り、その場に立ち尽くしていた。「どうしよう、僕だけ取り残されてしまったら」と思うもアリスが来てくれるはずがないのだ。僕は必死になって、アリスの名前を呼ぶが僕の視界が開けることがなく僕の頭の中では最悪の事態を想定して僕は絶望に暮れてしまう。僕はその時「勇者」の「スキル」を使い、視界を奪う原因を取り除く為に僕の「スキル」を使用したのだが何故か効果がなかったのだ。

僕の頭の中は混乱しており、「神盾」と「勇者」のスキルを使えばこの場を逃れる事が出来るのではないかと思い試しにやってみたがやはりダメであった。アリスは無事なのか心配になる僕は何度も「勇者」の力を使ってアリスに呼びかけてみるが一向に返答はなく、この状態から抜け出す手段が見当たらないのだ。そして僕は「勇者」のスキルを何回も使っていると僕は突如頭痛に襲われ地面に倒れ込んだ。僕は地面に寝そべり「何なんだよ」と呟いていると、今度は「勇剣」が光を放ち始め僕の体を包み込んだのだ。

僕は眩しさに目を瞑ると徐々に体が楽になり気分も落ち着いてきたのだ。

「どうなっているんだ?」と僕が困惑していると「貴方が「勇剣」を手にしてくれた事を確認しました。貴方を勇者として認める事をここに証明します。貴方は勇者の資格を持つ者になりました。」と僕に向かって言ってきたのである。

そして僕の身体が光輝き出すと突然、地面が消え失せ浮遊感に包まれたのだ。「僕はどうなったんだ?」と思っていると「神剣」が突然光を放つと「ここは?」と僕の目に映し出された光景は今まで僕がいた場所ではなくて見たことのない場所に立っている事に気づいたのである。そこには僕と同じ位の年齢の女の子が立っていたのだ。僕はその子に話しかけようとしたが「君も勇者かい?」と言うとその子は驚いた表情を見せるも「私は違いますよ?でもあなたが私のマスターでいてくれれば良いです。私は『勇剣』と申すものです。今後ともよろしくお願いします。ご主人様」と丁寧に挨拶をして来た。僕は何の事か分からず「ちょっと待って!君の言っている事が理解出来ないよ」と言っても聞き入れてもらえなかった。僕はどうすればいいのか分からず困っていると、いきなり後ろから声をかけられた。

「おい!お前何やってんの?」そう言いながら近づいてくる男に振り返り見覚えのある人物だったので僕は「君はアリスの先輩か?」と尋ねると男は驚きを隠せないようで固まっている。

「俺を知っているのか?」と尋ねてくる彼に「ああ、知っているさ。アリスの先輩で勇者だろ?」と言うと男は「お前一体誰だよ?俺は知らないんだけど?」と言いながら首を傾げていた。「は?何を言ってるんだ?忘れてしまったのか?」僕が問いかけるも「お前なんか知らないぞ?それにお前は何者だ?」と言われ僕は、どう説明してよいものかもわからず困惑したのだ。

すると僕の頭にまた例の声が響くと「貴方は私と契約を果たしてくれたのですね!これでようやく私を使うことができます!本当にありがとう!」と僕の耳に聞こえてきたのである。すると、僕は突然「スキル」を使えなくなっていたのだ。すると僕の横にいる男の口角が上がり不敵な笑みを浮かべると「やっとお前に会えたぜ!」と言って僕に向かって拳を振りかざしてくる。僕はそれを咄嵯に反応して回避したが「なんなんだ?」と疑問に思っていると、男が「今度こそ死ね」と言い放ち僕の方に突っ込んで来ると蹴りを入れて来たのだ。その攻撃を防ぐことが出来ず僕は吹き飛ばされる。そして僕を吹き飛ばした後すぐに体勢を立て直すと僕の方を向き再び攻撃を仕掛けてきた。

僕は何とか避けるが反撃に転じることができないでいる。僕は防戦一方になってしまい「これはヤバイな。このままだと殺されかねない」と危機感を覚え始めると、僕は咄嵯のところで、男から距離を取ると、そのまま逃げるようにその場から離れたのである。そして僕は一旦落ち着こうと思い「勇盾」を展開して自分の周りを壁を作る事に成功すると、そこでようやく「勇剣」の声を聞くことができた。

「私は勇者にしか見えないんですよ。そして勇者は魔族の力が通用しないので大丈夫ですよ」と「勇剣」は言うが僕の体力ももう底が見えてきている状況なのだが「それじゃあどうして僕に襲い掛かってきたんだろう」と考えると「あいつは勇者が嫌いらしいんです。だから魔族の中でも勇者を殺す為だけに動いている魔族ですよ」と言ったのだ。僕は「そうだったのですか」と返すしかなかった。そして、「僕はこれからどうすれば良いでしょうか?」と聞くと、「まずは仲間を集めて魔族の王を倒しましょう。それが今の一番優先すべき事ですが、この世界で魔王と呼ばれる人は居ません。その代わり、その代理を務める魔族が存在しています。この世界は、元の世界とは全く別の異世界ですので気をつけて下さい」と「勇剣」は助言をくれる。そして僕は「あのー僕の仲間の方はこちらにいないのでしょうか?」と聞いてみると「残念ながらそちらの方にはいません。貴方は1人なんですよ。私がサポートするのでご安心を」と「勇剣」は励ましの言葉をくれた。そして、「この世界の事なので詳しい事は分からないが勇者と聖女と賢者が存在する」と言っていたのだ。

そして僕は「とりあえず、僕の能力や武器について教えてください」と質問すると「では、ステータスを開きましょう」と「勇剣」が言うのだった。すると僕の目の前に「ステータス」が表示される。「勇楯」を展開すると僕は「スキル」を使用するのだった。そして、僕の視界が奪われていく。

すると「勇者の力」というスキルの効果により僕の身体能力が向上して行くのが分かる。すると僕の頭の中で「勇楯の力を最大限発揮する為にも自分の身を守る事を最優先にしなさい」と言われたのだ。僕は自分の身体を「スキル」により守ることに徹することに決めた。だが、僕の視界を奪った霧が消える気配が全く無いので僕は非常に困惑していると、僕は突然背中に激しい痛みを感じてしまい、僕は倒れ込んだ。

「うぅ、痛い。一体どうなってるんだ」と苦痛を我慢しながらも立ち上がるのだが、今度は足に強烈な衝撃を受ける。そして僕は地面に叩きつけられる形で倒れると「ぐはっ」と血反吐を吐き出す羽目になってしまったのだ。「勇楯」のおかげで外傷は無いのだが僕の心は恐怖に支配されており、震えが止まらなくなってしまったのである。僕はどうにかこの状況を打開すべく僕は地面に倒れ込んでいる状態で必死に考えていた。僕はこの時初めて「スキル」の使い過ぎによる代償に気づくと僕は完全に無力化してしまった。

そして、意識を失いかけている僕の側にやってくると「勇者の力は素晴らしい。この世界で一番強いと言われる魔王の一撃を耐え抜くなんてね。でもまだまだ君には頑張ってもらわないといけないんだよ」と言い僕の腹を容赦なく踏みつけ、そのあと僕の顔を殴りつけたのである。僕は「ゴフッ」と口から血を吐き出すと地面をのたうち回った。

僕は激痛に襲われつつも立ち上がりたいと思っているのに体は思うように動かなかった。そんな状態に陥っている時、突如霧の中から「スキル」らしきものが僕に向かって放たれると、それは僕に直撃し、僕の体を吹き飛ばす。「うぉおお」と悲鳴を上げながら僕の身体は宙に浮き地面へ打ち付けられたのである。

僕の身体は「勇楯」の力で無傷なはずなのに僕の身体はボロボロになり始めていた。僕が意識を失ってしまうのは時間の問題だろうと覚悟していた時に僕の耳に「貴方が私の契約者ですか?貴方の魔力を貸して貰えますか?私も少しお手伝いさせて頂きます」と僕の耳に少女の声が響き渡ったのだ。僕は「貴方は?僕を助けてくれるのか?」と問い掛けると、「勿論ですよ。私のマスターになって下さるのでしょう?助けるのは当たり前じゃないですか」と言うと僕の手に握られていた「勇者の力」の光が更に強まった。「これで私の力をマスターに与える事ができます。後はご自分で対処なさってください」と僕に向かって話しかけると「勇剣」から「勇盾」に光が変化していき僕の姿も勇者らしい姿に変化したのが確認できたのである。僕は先程まで動けない状態だった身体が嘘のように動く事を確認してから僕は「勇者の力」を試してみた。すると僕の体に「神速」が付与されたらしく一瞬で僕の移動速度が上昇したのである。そして「神盾」の防御力も上昇している事がわかり、僕の手にある神剣の刃が白く輝いている事に気づくと「これなら」と思うのであった。「神剣よ。僕の呼びかけに答えて光を放ち続けるといい」と神に祈り捧げるような感覚で言うと「貴方が私のマスターですね?私の力を存分に使って下さい」と言うので僕は「神剣よ!僕の敵を切り裂け」と言うとその瞬間に僕の体が動き出し敵の方へと向かっていった。「スキル」を使い僕の目でも追えない程の速度で敵の元へ移動すると僕の手に持つ神剣に力が込められ敵に対して振りかざしたのである。そして僕は敵を倒すことに成功するのであった。すると「これで私を使う事ができるようになったので「聖杖」を使って下さい。私はその杖に封印されていましたのでよろしくお願いします」と「勇剣」から話しかけられたので僕は「分かりました」と返すのだった。

「僕は一体どうなったんだ?」と疑問を抱きながら僕は起き上がる。僕は「スキル」を使用した影響によって記憶が曖昧なのだが僕の横に居座っている女の子を見ると「君は誰なんだ?」と聞くと彼女は微笑むと僕の質問を無視して「私に名前を授けて欲しいのですがよろしいでしょうか?」といきなり言われたのだ。僕はどう返事をしていいものか困惑してしまい固まっていると「早く名前を決めてくれないと私の存在が消えちゃいますよ」と言われてしまったのだ。「じゃ、じゃあリゼって名前はどうかな?」と咄嵯に思い浮かんだ言葉を並べると彼女は大きく反応した。そして「その名前気に入ったの。ありがたく受け取ります」と言ってきたのだ。すると僕は彼女のステータスを確認しようとするが何故か見えなかったのだった。すると僕の目の前に再びあの謎の人物が現れると「やっと会えたぜ。勇者に殺されたと聞いて焦っていたぜ。まぁ俺様にとっては好都合だったけどよ。これでお前に力を注ぎ込める。この世界で勇者に対抗できるのは俺様とお前だけなのだ」と言い残すと再び姿を消したのである。僕はこの時になってこの世界にも他の異世界召喚された人たちがいるのではないかと疑問に思った。しかし、僕の周りには他の人が居らずに「勇者」と呼ばれていた。つまりこの世界は僕のいた世界とは違う異世界なのだと確信したのである。僕はその後、「勇盾」を展開すると「聖杖」を取り出して「スキル」を使用することにした。

僕は「勇盾」を消すと「神盾」を右手に装備する事で僕は防御面を完璧にすることが出来たのである。だが「勇盾」と違い「勇盾」は常に展開していないと効果が発揮されないのが難点であり常に僕に攻撃をして来ていたのだった。そのため僕の体も「スキル」の影響で限界を超えようとしていたのだ。僕はこの「スキル」の連続使用によるデメリットを理解したが、それでも使うことを止める訳にはいかないのだ。

すると突如「マスター、そろそろ終わりみたいですよ」と彼女が言ったため僕は急いで「スキル」を発動して攻撃を防ぐ事に成功したのである。

だが僕がほっとした束の間、突如僕の目の前に黒い球体が出現するとそれに触れただけで僕の体はバラバラに切断されてしまったのである。僕は必死に回復を試みたのだが僕にその術は無く意識を失う前に僕はある言葉を思い出しながら死ぬ事になる。「僕には勇者しか存在しない。この世界での唯一の生き残りは勇者だけだ」と。

僕は暗闇の中にいた。何も見えない空間の中で僕が目を覚ますとそこは僕の知っている場所ではない事が理解できたのだ。

僕は慌てて辺りを見渡すと「スキル」を使用し「勇剣」を展開しようとすると僕は違和感を感じたのだった。「スキル」を使おうとしたはずなのに僕は「勇剣」を展開していないという事に気づいたのである。すると、僕の横には僕より身長が低いと思われる少女が立っているのが分かると僕は「君が助けてくれたのか?」と聞くと少女が笑顔を浮かべ「そうです」と答えてきたのである。僕は「君は一体?」と質問するのだけど少女は「私の事よりも貴方の事ですよ。今貴方は命の危険に晒されています。ですが安心してください私が守りますから」と言ったのだった。

「勇者」と「魔王」が存在する異世界での僕の戦いがここから始まった。

僕はこの少女が「勇者」なのかと疑ったが見た目があまりにも幼い為、勇者とは考えにくく、この世界の事をもっと知る必要が有ると思い、この謎の少女に話を聞くことにしようと思った。

僕はとりあえず自分の置かれた状況を把握するために周りを見渡し「ここはどこなのですか?僕はあの時、死んだと思っていたのになぜ生きてるのでしょうか?」と目の前にいる自称「女神」を名乗る美少女に声をかけるのだった。

「うふっ。その質問は少し違いますね。確かにあなたは一度死に掛けはしましたが「勇楯」の能力のおかげで助かったんです」と目の前の「幼女」は言うのである。僕は全く意味が分からないが取り敢えず「勇楯」が何かは知っていたので僕は「僕の持っている「スキル」の一つなのですか?」と聞き返すと彼女は驚いた顔をすると「そうなりますよね。私の名前はアリサと申します。「神剣」「勇盾」そして貴方が持つ「勇者の力」は勇者の力として私が管理しているものなのです」と僕に告げると「まずは私の話を聞いていただけませんか?」と僕に対して真剣な眼差しを向けるのである。

僕は彼女から聞いた話を頭のなかで整理していた。そして彼女は僕を異世界へと連れて来た存在だと言う。僕は「それなら何故僕を選んだんだ?」「それはですね、私の力に耐えられる器を持った者がいなかったので、貴方を見つけた時運命だと思い声をかけさせてもらったのでございます」と言うと「それにしても、僕の身体を勝手に動かして僕の知らない内に僕を殺そうとしてくるとか酷すぎやしないですか?しかも何回死んでると思ってるのですか?もう嫌になりますよ」と僕は思わず愚痴が出てしまう。

すると彼女は「すいませんでした。貴方に危険が迫っていたので私としても貴方を助けてあげたくて」と言うと急に泣き出し始めたのだ。そんな彼女を見ていたら僕は罪悪感で胸がいっぱいになり僕は彼女に「いや、ごめん。言い過ぎた。でもありがとう。僕は貴方に救われたのだ」と言うと彼女の頭を撫でて落ち着かせてあげるのだった。すると彼女は落ち着きを取り戻し「私こそ申し訳ありません。私は「聖杖」と呼ばれる神剣の1本なのです。私の役目はこの世界を破滅から救うことなのです」と彼女が突然語り出した事に僕はかなり困惑したが取り敢えず話を聞きながら考える事にしたのである。

「なるほど。話は大体分かりました。僕の能力について教えてくれますか?」僕は先ほどまで泣いていたため目元を真っ赤にした幼女を見ながら問いかける。すると彼女は「勿論でございます。勇者様の能力を「勇盾」と言いましてあらゆる物を受け止める事が出来るスキルでございます。そしてその勇者様に渡される「勇剣」これはどんな攻撃も受け流し受け流したものを相手に跳ね返すことができる伝説のアイテムなのです。最後に勇者様が扱うことが出来ると言われる「勇者の力は」全てのステータスが飛躍的に上昇するという素晴らしい力で、この世界に存在する武器は全て破壊する事が可能なほどの攻撃力を秘めたスキルで、使い方によっては世界を変えることも可能でございます」と説明してくれた。そして、彼女は「これからどうされますか?貴方は世界で唯一の「勇者」の力が使える人です。貴方が望めば魔王討伐の旅も可能なのですよ?勇者の力で敵をなぎ倒し平和を取り戻すことも」と話す。そこで僕は思い出してしまったのだ。

勇者召喚されて僕の目の前に現れた謎の男は僕の体を乗っとると勇者の力とは何だったのかと思わされ僕は無残に殺されていたことを思い返していると僕は「あのさぁー」と話し始めてしまい自分でもこの場の雰囲気を壊すと自覚しつつ言葉を続ける。

「その勇者の力を使って僕を殺した奴を倒す事は出来ないのかな?」と疑問を投げかける。

「はい。それが不可能なのです。勇者がこの世界で生き返った事例は一度もないので」彼女は僕の質問に対して当たり前だと言わんばかりに返事をする。僕は「やっぱり無理なのか」と諦めかけている時にふとある疑問を抱いたのだ。

僕が「なんで、君には僕が勇者ってわかるんだ?」

と僕は「スキル」を発動しながら聞くと目の前の女の子が僕に向かって「鑑定」と唱えてくるのである。すると僕はステータスが「勇者の力(極)」とだけ表示されるのである。すると目の前の少女は「どうやら、勇者様は本当に勇者の力を持つことが出来たようです。まさか私以外にも勇者が存在したなんて驚きなんですけどね」と言い、そして「貴方の望み叶えましょうか?それともこのままこの世界に居続ける事を選びますか?」と言ってきたのだった。僕は彼女の話を聞いて少し考えた後「僕にはまだこの世界でやる事があると思う。僕は僕が勇者として召喚された理由を知りたい。それにこの世界にも僕のいた世界に居たかもしれない人達もいるだろうし、僕が生きている間はこの世界を守りたい」と言い「じゃあ、僕に出来る限りは協力します」と言い「僕は、アリスに会わなければならない。あの子を守れなかったから、もう一度だけでも会いたかった」と僕の心からの言葉に目の前の少女も「えっ?」と驚いていた。

それから暫くの間、この世界で生きていくために必要な事を僕は少女に教わりつつ僕はこの世界での自分の立ち位置を確認していった。そして少女は僕の事をこう呼ぶようになっていた。

「マスター」と。そして少女がマスターと呼ぶのに抵抗があったため「名前で呼んでくれない?」と言うも頑なに「マスター」としか言わなくなったため僕はマスターと呼ばれる事を受け入れ「僕の本当の名は、田中勇也だ」と名乗る。少女は不思議そうな顔をしながら「なぜそのような名を名乗るのですか?」と言われて僕は「本名を名乗ると僕をこの世界に呼んだ存在が現れる可能性があるので偽名で名乗りたくて」と言うと納得してくれた。少女の名前はアリサと教えられたが僕からは偽名を名乗り「僕はユーヤと呼んでくれ」と言うと彼女は素直に従ってくれた。

そして僕は勇者の力を発動させる為の鍛錬を始めたのだった。

僕はこの世界に来たばかりの頃に勇者の力を発動できなかったのだが今は何故か発動できるようになった為、まずはその事を確かめたかった。そのため僕は少女アリサにお願いして訓練用の木刀を持ってきてもらう。

僕は「スキル」の欄にある「勇者の力」の項目を選択すると、僕の頭の中で「勇盾」が展開されて行き僕の身体を守るように出現するのを確認したのだ。僕はそのまま「勇剣」と呟くとその瞬間、僕の右手には光の粒子が集まって剣のような形になるのを確認すると僕はそれを振りかざし地面に思いっきり打ち付けるのである。すると、剣が触れた箇所を中心に半径10mの地面が砕け僕は吹き飛ばされてしまうのだった。僕は「痛たたっ。こんな感じなのか。思ったより威力が有りすぎる。これは気をつけないとな」と思い僕は起き上がり周りを見ると、アリサは唖然とした表情を浮かべながら「なっ何をやってるんですか!危ないですよ。怪我したらどするんですか!」と言うので僕は平謝りすると彼女は溜息をつくと僕の元に近づいてきて手を差し伸べてくれるので僕は「ありがと」と感謝を言い彼女の手を取り立ち上がると彼女は笑顔になりながら「全く困ったお方です。もう少し慎重に行動なさってください。貴方が死んだら私は貴方の世界を救う事が出来ないんですから」と僕の事を心配してくれているのか怒ってるのか分からない発言をしてくれるので「まぁー確かに。そうだね。でも大丈夫だから」と僕は言うと彼女は「なら良いのですが」と言い僕から離れると、僕は「そういえば、君は戦えるの?」と疑問に思ってたのでアリサに聞いてみると彼女は自信満々の顔で「はい、私は貴方に力を与えられておりますので多少なりの力は有ると思います」と答えたため試してもらうと彼女は剣を振り回し僕に迫って来た。僕は彼女に「待ってくれ」と言うと彼女は「どうかなさいましたか?」と言うので「君の攻撃が見えないんだ」と言うと彼女は微笑みながら「ふふふっ。私が力を貸してますから当たり前ですよ。私のステータスを見てくだされば分かりやすいかと」と言うので僕は言われるままにステータスを見ることにした。そして確認した結果僕の予想通り彼女のステータスは桁違いに高かったのである。僕は彼女に謝罪をし彼女のステータスを僕にコピーしてもらうのだった。

彼女は「私も勇者様に力を分けていただきたいのです。私の力も勇者様に役立てた方がこの世界の未来のためだと思われませんか?」と言うので僕は彼女の願いを聞き入れる事にすると彼女は嬉しさのあまり「やったぁ。これで私達もっと仲良くなれますよね?私の事は好きに扱ってもよろしいのでこれからよろしくお願いします」と僕の手を握り握手してくるので僕は苦笑いになりつつも彼女を受け入れる事にしたのである。僕は「それで僕はこれからこの世界について勉強したいんだけど教えて貰ってもいいかな?」と言うと彼女は喜んで引き受けてくれた。

彼女の話によるとここの街は「セイレーン」と呼ばれる街らしく、魔王軍が襲撃してきた時に唯一持ち堪えていた町らしい。なのでこの町を死守できたおかげで魔王軍の進軍を抑え込めたという経緯があったみたいだ。

彼女は続けて「この国の王城は海の向こうにありその手前に「ダンジョン」があります。その近くには魔王軍の本拠地もありそこには「七罪人」がいて、その者たちは人間の負のエネルギーを吸収する事でさらに強くなるので注意しなければならないですね」と話す。そこで僕はふと思った。僕を勇者の力でこの世界に呼び出す際にこの世界の人々を犠牲にしてまで召喚したのは、やはり間違いだったのではないかと考えていた。何故ならば勇者を召喚する際、膨大な魔力を使うとの事だったので、それを補う為に「勇者の召喚を行う時」と「勇者を呼び出す時」の2回分の魔法を使い「召喚魔法を発動させている間に勇者召喚を行い呼び出したらまた召喚を行った場合勇者は1人に限定してしまうので今回は僕1人だけ呼び出されてしまったのでは」と考えると彼女が突然口を開いたので意識をそちらに向ける事にした。

「実は先ほど勇者様を召喚した際、何者かによる妨害がありまして勇者様以外が異世界に来ることはありえない状況なんです。」と言い、僕も「それはどうしてなの?」と質問をすると彼女はこう答えたのであった。

この世界には本来存在するべき「勇者の力(極)」が存在する人間と、召喚されるはずの「勇者の力(極)」を持った人間がこの世界に存在しているはずなので本来、召喚するはずだった人間は召喚されるはずがないとのことだ。そこで僕が勇者の力で召喚された場合は、本来の世界に存在する勇者の力を持っている人物を呼ぶためにその人の力を奪って勇者を誕生させることが出来るらしいので僕は少し考えてみたもののそんな事は出来ないと判断すると「勇者の力って奪うことなんて出来ないんだろ?」と僕が聞くと「普通はそうなのですが」と何か言おうとしていたので僕は気になって聞くことにしたのだ。僕は「勇者の力を発動させてみるね」と言い、僕の頭の中で勇盾を展開させて行くイメージで勇者の力を発動させると勇盾を展開することに成功した。僕は驚きながらも「なんで出来たんだろう」と聞くと「勇者の力の源がなんなのか分からなかったのですが、勇者様の場合はどうやらこの勇者の力を奪うという事が関係しているみたいなので」と答えてくれた。

僕は「それなら、この力でアリスを助けに行けないかな?」と言うと彼女は「勇者様のお力だけでは厳しいと思います。この世界には魔族と呼ばれる者達が存在していて彼らに対抗するのは難しいかと。」と言うと僕はある提案をしてみようと思う。僕は彼女の目をじっと見つめ「君には、まだ力が有るはずだよ」と言うと僕の目の前の少女の目には光が見えてきた。「私にはまだ何かできることがあるんでしょうか」と不安そうに聞いてきた。僕は彼女の言葉を信じて「僕が君にかけた勇者の力を使って、もう一度勇者の力を発動させる事はできないだろうか?」と僕がお願いしてみると「少し時間を下さい」と言い集中し始めたのだ。それから少し経つと彼女は顔を上げ僕の方を向くのである。僕はどんなことをされたのかという興味で彼女の瞳を見てしまう。彼女は「貴方の中にいる存在の事を知らせて頂きたいのですがいいですか?」と真剣に僕に聞いてきたので僕は「いいけど、どうやって伝えるんだ?」と言うと、僕の身体が急に震え始め頭の中で声が聞こえるのである。

『我はこの者の身体を借りて顕現する事ができるのじゃ。だからお前に話しかけたんじゃ』と僕にしか聞こえないであろう小さな声で話してたのだった。僕とアリスと少女は互いに驚きの声を出しながら僕は少女の方に向き直り僕は「こいつは、アリスの魂なんだ。アリスの身体を取り戻すための旅に出なければならない。その為に君の協力が必要なんだ」と少女に訴えかける。彼女は「分かりました」と言ってくれる。僕たちはまずはアリスを目覚めさせアリスから話を聞かなければいけなかった。そのためには、まずアリサに僕の身体を貸してやる必要があったので、僕と少女が同時に僕の背中に触れる。僕達は「せーのっ」とかけ声を掛けて互いの身体を交換したのだった。そして僕の中で眠っていた勇者の力に僕は目を向けると「勇剣」「勇盾」が消えていき勇盾は勇盾ではなくなっていた。僕の身体は、そのまま僕の意識の中へ入り込んで行き勇盾だった物は僕に装着されている。僕は身体の感覚を確かめるように動かした後、勇盾だった物を取り外してみたが、勇盾と全く同じ形をした剣が出てきたのだった。そして「これが僕たちの武器になるのかもしれない」と言いつつ僕と勇盾の見た目が全く違う事について考えるのである。僕はとりあえず剣に意識を向け「この剣はどういう剣になるんだ」と思い念じてみた。すると勇剣と同じ形の剣が現れ「この剣の名は?」と思い問いかけると頭の中に剣の名前が入ってくる。そして僕は「名前を付けて」と言われるが僕は思い浮かばず、僕は適当に名前を言ってみることにした。「そうだな、勇者の聖剣とか」と言った瞬間僕は自分の意思に反して身体を動かされていた。「よしっ!聖剣だ!俺の名前は聖剣な!俺は勇者を守るぜ!これからよろしくな!」と僕の意思とは関係ない事を言い出した為、僕と僕と入れ替わっている勇者の少女と僕は苦笑いしか出てこなかったのである。僕はアリサとアリサと交代すると僕は僕から奪った聖剣を見つめていたのであった。しかし僕が勇者から聖剣を奪い取ったせいで「スキル:能力吸収」の効果がなくなり聖剣の能力は使えなくなったので今は使えない状態であるが僕達の仲間になったのでいずれ使い道が有るのだろうと思っていた。

僕は今、勇者の力と「スキル」の融合を試みるべく僕は「勇者の能力」を発動していた。発動自体は上手くいくものの「スキル」との親和性が低いためなかなか発動できずにいた。僕が困っているところに少女は現れて「私のステータスを見てください」と言われて彼女のステータスを見させて貰う事にした。そこには驚くべき事が書いてあった。僕は彼女のレベルは「20」しかない。それなのに彼女の力はとんでもないものだった。彼女は僕に「勇者の力に干渉出来るんですか?」と聞かれたので「多分無理かな」と答えると「なら私も手伝わせてもらいます」と言い僕と少女は2人で試行錯誤をした結果、どうにか「勇者の力(極)」に僕の持つ全ての力を注ぎ込み勇者の力で僕の持つ力を全て使えるようになる方法を模索した結果、僕の身体に僕の持っていた全魔力と体力が流れ込む。その反動で僕の視界は真っ暗になっていたのである。「勇者様っ」と言う少女の叫びで僕の身体を誰かが支えてくれていた。それは「僕」のようで僕ではなく僕を支えるようにして抱きついていたのであった。「ありがとう。もう大丈夫だよ」と言うと「よかったです」と言って彼女は泣き出してしまっていたのである。僕は彼女を慰める事に必死になってしまい、このタイミングで「ステータス」を発動することが出来た。僕は自分の能力値を見て驚くのであった。僕は彼女に質問をする「僕のステータス見てみて貰えるかな?」というと「あっはい」と返事をしてくれ僕の隣に立ち、一緒に僕の能力値を見てくれることになった。僕は「どう?何か変化あった?」と聞いたのだが、彼女の表情を見る限り良いとは言えない結果のようだ。「私は力不足で何も出来ないかもしれませんが、少しでも力になれる様に努力しますのでよろしくお願いします」と言うと僕の唇を奪ってくるので僕は驚いてしまい顔を赤面してしまうのである。そして「私もあなたを守りたいんです。ダメですか?」と真剣な顔で見てくるものだから「もちろん」と言うと今度は抱きしめてきて「大好き」と言ってくるので、僕は「おいっ僕から離れろって」と言うと、少女は自分の胸に手を起き「勇者様」と呼んできて僕と視線が合うと恥ずかしそうに俯いて離れてくれたのであった。「ところで君は、なんて言うんだ?」と言うと「あっ、申し遅れてしまいすみませんでした。私の名前はアリスと言います。アリスとお呼びください」と丁寧に挨拶してくるので「こちらこそ、よろしくね」と言うと彼女は笑顔になってくれたのだ。そこで僕は彼女のステータスを確認することにしたのだ。僕は勇者としての力を使い勇者の力で彼女に対して鑑定をかける。

すると、僕が勇者の力を使う事で勇者の力の欠片を扱えるようになりその勇者の力を使い僕と彼女の能力を共有させる事が出来るらしいのだ。なので彼女の能力値を見ると「HPが500」になっているが、勇者の力と僕のステータスと彼女の力が融合しているおかげで数値的には100くらいの補正があるみたいだ。そして彼女は僕が勇者の力を使っている間は僕のそばにいないと死んでしまうような状態らしく、彼女が僕の傍を離れようとすると僕の命の危険に関わるらしいので僕は、なるべく彼女の近くに居るようにする事にしたのだった。それから僕はアリスと一緒に魔王軍のいる「ダンジョン」へ向かう準備を行う為に街に出て買い出しを行っていた。そして買い物を終えて店を出てしばらく歩くと僕たちの前にフードを被った人が数人立ち塞がるのである。僕は警戒心を持ちつつ、どうするべきか迷っていると僕たちが話をしている最中に僕たちに攻撃を加えようとしてきたが僕の盾が攻撃を防御する。

「おっおい、いきなりなんなんだ!」僕は突然の攻撃に怒りながら相手に怒鳴るが相手は何も言わずに攻撃を仕掛けてきたので僕は盾を構えながら相手を殴ろうとするが盾で弾かれてしまう。僕は相手の攻撃の威力が高いと感じたため勇盾を発動して敵の攻撃を防ぐと勇盾から光が溢れ出てくると盾から放たれている光は「盾の剣」となり、盾の剣を敵に突き刺し切り裂くと相手が怯んだのである。僕はすぐに盾の剣を引き戻し構え直す。僕は、敵の強さを確かめるため盾の剣を連続で発動させると、敵の魔法陣を破壊していった。そして僕は剣を引き抜き距離を取り相手の様子を見ていた。僕の盾の剣の使い方を見た他の奴らも、僕の真似をして盾で魔法を受け止めていた。そんな僕達の行動を気にせず一人の男が口を開く。「お前らには勇者の力が宿っていて俺らは勇者じゃない。だから勇者は俺らが殺す。それで問題はないはずだ。」と言い僕の事を睨んで来る。僕は「ふざけんなよ。誰が誰を殺そうと自由だけどさぁ」と言い返そうとすると「お前らの邪魔さえなければ俺はアリスを殺すことができたのによぉ。まあ良いさお前らを殺せばいいだけなんだからよ」と言い剣を振り上げ襲ってくる。

僕は咄嵯の出来事に焦り、盾を構える事しか出来なかったのである。剣の重さを感じ、この男はかなりの使い手だと思いつつも僕は剣を受け止めて押し返した。そして男は僕に剣を叩きつけながら「勇者なんだからもっと強くなっておくべきだったな。まあお前は俺らに殺されるけどな」と言うと剣を振るいながら距離を縮めて来た。僕は後退して行きながらも隙を突いて剣を突き立てようとしていた。すると「そこまでだ」と声がしたので僕は、その場から離れると僕に切りかかってきた剣を、何者かが止めているのであった。「勇者が勇者を庇うとは情けない話じゃないか?」その男の言葉を聞いて「俺は勇者じゃねぇ!それに俺は、こいつに負けたんだ!俺はこいつより弱い勇者なんて認めない。絶対にだ」と言う。

すると僕の盾で攻撃を防いでいた剣の使い手の女性が、その剣を抜き取り僕を守れと言っているように思えたため僕は女性の後ろに隠れた。女性は「任せてください。あなたの事は私が守りますから」と言ってくれる。

「それならば貴様も死ぬ覚悟は出来ているという事なのだがよろしいのか?」と言うと僕の前に立つ女性が答えを返す。「私の剣は、あなた如きでは貫けはしませんよ」と言い戦闘が開始される。

男は女性の放つ一撃で体勢が崩れたところにすかさず反撃するがそれを軽々と受け流していた。僕には、まるで二人の戦いが見えておらず何が起きているか分からなかったのである。そして僕は、アリスに「あの女の人すごいんだけどどういうことなの?あれは人間技とは考えられないよね?」と話しかける。すると「えっとですね。まず最初に彼女が着ているのは鎧ですよね。でも彼女は普通の防具を着ています。しかも動きが速いです。ですが、それだけではないんです」と僕に説明するが、僕にはよくわからなかった。僕が首を傾げているのに気付いたアリスは説明を続けたのである。彼女は元々騎士であり「聖騎士」「大剣聖」というスキルを持っており彼女は剣の速さに特化したスキルを持っているが、「聖騎士団」と呼ばれる集団に属している。

聖騎士団の人達はそれぞれ得意な武器が違う。槍を扱う者がいたり、弓使いがいたり剣や拳を得意とする者がいる。その中で「聖剣使い」と呼ばれている者達が聖騎士になるのである。その中でも「聖女」と呼ばれてる人は、特殊なスキルを持っているので「勇者」にしか扱えないとされているのだ。なので勇者に成り代わろうと目論む者もいる。しかし「聖剣」が扱うことが出来なければその者に待っているものは死だけであると言われているので「聖剣」に選ばれる者は数少ないと言われている。彼女は「剣神」と言うスキルを持っていて剣の扱いはお手の物であるらしい。僕が、その話を真剣に聞いていた時に彼女の振るう一振りは凄まじい物で僕なんかにはとても太刀打ちできるものではなかった。僕の盾は攻撃を防ぐ度に僕の体に衝撃を伝え、盾は僕の腕を蝕み痛みを与えていた。そのせいで意識を保っておくことも難しくなってきている。

「そろそろ決着をつけてあげる」と言うとその言葉を聞いた彼女は微笑みながら言う。「ふっ、それは私のセリフです」と僕が気を失っている間に、この二人は壮絶な戦いを繰り広げているのであった。

僕は夢の中にいたのである。僕はアリスの声で目覚めるとアリスが「良かった」と泣きそうな声で言ってくれた。僕は心配をかけたと思い彼女に抱きつき頭を撫でて「ごめんね」と言って抱きしめると彼女も僕を抱きしめてくれた。しばらく抱き合った後に僕は立ち上がり「大丈夫?」と尋ねると「はい、私はあなたを守るために戦えるだけで幸せなんです」と言ってくれたのである。僕は彼女の強さに驚くばかりだ。僕の知らないうちに、とんでもない化け物に育て上げた奴が近くにいるようだなと思ったのだが、一体誰なのか分からないが許さない。そして僕は彼女と街を歩き回りながら魔王軍を探したが、全く見つからなかったので一旦宿屋に戻ることにしたのである。

僕とアリスの出会いから1ヶ月が経過しようとしていたのである。この世界の季節というものはよくわからない。なぜならば今は「夏」というらしい。暑い時期のはずなのだがこの世界にも四季というものがあり冬という季節も有るらしい。

この世界の季節については僕も、この世界で生きる為に必要な情報を得るために調べたので分かった事だが、春に「始まりの森」と言うところがあってそこには「エルフ」が住んでいる。彼らは長寿の種族らしい。この世界には他の国もあるようで僕は今からそこに向かうつもりだ。アリスと僕は準備を終え「始まりの森」に向けて出発したのである。道中の魔物達はアリスの「炎舞」の魔法によって次々と焼かれていったのであった。僕は彼女の魔法を目にして感動したのであった。「君が使ったのはなんの魔法なんだい?」と僕は聞いてみると「私の場合は「火炎系」の魔道士なので、主に使うのは火の魔法の「火焔」とか「紅蓮」とかなんですよ。」と言う。そして「ちなみに勇者様が戦った「水」を使う方は「氷結」と言って氷系の魔道使いになります」と僕が「え?じゃあ俺が見たのって幻だったりするの?」と言うと「いえいえ、実際に勇者様は魔法を見ていると思います。おそらくは私のスキルの影響があるのかも知れません」と彼女が言ったので僕は驚いたのである。まさか僕の能力の一部を受け継げる人が居たなんて、そして僕と一緒に行動するということは「呪いの力」がアリスに作用してしまう恐れがあるということなので僕は不安になっていた。僕と、アリスが歩いている時にある出来事が起きる。僕は「アリス、何か聞こえないか?」とアリスに伝えると「そう言えば誰かの気配を感じました」と、その時僕たちは後ろを振り返るが何も無い、ただ草原が広がるだけだ。僕は不思議に思いつつもアリスを連れて街を目指して歩いて行くのである。するとまた「勇者さま、助けて下さい。」と声が聞こえてくるので、僕は「ちょっと待って、どうしたらいいのこれ?」と困惑気味に答えると「とりあえずは、その場所に向かってみましょう」とアリスが言ってきた。

そしてアリスは走り出したのである。「ちょっアリス、そんな早く走ると俺を置いていくだろ。」と僕は言いながらもアリスを追いかけていった。僕は「おい!さっきから僕達に助けを求める声を出してるのは君たちか?それと、僕には勇者の称号なんてものはないからな。」と言うと少女達が「はい!私達を勇者様がお守りください!」と言われてしまいアリスの方を見るとアリスは「仕方ないですよ」と言う顔で僕の方を見ていた。

僕は「あーもう分かったから、まずは落ち着いて話を聞かせて欲しいんだけど」と言うと一人の少年が話し始めた。

「僕の名前は、レオンと言います。この街には冒険者の登録をしにきていて勇者様にはお願いがあるのでついて来て貰えますか?」と聞かれてしまったので僕は、少し考え込んでいたが、このままだと街の人たちが襲われるかもしれないと思ってしまい了承するしかなかった。僕はアリスに相談すると「いいんじゃ無いですか?」と賛成してくれたので一緒に向かう事にしたのである。

僕が「それなら一緒に向かわないとな」と僕が言うと「僕についてきて下さい」と言うので僕はレオンと名乗る男の子の後を付いて行き街へと向かう。そして僕は思った「あれ?これってアリスと出会った頃を思い出すなぁ」と考えていると「何を見て懐かしんでらっしゃられるのでしょうか?」と聞かれ僕は焦った。そして誤魔化そうとしたのだが上手く行かず「僕もアリスと同じで異世界から来たんだ」と言うとその女の子が驚いて「やっぱり勇者様なのですね。」と言ったのである。その言葉を聞いて僕は「だから、違うって、勇者なんて知らないよ。」と言ってしまったので、その子が「ではお名前だけでもお教え下さい。貴方様のお名前は勇者様なのです。」と言うと僕の頭の中に突然「称号:勇者が獲得されました」という表示が出てきたのだ。そして「おぉーなんか出たけど何だこりゃ」と言うと僕の隣にいた少女がいきなり倒れ込み意識を失ってしまう。僕は慌てて彼女の体を抱き抱える。すると僕の頭の中で先ほどとは違ったアナウンスが流れてきたのである。すると僕の周りに複数の人影が現れた。

「お主、我を忘れたか?お主は「光の聖剣」に選ばれた存在であろう」と言われるので僕は「お前は誰だよ、急に現れて何言ってんだよ」と叫ぶが「まだ完全には目覚めていないようじゃな」と言われた瞬間に意識を失ってしまっていた。そして僕は目が覚める。アリスは、少し疲れていたようだが僕は安心させるようにアリスの頭を優しく撫でていたのである。僕たちが目を醒まして辺りを見渡すと既に夕方になっていた。

僕たちは宿屋に戻り、夕食を取り寝る事にした。僕は明日になればアリスとのんびりと過ごすつもりだった。

しかし僕は、その日の夜に不思議な夢を見る。そして朝起きてもその事は忘れられなかった。僕が目覚めてからすぐに僕は部屋を出る。すると、アリスが「勇者様どうかされたのですか?」と僕に尋ねるが僕は、その質問には答えずにアリスの腕を掴んで強引に連れ出して僕は宿の外に出るとアリスと二人で歩く、その光景は恋人同士のように見えたのかも知れない。

僕が、アリスを無理やり引き摺って宿の外に連れ出したのは何故かと言うと僕は夢の内容を思い出したのである。僕が見た夢の内容が本当なのか確認したくて、アリスに付き添って欲しいのだと言う。僕は「アリスに頼みがあるんだけど、もし良かったらと、僕と一緒に来てくれないか?」と聞くとアリスは「もちろんです。何処へでもお供いたします」と言ってくれていたので一緒に街の外に向かったのである。

僕達は街を出て森の中に入ると魔物が襲ってくるが僕は聖剣を抜くと同時に聖剣は、僕の力に呼応するように輝きを放つ。

その瞬間に僕は「なんだこの感覚は?」と思いながらアリスに指示を出す「今のうちに倒していこう、僕はこの剣の力を確かめてみる」と言って僕は聖剣を振るうと次々と襲いかかってきた魔物は、切り裂かれて行ったのである。それを見ていた僕は驚いたのであった。僕は自分の身体に異変を感じる「な、なんだ?身体の調子が変だ」と呟くが、それでも僕は、襲って来る魔獣を倒し続けていたのである。それから僕は街に戻るとギルドの扉を開けると中に入った。僕は「すみませんが、冒険者の登録をお願いできますか?」と言うと職員は僕達の姿を見て驚くが「はい、わかりました。ではこちらに必要事項を書いてください」と言われ僕達は紙を受け取り、書き終えると「ありがとうございます。それじゃあカードが出来上がるまで時間が掛かるので暫く待っていただければ幸いなのですが、その間に他の冒険者の方が来られましたが大丈夫でしたでしょうか?」と尋ねられて、僕は大丈夫だったと告げると「良かったです。ではお待ちいただいている間何か飲まれますか?」と、言われるが僕は、大丈夫だと断り待っている間に僕は、アリスと話を始める。

そして、しばらくして、カードができたようで僕の元に持ってこられたのである。僕は、そのカードの出来上がりを見て僕は驚き、そして僕の隣に立っていたアリスは僕の顔を見て不思議そうにしていたので僕は「ごめんね。なんでもないから、少しここで待っていてくれるかな」と言い僕は受付の職員の方に近づいて「もしかすると僕の顔に見覚えがありませんかね?」と言うと「はい、ありますがどうなさいましたか?」と聞かれ僕はアリスの方を向くと「え?私ですか?」と言う。

そして、僕は、カードを返してもらうときに僕は「これは大事なものだから絶対に失くさないように気をつけて持っています」と言うと、アリスは嬉しかったのか笑顔を見せてくれた。

僕は、その足で「魔王城」を目指す事にして僕達は、この街で一泊する事になったのである。僕達が部屋に行こうとするとアリスが「勇者様?どこに行くんですか?」と言うので「ああ悪いな、実は今日から僕達二人はこの街を離れないといけないから、色々と挨拶回りをしてくるつもりだよ」と僕は言いアリスと一緒に出掛ける。

「あのー勇者様、私はどこに行けば良いのでしょうか?」と言うアリスを横目に見つつ僕は、アリスにこう告げる「あのね。僕が「勇者」と呼ばれる人間でも無いのは分かっているだろうけど、君は特別なんだ。だからあまり人目に触れてはいけないのは分かるよね?」と言ってもアリスは首を傾げていてよく分からないという表情をしていたので僕はアリスに「まぁ仕方ないか。とにかく君も目立つわけにはいかないんだ」と言い、僕達は街へと向かい、アリスと二人で街を歩くと「アリス可愛いねぇ」とか「あれ勇者さまだろ?」とか「アリスちゃんと手を繋いでる」とか色々な声が飛び交っているが僕はアリスに「とりあえず服屋さんに行ってみようか」と言うと「えっ?」と言う顔をしたので、とりあえず僕が着せ替え人形になるのを覚悟で服を選んでいくことにした。僕は、「ちょっとこれを着てみてよ」と言って、何枚か試着させてもらっていると店員は僕に近寄ってきてアリスに声をかける「お客様も大変綺麗ですね」と言われたので、つい「でしょ、僕が目を付けただけの事は有るでしょ?」と言ってしまう。そしてアリスの方は、かなり恥ずかしがっていたのだが僕の方は、少し照れながらアリスの事を褒める。

「アリスのその格好はとても可愛らしい」と、僕は素直に言った。

その後僕とアリスは宿に戻り僕は「疲れたぁ」と言い、少し寝る事にしたのだった。アリスは、僕の傍に居てずっと頭を撫でてくれていて、僕は安心するのだったが次の瞬間には眠気が飛んでしまうほどの衝撃の光景を見てしまったのである。それは、僕の部屋の窓から見える窓に張り付く無数の小さな魔物を僕は見つけてしまったのである。

僕達は街を出発してから2日目の朝を迎えようとしていた時に僕は、アリスに向かって話しかける。僕は「この世界ってやっぱりおかしいよなぁ」と言うが、それに対してアリスは「何がですか?」と言うので僕は「だって考えてみなよ?普通の人間が魔物を倒すのに苦労していると言うのに、僕達の場合は、あんな風にあっさりと倒すことが出来るんだぞ?これって、本当に異常な事だと思った方が良いと思うんだ」と僕が言うとアリスが「それなら勇者様も普通ではないんですよね?だから勇者様なのですし」と言うので僕は「そうなんだけど、僕は勇者様じゃないよ。」と言う。僕が勇者で無い理由はただ一つである。僕のステータスが高すぎるのだ。レベルも高くて攻撃力と魔力が凄まじいのだ。それに勇者は僕以外にもう一人いてそいつの方が圧倒的に強いのだから、僕の出る幕が無いのだから困ったものだと思う。だから僕は自分が「光の聖剣」を使えるのが未だに信じられないし実感がないのだ。そして僕達は「森の奥深くにある魔王城の周辺まで行くので危険があると思いますので、僕から離れるような真似だけはしないでください」とアリスに釘をさすのだった。そして、その日から僕は、勇者としての力を使って、襲って来た魔物や、盗賊なんかを相手にして倒しまくったのだ。そして僕は魔王が住んでいると思われる場所の近くまでやって来ると僕は立ち止まりアリスが「どうして止まられるのですか?」と聞くが、僕は「ここらへんがちょうどいい感じの場所なんだよ。僕と、アリスが一緒にいても問題のないぐらいの広さもあるし、魔物たちもこの場所まで攻めてくる事が出来ないのを知っているみたいだしな」と言ってアリスを後ろに下がらせる。

僕は魔王が住んでるとされる「古城」の前に立って、中に入ろうとした瞬間に扉を開けたのと同時に目の前に魔法弾のような物が僕達に放たれてきたのである。僕はアリスをかばう形で庇い魔法攻撃を防ぐ。すると扉の向こう側から「へぇ~、今の攻撃を喰らって生きているとは中々やるじゃねえか。だが、次はどうかな?」と言ってくるのであった。そして僕はその相手の顔を見るとその男は「まさか!?お前は、神城蓮なのか!」と言われて僕の名前を言う相手を見て、僕は驚きを隠せなかった。その男の名は神崎零と言うのだ。

彼は、元々勇者だったのだが僕は、その男の事を嫌っていて正直言ってしまえば「勇者らしくない」と思ってしまい、それで嫌いだったのだ。しかし、僕と同じで元の世界に帰れなかったらしく、こちらの世界に馴染もうと努力をしているのが伺えたので僕は特に文句をいうつもりもなかったが、その彼がこの場にいるという事自体理解不能であり、僕達は二人して「は?」という状態になってしまった。僕は「どういうことなんだ?なんで君みたいなのがここにいるんだ?君は、もっと真面目な人間のはずだろう?」と僕がそう問いかけるが「そんなことは知らん。俺は俺だ」と言い返してくる。そこで僕は「ふぅん。ところで僕達が戦う意味なんてないだろう?お互いにメリットも無いだろう?」と言うと「そうだな。確かにお前らと戦っても得る物も無さそうだ。」と言ってきたのである。僕は「それなら帰ろうか」と伝えると、彼から意外な言葉が帰って来たのである。「悪いが帰ることは出来ない。」と言ってきたので僕は、理由を尋ねたところ「俺の目的は、この世界の人間を滅ぼして、俺たちがこの世界に居るための鍵を封印する為に来た。」と言うが、その鍵というのが一体何かと尋ねると、彼は「魔王が守っている宝玉の中に封印されていてそれを取り除かないと元の世界に帰る事は不可能なのでその鍵は必要になる」と言うのである。

僕は、「でもそれって僕達が手に入れる必要はないんじゃないの? その、鍵が封印されてるという宝玉が有る場所には、魔王がいるわけだし、魔王を倒して奪っても良いんじゃないの?」と提案するのだった。

僕が提案をするのだが、魔王の奴はその宝玉を守る為に自分の部下達を大量に召喚してきて「我が、配下達よ!勇者達を殺し宝を奪い取るのだ!!」と叫ぶ。

僕は聖剣を抜き放つと「勇者様!私も戦います」とアリスは言ってくれたが、僕は「大丈夫だよ。君は下がってて」と伝え、僕は剣を構える。そしてアリスは僕を応援してくれるが僕は、この世界で「勇者」と呼ばれた事は一度も無かったのである。そう、僕は勇者では無いのだ。僕の称号を見れば誰でも「嘘だろう?」と言うであろう「偽勇者」なのだ。この世界で僕は勇者では無かったが僕には力があり僕はこの力を授かった。そのせいで、僕の事を誰も認めてくれなかったし、皆からは避けられているのだ。僕には「偽勇者」と呼ばれるにふさわしい力が眠っている。それを解放した瞬間に僕は今まで「偽りの勇者」として、蔑まれ、疎外され、恐れられてきたのである。僕自身それが嫌だったので「勇者」と呼ばれて喜んでいたのかもしれないな。だからこそ勇者と呼ばれているはずの零に対して怒りが湧き上がってきて「お前も僕と同じだ。勇者に成り損ねた落ちこぼれなんだ。僕は、お前とは違うんだ!」と叫んだのである。僕は魔王に向かって斬りかかり一撃を放つが、その攻撃が当たる前に「無駄だ!」と一言言われ、魔王は僕に攻撃を仕掛けてきていた。僕が放った渾身の一撃も軽く受け流された挙句カウンターを受けて吹き飛ばされてしまったのだった。僕が魔王の攻撃を受け流すが「やはり、弱いな。勇者の力もそこまで堕ちたか?」と言われると僕は立ち上がり「黙れ。勇者に成れない僕からすれば、どんな理由であれ「勇者」の名を冠する貴様を絶対に許さないぞ」と言うと「ふん。

貴様に何が出来る?何も出来はせんだろう?この場で大人しく殺さればいいものを。愚か者め」と魔王は、僕に向かって攻撃を繰り返し、僕は防戦一方になってしまう。僕には魔王の攻撃は見切れていたが魔王は余裕なのか僕に喋りかけるが僕は魔王の話を聞く気も無くひたすら魔王の攻撃を受け流しながら僕は反撃の機会を窺っていた。そして隙を見つけて僕は反撃に転じたのである。

僕の攻撃を簡単に避けるのは想定内ではあったが、僕の攻撃を避けた際にバランスを崩してしまい魔王は僕の目の前で体勢を整えようとしてしまうのだが僕にとって絶好のチャンスが訪れてしまう。僕はそのままの勢いで剣を振り下ろすと見事に命中するが、そのまま僕の身体は空中へと放られてしまう。そして地面に落ちるとすぐに魔王の方に目を向けるとそこには、魔王が「どうやら今の一撃で、少しは強くなったようだな。まぁ少しだが」と笑みを浮かべるのであった。僕は立ち上がろうとしたが足に痛みを感じ、足を見ると折れた骨が見えたのである。「まだだ。まだ僕は諦められないんだ。こんな奴に負けてたまるかよ」と言いながら剣を構えようとするが、魔王の方から僕の元に近寄って来て、僕の顔を掴むと「もう良い加減、諦めろ。お主も分かっているのではないのか?勇者では無くともこの世界でも、お主にしか使えない力を持っている事を。」と魔王が言ってきた。僕もそれは薄々気が付いていたが、勇者にしか使えないはずの能力が何故か使える事に僕は戸惑うばかりである。僕は、その事について聞くことにした。すると「そうだ。

お前の力は、元々お前の持っている「勇者の能力」だ。

ただし、お前は勇者として認められておらず、そしてお前が持っていた本当の力を解放してやったのだ。だから安心して我を倒せば良い」と魔王が言ったが僕はその魔王の言葉を信じられずにいた。僕が魔王の言っている事が正しいかどうか分からなかったので、僕が今使える勇者の能力を確認しようとしたところ僕のステータスに表示されていた「光の聖剣」のスキル欄に「光の聖弓」が表記されていることに驚きつつも、僕は魔王に質問をぶつけることにした。「お前の言う通り、勇者の力では無いとしても、その聖剣や弓は僕に与えられたものでは?」と質問したところ「残念だが違う。これは元々「お前が持つべき物」だったのだ。しかし、この世界の人間はお前を認めていなかったのでお前を偽者として「偽りの勇者」と呼んで貶し続けていたのは知っているはずだ。つまり「偽りの勇者」というレッテルを貼られたのは、この世界に居る他の勇者達のせいなのだ」と僕に向かって言い始めた。僕は、それに反論する事が出来なかったが僕を騙し続けて来たあいつらにも、責任はあると思っていたからである。

僕は「確かに、そうかもな。でも僕は騙され続けた事で「自分以外の人間」を信じる事ができなくなり「勇者らしく」振舞えないまま、生きて来たのかも知れないな」と呟くと、魔王から「ふむ。では何故この世界に来た時に、お前に本来の能力を取り戻させて貰えなかったか教えようか?」と言われ、その理由を聞いてみると「この世界の人間をお前一人で殺せるくらいの力は残しておくべきだと判断したからだ。勇者としての力を無くしたお前なら、いくら勇者だったお前と言えどこの世界の人間を殺す事も容易いだろう?」と言うのだ。僕には、魔王の言ってることが本当なのか分からないが、とりあえず納得した。

魔王の実力は僕と同等だと推測したのだ。

だが魔王も何か企んでいる様子なので僕は魔王を倒すのではなく封印することにしたのである。封印するには、まず魔王の動きを封じる必要があると思い魔王の足に光の鎖を巻き付けて動きを止めてから「神聖なる光で封印しろ!ホーリーサークル」という魔法を唱えると魔王が封印されたのである。これで魔王の脅威は無くなったが僕はこれからの自分の身の振り方を考えてみたが僕がこの世界に居る理由が無い事が分かり元居た場所に戻るための方法を探す事にしたのだった。

僕はこの世界で何をして行けば良いのか?と考え始めると「私は貴方がここに来てくれた事を嬉しく思います。一緒に暮らしましょう?」と言ってくれるアリスに対して僕は「ありがとうございます」と言うとアリスは「こちらこそです」と言ってくれたのだ。そして僕はこのアリスの家で暮らそうと決める事になったのだ この異世界に来る前に僕は勇者召喚で呼び出さられる前にある女の子と出会いその子と恋に落ちていた。僕は彼女に別れを告げずこちらに来てしまった為か彼女がどうしているか気になって仕方がなかったのである。僕を呼び出した女に対して色々と文句を言いたかったのだがその相手がいないしどこにいるかも検討つかない状態だったのであった。そんな中、突然「やっと見つけたぞ。俺と一緒に来て貰おうか」と言いながら、僕に襲いかかって来る人物が居る。僕はそいつの攻撃を受け流すと、「貴様は何者だ?一体誰に頼まれて僕達を襲ったんだ?それとどうして僕のことを知っているんだ?」と聞いてみた。

「俺はお前達を倒しに来た。お前達は俺が倒し俺が勇者になる為にお前達の存在が必要なんだ」と言ってきたのである。その男の名前は「神野 勇斗」という名前で僕と同じ高校の同級生で「偽りの勇者」として召喚される前にクラスメイトの誰かが「偽勇者の零なんかに負けんなよ」とか言われて調子に乗っているバカだったのだ。

僕が神野に「僕は、勇者になんてなるつもりは最初から無いんだけどな。それに勇者の力を手に入れたわけじゃないんだ」と話すと「はっはっは。じゃあ何だ。この世界に来た時の力が、勇者の力じゃなかったって言うのか?」と言われたので僕は「そうだ。勇者の力を持ってはいたがその力を解放していなければ勇者とは認められない。勇者に相応しくないと周りから判断されてしまった僕が勇者に選ばれる事はあり得ないだろ?」と僕は話したのだ。そして神野は、僕に向かって剣を振り下ろしてくるのだが僕はそれを剣を使って受け流すと同時に、神野は僕の剣を受け止めたが僕の力が予想外に強いと思ったようで「お前が弱いだけではないのか?」と煽ってきたので、僕はそんな言葉を無視をしてそのまま神野の剣を吹き飛ばすとその隙を突いて僕の一撃を食らうと地面に倒れ込み意識を失ったみたいだ。そして僕は、こいつも魔王と同じように動けないようにして拘束すると魔王と同様に、魔王城へと転移する。魔王城に着き、そのまま玉座の間に行き僕を襲ってきた3人を玉座の前の階段の下に正座させると僕は、この世界を支配できるほどの力を欲しかった理由を聞き出そうとすると「私達の目的の為には、零さんの協力が必要だったのですがね」と、ある人物の声が聞こえてきたのである。すると僕は驚きのあまり声の主を見て呆然と立ち尽くしてしまうのであった。そこに現れたのは「勇者」であった。

彼女は僕のことを知っていたのに「偽りの勇者」として扱わなかった唯一信用出来る存在だったのだ。僕は思わず彼女に抱きついてしまったのである。しかし彼女の顔を見ると何故か違和感を感じる表情をしていた。僕は「あのー?どちら様でしょうか? 私の事をご存知の様ですが失礼ながらお名前を教えて頂けませんか?」と言われるので「ぼっ、僕は君に助けてもらった、 勇者だよ」と言ったが彼女から返事はなく彼女は僕から距離を取ろうとする。

そしてこう言ってきたのである。「すいませんが、私は勇者ではありませんよ。

貴方は、勇者のフリをした人でしょう? 勇者は貴方ではなく本物の「零」の方です。

そして、私は「レイカ」です。

それでは、さよならですね。勇者」と言って僕の前から消え去ってしまったのだった。僕は訳が分からなくなって混乱していたが「まさか」と思い魔王城に急いで帰ることにした。すると、魔王城の前には「神原」という少女と魔王の2人が居て僕を見つけると僕を指差しながら何か言い争いをしていて魔王の方が勝ち誇ったような顔をしていたのである。僕は嫌な予感がしながらも「なにがあったんだ?」と聞くと魔王は「ふん。勇者のくせして大したことない奴だな。こいつは勇者でも何でもなく勇者の真似をしている偽物だ」と言い放つと「はぁ!?なんだよ!それ!!お前ふざけんな!!」と言い返すが僕はこの魔王の言葉を聞くまで「この子が本当に勇者の可能性が高いのではないか」と本気で思っていた。しかし魔王の言葉で確信してしまったのである。

そして、その事を考えると何故か怒りがこみ上げてきて「お前は絶対に許さない」と一言発すると「勇者がどうしようも出来ない状況に陥ってもか?」と魔王が僕を試すかのような言葉を発した。僕もその挑発に乗るかのように「ああ、構わない」と答えてしまうと魔王は、この会話に割って入るかの様に口を開いた。その言葉で、僕の怒りが収まり「はっ?」と言ってしまうほど拍子抜けしたのである。

それは、魔王が「お前には勇者の力を授けよう。ただしこの世界で勇者を名乗るのは諦めてもらう」と言うものだからだ。僕は、その発言に納得出来ず「勇者の力を手に入れたなら別に勇者を名乗って良いんじゃね?」と言うが却下され「その力の使い方を教える。ついて来い」と言われ仕方なく後を着いていく事にしたのだった。しかし魔王城の扉の前には門番と思われる魔物が立ち塞がっているため「そこを退け。魔王様の命令である」と言い放った瞬間に、魔王が「俺に逆らうと死ぬ事になるぞ。お前らは下がれ」と言い放ち僕は勇者の力を得た。

僕はこの世界に来る前に恋人の女の子と一緒に異世界に召喚されたのだが、召喚の際に「勇者召喚に巻き込まれました!」的なナレーションが入り、この世界に召喚されて僕はこの国の王女と名乗る美少女「アリス」と出会うことになる。そんな彼女と恋に落ちる。僕は彼女を魔王の脅威が迫ろうとしている国を救う旅に出ようとしていた。

「なあ。僕も一緒に行って良いか?」と言うと「ダメ」と言われた。その理由は魔王が復活したのと、この世界のどこかに邪竜が潜んでいるとの事で、今現在王国では討伐の準備に追われているため僕のような部外者を王宮に呼ぶわけにはいかないらしいのだ。そこで、僕は「なら、僕の能力でドラゴン退治を手伝って欲しいんだけど」と言ってみたところ「その能力は使えないのよ」と言われ「なんでだ?」と尋ねる。理由は魔王を倒す為に僕に力を貸して欲しいらしくその力を蓄えるために封印されているのだ。だが、封印はもうじき解けて再び戦う事ができるとのことだった。だがその時に封印を解いてくれた人物が死んでしまうと魔王の封印をまたしなければならなくなるらしく僕にも魔王を倒すのに協力して欲しいというのである。僕はその話を聞き魔王を倒す手伝いをする事に決めた。それからしばらくして「私も一緒に旅に出る」と言い出し僕は少し焦り出す。何故ならば彼女は勇者でもなく普通の人間だからだ。それに、もし仮に僕達が勇者だとしても彼女には僕達の旅は過酷なものになるのが容易に想像がつくからである。そんな僕の様子を悟ったのか僕の目の前に来て手を握ってきたのだ。「心配しないで大丈夫だよ」と言うが僕にとってこの旅はかなり危険なものであり下手したら命を落としかねないものである為不安になる。そんな様子を見かねたのかアリスは「勇者の力で貴方の心を覗かせて貰ったんだけどやっぱりこの世界に貴方を巻き込むべきではないと思う」と言ってきたのである。僕は彼女の手を握り返し「そんなの気にする必要は無い。君のことが心配なんだ。もしもの事を考えたらね」と本心を伝えると彼女は「私は勇者として貴方と一緒に旅をしたい。お願い一緒に連れていって下さい」と涙目になりながら僕のことを見て懇願してくるのであった。そして僕は「分かった」と言い了承する。

そして次の日、出発の時がやって来た。僕の装備や荷物に関しては魔王によって用意されたもので、僕専用の防具に僕の力を高めるために魔王の魔道具まで渡されたのでかなり優遇されたのだ。さらに魔王からこの世界の知識を教わる事になったのである。僕はこれからの旅立ちがどんな結末を迎えるのか、この時はまだ何も知るよしもなかった。

魔王に「ここからは一人でいけるよな?」と言われたので「当たり前だろう?俺はこの世界を支配できる力を手に入れるんだぜ?お前の力を貰わなくてもこの程度の場所余裕に決まってるだろ?」と強気で話したのだ。

そして、僕は歩き始めると早速モンスターが現れるのだが特に苦労することもなく進んでいくと今度は盗賊が現れ襲いかかってきた。しかし僕は、この世界に来たときに習得した剣技であっという間に倒してしまう。

その後も、僕が苦戦する相手なんて居なかった。そうしてとうとう、この世界で一番強いとされる魔王城にたどり着く。その城は「魔王城」と呼ばれる城で今まで見てきた城とは格段違う大きさをしていた。

「ここまで来れば問題ないだろう?」

と僕が言うと「えぇ、ここであれば私がいても平気でしょう」

と、謎の人物が現れたので僕は警戒するがそんな僕を嘲笑うかの様に彼女は笑いながら僕の方に近づいてきてこう告げるのであった。「勇者の力を持つ者はここにいると聞いていたけど、あなたじゃないよね?」と聞いてきので僕は「何を言ってんだ?俺だよ」と答えた。

すると、突然彼女が斬りかかってきて僕は剣を使ってそれを受け止めると「あら、貴方も勇者だったんですか。ごめんなさい。私の名前はレイカといいます。あなたの名は何ですか?」と尋ねてくるので「僕は、零だよ。君は何者だい?魔王の手の者の可能性もあるから油断は出来ないよ」と言うと、その少女レイカと名乗った女性はクスリと笑った後に、真剣な表情を浮かべると「私の正体を明かした方が良いのかな?」と言ってきた。

「どういう意味なのか教えてくれないか?」

「いいですよ。私はね。勇者と魔王が戦えば必ずどちらかは消えると言われているの。でも、私は消えずにこうして存在しています」

僕はこの話を「魔王と勇者のどちらかしかこの世からは消せないということかい?」と聞くと「そういうことです」と答えられる。しかしレイカから聞いた話は、僕の予想を超えていたのである。

まずは魔王が消えた場合のメリットであるが、この国は勇者がいなくなったので魔王がいないため、その力を使えなくなり滅びてしまう可能性があるそうだ。つまり僕は勇者と認定されているのにも関わらずこの国からしたら厄介者でありこの国と魔王の両方の消滅を望んでいるという事らしい。そのため、レイナとこの魔王を倒そうとしていたが魔王の力は強力で僕をこの世界に連れてくる事ぐらいが精一杯だったので僕はその役目を果たすべく僕の元に送られてきたのだという。僕を魔王の所へ向かわせたのは勇者を消したかったのではなく、勇者をこちらの世界に連れて来る事による混乱を恐れたためであるとのこと。魔王の力が勇者に負けるようなものではない事は分かっているし勇者が魔王を倒した場合はその勇者の魔力を吸収してこの世界の支配者になるという。そして僕が「じゃあ。君が僕を呼び出したら僕ごと魔王は消えてなくなるのではないのだろうか?」と言うとレイナは「その可能性は大いにあるかもしれない。しかし、それはあくまで私の予測なので確実な情報ではないのです。だから今すぐ、魔王の所にいきましょう。それで判断すれば良いだけの話し」と提案してきたのである。確かに今、魔王が消えても僕にはなんの被害もないのだ。しかし僕は、魔王は危険人物であるためこの場では、倒すしかないと決めつけて戦いを挑むことにした。そして僕は、レイナと戦いを繰り広げるのだが、結果は僕の勝利に終わる。だが僕はそこで疑問が沸いてきたのである。何故ならば僕は、この世界で得た「勇者の力」でレイカにダメージを与えられず逆に傷つけられてしまったからだ。僕は「これはいったいどういうことだ?」と考えを巡らせようとすると、僕の目の前に現れた少女に僕は驚愕したのであった。その少女こそ僕が探し求めている「この世界の魔王」だったからである。僕は慌てて武器を構えると魔王は「私を殺すつもりでしょう?」と質問をされるので「あぁ、そのつもりだ。お前は悪の権化のような存在だからね」と言うと「残念ね」と言う声がした瞬間、僕は背中に鋭い痛みを感じて倒れた。

その後すぐに僕の意識が途切れて行き、最後に僕が見た光景はこの魔王が「私には勇者を召喚出来る力はないわ。だから魔王の魔道具の力を使ったのよ。貴方には申し訳ないと思っているけど仕方のない事」と口にしているところまでだった。

「さて、そろそろ時間ですね。もう目覚めていても大丈夫です」と言われて僕は起き上がり、魔王が僕に向かって話しかけてきた。「勇者が倒れてから1ヶ月もたっているわ」と言ってきやがったので「なんの話をしているんだ?それよりもお前はなんで僕のことを知っていたんだ?」と言うと、その少女魔王は「それは私も勇者で、そしてこの世界を支配しようとしていたから」と言いやがったのだ。だが、僕はこの話を信じられない気持ちになりつつも、目の前の少女の容姿からするとこの話は全て真実であり、その言葉通りだとすると魔王がこの世界を支配したらどうなるのかを考える。すると最悪の結果が見えてしまい、「やめてくれ!この世界を支配なんてするな!」と叫ぶと魔王が「そう言われると思ってたよ。でも安心して。この世界にはまだ勇者がいるみたいだし、あなたをここに連れてきたあの子がこの世界にいるならまだ望みはあるよ」と言い出したのだ。

僕は何も反論出来なかったが、僕にも戦う理由はありこの世界を救いたい気持ちがあった。だからこそ「それでもお前を倒す。それがこの世界のためでもあるんだから」と言って戦いがまた始まった。そして、またしても僕の敗北となり僕は魔王が言っていた「勇者に会える」という言葉を信用することとし、魔王と共に行くことを決めたのだ。

「そうそう。あなたはこれから、この国の王になるので、頑張ってくださいね。そしてこの世界を救ってくださいね。まぁ、この魔王様の私が居るから大丈夫でしょうがね」

僕はこの言葉に何も言い返せなかったが、僕は僕の使命を果たせるよう努力しよう。と心に決めた。

僕は勇者が残した手紙を読んだあとでアリスと一緒に旅を始める。最初は二人で協力しつつ魔王を倒していくが、次第に勇者の力を受け継いでいくごとに魔王の強さも上がっていく。それにアリスも付いてこれるか不安ではあったが勇者の力を引き継ぐ事でアリスが勇者の力を得る事が出来る事が分かったので僕達は勇者が残した遺産を回収したあとで魔王城に乗り込む事にする。

そうしてついに魔王城へとたどり着くが、魔王が待ち構えており僕達と戦闘が始まるが、なんとか勝利したものの勇者の力を継承できたのが僕だけだったのでアリスに勇者の力を継承することが出来ない事が判明した。それから魔王との最終決戦が始まったのである。僕が魔王に挑みかかって、攻撃を繰り返している間に、アリシアが回復役として援護をしてくれているのでなんとか互角に渡り合うことは出来ていた。

しかし、それもいつまでも続くわけではない為、僕は魔王の攻撃をかわしつつ隙を突いて攻撃を仕掛けていったがなかなか致命傷を負わせることが出来なくて苦戦していた。魔王に隙が出来るタイミングが分かり次第そこを狙っていこうと思ったのだが魔王の方も中々隙を見せてくれないのでお互いに攻めきれずにいたのだ。そして遂に魔王が僕から距離を取り始め何かを仕掛けてくるのを僕は感じ取ったのだ。僕は魔王の動きに注視し何が来るのかと警戒したが魔王は魔法を使ってきやがったので、僕はその魔法の威力の高さと発動までの速さと正確さに驚いたがどうにか回避に成功する。だが、その魔王の魔法のおかげもあり魔王の行動が制限されていたので僕はその好機を利用して攻撃を仕掛けようとした。すると今度は、魔王が僕の動きを読んでいて、僕の行動が魔王の予想範囲内だったので反撃を食らい僕の方がダメージを受けてしまうがなんとか僕は踏みとどまり体勢を立て直す。しかし僕の方はダメージが大きくこのままだと僕が危なくなるので勇者の力で回復しようと試みた。しかし魔王の持つ特殊な力のせいで回復することが出来なかったのだ。僕はこの時初めて魔王が持つ特殊な力が「勇者の力の無効化」だということを知ったのである。僕は絶望してしまいそうになってしまったが今は魔王を何とかしないとと思い、必死になって攻撃をし続けた。

魔王と勇者の激闘が始まってしばらくするとお互いが息が上がり始める。すると魔王が動きを止めたので僕は不思議に思い警戒を強めるが、魔王はその場で動かず「私はここまでよ。貴方が勇者の力を継承しているからね」と言った。魔王がそんな言葉を吐くとは信じられなかったが、このチャンスを逃すまいと僕は魔王に攻撃を仕掛けたが、あっさり避けられてしまう。僕は悔しい感情を抑えながら魔王と会話を続けた。

「なぁ、お前はどうして俺達に負けたんだよ。勇者とお前とでは実力差もかなりあるだろうに」

「えぇ、そのはずなんだけどね。私は、どうしても勝てなかったわ。何故か貴方と戦う度にどんどん私の中に力が蓄えられて行って最後には私を超える力を手に入れちゃったのよね」

僕はこの言葉を聞いた時に勇者の力と魔王の力は元々一つの物だったのではないかという推測に至った。

だが魔王は「だけど、この力は私にとっては大きすぎる力なのよね。私としては勇者と仲良くなりたかっただけなのにね」と言う。魔王の言葉に対して僕は、「僕とお前は、同じ人間だからな。その力だって、きっと僕達の未来を切り開く力になるはずだ」と魔王に伝えると、彼女は「そうなると良いけど、その前に私も死んじゃうかしらね」と口にしたのだった。僕は「それはない。お前はこの僕が守ってみせるさ」と答える。魔王が笑っているのを見て僕は魔王との戦いが終わったのだと感じる。すると魔王は「私も死ぬつもりはないけれど勇者に守ってもらおうかしら」と言ってきたので「任せろ。絶対に守り抜いてやる」と答えた。すると魔王が突然苦しみだしたので僕は「おい、どうした!?」と声を掛けた。魔王の身体からは血が大量に流れ出し始めたのであった。

僕は急いで治療しようとするが魔王の口からは大量の血が溢れ出てきていた。どうすることも出来ない状況だったので、僕は魔王の口の中へ手を入れる。しかしそれでも、僕の手から赤い液体が零れ落ちていく。そこで僕は思い出す。魔王の血が流れている間はどんな病気でも治ってしまうという話を聞いたことを。そして僕の目からも涙が流れ落ちる。

僕は泣きじゃくりながら、ひたすら魔王の名を呼び続けていたが、いつの間にか魔王の目は光を失っていたのである。こうして、勇者と魔王の死闘は終わりを告げたのであった。そしてこの日から勇者の伝説は語り継がれる事となる。しかし勇者の名は誰一人として知るものは居ない。

僕の名前は神崎一輝。僕は今日も普通の高校生をやりながら異世界ファンタジーゲームをやっていたのである。僕はこの世界に来てから約二週間経つのだが特に何も変わることはなく平凡な毎日を過ごしていて少し退屈になっていた。

「さーってと、次はどこに行くかな」僕は独り言をつぶやいていたのだが、ふとスマホを見てみると友達からLINEが来ていたのだ。内容は「暇だな。今すぐうちまでこい」というものでそのメッセージに気が付いた時にはもうすでに家から20分ぐらい歩いており「しまった。今更戻るのはめんどいからこのままでいいか」と考えを改め家に向かって歩き出すのだった。僕はこの世界で勇者の力を貰ったもののその力に体がついてこない為にこの世界での滞在期間は長くて一週間程度が限界なのだ。なので僕の滞在期間が残り数日となったところで次の勇者が現れるのだ。まぁ勇者といっても勇者には変わりがないのだが。そして僕はいつも通りに家でゴロゴロしていると突然電話が鳴り出したので、出てみると友達からの電話で要件を聞くと遊びのお誘いで、その友人が「お前に話したい事があるんだ」と言い出し「なんだ?」と返す。すると友人から「この世界について詳しく聞きたいんだよ。それとさ。この世界にいる奴に会ってみたい」と聞かれたので俺は「それは無理な相談だよ。だって勇者以外は、この世界に来る事ができないから」と言うと「なんで?この世界のことを教えてくれるだけでも良いんだ」と言ってくるので「わかった。ただ俺の事は秘密にしてくれよ」と言って「とりあえず会ってみたいだけだ」と言われたので僕は友人の願いを受け入れることにした。

僕はそれから、勇者の話をするために僕の部屋に連れて行き説明をしていた。すると「それで勇者様。あなたはこの世界ではどういう立ち位置に居るんですか?」と言ってきたのだ 僕はどう答えたらよいのか迷っていたところ「そうだな。まず勇者の力を持ったままで、勇者の力を継承したものだけがこの世界に転移することが出来るんだ。

だから勇者は、この世界に二人存在していることになるんだ」と言いながら僕はこの事実はなるべく伏せておく事に決めたので僕は「まぁ、そんな感じでよろしく」と言ったのだ。その後に、友人にこの世界を救ってくれるように頼んだが断られてしまう。僕は、どうにか勇者の仲間になってくれませんかと頭を下げてお願いしたらしぶしぶ了承してくれたのだ。これで少しは勇者の旅も楽になるかもしれないと思っていた矢先に事件が起こったのである。なんと魔王を名乗る人物が突如現れたのである。その魔王を倒すため僕も勇者の力を引き継ぐ事になった。僕も仲間と一緒に旅を始めていく事になる。

そうして僕達は魔王城へとたどり着いた。しかし魔王城にたどり着くと魔王の配下のモンスター達が沢山いて僕達は戦う事になってしまうが僕とアリシアは勇者の力を受け継いだおかげで簡単に蹴散らすことが成功して魔王城の中に入り込んだ。しかし僕達を待ち受けていた敵によって僕は瀕死の状態になりかけていた。僕を助けてくれたのが勇者の力を受け継いでくれたアリシアでアリシアの回復魔法により僕は命を救われたのであった。それから魔王との激戦が始まり魔王に隙が出来るのを待つことになったが、隙が全くできずに攻めきれない。僕は魔王に話しかけるが返事は返ってこず魔王は攻撃してくるばかりで、僕はその攻撃をかわし続けていた。すると突然魔王が動きを止めたので、僕は不思議に思って「どうしたんだ?」と問いかけた。すると魔王は僕に語りかけてきたのである。

魔王の言葉に対して「そんなの、僕が知るわけないだろう」と答えたのだ。

魔王の言葉を聞いた瞬間、僕は「お前の望み通り勇者になってやろうじゃないか」と答え魔王に攻撃を仕掛けたが、あっさり避けられてしまう。そして魔王は笑いながら言葉を続ける。

魔王と勇者の戦いが始まったが、お互いの攻撃を紙一重でかわし続け激しい攻防戦が繰り広げられている。僕も勇者の力でどうにか攻撃を繰り出すものの魔王の動きが読めずに苦戦を強いられている状態であり魔王の方も余裕が無いようにも見えた。すると魔王は僕に向けて何かの魔法を放ってきたのだった。僕は、魔王の攻撃を防ぐと僕の身体から突然大量の血が出てきた。「うぐっ」という声が出てしまうほど苦しくなっていた。僕の様子を見たアリシアが慌てて回復魔法をかけようと試みるが全て無効化されてしまった。そこで魔王は僕をあざ笑うかのように「無駄だ、お前程度の力では私の魔力を相殺することが出来ない」と言われる。そこで僕は自分の力だけでは、勝てる気がしないので再びアリシアに「頼む助けてくれないか」とお願いすると、「ごめん、それは出来ない」と断られたのである。僕は何故だと質問するが答えが帰って来なかった。

「おい、何を考えている!?」

「私は貴方を殺すつもりなの。それならいっそ、私の手で貴方を殺した方が早いのよね」と話すと魔王から圧倒的な威圧感を感じると、魔王の手に魔剣が出現していた。そして僕はその魔王の瞳を見ると魔王と同じ赤い瞳になっている。

「くくく、この姿になる日が来るとは思わなかったが。お前の相手は魔王モードの私の方が良さそうだ」

「お前もその姿になれるとは予想外だったよ。勇者の力に目覚めたから使えるようになったのだろうけどね。お前に勝ち目は無くなった。覚悟しなさいよ」

そう言うと僕は全身が動かなくなってしまい、意識も遠くなっていく。魔王の放った強力なスキル「死の宣告」は、この世界のルールとして勇者以外の人間では防ぐ事が出来ない技なのだ。つまり魔王は勇者としか戦えない代わりに、この力を使う事で他の人間を一方的に蹂躙することができるのである。

僕は完全に魔王の虜になっており、魔王に負けることは許されなかった。僕は何とか身体を動かそうと試みるのだが、やはり動くことができない。そして僕の目の前に魔王が迫ってきていたので、もうどうすることも出来ないと思ったその時、いきなり僕の中から莫大な力が湧き上がり魔王を退けることが出来た。

「お前の負けだ。大人しく僕達の前から消え失せろ」と言うが魔王には、もう打つ手がないらしく魔王はそのまま姿を消してしまう。それと同時に僕の体の自由が戻ってきたのだった。僕は何が起きたのか全く理解出来ていなかったのだが「一輝。ありがとう」と言うアリシアの言葉を聞いて初めて助かったのだという実感が込み上げてくる。

こうして勇者と魔王の対決が幕を閉じるのであった。

「はぁ、またあいつらか。懲りないやつらだな。でも今回の勇者は中々やるじゃないか」そう言い放つ男の名は勇者を影から支える組織の首領で組織の中では「影の賢者」と呼ばれるほどの力を持った人物である。

「しかし、あのような小僧にこの世界を任せるのは少々不安だな。だが魔王と互角に渡り合う力の持ち主だ。放っておく訳にもいくまい」と言い「まぁ今は様子見といこうか」と呟くのであった。

僕は魔王との戦いを終えてしばらくした後で街に戻ると僕の元に手紙が届いていた。その差出人を確認すると僕の師匠にあたる人物であり勇者を影から支援していた人物「影の賢者」からのもので、この手紙の内容には、この前のお礼に僕に会いたいとのことで僕はすぐにその指定された場所へ向かうのだった。

その場所には小さな小屋があり僕は扉を開けると、そこにはローブを被った小柄な人物が居たので「あんた誰だ? ここは俺みたいな一般人が入っていい場所じゃないんだが」と言うとその人物は「わしはここじゃ、ここでお主を待っておったんぞ」と言って、その人物のフードを取ったのである。

僕はその姿を見て驚いたのだ。そこに居たのは小さい頃に一度だけ会った事のある人物であったからだ。僕の反応を見た、そいつは笑みを浮かべながら「どうじゃ久しぶりじゃのう」と言ってきたのだ。

僕は、この世界に居る知り合いなんて限られていると思っていたが、まさかの僕の目の前に現れたのは僕の祖父で伝説の武器使いの「橘勇造」その人であったのだ。

僕は勇者である祖父に連れられてある場所にやって来た。その部屋には誰もおらず僕と祖父の二人だけである。僕は少し緊張しながら部屋に入ると祖父は「よく来たのう。元気にしてたか?」と聞いてくる。僕も久しぶりに会う祖父との再会で嬉しかったが素直に喜ぶ事はできなかったのである。なぜなら勇者の力を継承した時に、この世界で僕だけが使える魔法を授かり、それを悪用している存在がいると聞かされていたからだった。その話を聞いた時「その魔法は、いったいどういう力なんだ?」と僕が尋ねると「この世界はな、異世界から勇者の力を引き継いだ者だけが入ることのできる世界で、普通の人間では入ることができない世界なんじゃ」と話してくれたので、もしかしたら僕のこの力は勇者の力を継承しているから使えるのではないかと思い質問してみたのだが。

僕から「僕にはこの世界のことがよくわからないんだけど。勇者の力を引き継いでいるからといって誰でも入れるようなものではないんですね」と話すと、勇者の力を受け継ぐ者は、この世界に必ず一人現れることになっていると言われ僕は「どうしてですか?」と疑問に思い聞き返した。すると「実はの。この世界に入ってくるためには条件があっての。その条件は、勇者の力を持つもの同士が戦うことによって継承されるのだよ」と教えられ僕は「えっ、戦うんですか?」と聞くと勇者は戦うことを嫌うものばかりで戦うのは好まないとの事だった。

勇者は争いを好まず平和を愛する種族で戦闘を好む人種とは全く違い、戦いで得るものは皆無でありむしろ失うものが大きいために、歴代の勇者も極力争わずに世界を救っていたのだとか。その話を聞き僕も出来ることなら戦うことは避けたいと思いつつ会話を続けていると勇者の力とは本来受け継がれるものであり初代勇者もその先代も皆同じ能力を受け継いだため二代目以降の勇者達は戦う必要がないという事を知った。

「まぁ、それは仕方がないことなんですね」

「うむ。この世界を救ってくれた勇者に感謝してるし、わし達は、これからもこの世界で静かに生きていくことを誓ったんじゃよ」そう言って、祖父は話を締めた。それから僕は勇者についていろいろ尋ねてみる。祖父は歴代の中でも最強と言われているほど強かったが歳を重ねるにつれ少しずつ弱っているという話だった。そこで僕は、もし自分がこの世界の問題を解決できれば祖父の力になれないだろうかと話すと「それは頼んでもいいかのう」と答える。

そして、その日から僕は勇者としての使命を全うすべく行動を開始したのであった。僕が勇者になってから数日後に突然僕の前に現れてきたのだ。僕が驚いていると突然「君が勇者の後継者かな」と聞かれた。僕は勇者だと名乗ろうとしたが、目の前にいる男の正体に心当たりがあったので正体を確かめる為に問いただすことにした。

すると男は「私のことを知ってくれているのかね。そう私は影の賢者と呼ばれているものだ」と話すと、やはりかと思う。僕の知っている限り、その称号を持っているのは、僕の祖父の他には「黒髪の男」と「金髪の女」しか知らなかった。その男が目の前にいて僕に接触を図ってきたということは、おそらく勇者についての用件であろうと確信し僕は彼に勇者の力について教えてほしいと言ったのだ。

「君の言うとおりだ。君は本当にあの方に似ている。だからこそ勇者の力を託しても問題無いと判断したよ」と言い彼は僕をこの世界のどこかにある勇者の祠に連れて行ったのである。その勇者の力を授けるという行為自体が勇者の力が引き継がれている証でもあり勇者の力を引き継ぐ者は全員「継承者」としての称号が与えられることになったのであった。

それから、僕たちは様々な試練を乗り越えていく。最初は、この世界の住人であるモンスター達を倒すだけだったが、この世界で魔王を倒した後は勇者を倒さなくては勇者の遺産を手に入れられない事が判明した。つまり、魔王を倒すと、魔王に倒された魔王の配下の者が勇者になり新たな魔王となりこの世界を支配するのである。そのため魔王の討伐後この世界で、この力を受け継ぐ事ができる者を探さなければならないのであった。その方法こそが勇者と後継者による殺し合いだった。僕は自分の持つ全ての技術を使い倒すと決めた勇者を確実に葬る準備をしたのであった。そして僕の持つ「聖剣 エクスカリバー」と、この世界の管理者に認められた勇者にのみ使える「神聖 エクスカリバーン」が融合して誕生した「聖王 エクスカリスカリバー」は勇者を殺すのに相応しい武器となった。僕は魔王との戦いで消耗していたアリシアを助けに向かうが、そこで僕は見たこともない技をアリシアに使った奴と戦うことになる。僕は今までの戦いとは比較にならないほどの強さを持つ敵に、自分の持っている最高のスキルを使って対抗したが歯が立たなかったのである。

その敵こそ僕たちが戦った魔王よりも圧倒的な強さを持っており「勇者モード」になってやっと勝負になる相手だと思った。僕は必死に足掻くものの次第に追い詰められていき死を感じる程であったその時、僕の体に異変が起きたのである。

「くっくっく。遂に覚醒しおったか。これで我が計画は最終段階まで進むことができた」とその瞬間僕の体から溢れ出す莫大な魔力を感じた僕は、それが何なのか理解できなかったのである。しかし魔王の一撃を受け瀕死の状態である僕は気を失ってしまった。目が覚めると僕は、ベッドの上に寝かされていて側にアリシアの姿もあった。彼女は無事で僕を見て泣き出し抱きついてきて離れようとしなかったのである。そんなアリシアの頭を優しく撫でていた僕は、彼女の温もりが伝わってくる事で彼女がここにいることを感じ取り「ありがとうアリシア」と口にする。

その後僕は彼女に事の顛末を聞くと、どうやら魔王と戦っていたはずの勇者は姿を消してしまったらしいのであった。それから勇者の情報を得るため捜索隊が結成されるが結局見つからなかった為解散したと言う事を知る事になった。だが魔王を倒した後の世界には平和が訪れており勇者を探す必要は無くなっていた。その為に勇者を探すこと自体意味をなさなかったからである。それでも僕は勇者の力を継承するまでは探し続けたいと言う気持ちはあったが諦めることにしたのだ。

それから数年後に僕の前にあの「影の騎士」が現れる。そいつが語るには勇者を暗殺するための依頼をしにきているという。それを聞いた僕は驚いたのだ。「お前が影の賢者だな」と話しかけると、「いかにも、私が影の賢者じゃ」と答えてきたため僕は、その依頼を受けても良いのか尋ねると「お主は勇者の後継者じゃろ? お主ならば引き受けてくれると信じておったが正解じゃったわい。それで報酬の方じゃが、勇者の遺産全てと、その所有者である後継者の抹殺。それが今回の依頼じゃ。お主になら、この仕事を任せられるとわしは思うんじゃ」と言うので僕は勇者の力を受け継いだ事を明かす事にすると「それは真の話じゃったか。なら勇者の力を持つ者はお主が最後じゃろう」と言われたのである。

それから、その影の騎士から「これはわしの勝手なお節介じゃと思って聞いて欲しいんじゃが、もしお主ならもし勇者の力を誰かに継承させなければならない事態に陥った場合はどうするかの?」と言われ僕は「俺以外の勇者の子孫を探して勇者の血を後世に伝えて欲しいと思っているんだ」と話してみせた。

僕の話を聞いた老人は「ほう、勇者の子孫を探しだし勇者を復活するつもりか。その考えは面白いが現実的ではないぞ」と笑みを浮かべながら話すと僕は「そうだよな。こんな無茶苦茶なことを言って悪いな」と答える。

「いや構わんよ。確かに勇者を復活させることは理論上可能かもしれん。だが、まず勇者の血筋を絶やさぬよう守ること。その血族の中から力を受け継いだ者が現れた時にのみ、その者の身体に流れる勇者の力に目覚めさせる事が肝心なのである。しかし、そう言った方法で子孫を増やしていけば勇者は復活するだろう。ただしその場合は勇者の子孫は絶えることになるがの」と話してきた。それから僕は質問をする「なら何故、あんたのような人がいるんですか?」

すると、その質問に対して彼は答えてくれたのだった。「わしも勇者の血統の一つじゃよ。と言っても末裔にあたるんじゃがな。わしの代で勇者は途絶えてしまうがわしには息子がいた。その息子の嫁との間に子供が生まれその子は男の子でな、名前はタツマというんじゃが。その子供に勇者の力は継承されたはずなんじゃが、この世界に戻ってきたときにはすでに勇者の力が失われていてのう。だから今度現れる時は絶対に勇者を復活させてやりたいんじゃ」と答えた。

僕たちは、この世界の魔王を倒し世界を救ったあと僕は、影の騎士と共に旅を続ける事になる。そこで様々な出来事があった。影の騎士の本名が「ジグニール」であることを教えてもらったのだ。

そして僕は彼について知れば知るほど不思議な男だと思い始めていったのだった。影の賢者が影の騎士として行動してる理由を尋ねた時「ワシにもわからんのだよ。ただワシが先代から聞いた話では勇者を裏切った人物と行動を共にしていると言う事じゃ」と言い「まぁ先代もあまり多くは話してくれなんだからの」と語るのである。それから僕達は、勇者に関する情報を集めるため色々な場所を旅した。そしてついに僕は勇者に会う事ができたのであった。その勇者が僕達に告げたのは驚くべき事実であった。

この世界で僕が勇者の後継者だということが判明した僕は勇者が僕の前に現れてから数ヶ月後「おい。ちょっとこいよ」と声をかけられ振り向くとそこには、金髪で青い瞳を持つ美少年の姿があり、その男は僕を見ると急に手を差し出してきたのである。そして彼は「俺の名前は レオンハルト。これからお前のライバルになる奴だ。せいぜい頑張るこった」と言った。その男は「勇者 レオン」であり僕に勇者の力を譲るべく姿を現したのである。その日から僕は、彼の弟子になり様々なことを学ぶことにした。そして僕達はお互い競い合う関係となり時には一緒に戦うこともあり信頼を深めていくようになったのである。そんな時僕は彼との別れの日を迎えることになるのであった。その日に彼が語った事は今でも忘れられない。なぜなら僕は勇者の力で蘇りそして世界を救うことができたからである。そしてその力は、あの魔王を倒すために必要な力だと分かったのだ。そして僕と、もう1人の少女は、その力で「勇者」となる道を選ぶことになるのであった。その力こそ勇者だけが使える「覚醒能力」である。

それから僕達が勇者の力を使えるようになるための試練を乗り越えている最中に影騎士と出会い情報を得ることに成功する。勇者と影の騎士がこの世界を救おうとしていた本当の理由を知った僕は衝撃を受けるが、その真相を知り影の騎士との協力関係を解消する決意を固めた。その理由は、影の騎士の正体である「ジギル」が、僕が幼い頃に世話になった人物であり影武者をしていたというのである。しかし僕と、この世界で出会う前の記憶が曖昧な彼は、自分が何者であったのかを忘れてしまい、自分にとって最も大事な存在を守りたいという強い気持ちと使命感だけで動いている状態だったのである。

そんな状態では勇者の復活を阻止することもままならないと僕は考えた。そこで勇者の力と影の王の魔力を融合させた最強の力を手に入れる必要があると考えた僕はアリシア達に協力してもらうことに決めて僕達3人は協力することになったのであった。そして、ようやく全ての準備が終わった頃、僕は魔王の討伐に成功しアリシアと一緒に元の世界に帰ることを決意する。

僕はアリシアに、今までのお礼を言いたいと思ったので、彼女を連れて部屋に戻った後お風呂に入るように提案してみたものの断られてしまったので、仕方がなく2人で入ることにしてお風呂に入ったのだった。その後お互いに背中を流しあいっこをして仲良くお湯に浸かる。アリシアの裸体は本当に美しいもので僕にとっては最高の光景だったが同時に罪悪感にさいなまれ続けていた。なぜなら僕は彼女の事を好きで好きでしょうがなかったからである。そんな僕を見てアリシアは僕を抱きしめ「拓斗様は私を選んでくれますよね?」と尋ねてくるが僕は返事ができずにいた。それを見たアリシアは、悲しげな表情を僕に見せてきて「私の事が好きなんですよね? だって私を抱き締めてくれてるんですもの」と言ってきて僕は、思わずアリシアの事を力強く抱き返していたのである。そんな僕を見て嬉しそうな顔をした彼女は再び「私を愛してください」と懇願してくる。だが僕は彼女を愛してしまえば僕の気持ちは止められなくなってしまうと思い断りを入れると、彼女の顔は見るからに落ち込み、目に涙を浮かべて泣き出したのだ。僕は泣き止まない彼女に謝罪を繰り返しながら謝るが一向に泣き止んでくれる気配がない。

仕方なく僕は自分の部屋に彼女を連れて行くとベットに横たわらせたのだが、彼女が抱きついてきたことで僕の理性は吹っ飛んでしまい気がついたら彼女を貪っていたのである。何度も絶頂に追いやられながらも彼女は僕の行為を受けいれて最後まで許してくれる。そして僕が果てた後、僕は疲れ切って眠ってしまい気が付くと朝になっていた。僕は目が覚めると慌てて起き上がりアリシアの姿を確認しようとしたものの姿が見当たらなかった。不安に思い探すと彼女は、いつもの服を着ており鏡の前に座っている所を発見する。

その後、彼女と目が合った瞬間僕は、とんでもない事をしてしまったのではないかと後悔するが既に遅く僕が近づいてきたことに気づいた彼女は僕に背を向けたまま涙を流しながら、こちらを見ずに話しかけてくる。僕にはどうすることもできなかったが何とかしなければという思いが強くなって話しかけようとした時、先に言葉を発したのは彼女の方だった。

「どうして何も言ってくれないんですか? 私を抱いても結局、私ではなく違う女のことを考えて抱いていたんでしょ? 私はあなたが望むような女性ではありませんよ」と言われたのである。だが僕は何も言い返すことができなかったのだ。確かに僕は彼女のことばかり考えていたのは間違いないことだからである。そして黙って立っていると背後から抱きしめられて振り返るとそこには笑顔を浮かべたアリシアの顔があったのだ。そして、僕は彼女に「ごめんなさい。実は、どうしても君に会いたくなってしまって、こっそり部屋に入って寝ていたところを起こしたんだ」と言うと彼女は笑みを見せ「いいのですよ。私が寂しがり屋なせいで迷惑をかけてしまっているわけですし」と微笑んだのだ。そして僕は改めて彼女の魅力を確かめてしまったのである。それからしばらく僕は、この異世界に来てからの思い出話に花を咲かせる事になった。だがその話をした時に僕達は勇者が何故、僕達の世界の人間なのにも関わらず僕と瓜二つだったのか疑問に思う。その答えを影の騎士から聞かされる。その話を聞いた僕達は衝撃を受ける。僕と、その仲間が勇者の力を継承し、さらに影の騎士と融合した事により世界は滅びの危機を回避できるほどの力が手に入ったと言う話なのだ。そして勇者は勇者としての力を失ったが、勇者の力と勇者の魂は僕に引き継がれたのだと言う。そして僕は勇者の力と影の王の持つ闇の力を取り込んだ事で闇騎士の力を身に宿すことになったらしいのである。つまり今の僕は闇騎士でもあり、勇者でもあったのだった。僕は勇者の力と影の王が一体化したことで勇者と同等の力を持つようになり魔王を倒すことに成功した。その代償として僕も、そして勇者も死んでしまったが僕は勇者の意思を受け継ぐために生き続けたのである。

だが僕が目覚めることはなかった。僕は勇者が死んだあと影の王に戦いを挑み敗れた後で勇者の亡骸を守るために命を落としたからである。それから、ずっと暗闇の中で眠り続け目覚めることはなく永遠に終わることのない長い旅路を歩むことになる。

僕とアリスは今まさに死と対面している状態だ。この世界には僕たちの他に誰もいない状況下なので当然といえば当然の話だと言える。そんな中、影の騎士が突然姿を現し僕に語りかけてきた。そして影の騎士は、あの時と同じ質問を再び問いかけてくる「それで貴様はこの世界を救うために再び命をかけるのか?」と聞いてくるが僕は即答で答える。

「ああ! そうだよ!」

その答えを聞いた影の騎士が、にやりと口角を上げるのが見えたが、その次の刹那に僕の意識が途絶えたのであった。

気が付いたときには僕は草原で倒れていて、隣にアリシアがいたのである。僕達はお互いに無事に再会できた事を確認する。そこで僕は影の騎士が言った最後の言葉を思い出し、僕たちは影の騎士に救われたのだと実感することができたのである。そして影の騎士の言葉を信じて僕達は勇者を復活させるために動き始める事に決めた。

それから僕と、もう1人の少女「アイナ」と、その相棒である白狼の「シロ」は勇者を探す旅に出る。僕が持っている勇者の情報と言えば「レオンハルト」「アリシア」それと勇者の仲間の「リゼ」「クロ」である。僕が探し求めているのは、その4人の中でも特に重要な「アリシア」である。勇者に力を託した存在であり勇者復活に必要な鍵を握る人物だからだ。そして僕達3人は協力しながら、それぞれの目的のため行動することになる。まず僕とアリシアは「聖都 セントガルム」を目指すことにする。そこで「クロ」と出会うのである。僕達は、その「クロ」に勇者の事を聞くことに決め、聖女が住む城へと辿り着くと、その門の前で番をしていた兵士が、僕達に敵意むき出しにして槍を構えながら「おいお前達、ここはお前達が来ていい場所ではない。すぐに立ち去れ」と言ってきた。

するとその兵士を見てアリシアが「その方は、この国の騎士団長で私の上司でもある、ロザリーさんという女性の方です。事情を話して中に入れてくださいませんか?」と言い放つ。

それを見た兵士達が「し、しかし。姫様に報告してからでないと、それはできかねます」と困った顔をしていた。

そんなやり取りの後、しばらくして城の正門が開かれると僕達は中へ案内される。その後に応接室のような場所に通された僕は、そこに現れた女性と目が合うなり「あっ、あなたは、まさか拓斗様ですか? いえ失礼いたしました。私はアリシア様の補佐官をしている者でして。お見知りおきをお願いします」と言われてから名刺を手渡された。

その名刺を見ると名前は「ロザリー」となっていて「聖王近衛騎士団 第2小隊隊長」と書かれている事から、彼女が相当な立場の人間だという事が分かる。ちなみに第2小隊とは僕達が探していた、勇者パーティーのメンバーがいるので第2小隊となっているのである。その後で僕達は彼女に詳しい説明を聞かせてもらった後に、勇者の事を教えてもらえるように頼むが、「その件につきましてはお断りさせていただきたいと思います」と、はっきり断られるのであった。

僕は「どうしてダメなのか理由を聞いてもいいかい?」と尋ねると「申し訳ございません。この件に関しては他言するなと命令されておりますので、その理由を話す事は出来そうにもありません。どうか、わかっていただけると助かります」と言われる。仕方がないので僕とアリシアで勇者の捜索を始める。それから僕とアリシアは街中を探し回りようやく見つけた時には既に日が落ちかけていたのである。僕は勇者に、アリシアを紹介すべく声を掛けた。その呼びかけに振り向いた彼は、どこかアリシアに似た雰囲気を持っていたので、やはりこの人が勇者なのではないかと僕は思ったのだ。

そんな勇者とアリシアを引き合わせる事に成功したが勇者の反応を見る限りどうやら別人みたいだったが、僕は念のためにアリシアの事を勇者かどうか確認するために質問をしてみるが、彼女は「何を馬鹿げたことを言っているんですか? 私はアリシア。アリシア=アベルハイム。あなたとは同じ学園の同級生で友達ですよ」と言ってきて僕は「やっぱりそうなんだ」と思うと勇者の様子がおかしくなっていた。

だが僕が気にしないで話しかけていると、なぜか勇者が急に僕の頬を引っ張ってきたのだ。僕が何で僕の顔を引っ張り出したのかを尋ねようとするが、勇者は無視を決め込む。僕は仕方なく彼の気が済むまで待つことにしたのである。それから数分後「ごめん。痛かったよね。つい夢中で。君は誰なんだい? なぜ僕の目の前に現れたのだろう?」と言う。僕はその言葉を信用できなかった。だって僕の知っている勇者の言動とは全く違うのだ。だが僕は「君のことはアリシアから色々と聞いていたよ。だから僕は君を探していたんだよ。君こそ、この世界で勇者と呼ばれていた人間だよ」と伝える。

すると勇者は僕を見て笑い出す。その様子に戸惑っていると勇者は「君が俺を知っているはずはない。俺は、あの日。死んだんだ。なのに生きている。どういうことなんだい? でも、確かに君は俺のよく知る人だ。ただの他人の空似ってことじゃないのか?」と言う。僕は彼が僕の事を「知っている」と言ったことで僕は彼を信用することにしたのだ。だから「実は僕は勇者だった。だから君のことを良く知っているんだ」と告げる。そして僕は自分が死んでしまっていることと「勇者の剣と力を継承したから勇者が復活するまでの間は、勇者の代役をやって欲しい」と告げた。だが、その話を聞き終わった勇者が「何言ってるんだか全然わからない。悪いんだけどさ、俺と少しの間一緒に過ごしてくれないか?」と言う。

勇者が何故、そのような事を僕に告げてきたのかというと理由は分からないが彼の中では、まだ僕が死んだということが確定していなかったらしいのだ。それに勇者には、この世界に転生してきた時、何か特別な出来事があったというのだ。だが僕には、その時の記憶がなかったので彼に詳しく話してもらう。そして話を聞き終えると僕は「僕は、どうして死んだのかな?」と勇者に尋ねた。

僕が質問をした直後、アリシアが僕の名前を呼ぶ。その声に振り返るとアリシアの後ろには騎士と思われる人達の姿が見えるのだった。そして、その中に「クロ」もいたのだ。アリシアと騎士達は僕達の前に現れるとアリシアが僕と勇者に対して挨拶を始めたのである。その光景を僕は唖然と眺めることしか出来なかったのだ。

なぜなら僕は今の状況が全く理解できていないからだ。アリシアの横に、もう一人の女性が現れると、いきなり勇者を殴ってしまった。そして勇者は吹っ飛ばされる。だが、すぐに立ち上がる。勇者は「お前が、どうして此処にいる!」と叫んだ。その女性は僕と勇者の間に割ってくると、こう答えたのである。「私はクロ! 貴方と一緒に旅に出た仲間でしょ」と。それを聞いた勇者が「そんな馬鹿なことあるわけがない! クロは、あのとき死んだはずだ」と答えた。

その言葉を聞いたクロと呼ばれた女性が、突然怒り始め「じゃあ私が死んだときの様子を説明できるの?」と聞くと、勇者は何も言えないのか黙りこんでしまう。そして勇者が何も言い返せなくなるのを確認するとクロと呼ばれる少女は僕とアリシアの方を向いて話し掛けてくる。「私の自己紹介がまだでしたね。私は、この勇者と冒険をしていたクロという少女です」と言われた。僕は戸惑いながらも「初めまして僕はタクトと言います。それでこっちが僕の仲間のアイナ」とアリシアの紹介をする。すると「アリシアさんに、こんなに可愛い妹さんがいたなんて初耳です」と言われる。

その言葉を聞いた僕は「え?」となるとアリシアも「え?」となっている。それを見てからクロは「私はシロの双子の姉よ」と、あっさりと言ってきたのである。それを聞いた僕達は驚きを隠せないでいた。

アリシアは、クロの言葉が信じられないのか何度も同じ事をクロに向かって聞いてくるがクロは「私と、そっくりだと思ったでしょうけど双子だから当然でしょ」と答えていたのである。僕は「ところで勇者の事を知らないみたいだけど何者なんだい? アリシア」とアリシアに問いかけた。するとクロとシロがアリシアの傍に行くと、アリシアが2人に抱きつき泣き始めたのである。そしてクロが「貴女達。勇者は、どこへ行ったの?」と僕達2人に対して訪ねてきたので僕は正直に「魔王討伐の旅の途中で勇者が亡くなってしまったため。現在は行方不明となっています」と言う。その返事を耳にした勇者は、その言葉に驚いているとクロは「勇者は亡くなった。なら、なぜ貴方達が、この世界に戻って来れたの?」と僕達に質問してきたのである。その質問に対して、どう答えるべきなのか困っているとクロは「勇者の力が消えているのを感じる」と言うと続けて「勇者が消えたと同時に、貴方達が元の世界へと戻った。そう考えるのが妥当な考えかもしれないわ」と口にする。その言葉を僕は信じる事にしたのだが勇者は疑っていたのである。しかしクロの話が本当なら僕達が此方へ来るときに起きた出来事について勇者に説明する必要がある。

勇者が、その事実を知った事で「じゃぁ、本当に、ここは、俺達のいた世界ってことになるんだ」と口を開くとクロとシロの二人が勇者の元に駆け寄り「勇者」「おかえり」と出迎える。それを見ていた勇者は「うん、ありがとう」と言うと、そのまま倒れてしまったのである。僕は勇者を抱き抱えると寝かせながら回復魔法を使う。

そして目が覚めると勇者は僕を睨みつけてきたのだ。その視線は「俺は、あいつ等とは違うぞ」と言わんばかりの態度だったのである。僕とクロが会話を始めると勇者が割り込んできて僕に文句を言い始める。だが僕の目からは勇者が無理をしている事が分かる。それは、あまりにも必死で僕とクロの話を邪魔しようとしているように見えて仕方がなかったのだ。勇者の態度に、ついに僕は我慢できなくなり「クロ」と呼ぶ。そして勇者は僕の行動でクロが近くにいることを思い出し、そちらに意識を向けるがクロとシロを見た瞬間。勇者の顔が引きつった。そして勇者はクロに助けを求めるように近寄るがクロが勇者の腕を振り払うと「なんで? なんで? そんなことするの? 酷い」と涙ぐんでいた。そんな勇者を見ていて僕の怒りが頂点に達した。僕には、その勇者の行動が許せなかったのである。そして「おい。いい加減にしろよ」と怒鳴る。するとクロは僕が怒ってくれた事と、勇者に話しかけてくれたことが嬉しかったのか僕に対して笑顔を見せると「タロー。そんなこと、この人の為にもならない。だから、この人の前では、そんな話し方は止めよう」と僕の口調を指摘するとクロは自分の胸の中に勇者の頭を抱え込むと優しく勇者の頭を撫でていたのである。その光景を見ながら僕は冷静さを欠いていたことに後悔して謝罪を口にしようとしたときに「もう遅いの」とアリシアの声が聞こえた。

僕の目には勇者の姿が見えていない。僕はアリシアの言葉を疑問に思い、どう言う意味か質問しようとするが、アリシアは僕から目を逸らすと僕の横を通り過ぎるとクロの背中を押す。僕は何が起こっているのか理解できないでいるとシロが、クロに何かを告げる。それを聞いて僕は慌てて振り返るが、すでに遅く。クロは僕に背を向けたまま歩いて行ってしまうのだった。そして勇者の方を見ると勇者の体が震えていたのである。

僕はアリシアに声をかけようとするが、僕より先に勇者が声をあげると僕を無視してアリシアの元へ駆け出していたのだ。僕はアリシアに何を言おうとしていたのかすら忘れてしまい呆然と眺めることしか出来なかった。そしてクロに抱きついているアリシアを見て悔しさが溢れ出した。そして僕が、どれだけ頑張ってもアリシアは僕に振り向いてくれる事は無いと思い知る。僕は「僕なんかよりも、そいつの方が、お前に相応しいんだろう」とアリシアに向かって叫びたい気持ちを抑えて走り去ろうとする。

その言葉を聞いた勇者は「ちょっと、何処行くつもり?」と言うが僕は無視をしてクロの後を追いかけた。そして僕が立ち去る間際にクロとシロが僕に気がついて「待って! お願い。少しだけ話を聞きなさい」と言われてしまう。だが今の僕はアリシアの幸せを壊したくない一心で彼女達とは話ができない状況だったのだ。僕は「ごめん。君達の事は良く分からない。だから僕達は帰らせて貰うね」と伝える。そして、すぐに立ち去ろうとしたのだがクロに呼び止められたのだ。

「貴方が、私達に何かを隠していることを知っているわ。

貴方は、きっと大切なものを守るために大切なものを手放しているんでしょう? だから、もう少しだけでも時間がない事を考えて行動した方がいいわ。じゃないと、きっと取り返しがつかない事になるから」と僕に言い放つ。

僕は「え?」と呟くことしか出来なかった。その言葉で僕は気がつくことができたのである。僕はアリシアのためにとクロが勇者のことを受け入れようとしたら絶対に阻止しようと決めて居たことを、この世界での思い出を作れば作るほど辛くなる事を知っていながら何もしなかったのだと。

僕は「分かった。話を聞くことにするよ」と答えるとクロが僕に近づいて来て「あのね、あのね。あの人はね。あの人はね」と僕の耳元で小さな声で伝えてきたのだ。その言葉は僕の心の中にあったアリシアとの思い出の全てが粉々に砕ける内容だったのである。そして僕は「それって本当なの?」と聞くと「私は嘘は言ってない」と一言残し、シロのところに戻るクロの姿を見て「ありがとう。クロ」と僕は小声で感謝の言葉をつぶやくのであった。僕はクロから聞いた話を皆に伝える。その話を聞いたクロは僕達を「今なら間に合う。

早く行きなさい」とアリシア達がいる方角へと指差すので僕は、お礼を言うと、すぐさまアリシアとクロが居る場所へと向かい走り出した。そして僕はアリシアの傍まで辿り着く。アリシアが振り返り、僕に抱きついてきたのだ。僕は驚きを隠せないでいた。アリシアが、まさか自分から抱きしめてくることなどなかったからである。するとアリシアは「良かった。タクト。貴方が来てくれて嬉しい」と言ってくるのである。

僕は「うん。遅れて、すまなかった。それとねアリシア。君に、この世界の真実を教えに来た」と言うとアリシアは「え?」と困惑する表情を見せていたのである。僕はクロが僕に告げたことをそのまま伝えた。その話を静かに聞いていたアリシアの瞳から大粒の涙が流れていたのである。

僕は「これが、全てだよ」と口にするとアリシアが泣きながら、ありがとうと言い僕の唇を奪ってきた。アリシアが泣き止むまで、その行為を受け止めることにしたのである。

そして、ようやく落ち着いたところで「タロー、大好きだよ」と恥ずかしそうにしているアリシアが可愛くて愛おしくて思わず彼女を自分の胸へと引き寄せていた。その行為が予想外だったのか顔を赤くしたアリシアが僕を見上げていたのである。そんなアリシアを見ていると「タロー、私に何か言う事があるんじゃ無いの?」と言うので僕はクロとシロの事を伝えることにしたのだ。僕はクロにアリシアと会わせてくれた事に、この上ない程の感謝の言葉を彼女に捧げたいと。そして僕にとっての大切な人が誰なのか教えてくれた事もと、シロにも同じ様な言葉をクロに対して告げたかった。

僕が二人に感謝の意を述べると「うん。でもクロの言う通りなら、これからはクロの事を大切にして欲しいの」と真剣な顔で言ってきたので、僕が首を傾げているとクロが僕の背中に抱きついて「シロのことも好きなんだよね。だけど、クロにも構ってくれないと嫌なの」と言う。その言葉に対して僕はクロが僕の頬にキスをしてきた事で答えとした。その光景を見たアリシアは僕が二人のことを同時に愛することを快く思っていないようだった。しかし「大丈夫。クロの事も大切にしてあげるから安心して」と僕が口にすると信じれないと言うような目で僕の事を見てきたがクロが「私の事を忘れないように、しっかりと抱いて下さい」と甘えるように囁いてきたのだ。僕は、それを受け入れるとクロが、僕の事を抱きしめていたのだ。そんな様子を眺めていたアリシアが僕達に向かって微笑んでいた。その光景を僕は「本当に綺麗だ」と心の中で感じていた。そして、この瞬間。僕の事をクロもアリシアも同時に愛する事が叶ったのである。

僕は勇者に言われたとおり。勇者達を放置したまま、しばらくその場に留まっていたのである。僕に助けを求めて来た人達を落ち着かせるためと、まだ僕に何か用事があるのではないかと考えていたからだ。

僕は勇者とアリスに話しかけられた時、僕が勇者に対して言った言葉が頭にこびりついていたのである。勇者の「おい。なんで俺の仲間に手を出してんだよ」と言った台詞が頭から離れず「僕の仲間に? 何を言っているんだ?」と言う感情しか沸き起こってこなかったのであった。そして「僕は誰ともパーティを組んでいない。それに、お前達の事は知らないぞ」と言ってやった。その返事が勇者の怒りに触れたのか「あー、うぜぇ」と叫ぶ。僕はそんな勇者を無視して先程助けを求めてきた者達に向き直り質問を投げかけたのだ。

その者曰く。「貴方がたの仲間の少年について知りたいのですが」とその質問に対しての解答を聞いて、僕は怒りがこみ上げて来た。僕には彼が悪い人物だとはどうしても考えられずに居たのである。彼は助けを求める声を聞いて駆けつけていただけなのだ。ただ、僕には信じられない言葉があったのだ。それは「あいつに仲間なんて居ません。あんなやつ信用しないでください」と僕を馬鹿にした発言を聞いて、もう我慢の限界に達してしまったのだ。僕は無抵抗の彼に対し殴ろうと振り上げた腕を止めて、そのまま地面に叩きつけていた。勇者はその出来事に驚いたのか唖然としていたのである。

それからは勇者は仲間から責められていた。「勇者様、貴方は何をしたか分かってるんですか?」とか「勇者としての自覚を持ってください」などと、言われていたが勇者は一切反省の色を見せないままだったのだ。僕に文句を言う者も居たが無視した。そして勇者と仲間の話し合いが終わると、すぐに勇者と仲間達が去って行く。僕はアリシアとクロが無事でいる事を祈りつつ、アリシアとクロの居場所を探す為に走り出したのである。

僕達はアリシアとクロが捕らわれた牢獄へ辿り着くと、僕は二人の名前を呼びながら必死になって探しまわるが一向に見つかる気配がなかった。

「何処にいるんだ?」

僕は、かなり大きな声で叫んだが声が返ってくる事はなかったのである。僕はクロとアリシアが捕らわれてる牢屋を探し始めると、そこにクロがいたのだ。

「クロ!」「タロー」

クロは、僕が来てくれるのを信じて待っていてくれたようで僕の事を見て笑顔を浮かべていた。だがクロの目は、どこか寂しげだったのである。僕はクロの元に近づき抱きしめようとしたのだがアリシアが囚われているはずの部屋は誰もいなかったのだ。僕達は急いで、シロを呼んでみたのだが全く返事が無かったのである。

「どうしてシロと連絡取れないの?」

クロは心配そうに呟く。シロは僕とクロの通信魔具を持っているはずだったのだ。だからシロとシロと繋がっていたはずだとクロは考えていたらしい。僕はシロに念話を使ってみる。すると「タクト?」とすぐにシロの声が聞こえたのだ。

「シロ、どこに居るの? アリシアは、一緒じゃないの?」

僕はアリシアがシロと一緒に居たのに突然姿を消した事を気にしていると「クロ、クロ! 聞こえる? アリシアは、クロに、お話したいことがあるから一緒に居るよ。

だから安心してね」と言ってくるのだ。

僕はアリシアの言葉で安心することができた。その会話の後からクロは「シロ、シロ? アリシアは今どこ?」と聞いては、アリシアがクロに返答をするのを繰り返していた。そのクロの姿が痛々しく見えてしまい。どうにかアリシアに連絡できないものなのかと考えている時にふと思い出す。僕とクロの繋がりはアリシアが持って居る指輪が起点になっている事にだ。

僕はその可能性に賭けて、もう一度クロと繋がることを願ってみることにした。するとクロとシロから貰った通信用のリングが淡く輝きだし僕達の間に光のラインが現れると僕はアリシアの持っていたはずの指輪を手に持っている感覚になったのである。その事を確認して、クロとシロの方を確認する。どうやらクロはシロから、僕と同じ状況になっていたことを聞いていたようだ。シロは僕がクロと繋がった事を理解してくれたらしくクロと話を始めていた。その様子を見ながら、クロが僕の方に歩いてきて手を差し伸べてきたので僕はその手にそっと手を添えた。クロが僕の手を握った瞬間。クロの体から魔力が溢れ出し僕の体に入ってきたのである。僕は、クロの気持ちが流れ込んで来るような不思議な体験をしていた。クロの今までの出来事。僕との出会いから今日までのこと全てが僕に伝わってくる。クロは僕と出会ったことで変わってしまった自分に対して不安を覚えていた。僕はクロの頭を撫でるとクロは「うん。私、タローに迷惑かけたくない」と口にする。クロの言葉は本心からの言葉であり僕は「そんなの気にしなくていい。俺はクロがどんな姿になろうともクロの事が好きだ」と伝えクロを抱きしめてあげたのである。クロは僕の胸に顔を埋める。クロの目からは涙が流れているように見えた。そのクロを見ているとシロとクロから僕の元にやってきた時の事が蘇って来たのである。僕が、クロと初めて出会って間もない頃だ。その頃はまだ僕は、シロとクロの存在に戸惑っていたのだ。

『魔王』が倒されて二ヶ月ぐらい経ったある日。クロが初めて僕の家に訪ねて来て「貴方を幸せにしてあげる。貴方をずっと守っていくわ」と言うクロに戸惑いながらも僕が「僕なんかの為に人生を捧げる必要はないよ」と言うがクロの意思を変えることはできなかった。そのクロとのやり取りを思い出した。クロは初めて僕の前に現れたとき、僕に「クロの事を怖がりもせず、優しく受け入れてくれた。タローに私は命を賭けても良いと思ったの」と言ってくれた事を思い出したのだ。クロが涙を流していたことが嬉しくて仕方なかった。クロとシロが二人で僕の事を思っていてくれている事実に心の底から喜んでいたのである。その光景を思い出すだけで自然と頬が緩んでいた。僕は、シロにクロが伝えたかった事を代弁してシロに伝えてもらった。シロとクロの絆の深さを実感していたのである。

シロはクロが僕の胸の中で「うん」とだけ答えている。それだけで全て伝わる気がしていたのだ。シロの「うん。大丈夫だよ。私達でなんとかしてみせる」という言葉で、僕とクロはこの先シロとクロを救える方法が必ずあると希望を持てたのだ。僕は「俺達も協力するから絶対に諦めないでくれ」と言うとクロは「うん」とだけ答える。そんなクロを見ていて思わず、僕の目からも涙が出てしまっていたのだ。僕は、この二人の力になりたいと言う強い意志が生まれていた。クロには、クロなりの考え方があるのだろうと理解しながらも僕は自分の感情を優先してしまった。クロに、この世界には沢山の人が存在している。だから自分が犠牲になる事で他の人を悲しませないようにしてほしかったのだ。だけどクロの事を一番分かっている僕だからこそ分かっていたのだ。クロは僕を裏切るような真似はしないと、クロが、もしも僕を裏切ったとしても僕は許すことができると確信できたのである。そして僕達にとって大切なのはシロとクロと離れることだけは嫌だった。それならクロの考えを受け入れてあげたいと思っていたのだ。しかし僕にも譲れないものが有ることも事実だった。

僕がクロにシロが言いたかった事を話してもらうとクロは「分かった。タローに言われた事は絶対守る。約束、でも」と言って僕がクロの言葉を遮る「クロ、それはもう言わなくても良いんだ」と言い、その言葉を聞いたクロは再び目に光を取り戻していた。

クロと会話を終えると僕はアリシアの事を考える。シロに聞く限りではクロの話ではアリシアは一人で行動していて、その時はアリシアは指輪を身につけて居たはずなのにクロが居なくなった途端。指輪は、なぜか消えてしまいクロとの連絡が取れなくなってしまったらしい。

「タロー」

僕が考えているところにクロから話しかけられる。クロは僕の方を向くのだが、僕には何故かクロの顔が見れていなかったのだ。それは、これから起こる未来に恐怖を抱いていたからである。だがクロに呼ばれて僕はクロに向き合う。クロの表情は暗かったのだ。そのせいか僕はクロを抱きしめたい衝動に襲われていた。だが今は抱きしめてはいけないと感じたのである。だから僕は「なぁクロ、アリシアは、今どうしてると思う?」

僕は気がついたらクロを抱きしめていた。クロは突然の事に驚き体を震わせていたが、僕から離れようとすることはなかった。

「う、うぅ」クロは、何か言おうとしていたのだが上手く喋ることが出来ていないようだ。僕はクロが話すまで待った。クロの気持ちが落ち着くのを待ってあげようと。

クロは深呼吸をして「アリシア、泣いている」そう言ったのだ。僕は「なんで分かるの?」と聞くと「アリシアの声、聞こえたから、助けてほしいって言ってたのにシロが居なくて、アリシア寂しがってたのに」

僕はアリシアのその言葉でクロを抱き締めたくなる。クロは、アリシアを助けようとしていたのか。僕はそう思うと同時にクロの優しさを感じたのである。アリシアとシロに、これ以上無理して欲しくないと強く思ったのだ。

僕達はその後アリシアを助けるために動き出した。

「クロ、まずは、シロと合流する」僕はシロに念話で呼び掛けてみる。するとシロは「シロは、アリシアと、クロの近くに居ます。タロウさんは、何処に居るんですか?」とシロが尋ねてくるのである。

僕は「アリシアが捕らえられてる場所に、今から向かうから待っていてほしい」とシロにお願いしたのだ。

「シロは、シロの出来る限りのことをやるね。タロウさんは、クロをお願いします」シロは僕の事を信頼してくれている。それがとても嬉しい。クロと一緒に行動する事を選んだ以上シロはアリシアに近づけないだろうと考えていたからだ。

「クロと一緒にシロの元に向かうから」とシロに伝えると僕はシロにクロとシロが捕らわれていた牢獄の位置を聞いてみる。シロは僕達の居たところからそこまで遠くはないと言う。そこで僕とクロとでシロの居る牢屋に向かったのである。シロと合流後はシロとクロは通信魔具の繋がりを頼りにアリシアの元に辿り着けるようにシロに先導してもらって進むことにした。

シロが居ると思われる方角へ歩いていると前方から爆発音が聞こえてくる。その音に僕達が反応していると一人の兵士が「何があった?」と言う声が聞こえた。僕はその兵士に近づいて事情を聞くことにすると。どうやら敵兵の一人を拘束していると仲間から知らせを受けたらしく。その場所に向かおうとしたときに大きな音を響かせて爆発が起こったらしい。僕がその状況を聞き終えたところで、その爆発音の音源へと僕達を誘導してくれたのである。

その場所に着くとそこには複数の人間が集まっていて中心に縄で縛られた男と数名の仲間らしき者が倒れていた。男は地面に顔を擦らせながら僕に視線を合わせてくると口を開いてきた。「おい。そいつらが今回の事件の首謀者なんだろ?早くこっちに渡せよ」と男の側にいた者達が騒ぎ立てる。そんな様子を僕とシロとクロは見ていた。シロは「タロちゃん。クロ、少し暴れてきてもいいかな?」と言う。僕も気持ちは同じだった。僕はその人達に近づいていくとその人たちのリーダーであろう人物が僕の前に出てくる。その人物とは先程、僕に情報をくれた兵士であった。僕は「君たちはこの人の知り合いかい?」と言うと。その人は「俺の大切な部下だ」と言って僕に剣を向けてきたのである。シロは、僕の後ろに隠れているクロの事を背中で感じ取る。クロは自分の身の危険を感じて僕に指示を待っていたのだ。僕が「この人を傷つけるとどうなるか知っていますよね?」と言ってやるとそのリーダーは「俺は命令に従っただけさ。それに、こいつは俺を襲ってきたから反撃をしただけに過ぎない」と開き直り「お前だって同じ立場なら、同じように行動するだろ」と言ってきたのである。僕は「確かに貴方の立場なら、そうしたかもしれないけど僕達は違うんだよ」と言うと「どういう意味だ!」と言いながら斬りかかって来たので、その一撃を受け流しながら蹴り飛ばす。するとその攻撃により体勢を崩し地面を転がったあと、そのまま気絶してしまったのである。

それからは僕とシロとクロとアリシアと僕の仲間の4人で、アリシアを取り返すために戦っているのだけど、正直なところ僕達だけで何とかできる状態ではなかった。相手側の人数は50人ほどなのだ。その数の差を埋めるためにはどうしても、あの人を頼る必要がある。その人というのはクロの父親であるガウェインの事である。僕は、この場から逃げている最中にシロに念話を繋いでみたのだ「ねぇ、シロ。この騒動に紛れて僕達の所にガウェインさんを呼んでくれない」と伝えると。シロは驚いた声で「お父さん呼ぶの?わかった」と言い、すぐに「ガウェイン。助けて」と言うと。僕達に近付いてきてくれたのだ。僕とクロが、その光景に驚いて固まっていると、その隙をつかれて僕とクロは捕まってしまう。

僕達二人は、その状況をなんとか打開しようと足掻いていたが、人数差もあって、どんどんと追い込まれていく。このままでは二人とも死んでしまうのだろうと思ったとき、突如としてシロとクロの姿が現れたので驚いたのである。そして僕は「ここは危ないよ!早く逃げるんだ!!」と言うのだが、シロは僕の方に手を向けると、僕は光に包まれてしまう。光が収まると僕は先程の場所では無い別の場所に移動していたのだった。周りには、シロとクロ以外に見覚えのない人達がいるのを確認したのだ。僕は辺りを見回した後、目の前の人物に目線を送る。そして僕はその人と目が合った瞬間、驚きの声を上げたのだ。

「まさか、父さんですか?」僕が聞くとその人はとても驚いた表情をしていたのである。

シロが僕に「私の能力、見せたかった」と言い「タロー。驚くのはまだ早い、この人、強いから」と僕に話しかけてきたのだ。その言葉の意味を理解するには、もう少し時間がかかりそうだった。何故なら僕にとって、この人は父親であり、もう何年も会っていないのだ。

「クロもビックリしてた、シロの能力凄いね。この人に負けてなかった」

僕は、クロが言っていたことを理解した。シロの父親は、クロよりも遥かに強かったのだろうと予想できたのだ。だからクロでも、シロより弱いということなのだ。つまりシロがクロより上という事になるのだ。

僕は「とりあえずは自己紹介から、僕はタロウ、よろしく」と言ったら。

「私の名前は、ガウェインです。こちらこそ、これから宜しく」そう言ったのだ。それからシロが「お父さん、アリシアの場所分かる?」

ガウェイはクロの方を見ると「その子は、シロの妹?」と尋ねてきていた。僕はクロの方をみると、クロは静かに首を横に振るのである。

僕は「はい、クロは僕の妹みたいなものです」と言うと「そうか、分かった。そのアリシアが囚われているのは地下牢だ」と言ってくれたのだ。

シロが、その言葉を聞いた後、シロの身体が淡く輝いたかと思うと、シロの体から、黒いモヤが出てきたのであった。

僕は驚きの声を上げてしまった。クロは、「大丈夫だよ。タロー。シロの闇属性は、自分の中に居る悪い心と対話するの、だから心配無いの」とクロが説明してくれる。クロの説明を受けて納得して僕は安心したのだ。だがクロが言う「タローが闇を纏ってた時と同じだから怖かった」と言う言葉で思い出したのだ。僕が闇に飲まれた時にクロは、必死に抵抗していて僕に抱きついていて離れようしなかったのだ。その時はシロがクロを止めようとしなかったのでシロに聞くと「クロちゃんの事は任せてください。シロの大切な家族なので」と真剣に話してくれたのである。シロはクロに対して家族の情を持っているようだ。僕がそんな事を思い出している間にシロとクロの周りに居た人達から驚きの声が漏れるのが聞こえてきたのだ。シロが闇をコントロールし始めたのである。シロが闇に語りかける度に、クロが闇に取り込まれないようにしていた。

シロの呼びかけで出てきた黒龍はシロを背に乗せた後、クロを乗せて、アリシアの元に向かってくれる。

僕とクロとガウェイさんは、シロの案内のもとアリシアの救出に向かったのだ。

僕は、アリシアの元に向かう途中に、クロの父親がなぜ、こんなに早く駆け付ける事が出来たのかを聞くことにしたのだ。クロが言うには「お父さんは、ずっとタロウの近くにいるよ」と言われて、とても驚かされた。僕はクロの能力を考えてみることにしたのだ。まず、僕達がアリシアの元へ向かう前にアリシアの居場所は、わからないと僕はシロに言っていた。

それなのに、アリシアの元に向かっていた途中でクロがシロの元に現れるということは、この移動の間にシロは僕達と別れてからアリシアの元へ辿り着くまでの時間を計算して、ガウェインさんの所まで行くように伝えたということになるのではないだろうかと考えたのである。シロとシロの能力を考える限り可能だと思えたのだ。そこでクロに質問をすると「シロのお母さんは時間を司る神様でシロとは仲良しなんだ」と教えてくれたのである。そのおかげで僕達は無事に合流を果たすことができたのであった。

シロが「ここが地下牢」と案内してくれたのである。僕達はその場所にたどり着いた途端、驚愕することになった。そこに捕らわれていたのは、なんとアリスとその仲間達と『紅の狼』のメンバー達であった。僕達は、この状況についていけないのだけどシロが「シロは、ここで、お留守番する」と言ってくれたので、シロをその場に残しアリシアを助けに向かうことになった。シロの話では、『闇の巫女』とアリスは同一人物であるということだ。そしてアリスと仲間たちは、『黒の教団』の幹部の者達に騙されていて、僕達を襲ったと言うことだった。クロは、アリスと面識があるので、彼女のことを見て複雑な気持ちになったみたいである。

僕はクロと一緒にアリス達を救出するとシロに頼んでアリシアの元へ向かってもらったのだ。僕達はガウェインさんとクロの父娘とアリシアを救い出した後に地上に出ることにして行動を始めたのである。しかしそんな僕の行動をクロの一言が遮ってきたのであった。

「お父さん、この建物、変。多分、シロの言ってること、合ってる。この建物の地下に何かがある」と言って、クロは僕に耳打ちをしてきたのだ。僕もそのクロの言葉で確信したのだ。クロの勘の良さは、父親の血を濃く受け継いでるからだと思うのである。クロはこうなることをわかっていて僕達に知らせてくれてたんだろうな。

僕達は階段を見つけて降りていこうとしていたのだけど、クロが突然僕達に制止をかける。そして僕達はクロの指示に従う事に決めた。クロが何を感じ取っているかわからないけどきっとその言葉が正しいと思えるからだ。クロの案で僕はガウェインとアリシアを連れて上の階へ上がることにした。クロにはアリシアを守るように指示を出したのだが、僕の指示を聞かずに一緒に上がってきたのである。

クロと僕とガウェインは3人で階段を上がっているのだが、先程感じ取った感覚に違和感を覚えながら歩いていく。この空間には何かあるはずだ。その根拠は僕の頭の中に入ってくる情報があまりにも鮮明すぎるからだった。この世界の魔法体系では有り得ない程の魔力の流れを僕が感じているのだ。これは僕の直感なんだけど、僕が元いた世界の法則に則っているんじゃないかと、ふと思ったのだ。そう思ったのには理由があって僕のいた世界で、この世界でも存在していると思われる、スキルが存在しているのだ。僕はそれをスキルと呼んでいるのだ。

僕はシロとクロと初めて会った時の会話を思い出すのである。その時にシロとクロは僕に対して「私の能力、凄いでしょう?」と僕に自慢してくるのである。そしてその言葉を聞いた僕は、「うん、凄いな。僕の世界にも同じものがあるよ」と答えたのだ。それからクロの口から僕のいた世界の名前が出ていたのを僕は思いだす。そう考えると、この世界は僕の元の世界に似ているんだ。そう考えたのである。

僕達はシロとクロと合流してからシロの案内で地下へと向かって進んでいく。クロの話では、この場所は地下30階に繋がっていると言うのだ。そしてシロが「ここから先にはクロも付いていかない方がいい」と言い始めたのである。僕はシロにどうゆう意味かと尋ねてみたのだが返事はなかった。クロの方を見るのだが、僕と同様に困惑していたのだ。

クロが僕とガウェインさんに向けて「ここは、クロとシロの生まれた場所。シロとクロの母さんはこの世界とは別の場所で暮らしていた。そのシロとクロが生まれた場所はこの先にある」と言ったのだ。

シロが僕達の方に振り向いてきて、「私も、クロも、ここから先は、まだ足を踏み入れていない」と言ったのだ。つまりこの先から感じられる強大な力はシロやクロよりも上と言うことになる。僕とクロはガウェインに視線を移す。そして僕はガウェインに確認を取ることにした。すると「私達より上の存在なんて、私は聞いたことがないぞ」と言われたのだ。僕はガウェインの言葉を聞いてから、クロの両親であるガウェインが聞いたこともない存在となると、それ以上の強さを持つ者など想像ができないのである。

クロが言う「シロが言うには、ここから先が危険だから、ここで待ってた方が良い」と言い出したのだ。確かにこの先の力の正体がわからない状態では危険な可能性もあるかもしれないので、クロの意見を採用する事になったのである。クロも「クロの予想、当たれば、シロも、クロも勝てない」と悔しそうに言っていた。

僕達がそんなやり取りをした後、しばらく歩くと目の前に大きな扉が姿を現したのである。その瞬間に僕は、ここだ! と思い声を上げてしまったのだ。シロが驚いていたが僕はシロを気にする事なくそのまま進むことにしたのだ。僕はクロから聞いた情報を自分の中で噛み砕いていたので考え込むように歩を進めて行く。僕の中で考えていたことは「やはり異世界転移してるな」という結論に至ったのだ。何故ならば、僕の元のいた世界でもゲームというものがありそれは架空のものなのだが似たようなものは存在しているのである。そしてゲームでも同じような仕組みがあったのだ。レベル上げをする為にモンスターを倒したりするのだが、経験値を手に入れることが出来る場所というのがダンジョンと呼ばれているものだ。この世界に来てからはそのような施設に入った事はないのだけどこの扉を見た時に思い出したことがあるのだ。それにあの時見た映像は夢じゃないと思っているのだけどね。ただ一つだけ疑問なのは、なぜここにいる人達はこんな所に居るのかという事と、シロが僕に言った『神域』という言葉についてである。僕は、その事をクロに伝えて、シロとクロの故郷のような物だからこの扉の向こうに進めばいいのではないかと提案してみた。

シロが僕の提案に対して嬉しそうな表情を浮かべていたのだけど、僕が「どうした? 」と問いかけると「う、ううん。なんでもないよ」と慌ててごまかすように話していたのだ。

僕がクロにその事を聞くと、答えてくれたのである。シロとクロの生まれ故郷は特殊な場所で、普通なら誰も入る事が出来ないそうだ。だから僕がこの扉に入って良いのか悩んでいたみたいで僕に許可をもらってから中に入るつもりのようであったのだ。それならシロとクロが僕に許可を求めてこなくても問題無いじゃないかと僕は思ったのであった。

僕がシロに向かって、シロの質問は気にしなくていいんだよと伝えたのだ。シロは僕の言葉を聞いて喜んでいて僕に抱きついてきたのだ。僕はそんなクロとシロのことを優しく抱きしめてからガウェインさんとアリシアにも声を掛けることにした。ガウェインさんとアリシアには少しの間ここで待っていてもらうために僕はクロとシロと一緒に行こうとしたのだが、ガウェインさんが同行を申し出たのである。

ガウェインさんに「どうして僕にそこまで協力してくれるんですか?」と聞くとガウェインさんが僕を真剣に見つめながら「君の事は気に入っている。それだけじゃダメかな」と言ってくれたのだ。その言葉を聞いた僕は「嬉しいです」と笑顔で答える。僕が「それじゃ、行きましょう」とみんなに呼び掛けようとした時にシロに制止されたのだ。シロが「この扉の結界を破る必要がある」と言ってきたのだ。

その言葉をクロは聞いていたらしく「クロも、その方法しか知らない」と呟くように言ってきたのだ。僕は、そんな二人を見てクロとシロが本当の親娘であることを改めて実感する。そして、シロが言う「シロとクロがこの扉の中に入れないのでクロのお母さんの力を借りて扉を破壊することにする。拓斗は扉の中に入ってから、クロとシロの援護をして」と言うのである。僕はわかったと返答をしたのだが「えっ? どういうこと? 僕達だけで行くんじゃないの」と聞き返してしまったのである。するとクロが「シロが、シロのお母様にお願いしたら、多分できると思う。シロもクロも、お父様とお姉ちゃんには会えるの久しぶりなので」と僕に教えてくれるのであった。

クロは、自分の家族に会うことを楽しみにしているようでとても明るい顔をしている。クロの話によるとこの先にはお兄さんとお姉さんがいるらしい。シロから聞かされて、クロがすごく喜んでいた。お爺さんやお婆さんも元気で暮らしているみたいで良かったと思ったのである。

クロとシロとガウェインとアリシアは僕の方を見ながら待っている。クロとシロが、これから『神の聖域 』を解除するので僕だけが先に行ってほしいと言うのだ。

シロが、クロから貰った剣を右手に持ち左手で手のひらサイズの大きさの石を握り始めると、僕の目の前の空間が一瞬歪んだような気がしたのである。僕には空間が捻れたように見えたので不思議に思いながらシロを見るとシロの身体に金色の光と銀色の光が混ざり合うようにして入り込んだのだ。そして僕の方に振り返ったクロとシロが、僕の目には見えなかったがお互いの拳を軽く当てる動作をしていたのである。それから僕に「もういいから」と僕を急かしはじめたのである。

クロがシロを手招きして二人で扉の方へ歩き出す。ガウェインさんが「君たちだけに任せて悪いな。私の実力が足りなければすぐに戻ってきていいから」と申し訳なさそうにしていたのだ。僕とクロとシロは顔を見合わせてお互いに笑顔になったのだ。

クロとシロはガウェインの方を振り向くと「お父さん大丈夫」と言いながら笑みを見せる。ガウェインはその言葉の意味がわからなかったのであろう。戸惑っていた。そしてクロとシロは、僕に「クロが扉の中に魔法で道を作る。シロとクロは一緒にその中に入る。その後シロは、拓人とクロを守る為の盾になってくれる。クロが拓人を扉の中から助け出して戻ってくる」と言い始めたのだ。僕は、二人の話を頭の中で整理してから「ちょっと待って」と慌ててクロとシロに声をかける。僕はクロとシロに「この中に敵は存在するの」と聞いてみる。するとシロは、この扉の先には『魔王城 』があると言い放ったのだ。その話に僕は驚愕した。僕はこの世界に来てからずっと平和に過ごしていたと思っていたからだ。それがシロから出てきた言葉に嘘は無いのだろうと感じたのだ。僕は、この先に進む前に確認しておかなければならないことがあると思い、シロに「クロが、扉を開けるまで時間はあるよね」と聞く。クロが「あと、数分程度だと思う」とクロはそう答えてくれたので僕はクロとシロに向かって「ありがとう」と伝える。

それから僕は、クロに質問を始めたのだ。クロの両親は生きているのかと聞いたのだ。するとクロが、「ううん、違う」と言ったのだ。僕がその答えに対して疑問に思っているとシロが「クロとクロのお母さんはこの世界のどこかにいる。そしてクロの父親は魔王として召喚された人」と言ったのだ。

僕が、クロに「それはどうしてわかるの?」と聞くと、「クロの父親がこの世界に居た時の記憶はクロの中にある」と答えてくれたのだ。僕はその言葉で一つの疑問が生まれたのである。何故ならば、シロが言うクロの父親である「魔王 アーサー」が異世界から来た人物であるのは確かである。その人物が「元いた世界に帰る事はできないのか」という事である。僕はクロが僕と同じ世界から来ていると思っている。それならば元のいた世界に帰る方法が有るのではないかと考えたのである。しかし、この世界では「異世界への行き来の方法」というものは確認されていないと僕はシロ達から聞いた事がある。だがこのシロ達の言葉が本当かどうかを確かめる術がないのだ。僕はクロが嘘を付いている可能性を考えてしまう。

僕が考え事をしていてシロに何も話しかける事が出来ずにいたら、クロがシロに近づき「お父様の所に行ってもいい? 」と聞いていたのである。クロが心配そうな表情を浮かべていたので、シロが優しい声でクロの頭に手を乗せると、クロの表情が一変したのだ。クロは、シロが頭を撫でてくれて嬉しそうな表情を浮かべていたのである。シロとクロは何かの繋がりがあるように僕には見えたのだ。

僕はシロに、クロにクロの母親の居場所がわかった事を伝えたのだ。クロが僕に向かって感謝の言葉を伝えてきたのである。僕はシロにもクロと一緒に行くのかを聞いたのだ。クロがシロと離れたくない気持ちが痛いほど伝わる。そんな二人を見て僕はシロに対してクロを連れて行ってあげてほしいと告げる。僕としてはクロの母親がどのような人物か気になっているし、シロにクロの母親と会わせたかったのだ。クロは、シロと一緒がいいのだけどシロが困ってしまうから我慢しようと自分に言い聞かせるようにしていたのだ。

シロがクロの頭を撫でると、クロがシロに抱きついたのである。クロはシロから離れようとするけどなかなか離れることができないようだった。僕はシロとクロを抱きしめてからクロと手を繋いであげたのである。シロが僕に笑顔でお礼を言いながら、クロのことをよろしく頼むと言ってきたのである。

シロとクロがお互いに見つめ合い「シロ、また後でね」と寂しげな表情でシロに告げていたのだ。シロが僕に視線を向けると、僕はクロの手を取り「シロのこと頼んだよ」と言うとシロは微笑みながら僕の方に歩み寄ってきた。シロは僕に抱きつくとその身体が淡く光だし次第に消えていくのである。

僕はシロが消えて少し経ってから、クロに声を掛けてみたのだ。「お母さんに会ったのかい」と言うとクロが首を縦に振り、そしてこう答えてくれたのである。「拓斗、お父様が呼んでいるよ」と言うのである。そしてクロが僕の前に出ると「ここだよ、お父様が居るところは」と僕に伝えてきたのである。

クロが、自分の目の前の空間に指をさすと、そこに扉が現れたのだ。クロにその扉の先に行けと言われた僕はその扉の先に進もうとするが、僕は、自分がこの扉の中に入った後のことが不安になっていたのだ。クロにこの扉の中に入って大丈夫なのかと僕は尋ねると、クロが「大丈夫」と言ってきたのである。僕はクロに言われるがまま扉の中に足を踏み入れるのであった。そして扉を潜った先には大きなベッドがあり、その傍に誰かがいる。その人の姿を見てみると、その人は、この世界に来てから一番最初に出会った人物でもある『アーサー王 』の姿であったのだ。

僕はアーサー王の外見を一言で表すなら、美しいと表現するしかないと思う。金髪の長い髪で顔つきも整っていて肌も白く綺麗なのだ。そして身長は175センチぐらいでスラッとした体型をしている。

そんな姿に見惚れていると僕の元にアーサー王が来たのだ。彼女は優しく僕に語りかけてくれるのだが僕の耳には何も聞こえない状態だったのだ。彼女の顔を見ていたら何故か涙が出てしまったのである。

そんな時に、ふと「アリスの事を思い出すんだ」と思ってしまったのである。その言葉を思い浮かべたら僕が感じた心の痛みや苦しみや孤独感が無くなっていったような気がした。

そういえばと思い出すことがあったのである。そう言えば僕には「母さん」と呼ぶべき存在がいない事に気づいたのだ。だから僕には本当の母さんの顔が思い出せないのだ。母さんは元気でやっているだろうかと母さんのことを考えたのであった。母さんが今どうしているかとか僕が知らないところで僕が心配していないだろうかと思ったのだ。僕はそう思った瞬間に心が締め付けられるような感覚に襲われて、苦しくなってきたのである。

僕は目の前にいる『アーサー』の姿をした人を見たときに、彼女に惹かれるものを感じていたのだ。僕もこんな風になれればいいなと思ったのも確かだ。そして彼女が僕に手を伸ばしてきた。その手が触れただけで僕の中に何か温かいものが流れ込んできたのがわかり驚いてしまう。

僕の身体が宙に浮かび上がっていくのが分かったのだ。彼女は僕の方を見ながら微笑んでいるのだ。僕の意識がだんだん遠退いていきそのまま僕は眠たくなってしまい目を閉じたのである。すると何処から声が聞こえてくる。「お疲れ様」と優しい女性の声で、僕に労りの声をかけてくれた。僕は何となくだがシロのような気がして目を開くとそこには先程まで居なかったはずのクロが居たのだ。クロは泣いていたのである。そしてクロが僕に駆け寄り僕に抱きついてくる。

僕はクロの背中に腕を伸ばし、ぎゅっと抱きしめる。そうしないとクロがそのまま壊れてしまいそうな錯覚に陥って、僕は無意識に力一杯クロの事を抱きしめていたのだ。

暫くすると、僕に抱かれているクロは落ち着いてきていた。

そして、僕がクロの方を見るとクロは僕に向かって笑顔で話してくれたのである。「お父様に、クロは拓斗と一緒にいていいよって言われたの」と僕にそう言ってくれたのである。その言葉を聞いた僕はクロを抱き上げて笑顔で「良かったね」と言ったのだ。すると、僕とクロの体が白い粒子に包まれ始めたのだ。僕は「シロの所に帰れって事かな?」と思っていると、クロが笑顔で僕に抱きついてきた。その笑顔を見て僕がほっこりした時だった。僕の頭の中に直接女性の言葉が聞こえてきて、それが「貴方をクロの旦那さんにします」という言葉だったのだ。僕は、意味がわからなくて、「はい?」と言い返したのである。

クロは不思議そうな表情をして首を傾げていたが、僕は突然の出来事すぎて「どうして?」と言った。「だって貴方がクロと一緒になるんでしょ?」と言われて僕は頭が真っ白になりそうな状況に陥ったのだ。そして僕はクロの頭を軽く撫でるとクロは笑っていた。僕はクロと二人で部屋に戻る事になった。クロは「また会えるよね?」と不安そうな瞳をしていたのである。そんな姿をみた僕は「大丈夫だよ。僕はクロのお兄ちゃんだから、必ず会いに来るよ」と言うとクロの頬に一筋の涙が零れ落ちたのだ。クロはその事に気づいていなかったみたいで、クロが泣いた事が分かると僕は、クロを抱きしめたのである。僕は「絶対にクロを迎えに行くからね」と言ってクロから離れたのだ。クロの手を握りシロのところに行こうとするとシロとクロの母親らしき人物が現れたのである。

僕が二人に近づくと二人は「クロの事を頼みますね」と言ってきたのである。僕は、シロにクロの事を伝えると「お姉様が一緒に居てくれるなら安心です」と言っていたので、僕はシロの頭を撫でながら「また、クロに会いに来るよ」と言って、クロの母親が指差した方向に歩き出したのである。シロとクロはお互い見つめ合って「また会おうね」「うん」と言うと、僕は、二人の姿がどんどん遠くなっていくのを見送るのであった。

それからしばらく歩くと大きな建物が見える場所に辿り着いていた。

その場所から見える街並みは綺麗で、とても良い街に見えるのだ。

僕はこの場所は安全だと感じるのでゆっくりと建物の方に近づいていったのである。そして僕は、建物の入口のドアを開けると受付と思われる人がこちらに向かって歩いてきた。

その人は黒髪の女性であり僕がこの世界で初めて見る人物でもあった。

そしてその女性は僕を見るなり笑顔を見せて「お疲れ様でした。勇者殿」と言ってくれた。「え?どういう事でしょうか」と質問すると彼女は丁寧に説明を始めてくれるのだがその内容に驚く事になるのであった。その話を要約するに僕の事を知ってると言うのだ。しかも、魔王軍との戦闘も知ってるとのことだったのだ。彼女は僕のことを知っていただけではなくて魔王軍との戦いの内容も理解していたのだ。

「私は貴方のことをよく存じ上げております」と言われた僕は驚いた表情をしているとその女性が話しかけてきたのである。彼女の名前は『サラ=エルスフリーデ』と言いこの世界のことに精通している人物であったのだ。彼女の見た目を説明するなら金髪でロングヘアに少し茶色が混じった髪をしていた。年齢は20歳ぐらいでスレンダーで身長160センチぐらいの人であった。その人から色々な話を聞いた。まずこの世界に召喚されたことから始まり僕の名前から性格に家族構成、趣味など多岐にわたって僕のことを知っていて、僕の事を本当によく知っている人物なんだなと感じたのだ。僕は彼女と話をしていると、いつの間にか仲良くなっていたのである。彼女は僕に好意を持ってくれていて僕が「もしよかったら僕と結婚してくれませんか」と聞くと笑顔で了承してくれて、僕達はお互いに「よろしくお願いします」と握手をするのであった。そして僕と彼女は恋人同士となったのである。

そして僕は彼女に案内されて宿屋に向かうことになるのだが、僕はまだ知らない事があると気づくのは、まだ少し先の話となる。そうそれは、僕には記憶がないのである。僕には何もないのだ。何もかもわからないのだ。自分のこともわからなければ、僕の親はどうなっているのかも分からない。だけども一つだけ確かなことがある。それは僕の恋人が目の前に存在しているということだ。僕にはそれだけは間違いのない事だと言えるのだ。

その日は、宿屋に泊まって、次の日にサラと街の観光を楽しむのである。

僕はこの街にやってきて最初に訪れた広場に来ていたのだ。この広場はとても広く、その中心には大きな木があってそこがこの街のシンボル的な場所になっていた。その木の下で、僕とサラは待ち合わせをしたのだ。僕と彼女が手をつなぐと僕達がデートをするために作られた世界にいるかのように思えるのだ。そして僕と彼女は手をつなぎ街を歩いた。

この国の名前は、『ルイント共和国』といい、ここに住んでいる人達も、この世界では珍しい『亜人』と言われる人種で構成されているらしい。ちなみに、この世界にも普通に人間が暮らしていると聞いた。そんな会話をしているうちに僕は自分が住んでいた場所はどこなのかとか、なぜ記憶を失ってしまったとか色々考えて不安な気持ちになってしまったのである。

そして彼女は僕が元気がなくなっていることに気がつくと「そんなに落ち込まないで下さい」と励まされてしまったのだ。

そうすると彼女は、あるお店に連れて行ってくれて、その店の店主に僕達のことを紹介すると言って連れてきてくれたのだ。僕がお店で買い物をしようとするとその店員が、「いらっしゃいませ」と言い接客してくれたのだ。そして僕は彼女の勧めで買物を始めるのだが、彼女のおかげで楽しく買い物ができたのだ。

僕はサラが選んでくれた商品を手に持ち「ありがとう」と言うと彼女は微笑んで僕に「貴方に似合うと思いますよ。それにこれを身につけている方が幸せになれると思うんです」と言って、お守りを渡されたのである。

そして、お会計を終えると、サラが「私の家に来て下さい。両親に紹介したいのです」と言うと「いいよ」と答えた。僕達は、そのお店を後にして、街中を散歩する事にしたのだ。すると僕は、一つのアクセサリー屋を見つけるとそこで足を止める。そこには、ネックレスやブレスレットや指輪などの宝飾品があったのだ。僕はそれを見た瞬間に胸が苦しくなった。なぜかは知らないけども懐かしさを感じてしまったのだ。

そして僕が、店内に入り、見ていると一人の少女と目が合った。その目は透き通っていて吸い込まれそうになるほどの美しさを持っていたのだ。僕はその美しい目に見惚れて動けなくなっていたのである。

その僕の視線に気がついてその美少女はこちらを向く。僕の顔を見るなり「拓斗?」と口にして近寄ってくる。僕は、いきなり僕の名前を呼ばれたことで戸惑っていると、その子は僕に飛びついてきたのである。その女の子の体に触れるのが、すごく久しぶりのような感じで温もりを感じることが出来たのだ。僕は嬉しくなって彼女を力強く抱きしめたのだ。

その少女は「拓斗に会えて嬉しいよぉ」と言って涙を流していたのである。そして僕はその子の顔を改めて確認してみるとその子は僕と同じ高校の制服を着てることに気づいたのである。そう、僕が通う学校に転校してきた生徒なのだ。僕が「どうして僕が、君を知っているんだ」と口にすると、「拓斗が覚えていないのは仕方ないよ」と悲しげな表情を浮かべていた。僕は「どうして」と聞こうとした時にその少女は僕の唇にキスをしたのである。僕は突然の出来事に固まってしまっていた。

その少女は、笑顔になり僕に話し始めるのだ。「私の名前は『天宮愛奈』って言うの」

その名前を聞いた時僕は驚きの声を上げる。僕は、思い出したのだ。僕はその子と一緒に文化祭の準備をしていたのである。しかし僕は当日になって体調が優れず早退したのだが。

その翌日僕は風邪を引いて学校に行くと隣の席の女の子と会話を交わしているのだ。僕は「君は誰だい?」と質問をするが彼女は「もう忘れちゃったの?」と言ってきたので僕は、「い、いやその、僕は君と面識が無いんだけど、その僕が君と友達だったのかい?」と聞いてみると彼女は「違うの?」と言ってくるので僕は、この子は、何か勘違いをしていると思い必死で説得しようと言葉を探す。

僕は、「あぁーごめん、ちょっと話が急すぎて整理ができないから」と言うと僕は、深呼吸をして心を落ち着かせることにしたのだ。僕は、その女の子から少し離れることにした。そして、冷静に考えてみると、僕の記憶がおかしい事に気づき始めていたのだった。

その日の夜のこと。僕の夢に一人の少女が出てきたのだ。その子は、白いワンピースを着ており、金髪の髪をしている可愛らしく清楚な子だ。その子の事を僕は見たことがあると思ったのだ。だけど名前だけはどうしても思い浮かばないのだ。その子が、僕に話しかけてきたので僕が「なんですか」と返事をしたら、僕の事を指差してこう言ったのだ。

「拓ちゃんは今のままで良いんだよ。そのままで居て欲しいの。だから私はいつまでも見守ってるからね」

と言って消えていく。僕は、その時に目が覚めたのである。そして隣を見ると寝ているはずの、愛奈がいなかったのである。

朝になった。僕が目覚めると、昨日一緒に過ごしたサラがこちらを見て笑っていたのである。

僕は、恥ずかしくなり布団の中に潜り込むと、サラが優しく頭を撫でてくるので僕は照れ隠しをするかのように起き上がり着替えをする。その横でサラが笑顔を見せて待っていたのである。そして、準備を終えて宿を出るとサラは、僕に手を差し出してくるので、僕はその手を握り締めて歩き出したのである。

その手には彼女の温もりが伝わってきており、僕はその手の暖かさに安心感を覚えたのであった。

それから僕と彼女は街を出て森に入っていく。僕達が森に入ると、アリスは姿を消しており僕達は警戒を強めながら進んでいたのだ。僕達の周りにはモンスターが出現して襲ってきたのである。

「拓人さんは下がっていてください。ここは私が対処します」

僕は、その指示に従い後方に下がる。僕の代わりにアリスが戦うことになるのだがその実力はかなり高く簡単に倒していくのである。僕も一応攻撃に参加しようとして、剣を振り回すが全く当たることはなく逆にアリスが僕に向かって魔法を放ち、その一撃で僕は吹き飛ばされてしまったのである。そんな事をしている間にサラは、その戦闘に慣れてきたのか次々とモンスターを屠っていく。

サラは強いのだ。サラと出会ってから数時間でかなりの強さを秘めている事がわかっていたが、彼女の本気の力は僕なんかが敵うはずがないほど圧倒的であったのだ。

僕は地面に倒れこみ「サラすごすぎるよ」と言うとサラが僕のもとに駆け寄り、回復魔法をかけてくれるのである。すると僕達は森の中を歩いていたのである。僕がサラの手を取り歩いているとその手が強く握られたので僕は彼女の方に顔を向ける。彼女は頬を赤らめ僕のことをじっと見つめていたのである。僕はその瞳を見てしまうと何も言わずにただ黙り込んでしまい、しばらくすると僕達は目的である場所についたのである。その目的地というのはサラの父親の墓標だそうだ。僕はその墓に案内され、花を置いて手を合わせるのである。

「お父さんは私の恩人です」

彼女はそう呟くと僕の手を離すことなく、ずっと繋いだままの状態でいるのだ。僕はそんな彼女に感謝しながら森の奥にある村を目指すことになった。そして森の奥に進むと村にたどり着くのだが、僕とサラが村に入った瞬間に村の人たちは、怯えた表情をして武器を構え始めたのだ。するとサラが一歩前に出ると村長らしき人物が出てきて「この方は悪い人ではない。どうか武器を収めてほしい」と言うと皆は武器を収める。すると、村人達は「勇者さま、魔王を倒した勇者さまだ」「お帰りになられましたか」などと言い出して、まるでお祭り騒ぎになっていたのである。

僕はサラに聞くと、この村は魔族と人間の混血児が多く住んでおり、その人達は、人間を恐れていたがサラの父が間に入り交流を持ち平和に暮らすことを目指したらしい。その結果多くの種族が集まりこの村ができたようだ。その話を聞き終わる頃に、僕はあることに気づく。それは僕のステータス画面に、新たに文字が追加されていたのだ。

そして僕は自分のスキルを確認するのだが、やはり、新しい力が追加されたようである。その力は、『絆召喚』『絶対領域』『神速』という三つの力が追加されており、さらに、新しく取得したと思われる二つの能力について説明が表示されたのだ。一つ目については、『仲間が近くにいなくても、その者の加護を持つ者を呼び出すことができる』というものだった。

そして二つ目の能力は、自分が認めた者と魔力を共有することで、その共有する相手には自分の力を一時的に貸し与える事ができるようになるというものである。そして最後の三つ目は、自分の指定した人物や物、もしくは自分自身を移動することができるというものであった。そして、新たな力で試すと『神速発動』『神速転移』と頭に思い浮かぶと、視界は白くなり気がつくと僕はサラの前にいて、目の前に僕の手が現れているのだ。僕はこの現象が何を意味しているのかわからなかった。だがこれは間違いなく使えるものだと感じ取ったのだ。するとサラは僕に「何をしたんですか?」と言ってきて、僕がどう説明をすればいいのかわからずにいると彼女が、「もしかしてその技は、勇者にしか使えない特別な技じゃないんですか??」と言ってくるのである。そして僕が、肯定し「そうなのかもしれないね」と言うと、その話を聞いた村人は、大声で笑い始めるのである。

僕が「なぜ笑う?」と口にすると村長は「いや失礼しました。あまりにもその力が強力すぎたので笑わずに入られなかったのです。それ程までにそのスキルは規格外のものなのでございます。貴方はもうすでに最強の戦士であり賢者であるということですね」と言ってくるのだ。僕は意味が分からず首を傾げていたのだが、それをみたサラが口を開く。

「拓斗さんの本当の凄さをわかっていない人がたくさん居ると思いますけど拓斗さんはとても強くなったんですよ」

僕は、「どうしてサラはそんなことがわかるんだい」と言うと「私は、拓斗さんが勇者であることを忘れてないよ。だって私を助けてくれた時拓斗さんはこの世界の人でしょ?拓斗さんの髪の色もこの世界じゃ見慣れたものだもの」と言ってくれたのである。僕はその事を聞いて少し嬉しくなり、照れ隠しをしながら「そういえば、僕が勇者だといつから知っていたんだ」と質問すると、

「拓斗さんが、倒れたときにこの人が勇者様だっていうことが、わかったから、私は拓人さんの事をずっと信じていたよ。拓人は、私の大事な人だから」と答えてくれたのだ。僕は、そんな彼女の言葉を聞くと「サラ、僕は君に出会えて本当に良かったと思っている」と言って彼女を抱きしめるのだった。

サラが僕の手を取り引っ張って行くのでついて行きながら歩くと、サラは立ち止まりこちらを向くと笑顔を見せるので、「なんだい?」と僕が聞いてみると彼女は答えたのである。

「今度二人で一緒に冒険してみようよ。そして色んな世界をまわろう」

その言葉を聞いた僕は「ああ、是非お願いしたい」と言うと彼女は、その提案を受け入れてくれて早速明日にでも行こうという話になるのだった。僕は、彼女に「これからもよろしく」と伝えると彼女からキスされる。その行為は、恥ずかしくて僕は顔を背けようとしたがサラが僕のことを掴んで固定してきたのだ。そして僕の口を塞いで来ると、彼女は僕の唇を奪うように舌を入れてきたのである。

僕は、息が出来なくなり意識が飛びそうになるので彼女の胸を押すと「ぷはぁ」と声を上げながら離れることができた。

「な、なにするんだよ。びっくりしただろう」

僕は動揺しながら言うと「拓人君の初めては私が奪っちゃった」と言ってきながら照れているのか少し赤い顔をしている。僕は少し困っているのに気づいたのか「ごめんなさい。やっぱり嫌だよね」と落ち込むサラに対して「そんなわけないじゃないか」と言うと安心していたのだ。

僕達は宿に戻り夕食を食べて今日一日の出来事を思い出しながら明日はどこに行くかを決めるのである。僕とサラの仲は深まっていて、僕達が仲良く話をしているのを見てアリスはこちらを見ていたのであった。

翌日になった。僕は目を覚ますとサラは隣に居なくて慌ててベットから出て部屋を出て、彼女の姿を捜すが居なかったので、先に行っていると思い、急いで服を着替えてから部屋を出る。そして食堂に向かうとアリスの姿が見えたので僕はアリスの隣に座り「おはよう」と言うと彼女はこちらを向いたかと思うと僕に抱きついてきてそのまま押し倒されてしまったのだ。僕はその事に驚きを隠せずにいたが彼女は「えへへ、拓ちゃん、やっと起きてきた」と僕の胸に顔を埋めて言ってきたのである。僕はその言葉を聞いて頭を撫でると彼女は幸せそうに微笑むので僕達は食事をすることにした。食事が運ばれてくるまでの間、僕は彼女と話をしている。

そして彼女は、僕に昨日の話の続きをしてくる。

「昨日の話の続きなんだけど、拓斗君は魔王と人間のハーフのことについて知ってる?」

「いや、知らないけど、その魔王が何か関係あるのか?」

「実はね。私のお母さんはその、魔王と人間の間の子らしいんだ」

その言葉に驚いたが「そうなんだ。その、サラが魔王の子供なら人間達は恐れられるんじゃ無いのか?」と僕が口にするとサラは首を横に振ると「ううん、そんな事はないのよ。それにお父さんと出逢う前は、人間達から怖がられてたみたいだけど今は人間達に優しく接して、今では皆から慕われていて、尊敬されているの」と言ったのだ。その話を聞き終わる頃に朝食が運び込まれてきた。僕はアリスとご飯を頂く。彼女は、食べ方が可愛らしく小動物が餌を食べる姿を連想させるくらいであったのだ。アリスは僕を見つめながら頬に米粒をつけていたので僕はそれを取ると、僕はそのお返しに、僕の指に付いていたソースを舐めると彼女は真っ赤な顔になり「な、何してるの」と言いながら俯いてしまうので「ご馳走さまでした。可愛いかったよ」と僕が答えると彼女はさらに赤くなり下を向いてしまったのだ。そしてそんな会話をしていると後ろからは殺気を感じていた。僕の後ろに座っていたサラが不機嫌そうな表情をしていた。僕がそんな彼女の様子を伺いながら、サラにどうしたら良いのか聞こうとする前に彼女が立ち上がり僕の耳元でささやく。「浮気はダメですよ拓斗さん」と怖い口調で言って席に着くと僕は、そんな彼女を見て「サラが、僕の嫁になってくれないか」と言ってしまい、彼女が「もう、ばかっ」と言ってからまた顔を赤くしてしまう。そんな事をやっている間に時間はあっという間に過ぎていくのだ。

それからすぐに村を出発することになりサラは村人達から感謝の印として、沢山の食べ物をもらい出発することになった。村を出て少しした時に僕はサラにある質問をする。

「ねぇ、サラは魔王の子供のはずなのにどうして村人達から好かれているんだ?」

その質問をすると彼女は、自分の生い立ちを語り始めてくれるのである。サラは、小さい頃両親に捨てられたようで孤児院で育ったらしい。その後村人達からとても親切にしてもらえたと語ってくれたのだ。サラが育った村では、魔王の子供でも普通に接することができる環境だったので村人達も受け入れやすかったというのだ。そして魔王が人間に危害を加えていないことを知っていて、魔王と人間の子供は、この世界に必ず一人生まれることからその者はとても強い力を持って生まれてくると言う言い伝えがあるのだという。

そんな話を聞いていて、僕は疑問に思うことがあってサラに尋ねる。

「じゃあなんでその力は引き継がれなかったんだ?そうすればもっと世界の脅威を無くせたはずだよ」

サラがその質問にどう答えるのだろうかと待っていると、

「拓斗君が思っているとおりだよ。それはね、力が強すぎるんだと思うの。拓斗君だって私と同じでスキルが三つだけだと思うけど、私より遥かに上の実力を持っているしね」と答えたのだ。僕は彼女の説明に納得し理解することができた。サラの話が終わりしばらくして休憩をとるために一度止まって休んでいるとサラが、「拓斗君ちょっとこっちに来てくれるかな?」と僕に声をかけてきた。僕は、サラが呼んでいる方へ行くといきなり僕の唇を奪ってきたのだ。そして僕は、驚いて何もできなくなってしまう。そんな様子を見てサラは「これで私は拓斗君の物だよね。もう誰にも拓斗君を取らせないから覚悟しててよ」と言うので僕は、「俺の側にいてくれるのかい」と問いかけると「もちろんだよ」と答えてくれたので嬉しく思い抱きしめようとしたら「じゃあそろそろ行きましょうか」と言って僕から離れて歩き始める。そんな彼女に僕は追いつき並んで歩くのである。すると彼女はこちらを向くと、

「あのね。拓斗君は私だけの勇者様であって他の人の勇者になんてなっちゃ駄目なんだからね」

そんなことを言う彼女に「当たり前だろう」と伝えるとサラは笑顔を見せてくれたのである。僕はそんな彼女を見ながら心の中で「俺はサラを絶対に守るからな」と思っているのだった。

サラとの会話を終え再び出発すると日が落ちかけていたので近くに街がないかを探そうと僕が提案すると「大丈夫。もう少し歩けば大きな都市が見えると思うからそこまで行っちゃおう」と提案してくれたので僕はその提案を受け入れることにする。それから歩いて行くと本当に大きな城壁が見えてきのでサラの言っていることが本当だとわかる。

そして城門で止められるのだが門番が、僕たちのことを見定めるためステータスを開示するように言われたので僕はステータスを表示することにしたのだ。

僕のレベルが99であることを伝えると、その数値に驚かれてしまい、サラに至っては僕と互角のレベルのようだ。

そして身分証の確認を行い、通行の許可が下りたのでようやく街の中に入ることが許されたのである。僕はこの世界で、まだ人が住んでいたのかと驚きながらもサラと共にその都市の大通りを進んでいく。そしてサラに案内されながら、とある宿までたどり着くのである。そして宿の部屋に入ると僕は彼女に「ありがとうな」とお礼を言うと彼女は嬉しそうな顔になり僕の腕を掴み引っ張ってきたのである。僕は、彼女のされるがままについていく。サラが向かった先は食堂のような場所なのでおそらく夕食を食べるのであろう。彼女はメニュー表を見て悩んでいたので、僕がどれを頼むかを相談して決めてから注文するのだった。それから数分後に料理が運ばれてくると僕は食べようと思い箸を手に持つ。しかし何故か僕の隣に座っている彼女からの視線を感じ、食べることを中断して彼女の方を向いてみると彼女の目には、嫉妬の色が見えていたのである。彼女は無言で僕が持っている箸を奪い取ると目の前のご飯を口に運び僕に口移してきたのだ。突然の出来事に困惑していた僕のことをお構いなしにご飯を食べさせるとそのままの状態でご飯を全て僕に食べさせてきたのである。その行動が終わると今度は僕の口に付いているご飯を食べようとしてくる。僕達は周りにいる人に見られていたので恥ずかしくなり急いで宿の部屋に戻ってきたのであった。部屋に戻ったあとに彼女が言う。

「拓斗君はこれから私以外にあんなことをされたらだめだからね。いい?」と言うので「わかった」と返事をすると「じゃあいい子にしてたらまたしてあげるから今日は我慢してね?」と言ってくるのであった。そしてその夜、僕達はお互いにお互いのことを愛し合ったのであった 翌朝僕は目を覚ますと横を見ると、そこにはアリスの顔があり彼女は気持ち良さそうな寝息を立てながら、僕の手を握っていたのだ。そして僕は、アリスが起きないようにベットから抜け出す。それから身支度をしてアリスを起こさないように静かに外に出るとサラに挨拶をしてから僕達は次の目的地に向かって出発したのである。それから数時間が経過してから僕はあることに気づいたのだ。それは、僕達には食料が無いということである。

そのため僕は「一旦ここで昼食をとることにしよう」と言うと彼女はこちらを向き「どうして急にそんな事を言い出したの?」と不思議そうな表情で言ってきたので僕はその問いに対して答えることに決める。僕は、自分が異世界の人間で勇者としてこの世界に召喚されたことや魔王を倒した後のことを考えて、今のうちに何かしらの準備をしておく必要があると伝えるとサラは少し寂しそうにするのである。僕は「そんな悲しい顔をしないでくれ。僕も本当はサラと一緒にいたいんだ」と言って彼女を慰める。サラは「うん、でも無理はしないでね」と僕を気遣うような態度をとった。僕は「大丈夫だから、心配しないでほしい」と伝えるとサラは、僕を見つめてきて頬に軽くキスをしてくれて、それから「じゃあとりあえず今は食事にしようか」と微笑んでから食事をとるように促してくれる。そこで僕達は近くにあった屋台に行くことにしたのだ。そこでは串焼きを売っておりそれを二つ買ってからお金を払うためにアリスに渡してもらおうとしたら彼女は既に自分で支払っており僕がおごってあげようとしたが断られてしまう。彼女は「私の事より自分のことを優先してほしい」と僕に伝えると僕の手を引いてお店から離れてしまったのだ。僕は、そんな彼女の様子を心配しつつも「仕方ない。まずはこの食べ物を食べるか」と呟きつつ僕は、彼女が選んでくれたものを一本ずつ手に持ってかぶりついた。そして味の方は、なかなかにおいしいので僕はどんどん食べることができている。その食べ物は見た目は豚で焼いているのだが匂いは鶏肉に近いので不思議な感覚になる。そんな感じで食べ終える頃にサラが話しかけてきたのだ。

「ねえ拓斗君、少しお願いがあるんだけどいいかな?私、この世界では今まで食べたことがなかったから色々知りたいなって思って」と上目遣いで聞いてきたので僕は了承し彼女のために情報収集をすることにした。

それからサラにこの街のことを教えてもらいこの世界では魔王の圧政から人々が逃げてきたということがわかったのだ。そんな話をしていくとサラは僕の方に近づいてきたので僕は、彼女が抱きついてきたのでその行為を受け止めると、

「拓斗君、ちょっとだけで良いからこのままの格好をさせてくれないかな?」と頼んできたので、僕はサラの好きなようにするといいよと答えるとサラは、嬉しそうにしながら僕の胸の中でずっと過ごして満足したようで離れていく。それからは、二人で観光スポットなどを調べていくとちょうど、お腹いっぱいになったようで次の目的を決めてから移動することに決めたのだ。

次にやって来たのが「冒険者ギルド」と呼ばれる場所である。ここでは魔物討伐の仕事があると聞いたことがあるので僕達がここに来た理由でもある。建物の中に入ろうとすると、入り口に立っていた人が「おい、ここは子供が来るところじゃないぞ、早く家に帰るんだな」と言われたのだ。

僕は少しだけカチンときたので、「子供かどうか、試してみるかい?」と伝えると受付のお姉さんが止めに入る前にサラが間に入ってきて「すみません。こっちが悪いんです」と言ってくれたおかげでなんとか僕は許してもらえたようだ。ちなみにサラが僕の事をかばってくれたことで、

「もしかして君たちカップルなのかい?なら悪いことしちゃったな。

それじゃあ君たちに依頼を出すよ。内容はゴブリンを10体以上倒してきてくれるかい?報酬は1匹当たり金貨5枚だすよ」と言われる。僕は、「その仕事、受けますよ」と返事をすると、お姉さんから紙を一枚もらうことになった。そこに必要事項を書いて渡すとサラに、

『これで問題ないだろう?』

と伝えて、それから手続きを済ませてもらって僕たちは、依頼を受けることにした。それから僕達は冒険者登録するためにサラの登録を行うことにする。

「サラはどんな魔法が使える?」と聞くとサラは、光系統の魔法の上級魔法を使えるらしい。そしてステータスを確認するとお姉さんの言っていた通りにレベルが80もあったので驚く。サラはその数値を聞いて「拓斗君のレベルが99で私と一緒なんだよね。

だったら私たちの実力だと普通にやってたら魔王は倒せるんじゃないかな」と言ってくる。僕は、まだその領域に到達できるほどではないと伝えておこうとしたのだがそれよりも早くサラに先を越されてしまった。

「拓斗君は凄く強くなったね。だけど私だって負けないんだから」と言うので、僕は彼女に任せると決めてから僕は「じゃあさっそく行こう」とサラに言う。すると彼女は「そうだね。でもさっきみたいな喧嘩売ってくる輩が他にもいるかもしれないから拓斗君のレベル99のステータスでサクッと片付けてきてくれないかしら」とサラは僕の腕を掴んで甘えた声で言ってきたので僕は、サラが可愛いのですぐに承諾してギルドを出るのであった。そして僕はサラに、この国にはどの辺りにいるのか教えてもらうと、この国は魔王の領地に隣接しており僕達はそこに向かう事にしたのである。

僕達は、ギルドを出てから数分でゴブリンが出現する場所に到着すると、早速戦闘を開始する。そして数分後に全てを倒してしまう。それから更に歩くと今度はオークが出現したのだがサラが「私が戦う」と言ってから一人で向かっていったので、僕も彼女に続く。そして数分後には全てのモンスターを駆逐してしまい、それからは街に帰り、依頼の報告を行い僕達は宿に戻ると明日は早いからとお互いに部屋に戻っていく。そして次の日になると僕は目を覚まして部屋を出るとすでにサラの姿はなくどこに行ったのかと不安に思い宿の中を歩いていると食堂で彼女を発見する。どうやら僕が部屋を出たときにはまだ眠っていたらしく起きてから直ぐに、ご飯を注文して待っていてくれたようである。

僕が朝食を終えて外に出ようとするとサラが付いてきてくれて一緒に行くことになる。そして僕達二人はこの国の中心にある城にたどり着くとそこには一人の女の子がいた。彼女は僕達の事を見ると近寄って来て話しかけてくる。彼女の容姿を一言で表すと美しい。髪の色は黒で肌は白と日本人離れしていてとても可愛かった。僕は彼女に「何か御用ですか?」と尋ねると「私は、この国の姫のアリスティアと言います」と言って自己紹介をしてきた。そして、僕達も挨拶を返してから本題に入りたいと告げるとアリスは少し考える素振りを見せた後に話し始めたのである。

僕は今サラと一緒に行動している。なぜならアリスに案内されて彼女の自室に招待されたからである。僕はその行動に疑問を感じながら部屋に入って行く。

すると扉を開けた先にはとても綺麗で清潔感のある部屋が広がっており、部屋の真ん中には高級そうなソファーがあり僕達はそれに腰を下ろしてから会話を始めることにした。まずは、アリスの方から話をしてくる。「勇者の皆様がここに来たということは、もうすぐ戦争が始まります。だから私と婚約をして下さい」

彼女は僕に向かってそう言ってきたのである。僕は「それはどういうことなんでしょうか?」と聞き返すと彼女は、この国が今危ないことや魔王の力が強すぎて誰も太刀打ちできないことを伝えられた。僕はその事を聞くと魔王の強さを知るために鑑定を使用する。

(魔王:???)

→名前未設定 職業(スキル)勇者召喚 称号魔王殺し(全能力二倍補正。経験値大幅上昇効果、即死攻撃無効。魔王を倒すまで成長限界なし。HP0になった瞬間に生き返り無限に強くなる)←これ俺のせいじゃん!何このチートなスキル。

それから、僕はサラと相談する事にした。「ねえサラは、この戦争に参加しようと思うか?」と僕は尋ねてみたのである。

するとサラは「うん。参加しようと思っているけど、拓斗君は参加しないの?」と質問をされた。僕は、「正直迷っている。ここでサラを置いて逃げる事も考えたんだが、それじゃダメだよなって考えているんだ」と答えると彼女は僕を優しく抱き締めて頭を撫でてくれるのである。

そこで僕はアリスが僕に対しての気持ちを伝えてきたので、僕はサラのことを気にかけていたのだがサラが、僕を安心させるかのように笑顔を見せて僕の手を握るので彼女の意思に従うことに決める。そして僕はサラと手を繋いでアリスに告げる。「俺は、この戦争に参加するよ。だから君とも、ちゃんと会えるようになるよ」と言うと、彼女は「良かったわ」と言ってくれたのだ。

それから僕はサラを連れてギルドに向かい依頼を受ける事にする。

今回選んだクエストの内容は「この近くに潜んでいるオーガ5体の討伐」と書かれており僕達にピッタリだと思って、その依頼を受けた。ちなみに受付のお姉さんからは「二人だと危険なのでパーティーを組むようにしましょう」と言われてしまったが特に断る理由もなかったのでサラは快く了承してくれたのでパーティーを組み出発をする。

しばらく歩いているとお姉さんの言う通りにいたみたいだ。見た目は3m程あり筋肉質だが体は人間に近く頭に一本だけ長い角がある。そんな感じで観察をしていると突然襲って来たので僕はすかさず反応して斬りつけると相手の方が強いようで傷を負わせることができたがダメージはあまり無いようだ。それからサラの方を援護しようと思い振り返ると同時に僕の目の前で爆発が起きたのだ。どうやら、僕の知らないところで魔法の詠唱を終えていたようで、それで攻撃をしかけたようである。すると相手はサラを見て驚いているような表情を浮かべてから僕を敵とみなしているので攻撃を仕掛けて来た。なので僕はサラに指示を出してから相手の攻撃を受け止めて反撃をすることにした。それから数分後、僕は無事に勝利を収めることができたのであった。それからは僕達はギルドに戻り依頼達成の報告をしたのだが何故かお姉さんが僕の事をずっと見ていてそれから、

「もしかして、お姉さんと結婚してくれる気になってくれたのかな?だったらお姉さん嬉しいんだけどなー」と言ってくる。そのことで僕は「違います。今日はこの子と組んで仕事をしたんです」とサラを自分の後ろに下げてから否定しておくと、サラもお姉さんの事が嫌いらしくて「私は絶対に拓斗君以外とは結婚しません」と僕の腕を掴んでから言ってくる。

僕はサラがここまで人を嫌うのは初めてみた気がするので、お姉さんには悪いが今回は諦めて欲しいと言うと残念がりながらも受け入れてくれたようだ。

それからお姉さんから、ゴブリンの牙を5つ集めれば、その数が1つの時に比べて報酬が上がるので集めるといいと言われるのでサラは僕に「頑張ろうね」と声を掛けてきてくれるので、僕は、サラの為ならと意気込んでギルドを出てゴブリンが生息していたと思われる場所に向かって行く。

それから数十分後、その場所に到着してから僕達は、その場所で狩りを行う。サラは光系統の魔法が得意で、僕は闇系統の魔法を得意としている為、お互いでフォローをしあい、なんとか全ての牙を集めることに成功するとギルドに持っていく。するとお姉さんが、「え!?こんな短時間でゴブリンの全ての群れを見つけ出して倒しちゃったの?ちょっと待って、あなたたち二人はもしかしたら本当にレベル99を超えているかもしれないわ。でもどうしてレベル100を超えてからステータスが確認できないのか分からないけれど。とにかく、今回の依頼の報酬のお金とは別に金貨10枚を贈呈するわ」

と言って僕にお礼としてお金を渡してくれたので、僕達はお店に行って食事をしてから帰る事にしたのである。

僕は今サラと二人で行動中であり、現在ゴブリンキングがいるであろう場所に近づいて来ている最中なんだけど、やはり、と言うべきなのか魔物の数が多くて僕は「サラの事は俺が守るから大丈夫」と言うと彼女は僕に抱きついてきて「お願いね。私は拓斗君の背中を見ていることにするから」と言われた僕は少し緊張しながらも戦闘を開始すると、すぐに僕は終わらせてしまう。そして、この周辺にいるはずの魔族の気配を探る為に魔力探査を使うとこの周辺にはいなかったので別の場所を探す。すると大きな岩があったので僕はそこに近づくといきなり、何者かに殴りつけられたので僕も剣で応戦することにすると、僕は相手の拳を斬ると血が出るので相手が痛みでひるむと僕の攻撃の速さに驚いたのか動きを止めていたので僕は、すかさずに相手の背後に周り首を落とすと動かなくなる。すると死体が消滅すると宝箱が出現した。その事によってサラに僕は話しかけて「ここに何かあるかもしれないから調べよう」と伝えてからサラも「わかった」と返事を返してくれる。そして僕達は慎重に調査を始めたのだが結局は何も発見する事ができなかった。

僕はサラの手を繋ぎながら一緒に歩く。そしてようやく、ゴブリンが出現したポイントにたどり着いたのだが既にゴブリン達の姿は無くなっていて僕達は仕方なくその場を離れようとしたのだが僕は、ゴブリンの群れが隠れていたと思われる大岩が不自然に削れていることに気づいてしまう。僕は「やっぱり怪しい」と思いサラに少し待ってもらってからその場所を調べる。すると何かスイッチみたいなのを発見した。

「サラ!急いで離れて!」と叫ぶと彼女は素直に僕の言葉に従い離れる。そして僕はスイッチを起動すると、突如地面が盛り上がってそこから現れたのは体長4mは超えているだろう。筋肉隆々な体と巨大な棍棒を持っているゴブリンだった。僕も慌てて逃げようとしたが足に怪我を負ってしまい走ることができない。

その巨体の怪物が現れた事で、僕は死を覚悟すると僕とサラの前に一人の男が立つと手に持った盾を構えてから腰に差してあったロングソードを抜き放つ。僕は「助けに来た」と言いながら僕達を庇ってくれている男の後ろ姿をみながら「格好いい人」と思っていた。そして彼は僕の視線を感じ取ったのか僕達を見て「お前たちは、ここから早く逃げるんだ。そして出来ることならば、この国の人々に伝えてほしい事がある」と言うと「この国に今、魔王の手先が潜入しているらしい、だから決してこの国にいる人達に手を出さなければ何も起きない」と続けて言い終わると魔王の使いらしき存在と一対一の状況を作り出してから「ここは、私に任せて先に行くといい」と言葉を口にすると僕達が去ろうとした時に、背後では魔王の遣いと対峙した勇者様と思わしき人が殺されてしまい、それを見た僕達は必死に逃げた。その途中で僕が足を捻ってしまいサラに背負われながら、それから数時間かけて僕達は街にたどり着いていた。そこでギルドに助けを求めることにした。そこでサラは事情を話してくれる。その事を聞いたギルドマスターのおっさんは真剣な表情で僕達を奥の部屋に連れて行き説明を受けることになる。その部屋には僕達の他には誰もいない。すると部屋の中に扉が現れその中から、アリスとその執事が出てくる。僕は驚きを隠せないでいた。アリスがなぜこんなところに現れたのかと混乱してしまっている僕に対してアリスの方は僕と目線を合わせてきてそれから僕の方を見ると笑顔を浮かべて手を伸ばして僕を抱き寄せてきたのだ。突然の事なので驚いて僕はされるがままになっていた。そんな光景を目の当たりにしていたサラは「何でそんなことを」と言いかけるのだが、そんな彼女に対してもアリスは優しく抱き締めてから「もう、そんな悲しい顔をしないで」と言ってから頭を撫でていた。そんな事をされていた僕だがアリスの行動のおかげで気持ちが落ち着くのを感じる。そして僕は改めて彼女に何故ここにやってきたの?と言う質問を投げ掛けると彼女が答える前に「私達は、あなたのことが好きなのです。なので、どうしてもお傍にいたかったのですよ。拓人君が困るだろうと思いまして。それとも嫌だった?」と言われる。それに対して僕は「全然迷惑なんかじゃないよ。でも、嬉しい」と言葉を返しそれからアリスは僕とサラに向けて「これからも仲良くして下さい」と言うとサラも「勿論よ」と答えてくれる。僕は二人の手を取って言う。「ありがとう」と言って僕はそれからサラを連れて外に出ると、ギルドにいた皆は歓迎ムードになり「あの二人と、どういう関係なんですか?」と聞かれるが「恋人だよ」と答えてから僕はサラと一緒に宿に戻ることにしたのである。

僕とサラは宿屋に戻ってきたが、そこで問題が発生する。

それは、ギルドマスターから頼まれた件についてだ。その話を詳しく聞くために受付のお姉さんに話すと、どうやらお姉さんはアリスのお母さんと知り合いのようで連絡をしてもらうと、どうやらアリスと僕達は同じパーティーを組むようにと言われた。なのでサラと話し合いをして了承すると、僕とサラと、それからアリスの三人は明日に備えて今日はこの場で別れて僕は自分用のテントを設置して休むことに。ちなみに、僕が借りているのは三人だけの小さなテントであり、他の二人は別の建物にある大きなテントで寝ることになっていて僕の方は僕が自分で準備した。

それから食事の時間となり食堂で食べることになったのだが、何故か僕は一人にされてしまい。仕方が無いので一人で寂しく食事をする羽目になってしまう。しかし、しばらく経つ頃には誰かしら現れるだろうと高を括っていたら誰も現れない為僕は、そろそろ本気で泣きそうになった。そのせいで「お腹すいたなー」と声に出してみると僕の近くに気配がして顔を向けるとそこにサラがいた。それから僕はサラに連れられてご飯を食べに行き、そのあと二人でお風呂に入ったりしてそれから就寝時間になったのでベッドに入る。

朝になると僕はサラに起こされたのだが彼女はなぜか僕の上で胸を押し付けてから耳元で「拓斗君おはよう」と囁いてくる。

その声で完全に目を覚ました僕はそれからすぐに彼女の頬にキスをしてから二人で着替えてから、朝食を食べるために下に降りるとサラは「お姉ちゃんに怒られないかな」と言い出す。

それに対して僕は「大丈夫だと思うよ。それにサラは僕が責任をもって守るから安心して欲しいな」と口にしたのと同時にドアが開かれて、サラの姉が現れる。その人は、僕が見たことがある女性であり昨日の晩に出会ったお姉さんであり、その人がいきなり現れても、僕は驚かずに平然としているとお姉さんが、僕に「ちょっとこっちに来てくれない?ちょっと聞きたい事あるからさ」と言われてしまったのであった。

それから僕はお姉さんの言われるままに別室に移動してからお姉さんと話をする。まず初めに「貴方、一体、誰に勇者の能力を引き継いだのか分からないけど、勇者の能力を受け継いだことで能力値が跳ね上がったでしょ」と言われるので僕もそれを素直に伝えると「そうよね。じゃあ次は、ステータスカードを確認しなさい。そこに表示されてるはずだから」と言われてから僕はステータスを確認するとレベルが999に上がっていてさらに「覚醒」のスキルも取得していて、しかも「勇者の力」の欄にも新たな「魔王殺し」と言うのが追加されていた。そのことを僕は伝えると「なるほど、勇者の能力を引き継いだことで新しい称号を獲得したのね。それでレベル99を超えたわけか」と呟くのが聞こえたので僕は気になって聞いてみる。

すると「この世界は、異世界から召喚された人間がレベル100を超えることによって初めて本当の意味での「覚醒」を得る事ができるの」と彼女は言うので僕は「つまり、僕は真の「勇者」ではないってことですか」と確認を取ると「そう言う事になるわね。だからね。私達は貴女に協力をする為にここにいるの。だからね。何か悩みがあるのなら相談に乗りましょうか」と僕に対して言ってくれたので僕は自分の力について悩んでいることを話すと「そう、確かに普通の人間だと限界を超え過ぎて、いずれ体が壊れるのだけど貴方の能力は異常に強化されるタイプみたいだからあまり悩むことはないと思うんだけど。一応言っとくわ。この世界にはね。勇者として、またそれ以上の強さを持つ人が存在するの。例えば私のお母さんとか、他にも、今は行方不明になっている「光の巫女」なんて呼ばれる人がいるくらいだから」と教えられてしまう。

僕は「光の巫女ってなにそれ」と言うと彼女は「知らない方が幸せかもしれないよ。でも、どうしても知りたいのであれば教えることもできる」と言われてしまい、それから「教えて欲しいです」と頼んでしまった。

すると彼女から衝撃的な事実を伝えられて僕は困惑することになる。なぜならその人の名は「アリス」であり。僕の婚約者でもあり、さらには「神野」と名乗る人物でもあるのだ。そんな人物がどうして僕の世界に存在していたのだろうかと思ってしまい動揺していると「どう?驚いたでしょう?これが全ての始まりの物語なの」と告げられる。

その事を聞いてから僕は、自分がなぜこんなことになっているのかと不思議でならなかった。しかし、僕は考えを切り替える。

(僕は今こうしてここに生きている。そしてアリスもここに存在する)と心の中で呟き、そして目の前にいる女性にお礼を言おうとした瞬間、僕は背中に悪寒を感じると「逃げて!今すぐ!」と叫び声を上げながら僕の方に向かってきた女性の攻撃を防ぐことに成功したのである。僕はサラの体を抱え込むとその場から離れる。その直後、さっきまで僕達のいた場所にクレーターができていて僕はサラに話しかけた。「サラ大丈夫?」と。サラは首を左右に振っている。「駄目かも。さすがに今の一撃は効いたよ」と言っている。その事に気づいた女性が近づいてくるので僕は彼女から逃げようとしたのだが逃げ切れずにいたので仕方なく戦う事を決める。それから僕達と女性との戦闘が開始される。僕は女性と戦い続けると次第に追い込まれていくのを感じていた。僕と彼女の戦いを眺めていたアリスが慌てて駆けつけてくれたのだが僕はその事を気にする余裕がなかったのだ。そして僕は追い詰められていき、その事が僕自身を苦しめることになった。それは、サラが僕を庇ったからである。彼女は全身に傷を負ってしまい、その事で意識を失ったのだ。そんな状態に陥ってしまったサラを見捨てられなかった僕は彼女に手を伸ばすと女性はそんな僕達を見て「馬鹿じゃないの?その女を助けたところでどうせ死ぬだけだから無駄死にになるのは分かり切っているのに」と言われてしまう。

僕はそんな言葉を聞きたくなくて僕は「黙れ」と言うと女性に向けて剣を振り下ろして斬撃を飛ばすと直撃を受けて血を流すが、そのまま突っ込んで来てから僕に向けて蹴りを入れて来るので、僕は回避して女性の背後に回り込もうとしたが失敗して背後からの回し蹴りで僕は地面に叩き付けられてから起き上がると女性は既に僕との距離を取り直してしまっている。その事に気づくと僕達はお互いに睨み合うが状況は悪化していくばかりでどうすることもできなかった。すると、そこで「私を忘れないで欲しいな」と聞こえてきて、アリスが僕を助けてくれる。その光景を見た女性は舌打ちすると、そのまま何処かに走り去ってしまった。僕はそんな光景を見ながら「助かったよ」と言うとアリスが微笑を浮かべていた。しかし僕はサラの状態を見て「これは早く手当しないとまずい」と思い僕は回復魔法を使い始める。サラは僕と出会ってから何度も怪我をしていて僕はそのたびにサラが痛そうにしていたのを思い出してから「もう二度と大切なものを失いたくない」と改めて決意してから必死でサラを癒したのであった。そしてしばらくしてから僕はアリスと一緒にサラを部屋に連れて行きベッドに寝かせる。そして僕とアリスで話し合っているとサラが起きてきたので僕はサラに抱き着くと彼女は少し困りながらも抱きしめ返してくれる。その様子に気づいたのかアリスはサラに事情を話し始めたのである。

僕とサラはそれから、アリスから詳しい話を聞くことになる。それは、先程戦った女性の話だった。どうやらあの女性こそがアリスの母親のアリスであるらしくて、彼女は僕達が倒した「光の巫女」と言う存在らしいのである。なんでもその巫女がアリスの母なのだが、彼女がどうして僕に戦いを挑んできたのかが分からなかったので、アリスに理由を尋ねることにした。すると「お母さんはね。勇者に憧れてたのよ。それで拓斗君のことが気に入らなかったのよ」と簡単に説明をしてくれた。しかし、僕が「それってつまり俺が、この世界で一番強い勇者だって認めてるってことだよな」と言うと「違うよ。お母さんにとって勇者っていう肩書を持つ人は勇者ではないんだよ。もっと、別の何かを求めてるみたいなんだよね」と言ってくれた。その意味を考えてみるが全く理解できないのであった。それから僕は、サラから色々と話を聞いたのだが「私は拓斗君についていくから」と言われたので僕はサラを連れてこの屋敷に泊まることにする。その事をギルドマスターに話すと、快く許可してくれたので「ありがたいですね」と言ったら「まあね。実はさっきの戦いで私も結構ダメージを受けちゃってね。だからさ、あんたが来てくれて嬉しいよ。でも、くれぐれもその事は口外しないで欲しいね」と言われる。

それからすぐに僕はサラの部屋に戻ると「ごめんな。本当は俺が守る立場なのに守られた挙句にお前にまで迷惑をかけてしまってさ」と頭を下げると彼女は首を左右に振ると僕に近づき、それから頬に触れるだけのキスをして来た。いきなりのキスに動揺してしまうのと同時に頬が赤くなっていくのを感じた。そして僕達は二人で食事をしてから僕は風呂に入る事にした。それからお湯に浸かっていると誰かが入って来たのである。誰だろうと思って振り向くとサラの姿があり、僕に近づいてきて「今日だけ、私が洗う」と宣言された。僕はそれを断ろうと思ったのだが、なぜか彼女の表情から断る事が出来ず僕は、彼女に任せることにした。それからサラが体を洗い始めて僕が緊張し始めると彼女はクスリと笑うのであった。それからお湯から出て二人で風呂場から出ると僕は彼女の着替えが終わり次第僕が着ている服を貸したのであった。しかしサラは僕が使っているシャンプーとリンスがいいと言い出したので渡して僕は再びお湯の中に入ると、そこには僕と同じ匂いになった彼女の姿が目に入ってくる。

(これってもしかするとまずいかもしれないな)と思っていると、いつの間にか上がっていたサラが近づいて来て僕の横に座ると頭を肩に乗せて甘えてくるので僕は優しく彼女の髪を撫でていたのであった。

翌日、目を覚ますと隣にはサラがいて僕が起きたことに気づくと微笑みかけてから「朝ごはんはできてるよ」と言ってくれる。それから身支度を済ませてから一緒に朝食を食べ終わると僕と彼女は二人っきりになってから話し合いを始めた。それから、僕は彼女にある事を話すと「それじゃあ、その方法でいきましょうか」と言われてしまう。僕は不安に思ってしまうと、彼女は「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だから」と言うので僕は「なら、いいんだけどさ」と答えたのである。

そしてサラは僕に「さぁ、行きましょう」と手を掴んでくる。僕はそんな彼女を見つめて「やっぱり止めないか?」と言うがサラが首を左右に振って否定するので僕は仕方がなくついていく。それから僕達は街の中に入って行ったのだけれども街の中にいた住人がサラを見るなりに怯えたような目で僕達を見ていた。そんな様子を僕は不思議に思って聞いてみたのだが、彼女は苦笑いをしてから「私のせいでこの街では「魔女」と呼ばれているのよ」と答える。そんな彼女を見つめながら僕はある事を尋ねようとして「なあ、どうして「魔女」と呼ばれてるんだ?もしかしてその事で今まで苦労したりしたんじゃないか?俺はサラが辛い思いをしている姿をこれ以上見たくない」と言うとサラは何も答えずに俯いてしまったので、僕が謝ろうとした瞬間、突然目の前に魔法陣が出現したので驚いてしまう。そしてその魔法陣からは「ふぅーようやく見つけたぜ。魔王さんよ」と男が姿を現したのだ。

僕は現れた人物を警戒すると、相手も僕の方を見据えて睨み合いになり僕はどうしようもない緊張感に襲われ始める。

「お久しぶりですね。まさか貴方が生きていたとは思いませんでした」とサラが言う。それに対して目の前にいる人物がサラに話しかけてきた。「おひさ。あん時は悪かったと思ってるよ。俺だってこんなところにいたくなかったのさ。でもしょうがないだろ?ここにいないと俺達の一族が滅ぼされちまうんだしな」と言う。僕はその話を不思議そうに見つめていると、男は「俺達はさ、元々魔族だったんだがな、俺達の一族がこの世界に呼び出された時に巻き込まれたらしいんだ。そんで召喚士って奴はさ。俺達を呼び出したら、その後用無しみたいで殺されそうになったわけさ。その時に俺は隙を突いて逃げ出したのさ」と話してくれたので僕は疑問を投げかけたのだ。

どうして今さらそんな事を言ったのかと。

すると男は「いや、今だからこそ言うべき事なのかなって思ってな。あの後俺の故郷は滅び去ったけどな」と答えてくれた。その言葉に嘘はないと分かったので僕はサラを見やる。するとサラの瞳から大粒の涙が零れ落ちてきて僕は、その光景に何もできずにいた。その事に気づいた男が僕を睨みつけて来ると、「貴様、その少女に惚れているようだが残念だったな。そいつはすでに他の男の物になっている。だからお前に勝ち目はもうないぞ」と言う。

そんな男に対して僕は怒りが込み上げて来て剣を抜いて構えたのだが、そんな僕を見てから男が僕に向けて剣を構えてからサラに向けて「さて、この小僧を片付けてから、お前を殺しに行くから覚悟しておくことだな」と告げてから襲いかかってきたのである。それから激しい戦いが繰り広げられると、やがて僕と相手の力量差が分かり始め、僕の方が押されていると「拓斗君!!」とサラが叫び声を上げた。その瞬間、サラの方角に火の玉が迫って来たので、それに気づいた僕は彼女を庇おうと思いサラの方に走った。しかし、サラはその攻撃を察知していて「駄目!!逃げて」と言ったので、僕がサラを突き飛ばすと彼女が代わりに炎を受けてしまい悲鳴を上げると「拓斗君」と言って意識を失ったのであった。

それからしばらくして僕はサラを背負ってから急いで屋敷に帰る。その光景を見た人達は驚くばかりであった。なぜならサラを襲おうとした犯人は捕まっていたのだがその人物はサラの父親であり今回の襲撃事件の主犯格でもあったので、サラは父親が嫌いだったので僕はその事に納得すると、屋敷に帰ってサラを部屋に連れて行くとベッドの上に寝かせてからサラの部屋を出ようとした。しかし僕は背後から殺気を感じて慌ててサラを守る為に前に出てから防御姿勢をとった。それから少しするとサラが目覚めると同時に僕が「おい、危ねえだろうがよ」と怒鳴りつけた。

サラは僕を見てから「良かった無事だったのね」と言うので僕はサラに事情を説明すると「それって、本当なの!?」と言うので僕が「ああ、だからサラは気にしなくていいんだよ」と答えるとサラは「嫌だよ」と呟き僕を後ろから抱きしめてくれる。その感触が心地よく思えたのと同時に僕を救ってくれた人に対するお礼をしなくてはならないと考え始めていたのであった。

それから数日後、アリスと僕はギルドに向かうとギルドマスターに話があると言って呼び出すと「何の話なんだ?」と聞かれたので僕は「はい、先日は大変お世話になりました。それで何かお返しができないかなと思いまして相談したいんですがいいですかね?」と聞くとギルドマスターはすぐに僕の提案を受け入れてくれた。

そして僕はアリスの母親のいる場所に案内してもらえるように頼む。

それからしばらく歩いていると、その場所にたどり着く。僕はギルドマスターが先に扉を開いてくれると部屋の中から女性の「勇者よ。勇者の力を見せなさい」という大きな声で僕に言ってくる。僕とギルドマスターがその光景に唖然としてしまうと、女性が僕の前に近寄って来て「あなた、名前はなんですか?それと職業はなんじゃ?」と僕に問いかけてきた。

だから僕が戸惑っているとギルドマスターが「ちょっとあんた、失礼だろ」と言ってくれる。女性はギルドマスターをキッと鋭い目つきで睨むと「この方は私達の恩人であり、そしてこれからこの街を救う英雄となる者だ」と僕を紹介してくれていたのである。僕はそんな彼女の迫力に気圧されながら自己紹介をする事にした。「僕の名前は黒羽と言います。今は冒険者をしています。それから僕の恋人がこの方なのですが、今回はこちらのお子さんを助けさせていただき本当にありがとうございました」と言うと女性は「私はこの国の女王でアリシアと申します。私の大切な国民の命を守ってくれて感謝いたします。それからお話は聞き及んでおりますが私の息子も助けてくださったとかで、ありがとうございます」と頭を深々と下げてくる。そんな彼女の姿に僕も「いえ、僕も必死でしたので」と答える。そして彼女は僕の手を握ると、「ところで今日はどうされたのです?私達は今忙しいのであまり時間は取れないと思いますが」と言ってくるので僕はアリスの母親に「僕達が困っていた時、親身になって手助けしてくれて、それから僕の事をここまで連れて来てくれたんですよ。僕は貴方にお会いしたくて」と言うと「え、そうでしたか。それは嬉しいですね。さぁ、中にどうぞ」と言うので僕は部屋の中に入っていくと、そこにはアリシア女王陛下が椅子に座って待っていてくれた。

「お待ちしておりましたよ」と笑顔で話しかけてくださるのである。それから「それで、今日はどうなされたのでしょうか?」と言うと僕とギルドマスターがお互いに顔を見合わせると僕達は「あのですね、実は、僕達に稽古をつけてもらえませんか?お願いできませんか?」と僕が言うとアリシア様は僕に微笑みかけて「分かりました」と引き受けてくれる。それから僕とギルドマスターは「あ、あの、宜しく御願い致します」と言うとアリシア様は「まずは準備運動を済ませてください。その後に私が指導していきましょう」と答えるので僕とギルドマスターは「あ、有難う御座います」と答えると、二人は体を動かし始めてから数分後に休憩に入ると「ふぅ、なかなかハードな訓練だった」と二人で話し合っていた。そんな僕とギルドマスターの様子をアリシアは優しく見つめていて、そして僕に「拓斗殿、あなたの剣術は素晴らしいものです。しかし実戦を経験していないからなのかもしれないですね。でもあなたにはその素質がありそうですね。それなら、この機会に鍛えていきますよ」と嬉しそうな表情を浮かべながら話してくれたのである。

その後、アリシア様は僕の体の動きを見ながら「もう少し肩の力を抜くのよ」「足捌きを意識して動いてくださいね」「相手の行動を読み取って対応しないとすぐに攻撃を受けてやられてしまいますから」など細かくアドバイスを行ってくれる。そして最後に、剣技を一通り僕に披露してから、「これで終わりです。後は、実戦あるのみですよ」と教えてくれた。その言葉に僕が頭を下げて「有難う御座いました」と話すとアリシアは笑みを零しながら「拓斗君、今のままだと貴方のその力を十分に発揮させることはできないわ。だけど安心して、私と一緒に修行に励みましょう。そうすればもっと強くなれるようになりますよ」と優しい言葉を僕にかけてくれたのであった。その言葉に僕は感動を覚えていると、突然、後ろから僕とギルドマスターの首元に刃物を当てられたので僕とギルドマスターは「ひゃ!!」と言って驚きの声を上げた。それから僕は「誰だ!!」と叫ぶと目の前にいた人物を見て驚いてしまう。その人物は僕の知り合いだったからだ。その人物は僕を冷たい眼差しで見てから口を開いた。

僕は目の前にいる男の顔を見て驚いた。だって彼は僕を裏切り魔族側に付いた人物だったのだから。すると男は「俺の名はラガバン。貴様とは敵同士だが、今はそんな事は関係ない。お前がここにいることは分かっているんだぞ」と言う。その言葉に僕が反応していると、横からアリシアが現れて「ラガパン、何をする気なのかな?私に無断でそのような行為をするのは関心できないんだけどな」と言ってくれる。僕はアリシアの事を庇おうとすると男が「ほう、お前はこの女に守られる価値はあるのか?もしないのならば、お前の首を斬り落とすがそれでもいいのか」と言うので僕は男に怒りをぶつけようとするとアリシアが「拓斗君、私は大丈夫だよ。それよりも今はこの状況を乗り越えることだけ考えよう」と真剣な目で話してくれるので僕は男を睨みつけることしかしなかった。それから僕がアリシアを守るような姿勢をとるのを見て、男が「へぇ、随分の仲がよろしい事で。それにお前はこいつに惚れているらしいが、こいつのせいでお前の故郷が滅んだのを忘れたか?」と言われる。

するとアリシアの様子が変わってしまい、彼女は目に涙を溜めてしまう。その様子に僕が戸惑っているとアリシアは「その事だけは、もう言わないで!私はもう何も恨んでいないのだから。それに私はこの方と結ばれる事が出来たので悔いはありません」と力強く言い切るのであった。僕はアリシアのそんな態度を見ていると僕は思わずアリシアに近寄り抱きしめてしまっていた。それを見たアリサが激怒してしまい、いきなり僕に襲い掛かってきたのだ。僕は慌てて防御しようとするとラガヴァンが間に割って入り、僕の代わりに攻撃を食らってしまうと吹き飛ばされて壁に打ち付けられてしまった。

「おい、ラガン。俺はそっちの女を始末するように頼まれていたはずだぞ」と言うと「ふん、悪いが俺はこの方を気に入ったからな」と言い始めると「おい、ふざけたことを言ってるんじゃねえぞ!!俺達に逆らえばどうなるかわかっているだろう」と凄むのであった。その光景にアリシアは呆れ顔になってしまい、僕は困惑してしまいどうして良いのかさっぱり分からなくなっていたのである。するとアリシアが「いいでしょう。貴方達、少し遊んであげなさい。但し殺すのは許しませんよ。私にはまだしなければならないことがあるのです。ですので少し痛めつけて、動けなくしたら私達の前から消えてちょうだい。それが出来ないのであれば私があなた達を殺さないように対処しなければいけなくなりますよ」と言う。

僕はその発言を聞いてしまった為に僕は心の中で「あれ、僕とアリシアってそこまでの関係じゃないはずなのに、どうしてそんな展開になってるの?まぁ、アリシアの頼みだから別に構わないけどさ」と思ってから「あの~」と遠慮気味に声を出すと、その発言をしていた二人が僕の方を見る。その二人にアリシアは微笑んでいると二人は「申し訳ございませんでした。貴方様には失礼をいたしました。それでは、これから訓練の方を始めさせてもらいます」と頭を下げると訓練が開始された。

そして訓練が始まると二人は真剣に訓練に取り組み始めた。

僕はそれを確認してから、アリシアに話しかけたのだった。

「アリシアさん、ありがとうございました。それと先ほどは無礼な態度を取ってしまって申し訳ありませんでした」と謝罪をする。

そしてアリシアは「拓斗君は気にしなくて良いよ。それにあんな挑発に乗らないようにしてね。これから一緒に訓練を行うわけだし、これからお互いを信頼関係を築いていこうよ」と話してくれるので僕はお辞儀をしながら、「はい、宜しく御願いします」と言うとアリスの母であるアリシアは僕と握っていた手を放すと「そうだね、でも私に敬語を使う必要はないんだよ。これからも仲良くしていきましょう」と言うと、僕は苦笑いをしながらも彼女の手を握って「はい」と答えたのであった。

そんな僕達の会話にギルドマスターが割り込んでくると「おーい、アリシア。あんまりそいつを誘惑するような事はやめた方が良いぜ」と言うのであった。するとアリシアが「え、どういう意味かな?」と聞くので、ギルドマスターは頭をかきながら「え、あ、まぁ、それは色々と問題が起きそうな気がしてな。だってアリシアはその美貌の持ち主だからな」と言うので、アリシアは自分の姿を確認すると、僕は恥ずかしくなってアリシアの姿から目を背けると「ちょっと、何でそこで目を逸らすの?」と言われてしまい僕は動揺してしまう。

そして僕はこの場の雰囲気を変える為にもギルドマスターに向かって話しかけるのだった。

僕達は今「魔将軍討伐隊」として出発しているのだが「なあなあ、今から魔王城に向かうんだろ?だったらついでに行って来たい所があるんだが良いか?」と僕が言うと、「ああ?何処に行きてえんだ?言っといてなんだがよ、魔王城に行かなくても、どうせ魔族の奴らが暴れまわっていて魔王城は今にも陥落しちまいそうな感じじゃねえか。それに今から行く場所はかなり遠出になるんだが本当に行きてえんだな」と言うと僕はうなずく、「あ、うん、そうだけど、一応僕には理由があって」と言うと「理由は聞かねえよ。ただ俺とアリシア様はお前とアリシア様を無事に連れ帰ってくれと言われているからな。もしお前がどうしてもその場所に行きたいと駄々をこねるのならば無理矢理に連れて帰るからな」と忠告されたので、素直に了承する事にした。

そんなやり取りを見ていたアリシアはギルドマスターに対してため息をつき「ラガバン、拓斗君が困るような事を言わないようにして下さい」と注意をするとラガバンが僕を見て「悪かった。今のは完全に俺が悪い。しかしだなアリシア。拓斗が魔族達に狙われているという情報を入手したんだ。その情報が本当かどうかも怪しいんだが、もし事実だとしたら俺が動くしかないと思ったんだ。それでな、お前は「勇者召喚」を行った。その時にお前の力を利用してこの世界を救った。その事に関しては、俺や部下達が命を賭けて成し遂げてくれた事に文句を言うつもりはねえ。だが、その後に起こった出来事に関してお前は一切説明していねえだろ。

お前がした行動が間違っているとは思ってはいねえ。むしろ感謝すらしても良いと思っている。だけどお前は俺らに全てを話してくれても良かったんじゃねえのか?」と話すとアリシアは何も言い返せないようで黙ってしまったのだった。

僕はその様子を見て二人の間に入り込むと「僕の事で二人が揉めるのはやめて下さい。今は仲間同士で争うよりも、お互いに協力していくべきだと思うんですよ」と話すとギルドマスターは舌打ちをした。そして「チッ、確かにその通りだな。俺は拓斗を信じるしか出来ねえ。アリシア、拓斗を裏切ったりしないよな?」と言うとアリシアは「当たり前ですよ。私を信じてください」と答えてギルドマスターの問いに対する答えにするとギルドマスターは安心してくれたようだった。

そんなやり取りをしているうちに「目的地に着いたぞ」とラガヴァンが話したので馬車を降りると目の前にある建物を見る。この建物は「孤児院」と言うもので僕にとっての故郷のような場所でもあるのだ。僕は久しぶりに見た「孤児院」を眺めると懐かしさがこみ上げてくると同時に涙が零れそうになる。しかし僕はここで泣き崩れたりしないように我慢する。今は僕だけの問題ではないのだ。

僕はアリシアと一緒に「孤児院」に入ると子供たちが駆け寄ってきて「勇者のお兄ちゃん久しぶり」と言ってきたので、僕はその子達の頭を撫でていると後ろから一人の女性が現れる。

その女性はアリシアを見て涙を流し始め「アリシアー」と言って抱きしめたのだ。僕がその光景を見ているとアリスの母親で僕に良くしてくれる人だった。

その光景を見た僕は嬉しさが溢れ出してきて「お姉さん、久しぶりです。また会いに来てくれましたよね?」と言うと「はい、お母様は毎日貴方にお手紙を渡して元気にしているのを確認していたのですが、最近貴方が行方不明になってしまったという話を聞いた時は本当に心配していたのよ」と言われるとその話を聞いていた子供達が「僕達勇者が魔王を退治しに行ったって話を聞いたけど本当のことなのかい?」と聞いてくるので僕がそれに答えると、子供の一人が「じゃあ勇者の皆が僕達を救いに来たんでしょ」と僕に話しかけてきたので僕は笑顔で「うん、そうだね」と言う。

アリシアがその子供に近づいていくと膝を落とし目線を合わせて「この子は勇者様に救って頂いた子達の中で一番最初に救われた男の子なんです」とアリシアが話すと子供の母親はアリシアに抱きついて「ありがとうございます」と泣いて喜んでいた。そしてアリシアはその母親から離れると今度は僕の所に近づき「あの時は私を庇って助けてくれて有難うね」とお礼を言い始めたので僕は何も言い返せず俯いていると、そこに一人の少年が僕に話しかけて来たのである。その少年の名前はタロウと言う。この少年は僕を庇って死んでしまった人物の弟であり僕の弟分だった。僕はこの子が生きていればもっと良い人生だったのではないかと考えてしまう。その気持ちを紛らわせる為にも僕はタロウの頭を軽く叩くと「おう、気にすんな。それよりほら、早く中に入ってご飯食べような」と言うと僕は食堂に案内されてテーブルに着く。アリシアとアリスの母も一緒に席についてくれたので、僕は「さっきの話を聞いていましたが僕もお腹空いちゃったので先に食事にして良いですか?」と三人に伝えると「そうね、お昼の時間だし食事をしてからお話でもしましょうか」と言い、四人で食事を取ることになったのだが、やはりと言うか予想はしていたが僕だけ量がおかしいのであった。

食事を終えた僕は部屋に戻ってこれからどうするべきか考えていたのだが「神樹」に向かうと確実に殺されるのではと思ってしまう程の敵の強さを感じていた。

なので「やっぱり一度王都に戻るしかないのか」と考えるのだが戻るにしても「魔王討伐の旅に出ていて今すぐ戻ってきました」なんて言うのは不可能だと思うしそもそも今の状況では王都内に入れなさそうである。

そんな事を考えながら部屋のベッドに横になっていると扉をノックする音が聞こえたので返事をするとアリシアだった。

アリシアが入って来たのだが僕は急いで起き上がると何故か少し怒った表情で話しかけられる。「ねぇ、拓斗君。何を考えていたの?」と言われて僕は戸惑ってしまう。

何故怒られているんだ?と思いながらも、とりあえず僕は彼女に謝罪をする為口を開くと「すみません、実は」と話し出すが最後まで言い切る事が出来なかった。何故なら彼女が急にキスをして口をふさいでしまったからだ。僕は動揺してしまい固まってしまったがすぐにアリシアの身体を押して引き離すと彼女は寂しげな顔をしているので僕は思わず彼女を抱きしめていた。すると「拓人君は私が嫌いなの?」と悲痛な声で問いかけられ僕は「いいえ、大好きです」と答えるとアリシアの顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていった。そんな彼女を見ると僕はつい微笑んでしまい笑みを浮かべながら「どうしたの?」と質問すると、恥ずかしそうな表情で「私も貴方の事が好きになったみたいなの。だから」と言うと、僕は嬉しくなって再び抱きしめた。

僕は暫く彼女と抱き合っていたのだけど「なぁ、アリシア。俺達はこのままだと魔族の国に入れないんだよな?」と確認して見るとアリシアは「そうですね。でも大丈夫です。きっと魔族の国に入れる方法があるはずですから。私も探してみます」と話すのだった。

そして次の日の朝僕は目を覚ましアリシアと一緒に孤児院に行く事にした。僕は久しぶりに「孤児院」に入るので心躍っていたのだ。

そして孤児院の前に辿り着くと僕は扉に手をかけて開くとそこには懐かしの我が家が目の前に現れる。しかし、中に人の気配を感じず誰も居なかったのだ。そこで僕は「そう言えば、今日は確か休日かなんかだっけ?」と考え始めるとアリシアに聞いてみると首を傾げられて分からなかったが、僕はとにかく中に入り食堂に足を踏み入れると机の上に置かれた手紙を発見する。それを読むと僕の母は「アリシアが勇者を呼び出してくれた事は本当に嬉しかったわ。これで私も安心できる」という内容の文章が書かれているのを見て、これはどう考えてもこの「孤児院」から立ち去る時が来たのかもしれない。そう考えると、僕達が旅立つ時にはもう「孤児院」に人が残っていない可能性があるので早めに立ち去らないと不味いなと考えていた。

それから僕がアリシアを連れて行くべきかどうか迷っていると「なぁ、アリシア」と話しかける。

アリシアは僕に対して何か用事でもあるのかなと疑問を抱きつつ僕に対して返事をしてきた。

「なあ、アリシア。お前は俺と共に旅をするかこの「孤児院」に残るか、どっちがお前にとって幸せな道なんだろうな」と僕は自分の心に問い掛ける。

「拓斗君。私の事を考えてくれるのは嬉しいんだけど私は「勇者召喚」を行ってしまった人間で、本来ならば勇者である拓斗君と一緒に旅に出るべきじゃないの?」と真剣な眼差しで僕の方を見つめるアリシア。しかし僕は、その言葉を聞いた時に僕の中で感情が爆発しそうになるのを抑えつける。僕の為に戦ってくれているアリシアに対して「お前のせいで勇者召喚が行えたんじゃねえよ!」と言いたくなる気持ちを抑えて「勇者召喚を行ったからといって、その責任は誰にだってないはずだよ」と言う。その言葉で安心してくれたのかアリシアは嬉しそうな顔になる。

「それでアリシアはどちらが自分に合っていそうだと思う?」と僕が問いかけると「うーん、私個人の意見を言わせてもらえれば一緒にいたいかな」とアリシアは答えてくれるので「よし、決めたぞ。俺はアリシアを必ず守ってみせる」と決意表明をしたのだった。しかし、アリシアが「拓斗君の事を好きになったのは「聖剣使いの聖女アリシア」としての使命じゃなくて私自身なの」と言うと僕は驚きで声を漏らしてしまったのだ。

僕は今まで勇者として「聖勇者」と言う職業を得てから、それが普通なのだと思っていた。

だから、他の勇者がどんな想いを抱いて、この世界のために命を懸けているのかなんて想像できなかった。

僕自身もそうだ。僕が勇者になったのは偶然の出来事であり、自分が選ばれた理由や使命なんて知らない。僕は僕の出来る事で、世界を救うために全力で取り組んでいこうと思っているのだ。

(僕はこの世界で勇者と呼ばれて良いのだろうか?それは僕の本音では無く、周りの期待に応えるために僕自身が「勇者になりたいです。お願いします。勇者にしてください」と懇願した結果なのではないか?)

僕はそんな思考に支配されそうになるが「拓斗君はどうしたら勇者になれると思う?」とアリシアに聞かれると「いや、「勇者になりたい」って思っただけで勇者になんかなれないだろ?」と返す。「そっか」と言うアリシアだが「じゃあ、私が拓斗君を惚れさせればいいってことだよね?」と言って来たので、僕は何も言い返せなかったのであった。そうしていると僕達の背後から聞き覚えのある声で話しかけられる。

僕が振り返ると「あら、貴方がアリシアを勇者にしてくれて有難うね。それと勇者のお兄ちゃん、僕は勇者様のおかげで生きながらえることが出来ました。この恩は絶対に忘れません」と言い僕と握手を求める。

その手を僕はしっかりと握り返し「ああ、僕達こそ勇者に救ってもらったんだぜ」と言うと僕は笑顔で答える。そして僕はこの子が元気になってくれてよかったなと思った。

「勇者様がここにいるって事は魔王を倒して下さったんですよね?」と嬉しそうに話すので僕が魔王は復活したけど倒したとは言えないのでどうしようか悩んでいると、僕の後ろでアリシアが僕の背中を突っつく。僕が振り向くと「拓斗君、あの子の言う通りにしてあげよう」と言うので僕は、その子が求めてきた通り魔王を倒したと伝えたのだ。

その言葉を聞いていたアリシアは「えっ!?」と困惑していたが、その子はアリシアの方を見て笑いながら僕が嘘をつくような人ではないと言っていたのだ。僕も確かにその子供に悪い印象は無いのでアリシアも信じても良いのではと思い始めていたので「分かりました。貴方の言うことを信じます」と伝えると「お兄さん、ありがとうございます。やっぱり僕、お姉ちゃんを助けたいので一緒に連れってって欲しいんです」と言われたので、僕はこの子がどうして僕についてきたいのかなと思いながら「何があったんだ?」と問いかけると「実はお婆さんの家で暮らしているんです。それでお兄さんなら、助けられるんじゃないかと思いついてきちゃいました」と言われて僕は悩む。

(ここで見捨てるのは気が引けるし、でも俺には「聖盾の指輪」があるので魔族の攻撃は耐えられるんだよな)と考えていると「いいじゃない。困った時はお互いさまだよ。きっと、私達が居た方が良い方向に事が運ぶよ」と僕の耳元で囁かれる。僕は、それを聞いて「それもそうかもな」と返事をするとアリシアが「えっと、本当に良いのですか?」と不安そうに僕を見ていたので「勿論、俺にまかせてくれ」と答えると僕は、その子の名前を聞くと名前を名乗ってくれるのだった。

そうしてアリシアの幼馴染の少女も同行することになってしまった。

その少女は、アリスという名前でアリシアと同じような黒髪のショートボブの子だった。そして彼女からは僕に好意があるみたいだと感じ取れたが、アリシアを裏切るわけにもいかないと思い何もしないことにしたのである。しかし、アリシアに睨まれて「アリシアの事は私が幸せにするから、拓斗君は他の女の子に気を回さないでいいよ」と言われるので僕は思わず苦笑してしまう。そんな話をした後、孤児院を出ようとするとアリシアと少女の服に違和感を感じたので、僕は思わず2人に問いかける。

2人は「どうしたの?」と首を傾げるが僕は彼女達に話しかけた。「なぁ、なんで君達はそんな服を着てるんだ?」と言うとアリシアも「たしかにおかしいですね。そんな普通の村人のような格好で外に出るはずが無いのですが」と言う。そこで僕は嫌な予感がしたのでアリシアと目を合わせると、彼女は無言で首を振り否定する。そして僕はある仮説を立てていたのだ。

(まさかとは思うがこの子達は孤児じゃないのか?つまりこの「孤児院」の出身者なのか?)と心の中で呟いていたのだ。そこで僕は「なあ、アリシア、その子のおばあちゃんの名前はなんだ?」と確認を取ると「ラティアナだけど、何か関係あったりするの?」とアリシアが質問をしてきたので「まあ、関係ないか、確認が取れたら教えるよ。」と答えたのである。

僕が確認したい事を確認する為には彼女のおばあちゃんに話を聞き出すしかないと考えたのだ。

なので僕は彼女におばあちゃんの家に向かうと告げてから「とりあえず、その家の場所だけ教えてくれるか?」と頼むと快く了承してくれた。それから僕はアリシアとその子に別れを告げると、そのまま歩き出し「勇剣」の案内で、その場所に向かっていくとすぐに目的地に辿り着いた。

しかし、目の前の光景を見るとどうやら空き家になっているようで人が住んでいそうな形跡は見当たらない。なので中に入ってみる事にした。しかし「あれ、ここに住んでいないのか?」と疑問を抱いていると突然目の前に人が倒れ込んでいるのを発見した。僕はすぐに近づき様子を確認してみたがどうやら死んでいたようだ。すると僕の脳内にアナウンスが流れ込んでくる。

【スキル:蘇生を獲得しました】

僕はいきなりの事で動揺してしまいその場で固まってしまう。

(おい、どういう事だよ。なんでこの世界の人間が死んでいて「蘇生」の技能を獲得できたんだよ!しかも死んだのはこの国の王族だし!!)と僕は困惑していると「お前は誰だ?」という声が聞こえたので慌てて振り向くとそこには「魔王軍四天王」の一人で、僕の前世の世界で僕の仲間を殺しまくった挙句、「勇杖の賢者」の称号を手に入れた「大魔法使いマーリン」がそこにいたのである。彼は僕の方に歩み寄ってくると「ふむ、貴様から感じるオーラや魔力は只者では無さそうだな。それで一体、我輩の大切な民を殺してまで何が目的なのだ?」と聞いてきたので「ふざけるな!」と叫んでしまったのだ。

しかし、僕の怒りは彼には通じていないようだった。僕は彼に対して苛立ちを覚える。「なあ、なんで俺を怒らせようとしているのかは分からないが、あまり舐めた態度を取っているのならば容赦しないぞ」と脅すと彼の顔つきが変わり「貴様、本当に人間なのであるか?その見た目は人間に見えるが、その中身は全く別の生き物であろう」と意味不明な言葉を発した後「それに我輩がこの姿になる前に殺した人間は皆「聖勇者」の力を持っていたのだがな」と言う。

(この世界では僕以外の勇者は殺されたって言うのか?)と困惑するが僕は「なにが言いたいんだ?」と言い返した。すると、彼が指差したのは先程まで生きていた死体で僕の視線はそちらの方へと注がれていくのであった。「こいつは我に挑んできた愚かな男であった。この世界で生きる為に必要な事を知らなかったらしくてのう。それで「スキル強奪」を欲していたのじゃ」と「魔王」の奴と同じ能力を発言してきて「それは、僕が倒した魔王が持っていた能力だ。何故それをそいつが持っている!!」と怒鳴りつけると「そんな事は知らん。とにかくこいつも死に際に同じことを言っていたのだよ」と言うと、その瞬間に僕が殺そうとした男の体が急に起き上がり襲いかかって来たので、僕は反射的にその男から飛び退き距離をとる。

僕は咄嵯に腰にある「勇剣」に手をかけて警戒態勢に入ると「なんじゃ、まだ戦うつもりは無いぞ。そんな構えなくてもいいじゃろ?」と言ってきたので僕は「あんたを信用出来ない」と言うと「別に信用されなくて結構。そもそも最初から貴様と戦う気は無かった。貴様は強いが、それでも今の段階では我が主様の方が遥かに上じゃ」と言ってくるので僕は少し興味が湧いてきたので「じゃあ、その勇者に何があった?」と聞くと「うーん、どうするか。ここで話すのは危険だから移動しながら話しても良いかのぉ?」と言い出してきたので仕方が無くついていく事にした。僕が歩き始めるとその男がついて来て口を開いた。そして話し始める。その内容はとんでもないものであったのだ。まず「聖勇者」を殺した方法については、どうやったのかは知らないが魔法を使い魂だけを転移させて体はそのまま残し腐らせるという方法を編み出したと言う。その後僕も聞いたことのある話ではあるが、どうやら自分の命を犠牲にして力を解放して戦った後に仲間を庇い命を落としたらしい。それを聞いて僕は胸が痛くなるのを感じてしまうが、今はその感情を押し殺す。それから、その男はこう付け足してきたのだ。「そういえば、その女を蘇らせたのなら、その女のステータスを覗き見できるはずだろう?試したらどうだ」と言われて確かにそうだと思い、その通りにすると「大魔術師」の技能を手に入れていて更に「大賢者」の能力も持っていて僕は思わず「マジかよ」と声が出てしまった。僕は今までこの「聖杖」のお陰で相手のスキルを手に入れる事ができていたけど、今回初めて他人の能力を奪った事になるので、かなり驚きが隠せなかった。そんなこんなしているうちに目的の場所についたのである。そこは、僕の記憶の中では僕の家であり懐かしき僕の生まれた家でもあった。すると突然僕の家のドアが開く音がした。そして中から出て来たのはアリシアだったのだ。

「アリシア、どうしてここにいるんだ?」と問いかけるとアリシアは涙を浮かべながら僕に抱き着いてくると「よかった、本当に生き返ったのね。私のこと置いていったのかと思ったよ。もう離さないから絶対に」と言って離れようとはしなかったのである。そこで僕はアリシアに「悪いんだけど離れてくれないかな?僕はこれからやらなくちゃいけない事があるから、ちょっと外に出てくる。すぐに戻って来ると思うから心配しなくていいよ」と伝えると彼女は僕から離れたのである。するとそのタイミングを見計らったかのように、例の男が出てきたのだ。僕は「お前は何をしに来た?」と問いかける。「何を言っている。この家の中に用があって入ったのではないのか?」と聞き返してきたので僕は「なあ、ここは俺が生まれた場所ではある。でも俺にとってこの家は仮の住まいなんだ」と返答する。「ふぅ、それを聞いてほっとしたわい。そうじゃ、貴様には大事な話がある。少し待っていてくれ」とそう告げるとその老人は再び姿を消してしまう。

暫く経つと僕はアリシアの待つ部屋に戻ると僕は「ごめんな待たせて、どうしてもあいつと2人きりで話がしたかったんだよ」と告げてからアリシアを椅子に座らせて、僕はベッドの上で横になりアリシアはそんな僕に話しかけてきたのである。「ねぇ拓斗君、もしかして貴方は転生者なの?」と彼女はいきなり聞いてきたので、正直に話しても問題ないと思い「そうだよ。俺は君が思っている通り転生者だよ」と言うと彼女は「拓斗君が前世の名前を知っていてびっくりしたよ」と嬉しさを噛み締めるような表情で言うので「君が俺の事を忘れていたみたいだから、もしかしたら俺も君に忘れられてるかもしれないと思って、君の名前を聞かなかったんだよ」と言うと彼女は「忘れるわけ無いじゃないですか」と即答で返事をしてくる。

僕が「そっか。ありがとう」と素直に感謝の言葉を伝えるとアリシアは僕に向かって質問してきたのだ。その問いの内容は「なんで君は、私達を助けてくれたの?」と言うもので僕は少し困ってしまう。その理由を話すのにはまだ時期尚早なような気がしたので「そのうち分かるからそれまで楽しみにしておけ」と答えておくのだった。そして僕は再びあの「爺さん」と話し合うために戻ったのだけれど既にその場所にはいなかったのであった。

するとその時僕の脳内に再びアナウンスが流れ込んでくる。【スキル:探知を獲得しました】と脳内に流れ込んできたのである。このアナウンスが流れ込んでくるのは久々だが一体これはどうなっているのか全く理解できない状態に陥ってしまうと僕の目の前には「爺さん」が姿を現す。すると僕の頭の中で「おい!さっきのはどういう事だよ。俺がこの世界で得た力は全て使えなくなったんだろ?説明しろよ!」と怒号を放つが「さぁのぉ。それよりも我の頼みを聞き入れてはくれんか?」と言うと僕に向かって手を差し伸べてきたので「お前の願いってのは何だ?」と言うと、僕は「この世界を滅ぼそうとする魔族と戦って欲しいのじゃ」と言ってきやがったので、つい「断る」と言うと「まあ聞け、貴様が戦ってくれたおかげでこの世界は救われたんじゃぞ。本来ならば勇者が居たのにも関わらずこの世界が救えなかったんじゃ。だから感謝はせぬとも、礼は言う。それに、お主の力は我輩が封じたので貴様が持っている「勇者」の力は既に無力化しておる。だから安心してくれ」と言う。

(確かに、僕の力では魔王の力を完全に押さえ込むことは出来なかったからな。今は「勇剣」を封印してあるので大丈夫だとは思うが)と頭の中で呟くと僕はある事に気がつく。それは「魔王」の奴は勇者の力を全て吸収していた。それが「スキル」の力と「勇者」の技能だけでは無いと言う事を「スキル強奪」のスキルが教えてくれるのである。僕はそれを思い浮かべるとすぐに確認することにしたのであった。

(確か、僕がこの世界に戻ってくる直前に奴の力が使えるようになっていたが今は使えるのか?)と疑問を持ちながら自分のステータスを確認するとそこには、僕自身の能力が表示されていたのだが、その能力が明らかに変わっていた。まず「勇者の力を譲渡されて勇者に成った者の能力値+100」が無くなりその代わりに、「魔王の力の一部を譲渡され魔王となった者に変身できる能力を得る代わりに能力が半減される」という表示になっていたのだ。しかも僕自身その魔王の姿になれなかったのだ。

僕自身はその事にかなり驚いたのだが、それでも「勇者」として戦う力は残されていると言う事で、とりあえずは納得しておく事にしたのである。僕はその後その「爺さん」から詳しい話を聞く事になった。まず「勇者」が殺されてしまい魔王に対抗する為の力が完全に失われてしまった事。そして今僕が倒した相手こそが、先代「聖勇者」であり今代の奴に倒されてしまったのだと言う事が分かった。それで今奴を操っていた「魔神」を消滅させない限りまた同じような悲劇が起こる可能性が出てきてしまうので僕は奴を探そうと決心すると、何故か「勇者」の称号は僕の体から消滅してしまっているのを僕は思い出すと称号の効果によって発動出来るようになると思っていた魔法も当然発動する事が出来なくなっていたのである。そんな時にアリシアも会話に参加してきたので3人で話をすることにするのだった。すると彼女が突然こんな事を言い出したのである。

「ねえ、その前に拓斗君には謝っておきたい事があるんですけど良いですか?」と言われてしまうと何となく予想出来てしまっていたのである。その予測は見事に的中していて彼女は謝罪をすると同時に自分が勇者だったという事も打ち明けた。彼女の告白を聞いた僕はかなり困惑した。その言葉の意味を理解しようとしても全く理解出来なかったのだ。「え?嘘だよね?冗談だよね?」と言うと彼女は泣きながら僕に抱きついてきて離れようとしなかった。僕がどうすればいいのか戸惑うとアリシアは「本当に、申し訳ありません。私は本当は勇者なんかではありません」と涙を浮かべたまま必死に訴えてくる。そこで僕も冷静に考えれば「確かに、彼女は聖女であって勇者ではなかったのだ。でも、その力は確実に勇者の力を持っていたはずなんだ。なのにどうしてなんだ?」と考えを巡らせる。するとその答えが彼女本人から明かされる事になるのであった。

アリシアの話を聞いているうちに段々とその真実に近づき始めた僕は思わずその真相が分かり驚愕してしまうのである。まさかこんな形で勇者が死んでしまっていた事を聞かされることになるとは夢にも思わなかった。アリシアが本当の聖女ではなく実は「勇者」のスキルを持った本物の「勇者」だったのである。

そんなアリシアは勇者でありながら聖杖に選ばれた存在である「賢者」でもあり、同時に聖女の力まで持ち合わせている。まさに万能な聖杖である事は間違いないがアリシアが「聖女」の力を宿し始めてから次第にアリシアの中に眠っている聖女の力と「勇者」の聖の力が衝突を始めたらしくその力の均衡を保つ為にアリシア自身が自らの意識を失う程の激痛が襲い掛かりそのせいで今までの記憶を封じ込められていた。

アリシアは自分の記憶を思い出した後で自分の中に眠っている二つの力が衝突している事を自覚してしまい、それを抑え込まないと自分自身の体が耐えられないと判断して自分の中の全ての「魔力」と「聖なる力」を使ってその二つの力の暴走を止めることに成功するのである。アリシア自身もこの力の暴走を抑えることに成功はしたのだが、それと同時にアリシアの中の勇者の魂と魔王の魂が融合しあいその肉体と精神は勇者の身体と魔人の心を併せ持つ存在へと変化するはずだった。だがその寸前にアリシアは僕の事を想い「勇者の力」を使い僕と僕の仲間たちを守り抜く為に僕の「固有結界」に干渉してその二つを分離させる事に成功した。その結果アリシアの勇者の器としての能力は失われる事になるがアリシアの命を救うことに成功した。

アリシアの「勇者」のスキルが失われる事は無かった。なぜならアリシアの中にはまだ「勇者」のスキルが存在していているからだ。しかし、僕のスキルの中に存在する「勇者」の称号が消えた理由は分からなかった。僕が「勇者」の称号を発動しようと念じると何も起こらないからである。そこでふと僕は一つの疑問を抱く。

何故僕の力の1つである「魔剣」のスキルが未だに存在しているのだろうか?と思い至る。そもそも僕が最初に「勇者」に成った時、僕の能力の中で一番弱いものは「固有武器」の「魔剣」であったのだ。しかし僕がアリシアを助けた後で「魔王」を倒す為の準備として色々な能力を手に入れたが、結局僕はその「魔剣」の能力を最後まで使うことは無かった。それは僕が元々持っていた能力ではあったのだが僕は最初から持っていた能力に頼りすぎると強くなれないという結論にたどり着いたのだ。なので、それ以降は「魔王」の力を吸収するまでは、あえてその「勇者」の能力を使わないようにしていたというわけなのだ。だが、あの魔王との戦いの後から僕が「勇者」に成り代わられた時はその能力を使う事が出来なくなった筈だった。

つまり僕の勇者の力を一時的に奪い取る事が出来る「スキル」はあの魔王しか持ってはいないのだ。だがその魔王はもうすでに存在しないのである。なら一体誰が僕の勇者の力を封じ込めることが出来たのだろうか。そして「スキル」の力を封じ込めることが可能な人物といえば僕の中では「爺さん」以外に存在しなかった。僕にはこの世界に戻ってくる直前の「爺さん」が放った一撃の正体は未だに分からないが「爺さん」以外有り得ないと思っている。だから僕はこの疑問を解決するにはどうしても直接「勇者の爺ちゃん(本名:鈴木勇)」に会って聞くしかないと決心したのである。

僕の「勇者」の力が封印されている以上は僕の本来の姿である「勇楯の勇者ユーヤ」として戦えないのが現状だが、それでも今の僕がやるべき事はまだあると僕は確信していた。僕の「勇剣」に込められている力が弱まりその分だけアリシアの「聖剣エクスカリバー」に力が流れ込んでいるような感覚がしたのも事実である。その事を僕はアリシアに伝えると彼女は少し嬉しそうな顔を見せる。僕は「とりあえずは今はゆっくり休むといい」と告げてから、その場から離れようとするが、そのタイミングで僕に話しかけてくる者が現れた。その人物は、以前「勇者」の力の譲渡をしてくれた男だったのだ。名前は覚えていなかったが僕は「ありがとう。おかげで助かったよ」と感謝の言葉を述べると男は照れながら、「そんな事はないです」と言ってくれた。そして彼は僕の事を覚えていたようで「勇者」の称号は消えていますがあなたは紛れもない本物ですよと励ましてくれるので、僕もそうありたいものだと思ったのである。

(でも確かに「勇者」の力では無いのかもしれないが「勇盾の勇者」という能力だけでも十分に凄い気がするが、これからもっと強力な能力を手に入れる可能性もあるのかも知れない)と前向きに考えるようにしながら、その日は「勇楯の勇者」としての戦い方を考えるのだった。

それから僕とアリシアと「爺さんの三人組は一旦魔王城を離れることにした。まず僕たちがすべきことは「勇者」と「魔王」の力を完全に封じる事と「勇者」の力に侵食されてしまった「賢者」と聖女を取り戻す方法を探す事に決めたのである。それにはまずはこの国の王様であるジークベルト王に会いに行こうと決意をしたのだ。まずはその国に向かう事にしよう。

僕が目を覚ますと既に辺りには朝日が出ており昨日の疲れが残っていた。するとそこに一人の人物が近づいてきて僕に語り掛けてきた。

「お目覚めですか勇者様?」とその言葉に反応した僕だったが僕はその相手に対して警戒する気持ちは何故か無かった。それどころか懐かしさを感じてしまう程その言葉使いは優しく温かく包み込んでくれる優しさに満ち溢れていた。

僕は思わず「勇者じゃないんだがな。俺の名は「勇盾の勇者ユーヤ」だよ。君の事は名前を聞いても大丈夫かな?」と言うと「はい。貴方が今から向かう国は、「セイレーン王国」と呼ばれており別名は、「海都の国」と呼ばれている場所であります。ちなみにこの私の名前も教えてあげましょうかね私は「セージ」という者で、この国の王家に仕える騎士をしておりました。」と答えてくれたので「よろしくな」と言う。

「こちらこそ」と言い返してくる。僕はその言葉を耳にしてから、今から自分が向かおうとしている「セイレーン王国」について尋ねる事にした。

「それでな今から俺たちは、その王国の方に向かっている途中なんだよな?」

その質問をするとその者はこう返答するのである。

「ええその通りですよ」と微笑みながら言う。その返事を聞くと、どうもこの世界に来る前までの記憶が全く残っていない僕にとっては、自分が何のためにここにいるのかが分からずにいたのだ。ただそれでも僕がやらなければならない事と自分が何をするべきなのかだけはしっかりと頭に残っているのだ。

「俺は勇者を救いたい。この国に来ている勇者を助ける事が出来ないかな?」と言うが彼女は僕を見てから困り果ててしまう表情をしていた。それだけではなく僕の仲間にして欲しいとも頼まれる始末である。そこで僕は彼女を信頼しても良いと直感的に感じたのである。そこで彼女に仲間の件は後回しにして「勇者を救ってくれないか?」と頼み込むのであった。彼女も了承してくれて僕と一緒に行く事になったのである。

僕は彼女と会話をしながら「勇者」の力の事に関して尋ねてみた。しかし彼女が知っているのは自分の記憶の中に存在する情報だけだった。なので僕が「勇者」の力を解放している所を見せて欲しいとお願いしたらあっさりとそれに応じてくれた。「聖杖」の力により「勇者」の力を発動させたアリシアの姿を見た瞬間、僕はその少女に対して違和感を覚えると同時にその正体を見抜いた。この子は「人間ではない!」と思い至るのだ!そしてそれと同時にこの子が何者かを理解するのである。そしてその正体を明かした時、目の前の少女は涙を浮かべて泣き崩れてしまったのだ。その姿を見ているうちに自分の心が痛むと無意識に彼女の身体に触れようとした。だが僕の手が触れた時に僕の手を弾き返したのでそこで手を引っ込める。僕はすぐに謝ろうとするがその前に僕たちの周りを取り囲むように無数の人影が現れたのだ。それは先ほどアリシアから説明を受けたばかりの敵であり、「魔物達」だったのである!「しまった!!」僕は後悔するが、既に遅すぎたようだった!僕は「勇楯の勇者ユーヤ」に成るとアリシアの前に立ち塞がるが僕とアリシアに迫りくる無数の刃は止まらない。しかし次の瞬間僕はその攻撃の全てを「防ぐ」ことに成功した。しかしそれはあくまで僕が意識を失っていなかった場合の出来事であり僕の記憶は既に曖昧になってきていて僕が何をしているのかが自分で理解できていない状態だったのだ。

僕が次に目覚めた場所は何処だ? そんな事はどうでもいい。何故ならば僕の目からは光が失っており身体は思うように動かないからだ。僕の視界の隅に写っている光景をぼんやりと見ている事しかできない。そんな僕の元に一人の男が近づいてきた。僕の身体に触れると何かを語りかけてきているが、僕の耳には聞こえない。やがて僕の身体に触れた男が「残念だがもうお前の命は長くはないようだな」と告げるのだ!そして僕はその男の事を知っていた。だが僕の脳はそれを思い出そうとしないのだ。そして、僕は最後に一言だけ告げられたのだ。「君とはもう少し話がしたかった」と言われてしまうのだ!! 僕はその男を知っている筈なのに知らないふりをする男の言葉を聞いた後で、僕の命が失われていく感覚だけが伝わってくるのだ。僕は「まだ死ぬわけにはいかない」という気持ちと共にアリシアを助けたいという想いだけで僕は生きながらえることに成功するのだ。しかしそこでまたもや僕は「勇者の力に侵食されてしまい」その力は消え去る事になるのである!

(やはり「勇者の力」というのはそういうことなのか?)と僕は思うのであった!しかし、その答えを知る方法は僕には無くなってしまったのである。僕には今起きている事と今までに起きていた事の真相を知ろうとはしても今の僕ではそれが不可能である。だが今の僕は勇者である僕に託されているものがあるのだと理解する事は出来た。

僕の目が醒めると僕は誰かに支えられていた。僕が目を覚ますとその人は僕の顔を覗いて僕を心配そうな顔で見つめてくるので、僕にその人を落ち着かせる為にも名前を尋ねた。

「僕の名かい?」とその人が言うとその言葉を聞いた僕の心にその人物の声が響く。

『僕の名は、鈴木勇だ!』

僕の頭の中でそう告げられる。その名前には僕には聞き覚えがあったのだが僕の記憶にはその名前が存在しなかったのである。僕の名前は勇也だったはずだが、僕の本当の名前が勇哉ではなく勇と書いて勇だった。その事に気づいた途端に僕の中から不思議な力を感じ取れるようになったような気がしたのだった!すると目の前にいた人物が急に涙を流し始めてしまう。どうしていいか分からない僕は、慌てて慰めようとすると彼女は嬉しそうな顔になり抱きしめてくれたのだった。そして僕の頭を優しく撫でてくれたのである! 僕は暫くの間されるがままになっていて気が付くとある場所に居たのだ!

「ここは一体?」と言うとアリシアは「やっと目覚めてくれたのですね」と言い出すのだ。僕はアリシアに尋ねる。何故自分は生きているのか、それとここは何処なのかを尋ねるのだ

アリシアは少し戸惑っていたが話してくれた内容はこうだ! 1:あの後アリシアは「セージ」と名乗り、この僕を保護してくれた事

2:この場所は僕たちの家 3:僕はこの家でずっと眠っていた事

4:そして今は朝である事を教えてくれる つまりは僕は3日眠り続けてその間はアリシアが一人で僕を守り続けながら暮らしていたらしい。

「ごめんね。アリシア一人に辛い思いをさせてしまって」と言うと彼女は首を横に振りながら「いいえそんな事ありませんよ。それよりも早く元気な姿を見せてください」と言ってくれる。僕は彼女に言われた通りに体調が回復した事をアピールするために立ち上がったのであった。そして二人で家の外に出て行く。そして外の風景を見てみるとそこはまるでおとぎ話の絵本の中のような美しい世界が広がっていたのだった。その綺麗な景色に思わず僕は感動してしまう。アリシアもその景色を見て「本当に素晴らしい風景ですよね」と言い出し僕たちはお互いに笑いあう。僕がふと視線を感じると一人の女の子がこちらを眺めていた。

「あれは?」

と尋ねるとアリシアは微笑み「私の娘ですよ」と笑顔で言い出す。

「そっかぁーあの娘が君の大切な家族なのか?」と言うと

「はい!そうです」と彼女は答えてくれて僕は彼女達の方に近づいていき自己紹介をしようとしたのだ。だが彼女は僕が近づいて来たことに驚くと逃げてしまったのである。僕が呆気にとられているとその娘を追いかけるようにしてやってきた女性がアリシアに近づいてきて「アリサちゃん」と優しく話しかける。その女性は僕を見るとこう言ったのである。

「あなたはこの村の人達を助けて下さった勇者様です。私はこのセイレーン王国の王の妻でございます。私の事はどうぞミーナとお呼びください」と丁寧な挨拶をされたので僕は困惑してしまったのである。するとそこにアリシアがやってきて「セージさんは私たちを助けてくださってここまで連れてきてくれた方なんですよ」と言ったら「ありがとうございました。セージ様のお陰で私は愛する夫に出会うことが出来たのです。」と感謝されてしまったのである。僕は照れくさくなりながら「僕は勇者でも何でもないから普通に接してもらって構わないんだけど」と言うと彼女は笑みを見せてから僕の手を掴んでくれたのであった!そして「じゃあこれから一緒にお城の方に行きましょう」と言われた。僕は彼女に連れられて行く事になったのである。すると後ろから声をかけられて「セージ君」と呼ばれたので僕は「どうしたんですか?」と言い返す。

「君ともっと話がしたいんだが」と言われてしまった。僕がどう返事をして良いか困っているとアリシアが僕と「勇者ユーヤ」との間に割って入り「すみませんが、セージさんは私と先約があるのです」と言うと僕の腕を引っ張り出して「早く行きましょう」と言うのだった。

そして僕は「アリシアが案内してくれると言うので任せてみると、そこには立派なお城の姿が映る。僕はその城を指差して「アリシアのお父さんとお母さんは偉いさんなのか?」と尋ねるとアリシアは「そうみたい」と答えてきたのであった。それから僕は彼女に案内されて城に辿り着く。

「セージ君が目を覚ましてくれて嬉しい」

「はい、僕もまたこうして皆さんに会うことができて嬉しく思っています」と答える。僕はアリシアが「勇者」としてこの世界に召喚されていた事を知ってしまい、それを助ける事ができなかった。だけど彼女が生きていてくれた事が僕の心の拠り所になっていたのだ。だからこそ「再会できたことが嬉しかった」のである。

僕は彼女達に案内されるまま城内を歩いて行くのであった。しかし「勇者」という言葉が僕の心に引っかかっているのだ。「僕に何ができるんだろうか?」と思う。

そして、僕は今更のように自分の事を「勇也」と呼んでいた事を思い出すのである。「僕は誰なんだ?なんでここに居るのか?それに僕は勇者なのか?そもそも僕が本当に勇也だったとしてもこの身体は「勇者」の力を持っている。そしてその力で僕は助けられなかった人の事を救おうとしているのか?それは正しい選択なのだろうか?僕は勇者としての自分の力の使い方が分からない。

自分の中の力が自分にとって危険なものにしか思えないからだ。僕が悩んでいる間にも「謁見の間」へと続く大きな扉の前に辿り着いた。そしてアリシアが中に入ると「失礼します」と言って中に入っていく。

僕がそのあとに続くとそこには一人の老人が王座に座る。その傍らには王妃の姿もあるのだ。僕達は二人の前で膝を付くと「面を上げなさい」と言われるのであった。そこで僕は国王が女性であることに初めて気づく。

(そうか、僕は今「勇哉の記憶」と「勇者の力」に振り回されている。本来の僕が持っている力は一体どうなってしまっているのか、全く分からなくなってしまっていたのだ)

そして僕の目の前にいる二人は「勇者」の力について教えてくれたのである。

そして僕はその話を一通り聞き終えた時にある疑問が生まれたのだ。どうして僕の記憶が無いのかという事と僕には力があるはずなのにその力が発動しない。これはどういう事なのだろうと困惑している僕を見て国王と王妃は「やはり」と言う顔になり僕が質問を投げかける前に僕に話し始めるのであった。

僕の心の中にある「勇哉」と「勇者の力」についての説明を受けた僕だがその話は正直なところ信じられなかった。僕は確かに異世界に転生するなんて夢物語の様な出来事を経験した事がある。しかし、その時僕は「勇者の力」というものについては知らないのだ。なので、僕がこの世界に来る前の事を知らないと僕は答えたのだった。

しかし僕の考えとは真逆で「セージ君は自分が「勇者」である事に自覚を持っていないようだね」と言い出してきたので僕が「そんなことありませんよ」と答えた。すると今度はアリシアも「そうですよ。私が出会った時から貴方は「勇者」の力を持つ人間でしたので、間違いないかと思います」と言われてしまうのだった。

僕には二人が嘘を言っているようには聞こえなかったので、僕はとりあえず信じてみる事にした。

「僕に勇者の力が有るというのなら、何故僕はその力を使えないのですか?」と聞いてみたが、僕が「勇也」だった頃の記憶が無くなっている事を説明するとその事についても話し合われたが結局は僕が目覚めてからの話になると言うのである。

その事について、僕自身も知りたかったので話に耳を傾けると僕の話になった途端にアリシアの態度が変わり始める。アリシアが急に不機嫌になり始めたので僕は心配になってしまい彼女の事を気遣い始めたのだ。

「アリシアさん。どうしてそんなに機嫌が悪いんだ?」

と僕が尋ねるとアリシアは僕に対して「あなたは本当にセージ様なの?」と言ってくる。

「うん、間違いなく僕はセージだよ」と言うと

「セージ」と言う名前を聞いて彼女は少しだけ安心してくれた様子を見せるのであった。僕は「セージという名前に聞き覚えがあるのか?」と聞くと「いえなんでもないわ」と言葉を濁されてしまう。僕には分からない何かがあるのだろう。そして「アリシア」と言う名を聞くたびに彼女は「はい!」と答えてくれるのだが、僕を見る時の目つきが冷たい感じになってきたのは勘違いではないだろう。

僕は二人の会話に割り込んで「それでいい加減僕を「勇者セージ」だと証明してほしいんだけど?」と言ってみると、何故か国王から直々にこの世界の事を説明してもらうことになるのであった。

僕はこの国の王様に案内されて玉座の間でこの国の歴史などを聞いていた。僕がいた地球で言う所のヨーロッパみたいな感じの町並みで僕達の世界よりも建物が高い印象だ。

この国は「セイレーン」と呼ばれていて、「セイレーン」というのは海の神の名らしい。そしてこの世界で一番美しいとされるセイレーンの城で僕は国王から色々と話を聞かされていたのである。そして国王が「勇者」とこの世界を救う事についてのお決まりの話を聞かされた後で僕の身体の中に眠る能力を教えてくれたのであった。

僕の体内には二つの「勇者の力」が存在しているそうだ。それは勇者の力と魔王の力はお互いに干渉しあう関係でお互いが反発する事によって僕は今まで使う事が出来なかったのであろう。つまり「勇者の力」が強すぎる為に僕はその力を使う事が出来ない状態なのだ。僕がもし、勇者の力で魔法を使おうとした場合僕の魔力量ではとてもではないが扱えず制御不能の状態に陥ってしまうのが予想できると聞かされたのである。

そこで僕はある提案を国王に持ちかけてみることにした。「セージ」と言う名前がどうしても気になってしまう。なので「僕の名前は勇也」と本当の名前を告げてみようと考えた。すると国王と妃は「そうでしたね。あなたのお名前はセージでしたね」と言われて、僕の本名を呼んでくれたのである。

「実は僕は記憶喪失なんです」と言うと、二人共とても驚いてくれたのであった。そして僕は自分がなぜこのセイレーン王国に来たのか?どうやってここへやって来たのかを話し始めようとすると王妃から制止されて僕は「そう言えばまだ自己紹介していませんでしたね」と思い出すのである。

「僕の名は勇也です」

「ユーヤ様。それがお名前の様ですね」と返ってきたが、僕は違和感を覚えたのである。なぜなら、その名前を誰かに教えた事など一度も無かったから。すると王妃は続けて

「それならばセージと言う名前もユーヤ様の名前と同じですので、そのお二人で良いのではないでしょうか?」と提案された。そして、僕が「僕はどちらでも良いですけど」と言うと国王が「セージ様と呼ぶ事に致しましょう」と言われたのである。

僕の本名は勇也で良いと思うのだが「ユーヤの方が言い慣れているんだよなぁ」と思っているとアリシアが僕の元にやって来てこう言ったのである。

「私は勇也って言う呼び方のほうが好き」と。そして、僕が「それじゃあ勇也って呼んで欲しいな」とお願いすると、アリシアは「はい!わかりました。これからよろしくお願いしますね勇也さん」と言ってくれるのであった。僕は彼女の表情を見ながら「アリシアってこんなにも可愛かったかな?」と思ってしまったのだ。僕は自分の心に芽生えた気持ちに気づいてしまい戸惑いを覚える事となるのだった。僕は彼女に好意を抱いてしまい始めていたのだ。その証拠として僕の心臓の動きは明らかにおかしくなってしまっている。それに身体は火照っている感覚があったので僕は熱でもあるんじゃないかと思ったぐらいだ。そこで僕は自分の身体の変化を確かめるべく自分の胸に手を当ててみるとドクンッドクンッと言う音と共に激しく高鳴っていたのだ。

その様子を見られていたらしく、王妃に「勇者さま大丈夫ですか?どこか体調が悪い所でもありますか?」と聞かれてしまった為僕は焦りつつ

「ちょっと胸が苦しいので今日はこの辺で休ませてもらおうかと思います」と伝えると「かしこまりました。こちらの者達は私の命により勇哉様の身の回りの世話係とさせて頂きます」と言われ、僕の部屋に案内される事になった。そして僕達はこの王城を後にしたのである。僕は「ありがとうございました」と言って王妃に頭を下げると、アリシアと王妃は微笑んでいたのだった。

僕達は王宮に部屋を用意されていたのだが僕はアリシアと一緒に過ごす事を望み、彼女が了承してくれるまで粘り続けたのだ。僕としては彼女と一緒にいた方が気が楽になるので、一緒にいられるのならその方が良いと考えていたのである。結局はアリシアの了承を得たので彼女を連れて僕が使っている客室に足を踏み入れた。

そこで僕は「勇者の力」を発動させようと思ったがやはりできなかったのだ。そこでアリシアに相談してみると「それは勇者の力のせいかもしれませんね」と言ってくれたので彼女の意見に従う事にした。そこで僕は「試しに僕のスキルを使ってみたい」と提案すると彼女は「では、やってみてください」と言ってきた。僕は彼女の言葉を受けて自分の「固有能力」を使用してみたのである。しかし何も発動しなかったのだ。僕の目の前には何も無い空間が広がっていた。「どういう事なんだ?僕の能力は一体どうなっているんだ?」と混乱している僕を見てアリシアは落ち着かせる様に僕に話しかけてくれたのである。

僕のステータスには「勇者の力」としか表示されていないらしい。だから「勇剣」や「勇盾」と言う能力も確認できないそうだ。しかしアリシアは僕のステータスを確認してくれたのだが、やはり僕が使えるはずの「勇者の力」が使えなくなっているらしい。しかし「セージの力だけはなぜか健在」らしいのだ。なので、僕はもう一度「勇者の力」について詳しく教えて貰うようにアリシアに伝えたのだった。するとアリシアは「分かりました。それなら勇者についての説明は私にお任せください」と言ってくれるのだった。

そして僕はアリシアに「勇者の力」について教えて貰ったのだ。そして、まず最初に勇者には「勇者」と「聖女」の二種類の勇者が存在し、それぞれの勇者に「神からの加護」と呼ばれる恩恵が授かるらしい。その恩恵の内容は「身体能力の向上」「特殊な攻撃技」と言ったものである。ちなみにアリサの職業が「魔導師」なのは「勇杖」と「勇者」の能力の両方を有しているからである。つまりは、勇哉の時とは状況が違い勇哉には二つの強力な力が存在しているから二つとも使えるという訳だそうなのだ。

つまり勇哉が勇吾の時に得た能力が使えないというのは勇吾の記憶が無い事による弊害らしいのである。勇吾の記憶さえ戻ればきっと勇也の記憶も同時に戻るだろうとの事である そんな説明を受けながら僕はまだ完全に納得できていなかったのだ。なぜならば僕の中に存在する「呪いのアイテムの力」に関してはまだ僕自身も分からない事が多い上に、「魔王の力」、「水」という存在もいる以上僕の中の二つの力を完全に制御しきれなければ僕は間違いなくこの世界を滅ぼす結果を招く恐れだって有るからだ。僕の心の中には二つの力が同時に存在し、僕の感情次第でどちらに力が転ぶか決まる可能性もある。僕の心の中に存在する力が強すぎるために今まで使う事が出来ずにいた力。そして今の状態では僕の感情次第でどちらに転ぶのか分からない力。その力は勇者としての力を凌駕するかもしれない力なのだ。その事を僕はしっかりと理解しなくてはならないと決意を固めた。

そこでアリシアは

「勇者の使命を果たす為にもあなたには「勇者の力と向き合う必要があるのでは?」と思い、私はあなたのお側にいますのでお困りのことが有りましたら遠慮無くお申し付け下さい」と言ってくれたので、僕は「うん。そうしてもらえると助かるよ。本当に」と言って感謝を伝えるのである。そして僕とアリシアはお互いに見つめあい、僕はアリシアに「これから僕のお側についてくれて助けてくれる?」と尋ねると彼女は笑顔を浮かべながら

「はい。喜んであなたのお側で働かせていただきます。勇哉様」と言うのだった。僕はこの時アリシアの顔を見て少しドキッとしてしまい、心臓の鼓動が早くなってしまうのであった。そして僕は、僕の中に眠るもう一つの人格に負けないように強くなろうと誓うのであった。

僕達は、このセイレーン王国の街にある冒険者ギルドで依頼を受けていた。この世界では魔物を倒すと素材が手に入るらしく、それを集める為にこの世界に生きる者達が依頼を出し、それを冒険者に斡旋するのが冒険者の収入源なのだそうだ。そこで僕はある事に気づいた。僕達が倒して解体していたゴブリン達だが、この国の人には大人気なのである。その理由は彼らが持っている「魔力」が原因なのだが、それは別に魔力が高いからではない。その逆で低すぎて、魔力量の少ない人達が魔法を扱う際、魔法が上手く扱う事が出来ないでいるらしく、そこでゴブリン達の出番となるわけなのだが、彼らには普通の武器の攻撃が通じないのでその対策として彼らの肉は高値で取引されているそうなのだ。そこでアリシアと僕は「僕たちが倒して来たので、お譲りしましょうか?」と提案したら国王からは、是非欲しいとの事でお金ではなく食料との交換になった。

そのおかげで僕達は、この国でかなりの金額を稼ぐ事が出来、生活は潤っていくのだった。僕は「このままここに滞在するのはどうかな?アリシア」と質問をしたが、国王は僕達にこう伝えてきた。「勇者さまは、セイレーン王国に滞在してはくれないだろうか?もちろん勇者様がこの王国にいて下さる事にメリットはある。例えば他国との戦争でセイレーン王国に援軍として派遣する事も可能となるだろう」と言われてしまった。しかし僕はその申し出を断って「僕たちは、自分の身の安全を守る事を優先する為この街を離れたいと思います」と国王に断りを入れたのだが、そこで王妃から

「勇者さま、実は私の息子は今このセイレーン王国にて兵士として訓練を受けている最中でして勇者さまのご迷惑で無ければご挨拶だけでもお願い出来ますでしょうか?」と言われてしまったのである。正直僕は面倒臭いなぁと思ったのだが王妃からの強いお願いだったので仕方なく了承したのだ。それから僕は息子に会う事になったのだ。その息子の名前はレイナと言う名前で歳は17歳のようだ。僕はアリシアと共にレイナの部屋へと向かうことにしたのだ。

その部屋に向かう前に僕の部屋に訪れたアリシアの父親でもある執事長から、僕の身分証明書となるプレートを渡して頂いたのだ。それは「勇剣」と呼ばれる特殊な金属で作られており、「勇者」の力を使う事が出来るものしか持っていない代物らしく貴重品として扱われていると説明を受けた。ちなみに、僕の持つステータスを表示する能力が備わったカードは「勇者」の力の行使が可能になるカードらしくこれも「勇者」にしか作れないらしいとの事だ。それを受け取った後レイナがいる場所へと案内してもらう。そこは城の奥にある大きな扉が待ち構えており僕は、そこに入室する事になる。僕はアリシアと一緒に部屋の中に入る。するとそこには一人の男性がいた。「父上がお前を呼んでいる。付いてこい」と言われ僕とアリシアはその男性の後に着いて行く事にしたのである。僕達はその後、応接間のような部屋に案内され、僕はその部屋の椅子に腰掛けると「初めまして勇者様。私の名前はロイドと申します」と自己紹介してきたのである。僕も彼にならって「はじめまして。僕は勇哉と申します。こちらの女性はアリシアと申します」と答えるとアリシアが「よろしくね。勇哉」と僕の隣に座るのである。僕はアリシアが近くに居るせいか緊張してしまう。すると、アリシアの父であり、僕の祖父にあたる人物が話し始めた。

「お二人共良く来てくれました。私の名を知っておりましたか。それでは、話は早いでしょう。貴方のお母上はお元気ですか?」

と聞かれたのだった。僕は「お義母さんは僕が10歳の時に病で亡くなりました」と伝えると

「やはり、そうでしたか。それで、お母上の最期はどのような様子でしたか?」と尋ねられたので僕は「いつも通りの優しい表情でした」と答えたのだ。すると、彼の口からは「そうでしたか」と呟くように答えたのである。僕とアリシアは黙ってしまったが「では、本題に入らせて貰います」と言ってきたのである。その内容は僕達を呼び出した理由は一つだけだった。

「貴方の持っているスキル「固有能力」の事をもっと教えて欲しいのです。もし良ければ私の息子と戦ってくれませんか?」と頼まれたので僕が「はい。分かりました。戦うぐらいであれば問題ありませんが、僕は戦いが得意という訳ではありませんので怪我しても知りませんよ」と答える。

するとロイドさんは「私としては息子の成長の為には、勇哉様にお手合わせ願うしかないと思ってお呼びさせていただきました」と言ってくるので「そういうことならば、分かりました」と答えると、ロイドさんに訓練所へ連れていかれたのである。そして僕が連れて行かれた場所は広い空間であった。その場所の中心には、僕の知らない男の子が立っており僕を見つめてくる。するとアリシアは「あちらの方は勇者様の血縁者で名前はレン様です」と僕に耳打ちしてくれる。僕は改めてその男の方を見ると、僕は目を奪われてしまいそうになる程の美しい顔立ちをしており一瞬見惚れてしまうのだった。しかし、僕の視線に気が付いた彼は僕の方へ歩いてきて、僕の顔を覗き込んできた。僕は慌てて視線を外し、僕は彼を観察してみる事にした。身長は175cmほどで年齢はおそらく20歳ではないだろうか。

髪の毛の色は黒に近い紺色である。肌の色が白くてとても整った顔立ちをしている。僕がそんな事を考えていたら

「おい!そろそろいいか?」と声をかけられ、彼が構え始めたのである。そこで僕も彼と対峙するのだった。

僕が今対面している相手はセイレーン王国第三王子である。僕と同じ16歳のようで僕よりもかなり大人びている雰囲気を持つ人物である。そして僕は今、彼と対峙している。

そしてお互いの準備が出来たところで僕は「それでは始めましょう」と合図を送ると、戦闘が始まったのである。まずは僕の聖剣を抜いて相手の出方を窺うことにする すると相手は突然、動き出して「炎」を発動させる。それは僕が「炎球」と呼ぶものである。その攻撃をかわして僕は

『勇者の能力』を使用する。この能力は僕の中のもう一つの力が発現するものなので、この力は「勇者の力(極)」の一部の力にすぎない。

そして「勇者の力」の使い方を教えてくれた「彼女」を思い出すのだった。彼女の名はアリアと僕の中で眠っている「女神」なのだ

「勇者様は、まだ覚醒されていないだけなんですよ」と彼女は僕に告げるのだった。

勇者として目覚めた僕は、もう一人の人格が目覚めるまで待つしかなかったので今は、その時が来るまで、ただ待っているだけでは無くて、自分の力を向上させる為に鍛錬を続けている。そのおかげで少しずつではあるが勇者の力に馴染み始めているような感覚はある。しかしまだまだ使いこなせてはいない状態だ そこで僕は、僕に向かって飛んできている「炎球」を避ける為に剣を構える 僕は剣を振り下ろして、炎を切り払った しかし切り払う事は出来ずに僕も「火」の属性に耐性を持っている筈なのだが「火」の攻撃を受ける事になった そこで僕は自分の持つ聖剣で攻撃が当たらなければ問題はないと自分に言い聞かせたのであった。

それから僕と相手の距離が離れ僕は、再び剣を構え直し今度は僕が先に動く 僕は相手に近付きながら

『勇者の攻撃スキル』を使い僕は聖剣の一撃を相手に放つが、避けられてしまい僕は更に接近して連続で斬りかかっていくがなかなか当たることは無かった。しかし、相手が回避行動を取り続ける事で僕は相手を追い詰めていったのだ。その時に相手は僕が放った攻撃のタイミングに合わせ、一気に懐に飛び込んできて僕の腹部めがけて強烈な拳を突き出す体勢になっていたのだ 僕がそれを察知してから避けようとした時「ドクンッ」と僕の中にある何かが疼く 僕の中に潜むもう一人の僕から「早く力を使え!」と指示が出る 僕は咄嵯に

「勇者の特殊能力 」を使う事にした その能力とは「全能力」と

「攻撃力強化」の二つが発動したのである それにより僕が持つ能力が強化されていく そこで僕は聖剣を握りしめ「勇者 斬撃 二刀流 」を使用し、僕は右手の聖剣で「薙ぎ払い 」

左手の聖剣で

「切り裂き 」を放った するとその瞬間に僕の身体から膨大な魔力が溢れだし僕はその魔力をそのまま敵にぶつけたのだ その瞬間「グハァ!!」と悲鳴をあげて吹き飛ばされたのである。僕は直ぐに立ち上がり、敵の様子を確認したが気絶していた為僕は「ふうっ」とため息をつくのである。

僕の戦いが終わった事を知らせにアリシアがやってきて

「勇哉大丈夫?私、見てたけど、あの人強すぎでしょ。でも勇者様が勝てたのは、凄いよね」と僕の隣に来てくれたのだ。それからロイドさんが僕のところにやってきた。そして、

「息子が迷惑をかけてしまった。許して欲しい。君の強さは息子が想像していた以上の強さだったという事が分かったから、私は満足だよ」と息子さんは「またいつか勝負してくれよな」と言って訓練所から出て行ったのだ。それから、僕達は応接間に戻ろうとするとアリシアの父親が待っていたのである。僕はその人に挨拶をして アリシアと一緒に部屋を後にしようとしたのだがその人が僕達に

「今日は疲れただろうから部屋でゆっくり休むと良い」と伝えてきたのである。僕はそれを聞いて、アリシアと部屋に戻り、少ししてから、僕達も眠りについたのである。

そして僕は朝になると「アリシア起こさないように部屋を出る」と、その前に僕はアリシアのお父さんに「アリシアに宜しくお願いします」と言い残すと僕は一人で城を出ていったのだった。

「魔王城」へ向かう途中僕は道端に生えている草花を見ながら、ゆっくりと歩いていた。そのせいで僕は何度も盗賊に見つかり襲われそうになったのだが、その都度撃退していくのである。そんな事を何度か繰り返しているとようやく目的地に到着したが僕はその城のあまりの不気味さに怖気づきながらも何とか勇気を出して中に入ったのである。中に入ると大きな門があり、僕は、そこに立っている衛兵に「僕は勇哉と申します。アリシアさんのお母さんと約束しているのでアリシアさんに面会したいんですけど、よろしいでしょうか?」と言うと衛兵は「えぇーと君は、アリシアお嬢様のお友達かい?」と聞いてきたのである。すると僕は「いえ違います。僕は、アリシアちゃんの婚約者なんですよ」と伝えると衛兵は驚きながら僕に「それは大変失礼致しました。すぐにアリシア様にご報告しに行きます」と言って慌てて城内に戻っていったのだ。そして僕が城門の外で待っているとしばらくして、先程の衛兵が戻って来て「今ならアリシアお嬢様とお会い出来そうですよ。では中にどうぞ入ってください。あと私の名はカオルといいます」と自己紹介をしながら僕に城内に入ってくれるように促してきたのである。僕は彼に案内されそのまま城内へ入っていくのであった。するとそこには長い廊下が続き沢山の部屋が存在していた。僕はとりあえずこの場で一番偉い人を尋ねようと思ったので「一番偉い方はどちらに居られるかご存知ですか?」と聞くと カオルさんは僕の言葉が意外だったのか「はい?今何と申されましたか」と言われてしまった。そこでもう一度同じ事を言うと今度は信じられない表情になりながら、この国の王女様が居るという場所へ案内してくれた。その場所は謁見の間のような場所で、僕は恐る恐る扉を開けると、玉座にはアリシアが座っており、僕を見るなり

「勇哉遅いよ!何処に行ってたのよ!!︎」と言って僕の方に走ってきた。

僕にはなぜアリシアが怒っているのかさっぱり理解出来なかったので僕は困惑しながら「いやちょっとそこまで行ってきたんだよ。そしたらね色々あってここまで来れたんだ。それでさ、聞きたいんだけどどうしてアリシアはここにいるの?僕が聞いた話では確かこの国に囚われていたって言ってなかったっけ?」と疑問を口にしたのだった。僕の言葉に何故か、その場の全員が「はぁ〜」っとため息を吐いていたのである。

僕はそんな光景を目の当たりにしても未だに意味が分からず頭に疑問符を浮かべるのであった。

僕はアリシアに説明を求めた。

しかし、僕はまだ完全に勇者として覚醒しておらず力が弱い事もあって記憶が一部欠落しているらしく分からないらしい。僕は「う〜ん」と考えているうちに一つの可能性が浮かんできたので質問してみることにしたのだった まず最初に「もしかして、僕はアリシアを助けに来た勇者なの?」

僕が、この質問をした時周りの人たちから、僕に対して

『なんで、そうなるんだよ!!』

といった言葉を浴びせられた すると、一人の少女が「まあまあ、皆落ち着きなさい。確かにその可能性はあるかもしれない。勇者殿が目覚めた時の能力の事も考えておかなければいけなくなる。まず、勇者の特殊能力は、勇者が望めば、いつでも使える筈だからね」と言ったところで

「そうです。勇者様がこの世界に降り立った際に「神」から勇者として目覚めると同時に、特殊能力が与えられるはずなので、まだ目覚めてないと判断出来るのではないのでしょうか」とアリシアが僕の意見に同意してくれて僕の中で少し希望が見えた気がしたのだった。しかし僕の目の前で話していた女性が「勇者殿の能力については今はいいだろう。とりあえず、勇者が目を覚ましたのならこれからの話をする方が先だ。」

と僕を勇者と断定しない理由を話し始めたのであった。その言葉を聞いた僕が「僕は勇者じゃないよ。僕はアリシアと結婚する男なのであって」と伝えるとまた「お前なに寝ぼけたこと言っているんだよ。」

と呆れられる。

僕は本当に勇者じゃ無いと言うと「君の名前は勇哉で、間違いは無いよね」と確認されたのだ。その問いに対して僕は

「もちろん僕の名前が勇哉なのは間違い無い。けど僕は勇者では無いし、勇者の能力を受け継いではいないよ。僕の中に潜んでいるもう一人の僕が持っているから、その能力は僕では無いもう一人の勇哉が持っている」僕がそう言うとアリシアの母親が僕の言葉を聞いて、考え込みながら「勇哉さんが勇者では無くて、もう一人の勇哉様が勇哉さんの体を持っている?どういうこと?」

と頭を悩ませていたので僕もそのことについて考えているとあることに気が付いたのである。それは僕がアリシアの母親の言葉を聞こうとする前に、アリシアが僕に向かって、

「私が教えてあげる。私は勇者の力を引き継ぐのが、本当は勇者である私ではなく、その「もう一人の勇哉」だったの。だけど彼は自分の命を引き換えにしてまで、私のお母さんを救い出そうとしてくれた。だから私は彼を責めるつもりはないわ。」

と言っていたのだ。それを聞いていた僕の母親は、僕の目を見てから僕の方に手を伸ばし僕の身体に触れようとしたのだ 僕が咄嵯に自分の身体から「離れろ!!」と言ってしまい、アリシアの母親の手は空をきったのであった。しかし、アリシアが「違うよ、お母さんはただ触れようとしただけだよ。そんな事より、勇哉君が勇者の力を扱えないのは多分だけど、「勇者の心」が欠けてしまっているせいかも、だって勇者の記憶を失っているんでしょ」とアリシアが僕に言ったので僕もそれに同調したのだ

「うん、僕もそれは思っていたんだ。アリシアちゃんのお母さんの身体に触れた時に僕の中にある勇哉の記憶が一瞬蘇ってきたような感じがしていたから、きっとそれが僕に力を与えてくれるのだと思う」

と僕はアリシアに伝えた。アリシアは僕の返事に納得してくれて「やっぱりそうだよね。それなら今から「聖剣の儀」を受けに行くよ」と伝えてきたのだ。その言葉を聞き僕は少し戸惑っていたのである。

そして僕達が移動をしようとした時、僕のお腹が鳴ってしまい、その音を聞いた僕は顔を真っ赤にしていたのだった。

「はははっ君達は面白いな。よしっ昼食にしましょう」とアリシアの父親が言い出し、食事の準備が始まったのだ。そして準備が終わった頃には僕はお昼を食べ過ぎてしまい満腹になってしまい、僕は少し動けなくなっていたのであった。

僕達は食堂でお話をしている最中に、僕はどうしても気になっことがあったのでアリシアのお母さんに質問することにしたのである。その事について聞いてみると「貴方達のお母さんと、私の母は友人なんですよ」と意外な事実が判明したのである。僕とアリシアはその事を聞いて驚いたのであるが 僕達は食事を終えると直ぐに「アリシアのお父さん」の部屋に集まって僕達も「儀式」を受ける事になった。

僕は「えっと僕は「勇心」を持つ人ではないですよ。そんな僕でも儀式を受けても問題ないんですか?」と聞くと

「えぇ大丈夫ですよ。貴方の「心の器」は間違いなく広いと思いますので安心して受けてください」

と返ってきたので僕は安心したのであった。僕はアリシアと一緒に部屋を出るとそのままアリシアと「儀式の間」へと向かったのである。そこにはアリシアの両親と僕と同じぐらいの少女がいた。僕はその人物の顔を見ると僕の事を凝視しながら近づいてきたのである。

僕は彼女に見つめられている事に耐えきれずに、僕は思わず「どうしたの?僕の顔に何か付いている?」と質問してしまっていたのだ。彼女は何も言わずに僕の身体を見ているのだ。彼女の目はまるで獲物を狙う猛獣の目のように見えてしまう程に僕は怖かった。そんな視線に晒された状態でしばらくすると「お前、まさかあの時の子供なのか?」と聞かれた。僕は彼女に対して何の事かさっぱり分からなかったので

「あーそういえば君は何処かで見たことがあると思っていたんだけど、確か君がこの前言ってきた村の子供達の一人だったかな?僕に村を出て行けとかって言ってなかったっけ?それと君の言ってる意味が分からないんだけど? あと僕と君の関係ってなんだ?」と質問してしまった。その言葉を聞いた少女はいきなり怒り始め「私は覚えていないだと!!お前の村は、この前の戦争で焼け野原になってしまったはずだ。その時に村人は全員殺されたって、だからお前が生きていたって不思議ではない」と言い出すのだった。僕はその話を聞きながら疑問を抱いていた。なぜなら、僕は「村を滅ぼされてなんかいない」からである。僕が住んでいた場所は王都からはかなり離れた場所にあって、僕が生まれた時にはもう「魔物のスタンピード」が発生していて王国は対応しきれなかったらしくて、僕たちの村にも大量の魔物が襲ってきてしまったらしい。そんな状況下の中でも僕の家族だけは逃げ延びていたのであった。それからしばらくして僕は家族を失い孤児として暮らしていたのである。

僕は「僕はその戦争に参加していなくて生き残ってるんだよ。確かにこの前アリシアちゃんが話してくれた内容とは少し違ったかもしれないけど、僕はその生き残りだよ。」と伝えると

「うそだ!!私はお前の家族を殺してなんて居ないし、私が殺してやる」と突然言われてしまったのだ。

「どうして僕を恨むの?それに、僕を殺した所でなんのメリットもないと思うんだけど。もしかして僕のことを好きだとか、そうだったらごめん。アリシア以外の人は僕のこと好きになってくれなさそうだもん」

と僕は少女の言動の意味がわからず、つい口が勝手に動いてしまったのである。その言葉を聞くと少女は僕に抱きつき

「嘘じゃない。私も貴方のことが好きよ」と言われ僕は少女に対して「僕はアリシアのことが好きなの。だから君がなんと言おうと僕の恋人になることは出来ない」

と言うと

「それでも良いの。私は貴方のことを愛しているの。貴方がアリシアさんのことが好きだとしても構わない。ただ私のことも見てくれないと絶対に嫌」と言って泣き出したのである。そんな少女に僕は戸惑い

「じゃあとりあえず名前を教えてよ」

と質問すると少女は自分の名前を告げた。その言葉に僕は聞き覚えがありその名前に違和感を覚え

「あー確かに、僕の記憶が正しければその通りの名前は僕の記憶にあるよ。君の名前は『ミル』だったよね?」

そう僕が言うと彼女は涙を浮かべながら嬉しそうにして

「そう、そうよ。私の名前を覚えてくれていたんだね。嬉しいよ」

そう言った後に僕の頬を軽く舐めたのだ。僕はその行動に驚きつつ「くすぐったいな。でも僕の記憶違いかもしれないからとりあえず自己紹介をしてもらえますか」

僕は彼女にお願いする

「いいよ私はね、名前はミリーだよ」

彼女が僕の耳元で囁いた言葉を聞いて僕は完全に思い出したのである。それは幼い頃、僕がまだ5歳ぐらいの時に僕は森の中で「迷子」になり一人寂しく泣いていた。その時に助けてくれた女の子が目の前に居る女性でその当時は僕と同じくらいの背格好だったが今では僕は大人の男になっていてその当時の彼女と僕にはかなりの身長差が生まれていたが、僕は彼女の事を思いだし、その事を伝えたのである。僕は、その事を話すとミルが涙を流しながら喜んでいたのであった。その後に僕は、自分の事について話をしたのであった。

そして僕は、ミルに「僕は今度、アリシアと結婚するんだ」と伝えると、「じゃあ今日で恋人関係は終了で、これから夫婦関係な」

とミルが言った事に僕は「ちょっと待ってくれよ。結婚はまだしていないし、まずアリシアとまだ出会ってから一週間しか経ってないから、もう少しお互いを知ろうよ」

と僕はミルに言うと「そう言えば、お前の村にアリシアちゃんみたいな美人な子がいて、その子と結婚したのか」と僕の過去を知ってか知らないかわからないが、僕の初恋の相手アリシアの名前を出されたことで僕が動揺してしまうと

「ふぅん。やっぱり私の考えは間違っていなかったようだね。お前もやっぱり女が好きな人間なんだな」と、からかわれてしまい僕は「からかわないでくださいよ」と恥ずかしくなりつつもなんとか平常心を保つ事に成功した。そして、その日の夜に僕は、アリシアに自分の過去の事や今の僕達の状況を説明してから僕とアリスで寝ることにしたのであった。アリシアは何故か不機嫌な顔をしていたのだが、僕達が眠りにつくのに時間はそんなにかからなかった。僕達は朝起きると僕達は、食堂に向かった。そこには「聖剣の儀式」が終わって戻ってきていたミルと僕と同じぐらいの女性の人がいたのだ。

「勇哉様。儀式が終わりました。これで貴方は勇者の力を手に入れられました。後は、魔王を倒すだけとなりました」

「え?僕が、その儀式を受けたら勇者になったの?」

「はい。勇哉様。儀式は成功です。貴方が魔王を倒して頂ける事を楽しみにしています」

その言葉を最後にその女性は僕の前から姿を消したのであった。そして僕とアリシアとミルが朝食を食べ終わった時に僕達を呼んで来た人がやって来たのである。その人物は昨日出会った少女であった。その少女から

「皆さんおはようございます。勇者の儀が無事に終了したのでお伝えしたいことがあります。先ほどこの国の王様と話し合いをして、あなた方を我が国の王城までお連れするように頼まれたので一緒に付いてきて下さい」

と言われた僕は、いきなりの展開で驚いていたが僕とアリシアとミルの三人は少女の案内に従い王城に出発したのであった。王城の城門の前に着くと僕たちはそこで待機しているように言われる。それから数分すると豪華な服を着ている男性が僕たちの前に現れたのであった。

そしてその男性の言葉を聞いた僕は驚いたのである。何故ならこの男性はこの王国の現国王陛下だったのだ それからこの国は魔族との戦争に勝った事、そして次の王を決めるための戦いが行われる事が伝えられたのである。

僕はいきなりの事だったので戸惑っていた。

僕とアリスは「王」の執務室に招かれて王と二人っきりになっている。アリシアとミルは「勇者の宴」が終わるまでは、ここに滞在して貰いたいと言う申し出を受けて現在王と二人で会話をしている最中である。

王との話は「今後の僕達の行動についての話」である。

まず最初に王の方から「勇者」と認定された者達を「召喚」し、その中から一番能力値が高い者が次の王となると言う話を聞いた僕は正直に答えると僕はその王になるために呼ばれたのだろうかと思い、質問をすると 王は「違うぞ。君達を呼び出したのは他でもない、勇者となった君達にこの国の騎士になって欲しいと思って、その交渉のために君たちをここまで呼んだのだ」と話す。それならば僕が答えるべきことは「はい」である。そう考えた僕は「分かりました。それで僕たちに騎士としての仕事の内容はどのような物ですか?」と王に質問をしたのだ。すると王は

「そうだね、君たち二人は特に何もする事はないね。ただ他の人達とパーティーを組み冒険者として仕事をして貰うのがメインで、後は他の人と変わりないよ」

と王が言ったので僕は安心したが、アリシアは少し不安げにしていたので

「大丈夫だよアリシア。この国がそんなに悪いことをするような国だとは思わないから、何かあったとしても僕がアリシアを守るよ」と優しくアリシアの頭を撫でると

「うん、わかった。ゆうくんを信じてるからね」

と、アリシアが僕に抱きついて来て僕の顔を見てくるのだった。そんな二人のやりとりを見た王が少し羨ましそうな表情をしていたが、すぐに気を取り直し「では王の間に移動しよう」と言うのだった。

僕とアリシアが謁見の間の中に入ると、そこには既に何人かの男性陣が集まっていたのだ。

その中に居た僕が見覚えがある人物がいたのだそれは僕の幼馴染みでもある

『水瀬咲耶』の姿があったのだ!その瞬間僕の脳内に浮かんだ単語それは

『修羅場展開!』である その言葉の意味は簡単に言うなら『浮気現場』である!!僕は瞬時にこの場面をどう乗り切るかを考えていたのだ。だがここで一つ問題が浮かんできたのだそれは『この国に居る限り逃げれない』という現実だ そう考えるとその問題に対して一つの解決策が思い付いたのだ。それは、『アリシアとの結婚指輪を渡す』ということだ。しかしこれをするとなると必然的にプロポーズになってしまうのだがこれはもう仕方がないことなので「アリシア。ちょっと良いかな?大事な話が有るんだけど、僕と一緒に来てくれないかい? 」

とアリシアの手を掴み僕たちは一旦部屋の外に出ることにしたのである。

僕はアリシアを連れて部屋から出たあとに僕はポケットから箱を取り出してそれをアリシアに渡したのだ。するとアリシアがそのプレゼントの中身を開けると、そこにはアリシアと僕の左手薬指の大きさに合わせて作ったペアリングが入っていたのだ 僕は「結婚してくれないか?」とアリシアに伝える するとアリシアの目からは大粒の涙が流れ落ち

「はい」と僕がプロポーズを受け入れてくれアリシアと婚約することができたのだった。

僕が部屋に戻ってきたと同時に アリシアが泣きながら 僕に抱きついてきたのだ。その様子に王は一瞬驚いていたような顔をしていたけど気にせず僕は王に話をしたのだ

「勇者様方がお戻りになったそうですな?それにそちらの御嬢さんとは婚姻なされたようですね」

王はそう言うと話しを切り出し本題に入る事になったのだ、そしてその内容としては僕の予想通り、魔王が復活してしまいこの国でも戦いが起きてしまい王城でも兵士の育成をするべく勇者を召喚して力をつけてもらう事らしい。その為僕には騎士団長を務めて欲しいと言う事で僕は了承したのである その後僕はアリスに話しかけたのだが何故か様子がおかしい。その異変に気付いたのか王が心配してきて僕は「すいません。何でも無いですよ」と笑顔を見せると 王は「何かあれば私に相談しなさい」とだけ僕に言ったので僕は「はい」と答えた。その会話を終えた後に僕は、王から貰った剣を手に取ると僕の体の中に流れ込んできた情報からすると

「聖剣:アルティミス(神速)攻撃力+1000、スキル「光」「闇の加護」が発動できるようになる。また装備時に敏捷力が1割上昇する効果が付く」

と言うものであった。この説明を見て僕は、僕のステータスを確認すると、この世界に来たときから比べたら大幅に上がっている事を確認した。

ちなみに僕は、ステータスを見るときは念じると見ることが出来ると聞いているので早速見てみることにすると

「ステータスオープン!」

橘勇哉 16歳男

勇者 職業:騎士レベル315

(体力∞、筋力5000×0/1000000→60000000/6億、耐久力10000×100万、魔力500000×2/5億500万、俊敏力60000/2千兆、運100/100×999999

称号:勇者

スキル:全知 経験値20倍、限界突破 経験値転移 異世界言語理解ステータスオールアップ」

これが僕の今持っているステータスで僕はこの数値を見て正直なところ驚き過ぎて声も出なかったのである。

その僕が出したステータスの数値を見た王様は僕に

「君はいったいどこからそんな数値を出しているのかね? そのステータスはこの世界ではかなりの強さになると思うのじゃが」と聞かれたので僕は正直に

「僕もわからないんですよ。この数値になったのはこの世界に来ている途中でこの聖剣に吸い込まれたんです。」

と答えると王もアリシアもミルまでも信じられない顔をしていた。

そんな事を話しているうちに 僕が持っていた「聖剣アルティミス」に変化が起こったのである。剣から光の球のようなものが飛び出て剣から飛び出し僕の周りを囲むようにして動き回るのだ。

「聖剣が君を選んだみたいだね」と王が僕を見ながら話すので、僕はこの不思議な光景を眺めていた。

それから少し経ってから光が僕に近づいてきて僕の中に入ってきた。その瞬間に「僕の中に入ったか。これで君と私の絆は結ばれたわけだ」

と言う女性の声で聞こえたのである。そして僕の中にある能力の一部が分かった。それは『聖属性の適正』である。だがこの能力を使ってどうすればいいか分からなかったのでとりあえず今は、後回しにすることに決めたのである。

それから王様と僕は、他の人に紹介するので付いてきてほしいと言われ僕は王の案内のもと謁見の間に行ったのだ。

僕が謁見の間に入って最初に見たのは、先程王と話をした時にいた「国王」の他に三人の人物がいた。

まずは僕から見て右に立っている人は身長が170ぐらいある黒髪の青年だった。

その人物は

「俺は神崎正宗。よろしく頼むぜ」と言い放つ。

次は僕の左側に居る人物なのだがこの人物はとても綺麗なお姉さんである。

そして年齢は20代後半の金髪ロングの女性である。名前は『カレン』

最後に一番右側に立っていたのが僕と同年代くらいの茶髪の少年であった。その少年は背が小さく小学生にしか見えないのだが、実は16歳でこの王国の第二王子であるそうだ。名前を聞いてみたが僕と年齢が近いこともあり、普通に接して欲しいとの事であった。

僕は挨拶を終えるとカレンさんとカレンが王に向かって話し掛けた。

その内容は僕達が冒険者になりたくて王城にやって来たと言うと、王は

「冒険者に成りたいだと!?君達は自分が何をしているのか分かっているのかね?」とかなり怒られたが僕が冒険者をやるのは当たり前の事であると説明したら何とか王を納得させる事に成功したので、王はアリシアに

「そちは確か冒険者が大好きだったな、アリシア。お主達をこの城の中で冒険者になってもらう為の特別クエストを与える、その内容は『王国内にあるダンジョンを踏破すること』それが今回のお前達に与える特別任務だ」

と話すと王は

「君たち二人が今回召喚された中でも最強クラスの戦力を持つ勇者であることは間違いないだろう。君たちが本気で戦うと恐らく国が崩壊するかもしれないのだ」と 真剣な顔をしながらそう言い切ったのだ。僕は

「分かりました。これから頑張っていきますよ」

と言うと王が満足そうにしているのだ。するとカレンは王に質問をして

「王様私から少し提案があるのですが良いでしょうか?」

と言うカレンに対して王は、何を言い出すのかと思ったらしく少し不安そうにしていたのだ。それを感じ取った僕はカレンが王に提案したことを聞くために王に質問したのだった。その内容とは

「僕達のパーティーには魔法使いが二人いるんだけど、その子達には魔法学園で勉強して貰いたいと王様に思うんだけど、どうかしら?」と聞くのだった。その言葉を聞いた王は最初は驚いていたがすぐに落ち着きを取り戻し 王としての考えを口にするのだった

「うむ、君の言い分も理解できるが君たちにそこまで負担をかける訳にも行かないだろう。だからこの国で一番大きな学園を紹介しよう。そこに行って貰って、そこで勉学を学んでほしいと思っているのだか」と王に言われてしまったのだ。しかし、カレンはその言葉を聞いて

「大丈夫ですよ、その二人は既に私たちの仲間なので。その仲間が強くなる為には、魔法が使える環境が必要不可欠です。ですから是非そこの紹介をお願します。そして私たちはその学園に通いながら魔王討伐の為の冒険者活動をしたいと思います」とカレンが言うと 王は「そう言うなら許可しよう。その二人を頼んだぞ」と言うので

「はい」と言ってその場を離れようと歩き始めると アリシアの体が急に光り出し始め

「ゆうくん」と言うと僕は振り返った すると僕の目の前に居たアリシアは突然姿を消したのである

「どう言う事?どうしてアリシアは僕の目の前から消えてしまうんだ?」

するとカレンが「アリシアちゃんには別の空間に移動して貰ったの。そのアリシアの体に私が魂を入れたから」と言ったのである。すると王が僕に対して

「すまない。彼女は今この世界に必要な人間なのでこの世界の人ではない者には任せられんのだよ」と申し訳なさそうな感じで言うのだった僕はそれを聞いていたからこそ何も言えなくなってしまったのであった。すると アリシアの身体に入っていた「神魔の加護」を持った人が カレンの前に立つ

「貴方がこの世界を管理している神魔の一人なのですね。私はこの世界を滅ぼそうと企んでいた神界を追放された神の一柱です。今回は私の力不足により神界を追放されてしまい、その結果が今の現状になってしまいました。だからこそ私はもう一度やり直して今度は絶対にこの世界を平和にして見せると決めたんです。ですがその為には力が足りないので、私の力が封印されていた神魔の力が必要になったんです!私の力を貴方に渡せば私は自由になれます、お願いします、私の力を受け取ってください!」と言うと その話を聞いた王は慌てふためき僕に助けてくれと目で訴えてきたのだ、それに対して僕は僕自身も何が起きたのかよく分からない状態で何と答えればいいのか悩んでいたのだ。すると王は僕の服を引っ張り「助けてくれ!」と言うのだ

「ちょっと待ってくれ!俺も何が何だか分からなくて頭が回らない状態なんだからそんな事を言われても」と言っている最中も僕の体は勝手に動き出していて「おい止めろー!!!」と叫ぶが一向に止まる様子もなく、僕の右手が神の手に変わっていくと

その手の中には一冊の本が収まっており僕はその本を取り出すとページをペラペラと捲っていくのであった。僕は最後の方を見て見るとそこには 【スキル:無限魔力】と書かれているスキルを見つけたのでそのスキルを手にしてみると、次の瞬間に 僕の中にあった膨大な量の魔力が一瞬で消えた感覚があったのだ その様子を見届けた「神魔」と名乗る女性は僕の元から離れるのと同時に、この場から消え去ったのだった。僕が「この力は凄いな」と思いながらも自分の体を確認すると僕の意識はここで途切れた。その後どうなったのか僕自身全く分からないまま、気が付いた時には城の玉座の間にいて僕の傍にいたはずの「勇者」や王と話をしているのを見た僕は、僕自身が今どういう状況なのか分からずにいた。そして王から

「勇者様もご協力感謝します」と僕に向かってお礼を言うと僕が勇者だと認めた発言をしていた。僕は勇者なんかじゃないと言いたかったのだが、僕が口を開ける前にアリシアとカレンが僕の横に並び立ち僕が本当に勇者なのだと言い張っていた。アリシアとカレンは「僕はこの世界に召喚された勇者だけど、この世界に危機が訪れたときにだけしか召喚されないはずだ」

「それでも今はこの国の救世主なのだ。だからその事実は変えられるはずもないだ」と王は言うと僕は「仕方ないか」とため息をつくしかなかったのである。

それから王が「今日は色々と疲れただろ。もう夜遅いから明日から学園で頑張ってもらいたい。ではまた会おう」

「分かりました」と返事をして僕は王城を後にするのであった。そして、その晩の僕の部屋は一人だけだった。僕がベッドで寝ようとするが僕の頭の中は色々な事が駆け巡りすぎて眠れない状態だったのだ。そんな中「ジグニール」と頭の中に女性の声が聞こえてくる。その声の主は、この前僕の中に入ってきた女性のようだった。僕は周りを見渡すが、もちろん僕以外に誰もいなかった。

僕は、とりあえずこの不思議な出来事を受け入れていく事に決め、これからは、この世界で生きて行く覚悟を決めた。そして、僕の中にある能力の中に、僕以外の人に憑依出来る「憑依の能力」があることが分かったので、僕は早速試してみることにした。僕は自分の腕を枕代わりにしながら目を閉じ精神を集中させる

「我に憑依したまえ、そして僕を手助けしてほしい」と念じながら待っていると僕の頭に痛みが走ったのだった。そして僕は気を失ってしまったのである。

それからどれぐらい時間が経過したのか分からなかったが僕の目が覚めると 僕に「憑依した」女性が僕に向かって話し始めたのである。

「あなたに宿りました」

「ありがとうございます」と僕は素直に感謝を伝える

「まず自己紹介をさせてください。私は、あなたの魂の一部から生み出された存在、いわばもう一人の「勇者である神崎正宗」です。」

僕はこの女性の言葉を聞きながら「なに言ってんだ?」と思ってしまうのだった。

するとこの女神様は、この世界の説明を始める。

この世界には、「魔物」と呼ばれる怪物が存在していて「人」を襲うのだ。

それを阻止するには「魔法」、「剣技」を駆使して戦うことで「魔法耐性」「物理耐性」を得ることが出来る。しかし、いくら「魔法耐性」「物理耐性」を得たところで、魔物の持つ圧倒的な攻撃の前では無力になるのだと言う事らしい。そこで必要になってくるものはやはり「魔法属性」を持つ武器や防具などのアイテムでありそれを手に入れるには当然ダンジョンを攻略しなければならないと言うことだと言うことだったのだと言う事を知った。

その説明を聞いているとだんだん眠くなってきたが我慢して聞き続けていた。そしてその次に言われた事は衝撃的だったがその言葉を僕は信じきれなかった。それは「勇者と魔王は、お互いに共鳴しているので出会うべくして出会ったのです。」との事だったので僕は少し不安になり聞いてみた すると彼女は答えを返してきた。その内容は僕達が魔王を倒した後でお互いの存在が必要となれば強制的に引き合わせられるとの事なので

「もし魔王が僕達の敵に回った場合は、倒すと言う選択で良いんだよな?」と聞くと彼女は

「その時の状況次第では、私達は敵対しないで共存と言う方法を取るかもしれません。だからもしもの話なのですが、もしもの話で考えておきましょう」と言う

「そうだな、確かに今考えた所でどうなる訳でもないから、その可能性についても考えるよ」と答えると彼女は安心していたのだ。

そうして僕は彼女に「何かあったらすぐに僕に言ってくれよ」

と言うと彼女は僕に対してこう話す

「貴方はこの世界を救う勇者様なんですからもっと自信を持って行動してください」と言ってきたのだった。

しかし僕は正直そんな大役を任されるとは思っても見なかったので、かなり困惑してしまったのだ。しかし彼女が僕には必要な存在であるという事も理解できたので彼女の言葉に従いながら頑張ろうと決意したのである。そう考えていると再び眠りについていたのだ。だが朝になっても目覚めることが無くて アリシア達との待ち合わせ場所に向かっていた時に急に苦しみ始めてしまったのだ。そこで俺はアリシア達を呼び出したのであった アリシアとカレンが部屋にやって来るなりカレンはすぐに治療を開始したのである。しかし治療してもなかなか治らず アリシアは「なんでこんなにも傷が深いの!?このままだと命に関わるわよ」と言うとカレンが真剣な顔をしながら僕の体を調べていた。僕はその様子を見つめる事しか出来なかったのだ。しばらくカレンが調べたあと「ゆうくん、これは呪いによるものだね。ゆうくんには、その人の一番苦しい記憶を思い出させようとするみたいだね。ゆうくんには、辛いかも知れないけどその人が苦しんだ分だけ、ゆうくんの体に負担をかけるから、耐えて欲しいんだ」と伝えてきたのだった 僕としてはこの体の異変が起きる原因を知りたかったので思い切ってその人のことを詳しく知りたいと思った。

「俺にその人の事を教えてくれないか?頼む!」

僕はカレンに対して土下座して頼み込んだのだ カレンはそれを見て慌てていたのだアリシアは僕の姿を見て驚いていたが僕の話を聞くために真剣な態度に変わったのである。

アリシアは僕の目を見てからカレンの顔を見るとカレンにお願いすると言ったのであった カレンはそれに了承し僕の耳元でその人に纏わる事を細かく教えてくれたのであった

「私の名はアリス、アリシアの母親よ 貴方は誰ですか」

と目の前の女性が喋っているのだが僕の口から出てくる声は違う人物の言葉になっていた。

その声の持ち主こそが、今ここにいる勇者なのだ しかし目の前にいるこの女性はどう見ても普通の女の子にしか見えないのに勇者って信じられなかった。だけど実際に勇者なんだから受け入れるしかないか、でも僕自身はどうなったのかと言う疑問が残っていて僕は今どういう状態になっているのか気になったので「僕に憑依した女性よ、僕は一体どうなったの?」と心の中で話しかけてみると僕の中に「私は今この体を借りて話しをしているんですよ」と言われ僕は驚いた この子は僕の心を読めるようだ。この子が「憑依の力」を持っていると聞いたが、どうやら本当のようだなと感づいていたのだった そして僕に憑依した女性は僕の質問に対して回答してくれる その女性の話では僕の中に憑依した事で「僕を勇者にしたて上げる」のに成功したらしくて僕はこれからも「僕の力を借りる代わりに僕の手伝いをして欲しい」とのことだ それで僕はこの世界に危機が訪れると勝手に僕の体が動いてしまうような状況にあるのを知らされたのである それから僕は、アリシア達に「ちょっとだけ一人になりたいんだけどいいかな」と言うと、みんなが僕の身を案じてくれている事がひしひしと感じ取れたので申し訳なく思ったが、今はどうしても一人で居たい気分だったので 僕はアリシア達を説得すると部屋から出ていってもらったのだった。僕は一人になると自分の両手を見た さっきまで僕は自分の体を動かせなかったが今は全く動かせるのを確認出来た この勇者の力で僕はこれからも皆の手助けが出来るなら僕は勇者を続けても良いかもと考えていたのだった だけど本当に僕に「憑依の能力」なんてものがあるのかと思うぐらいに何も起きず僕は普通に過ごしていった そんなある日の事 学園では「体育祭」と呼ばれる行事が行われていて 僕が所属しているクラスと別のクラスでの合同で行う行事だった 僕たちのクラスの競技種目は障害物競争で他のクラスの子と一緒に参加する事になっていた 僕はこの時の為に特訓をしていて「負けないぞー」と燃えていたがその矢先に悲劇は起こってしまった 僕の足がもつれてしまい転びそうになったのを隣の席にいたクラスメイトの子が助けようとしたせいもあって、二人揃ってコースから転落してしまったのである。

それからは二人で先生達の救護を受けて怪我の治療をしていた。

そして先生の話を一緒に受けている最中 突然僕の中に謎の違和感を感じるようになったのだ。

そうして僕達はこの「聖戦大会」を終えることが出来た その後教室に戻るなり、僕達が落ちた後の事を話し合っていた。僕達はコースから外れるとそのまま落ちてゴールしてしまうという仕様で僕達が落下したのはスタート地点付近ではなく ちょうどコースの真下にあった石の上に落ちたようで運が良かったと言われたのだ 僕は「そっかぁ」と安堵の表情を浮かべると僕はこの学園の人達と別れを告げることになったのだった。

「それじゃ、僕はここで」と言うと僕の体は光に包まれたのであった すると僕の中に入っていたはずの女性が出て来て「また会いましたね。私に会えたのに喜ばないんですか?」と話してきたので僕は「えっ?何でここにいるの?君はもう僕の体から出られたんじゃないの?」と質問をすると「まだ完全に解放されてません。もう少し時間があるようです。ですからあなたが私を救ってくれるまでの時間がありませんので早くあなたには魔王を倒してください。そうすればこの世界を救う事が出来るはずです。ですから勇者であるあなたの力を貸してください」と言ってくる 僕はこの子の話を信じてあげようと決め 僕はその子に魔王の情報を求めた するとその子は話し始める 魔王の能力は

「魔王は全ての能力を扱える力」

と言う事だった しかし僕はその情報に引っかかった部分があったので質問をした それは、勇者が魔王に殺された時、勇者は勇者のまま復活するのに何故僕だけは殺されても死なないで済むのだろう?と思っていたので、その答えを聞きたいと思って尋ねようとすると、何故か僕は急に息が出来なくなってしまい倒れてしまった 僕が苦しみ始めた姿を見て、彼女は僕に向かって「貴方は死んではダメですよ。貴方には大事な役目があるんですから。私が貴方を助けたいと思った気持ちを無碍にすると言うんですか?」と問いかけてくるので僕はその言葉を受け止めながら意識を失ってしまったのであった 目を覚ますと、僕はベットで横になっていたのだ。そしてその傍にはカレンの姿が見えると、カレンは僕が起き上がった事に気づくと慌てて「あっゆうくん大丈夫?」と心配してくれたが僕は、その言葉を聞いている途中で僕は眠くなってしまって、眠気に負けそうになっていたので カレンが慌てながらも僕を寝かせたのである その日僕はずっと夢を見続けていた。

夢の中の話ではあるが僕が魔王と対峙をしていて 僕の手には魔王を殺す剣が握られているのだ だがその剣は、魔王には通じていないと言うのに僕は必死に攻撃をしていたのだ だがその行動が無意味だと悟ると僕は、諦めてしまったのだ。

僕はそこで目をさました。

僕はあの時に感じた魔王は本物だという事を感じた 魔王が本物の存在ならば僕の持つ武器が通用しないのも当然だと しかし魔王を倒す為に僕は勇者の力が使えるはずだと信じるしかなかったのだ。そうして僕は、魔王との戦いに備えて体を鍛えることにしたのだった そうして僕は、自分の部屋に居ると「あれ?貴方の体に異変が起こっていますよ。もしかして私のせいかもしれません」と言われたのだ。僕は意味も分からずに混乱していたのだ。しかし、彼女の説明を聞いた瞬間納得した。彼女の話では僕の中に「憑依のスキル」が芽生えたらしくて僕の体が無意識の内に、彼女を救う為に勇者としての力を使おうとしていたのだ その力を使うには彼女の許可が必要だったが、彼女は既に僕の中で共存していた為問題はなかったのだ だから僕は、彼女の許可を得た上で「憑依」のスキルを使った。

すると彼女の能力が、どんどん僕の体に入ってきたのである。彼女の能力を手に入れたことで僕は新しい魔法を使えるようになったのである。僕はこの事をアリシアに伝えると「タクト君、すごいわね。まさか「魔道師」の称号を手に入れるなんて」と喜んでくれたのだ。僕はこの世界に来てから色々と頑張ってきたが この世界の人間として認められたのは初めてだったので嬉しかったのだ。だけどアリシアは何か思うところがありそうな表情をしていたので、僕は彼女に尋ねるとアリシアは「その「憑依」っていう能力を使ってみたいんだけど良いかしら?もちろん私に危害を加えるとかそういう意味ではなくて、私は、この能力で、ゆうくんの体に入り込めないか試してみたいんだけどいいかな?お願いします」と言って来たのだ。僕は「うん。分かった」とアリシアの要望を受け入れることにした。僕は早速アリシアに対して「憑依」を発動させると 僕は僕の中にアリシアの魔力を感じることが出来るようになり「どう?私を感じ取ることが出来たかな?」と言うので「うーん。分からないけどアリシアさんの事を感じられるのは間違いないけど アリシアさんの声が聞けないし触れ合うことも出来ないから不便だよね」と言うとアリシアは僕の考えを否定してきて「そんなことは無いと思うけど」と言う それから僕の体を調べると僕の体を調べ始めるのであった するとどうやら僕の体の中に入って来る事は出来るらしい だけど僕自身には全く変化がなくただアリシアの存在を感じ取れるだけなのだ なので「やっぱり、この状態は、ゆう君の言う通りあまりメリットがないのかもしれない」と言い「とりあえずこの能力は封印するね」と言ったのである。僕はこの状態なら僕の方からも体を動かせるんじゃないかと聞くとアリシアは首を横に振ると、どうやら僕がこの体で動かせるのは僕と「勇者」が認めた人だけで、その人に許可が下りない以上僕自身はこの体を好きに動かすことが出来ないみたいなのだ

「そうか、じゃ仕方が無いな」と残念な気持ちになるのだが、僕自身はこの世界で生きていけるだけの能力は持っているので僕はこの「憑依」を有効活用しようと考えていたのだ しかし僕とアリシアは、僕の部屋から出ていく際に僕の両親とカレンに出会うとアリシアを見て僕の母は「まぁ!アリシアちゃんじゃない。久しぶりだね。元気だった?」とアリシアに話しかけるので僕はアリシアと母との面識があったことを驚くとアリシアは、「はい。おかげ様で。それに、この子とも会わせてもらえましたし、私は幸せですよ」と満面の笑みで答えるのである。そして僕がこの場に居辛くなったのを察すると「では私はそろそろ帰りますね」と言って帰って行くのであった。

そして僕が部屋に戻るとカレンは僕の様子がおかしいことに気づく 僕がアリシアの話をしようとした時カレンは「もしかして、またアリシアと会ったの?」と言ってきたので僕はカレンがアリシアの知り合いだった事を話すと「えっ?アリシアは生きているのかしら?でもアリシアって確か亡くなったんじゃなかったっけ?」と言ってきて「えっとそれは」と戸惑っていると「それはね、この子には特殊な事情があって、今は私と一緒に暮らしているの」と言ってくれるので、僕は心の底から安心したのだ。そうして僕はクロとの訓練を行う事に決めたのであった。

僕は訓練を始めようと思った時にアリシアが言っていた「魔王」という言葉が引っかかり もしかしたら僕の中にある「勇者」の力を使えば、この魔王の能力を扱えるのではないかと思ったのだ そう思った僕はまず自分の中の勇者の力を呼び起こそうとしたが上手く呼び起こす事が出来なかったのだ。そうして困っていると僕の傍にアリシアが寄ってくると

「私に「憑依」を使う許可を出して貰えるか確認してから使用しないとダメだよ」と言われてしまう そういえば、僕は今まで他人の中に自分が入ってしまう感覚が嫌で他人に「憑依」を使用した事は無かった そう思いながら「ごめんなさい。もう「憑依」を使用するのは止めるよ。今度からは、ちゃんと考えてから使用するね」と言って謝ったのである。

そうするとアリシアは自分の頭に手を置くと「じゃ、私の体に触りたいんでしょ?」と言ってくるので僕は恥ずかしさからか顔を赤くしながら「べっ別にそんなつもりないよ」と言うが 僕は正直アリシアと触れ合えなくて少し寂しい思いをしているのでアリシアの言葉に甘えて頭を撫でさせてもらう事にすると、僕は、すぐにアリシアの髪の匂いを堪能してしまったのだ。しかし僕の手が止まった事に対してアリシアは怒ってしまい、その勢いに圧された僕はつい「ごっごめなしゃい」と言うので、アリシアは僕に対して「私の事を子供扱いするんだ」と言ってきてしまったのだ。そうして僕は、なんとか許しをもらうことが出来たのだ。そして僕達は、いつもの修行をする事にする アリシアは、自分の魔法属性を確認するために、僕の魔力の属性を調べる事にした 僕も、僕自身のステータスを知ろうと思い調べることにした 僕は自分の能力を確認していくと僕は光と闇の属性しか持っておらず しかもレベル1の状態だったのだ その事をカレンに伝えると、僕の体の中には、二つの異なる属性が存在していて、その二つの魔法が反発しあって使えないのだろうと言っていた。そう言えば「魔道士」の「魔法創造」の能力を使うためには複数の「スキル」、「魔術書」が必要らしいので「スキル」を手に入れる為に僕はカレンが教えてくれたダンジョンに行くことにしたのである。そうして僕はカレンと共に「スキル」を手に入れようとしたのである。「そう言えば「スキル」を手に入れるための方法は分かっているんだけど場所がどこにあるかわから無いから一緒に探そうか」と言われたのだ しかし僕の方はカレンに手伝ってもらったおかげで「スキル」を手に入れることに成功したのだが、僕にはどのくらいの強さが必要なのかがわからなかったのでアリシアに頼んでみることに決めるとアリシアに頼み僕に合う「スキル」を探してもらおうとしたが、やはり僕と相性の良い物はなく 結局アリシアに頼むとアリシアは、「それなら私が貴方を強化すれば良いじゃない。私だってこの子の力を借りればある程度は戦えそうだから大丈夫だと思うわよ。この子が協力してくれるかわからないけどやってみましょうよ。私もこの子を鍛えてあげたいし、貴方も強くなりたいでしょ?」と聞いてきたので僕は強くなれるならば何でも良かったのでお願いすることにした。

僕とアリシアが街から少し離れた場所で訓練を始めるとシロが僕の元まで来て「我の事も構ってほしいのだ」と言ってきたので僕はシロの頭や体をいっぱいモフることにしてシロと遊びながら、僕は「憑依」を使い僕の体のコントロールを取り戻すことを試みると 僕の体にアリシアの存在が感じられるようになり、僕は「アリシア。僕と一体化してくれ」と願うとアリシアから返事が来る

「いいよ。ゆうくんの体の主導権はゆうくんが握っているけどいいよね。あとこの状態だと「魔法」が使えるんだけど使う?多分今のゆうくんが使える魔法の数は、この世界の人間の中では多い方だから」と言われたのだ。

僕は「使ってみたい」と言うとアリシアは僕の中で「魔法創造」を発動させると「闇」と「風」と「炎」と「土」が使えそうなことがわかったのだ。

僕はこの世界の人間の能力に驚かされると、僕はとりあえずこの4つの属性を覚えることにする まず最初に覚えたのが「ダークボール」である 黒い球体の弾を撃ち放つもので、攻撃力は低いのだが僕の放った「ダークボールを簡単に避けることが出来る存在はいないようだ。

次に覚えたのが、雷系の中級技「ライジングソード」「サンダーブレイド」で敵を斬ると同時に敵に電撃を浴びさせることが出来るのだ。

最後に習得したのが上級魔法で氷と風の合体技でもある「アイシクルブリザードストリーム」という広範囲を攻撃することが出来るものだった。

そしてアリシアに言われた通りにこの世界の人間が持っている能力を確認していくと確かにアリシアの言葉どおりだった。

僕の場合は光以外の全ての基本属性を持っていることが判明したのである それから僕が試したのは「憑依解除」と唱える事で「憑依」状態を解けるか試したのである すると僕の意識とアリシアの体を繋ぐものが無くなり僕の体は完全にアリシアに支配されてしまう。

僕は、

「アリシア。体を動かせないし僕が今アリシアが動かしている僕の体を操っても僕が動かせなくなると思うんだけど」

と言うとアリシアから返事がくる。

「私にはそんな事はできないよ」

と言われてしまうのである。そして僕の体の中に僕の意識が残っていると言う事を知ったので「僕がアリシアの体を支配しようとしても、この世界では僕の意思では体が動かせないという事だね」と言うと「そのとおりよ」と言われるので僕は改めて異世界に来てしまった事を理解していたのであった。

そうして、この世界にやってきて僕は初めて自分の力がどの程度なのかを調べる為「身体測定」を行ってみると僕の基礎数値は異常な程高い事が分かり「ステータス」を開いて確認して見ると「身体能力強化Lv5」という技能がある事が判明したのだった。

僕はこの能力を使って「肉体」を上昇させてみようとイメージして「発動」と心で念じてみると僕の体に衝撃を感じてしまい僕の体は弾き飛ばされてしまっていたので「これは凄い能力だよ」と思うと、

「これなら私の力と合わせて戦えるようになるかもしれないね」とアリシアに言われてしまった。

しかし僕はまだ戦いたいと思える程の戦闘経験がなかったので、とりあえず今日はアリシアとの模擬戦をすることに決めてアリシアとの模擬戦に望むことにしたのである。そして僕の体で戦うので、僕自身が傷つく事はないので、アリシアの体を傷つけないよう気をつけなければと心に誓うのであった。

「では行きます」

と僕に告げる。

そして僕とアリシアの闘いが始まる アリシアが僕に向かって駆け出して来ると、僕は「身体能力向上」で身体能力を向上させた状態で構えて待つとアリシアの剣戟は僕をとらえるが

「なんですかこの子!?この子、もしかすると魔王より強いかも知れません」

と言うアリシアに僕は、自分の「固有術技」を発動させ「魔法障壁」を展開しつつ

「そう簡単に負けられそうにないから全力で行くから本気でかかってきて下さい」と言うとアリシアが少し困った表情を浮かべていたが僕の言葉を信じたらしくアリシアが「魔法創造」を使い僕に対して「憑依」を行い「剣術」で攻撃を行うが 僕にダメージを与えることが出来ずに僕は、

「どうなってるのですか。勇者様」と戸惑っているアリシアに

「僕は今、「魔法」で「物理耐性」を強化してるんだよ。アリシアの攻撃は全て僕には届かない。でも僕の魔法で強化された体で殴ったり蹴ったりすると結構ダメージが入るからアリシアは遠慮しないで僕を倒してもいいからね」と告げると アリシアも何かを感じたようでアリシアの「魔法創造」により「魔術書」を生み出して「スキル」、「火球」の魔法と、もう一つ、 アリシアが「固有術技」である「魔術付与」を発動させ僕の「筋力増加」と「魔術書」を媒介として「魔導」と「魔術」を組み合わせた「固有術技」で「ファイアーアロー」を放つ。その魔法は僕の「魔法障壁」を貫き僕に襲いかかってくるが僕は「スキル」である「魔法反射」と、新たに習得した「固有術技」で「反射鏡」を使い「反射」して返すとアリシアの魔法は僕に襲い掛かり、直撃を受ける。その光景を目にしていたアリシアの体に僕の意識が戻ってくるので 僕はアリシアに「やっぱりまだ早かったですね。アリシアの力を借りて戦わせてもらうつもりだったんですが、僕の体で、あの程度の攻撃を跳ね返せるようにならないとこれから先、生き残れなさそうなので少し本気になっちゃいました。僕の勝ちですよね」

と笑顔で言うと、 アリシアが、その場で膝をついて項垂れてしまったので、僕とカレンとクロが慌てていると、僕達に気付いたアリシアは涙ながら僕達に言う

「すみませんでした。私の力だけでは貴方達の役に立てなかった。私なんて足手まといでしかないです」と言い続ける

「アリシアが居てくれたお陰で僕も安心できたよ。それに今回はアリシアも一緒に戦ってくれたんだからアリシアは僕の仲間なんだよ。僕が助けたかった人を助けるために力を貸してくれたアリシアが僕は大好きだよ。それと僕は、アリシアに、そんな事を言わせる為に訓練に誘ったんじゃないよ。僕と一緒にこの世界を生き抜く為に訓練する為に呼んだんだからさ、そんなに泣かないで欲しいんだけどな。

僕が君に頼んで、アリシアにお願いしたんじゃないからさ、 アリシアに泣き止まないで、笑って欲しかったから、お願いします。」

と僕が必死でアリシアを説得しているとカレンが僕を止めてきた 僕は何故止めるのだろうとカレンを見ると、

「ユウキさん。少し言いすぎじゃないでしょうか?確かにアリシアちゃんが、今回の件で自分を責めているのは事実なのかもしれません。しかしだからと言って、あんな風に、アリシアが、貴方に好意を寄せてくれていたのに。酷いと思います。私も貴方とアリシアが出会った時に何があったのか全て知っているわけではありませんが。少なくともアリシアちゃんは、今のアリシアちゃんは。あなたが好きだと言った、アリシアちゃんですよ。そんなアリシアちゃんに貴女が、アリシアちゃんに、今の言葉を言う権利はないと思います。今の言葉を撤回してください」と僕が、今まで、こんなに怒ってくれた人はいただろうか? と思い返してみたが僕は誰からも怒られたことが無い事に気づき反省をした。そしてアリシアの方を見つめ直すとアリシアは涙を流し続けていたが、顔を上げて僕と目を合わせてくる 僕はアリシアに「ごめんね。確かにアリシアに言っていい言葉じゃ無かったね。

僕は僕の都合でアリシアを巻き込んだのに。僕の都合で仲間に引き入れたのに、アリシアの想いを踏み躙る発言をしてしまっていたよね。

本当に、申し訳ありません。

アリシアは僕にとって大切な人だから、だからこそ。

僕は今の自分の気持ちに嘘をつきたくないと思ったんだ。

今、ここで、言わないといけないって。思ったんだけど、間違ってましたね。僕は、アリシアのことが大切だから。僕はアリシアが好きなんですよ。アリシア。

だから僕のそばでずっと、僕のことを見続けていて欲しいんだけど、ダメかな?」

と僕の心からの言葉をアリシアに伝えた。

すると アリシアは

「はい。喜んで。私を傍においてください。

私はユウくんのことを好きでいます。愛し続けています。だから私を捨てたりなんかしたら絶対に許さないから」

とアリシアは僕に伝える。

「ありがとう。僕を想っていてくれて」

とアリシアに微笑むと アリシアも

「うん。でも私の方が年上なのに子供みたいな対応をしてるの恥ずかしくて死にそうなんだけど、どうすれば良いのかな?」

と聞かれたのだけど僕は、僕にはどうする事も出来なかった。

僕はカレンとシロにも謝罪をするべく頭を下げると、二人は何故か笑いだしてしまう

「あははははっ」

「ふはぁ~

ユウキは面白すぎて。ほんっと面白いわね」

僕は二人が何で笑っているのか分からずに首を傾げているとアリシアが説明してくれる「それはね。シロと私が入れ替わった時とそっくりなんだもん。その時の、アリシアと全く同じだったんだもの」と言われてしまう

「え!? まさかとは思うけど僕とカレンの体でアリシアの体に入ったりしてないよねぇぇ!?」

と僕とクロが聞くとカレンが、にやりと笑うので 嫌な予感がしたのでクロを抱きしめると僕は逃げるようにして部屋から出て行くとカレンが追いかけてきて僕は部屋の中に戻るのである。

「ねえ!待ってよ。逃げなくてもいいじゃんか」と言うのを無視して部屋に入るなり「もう、いいや、今日は僕も寝ます。クロも一緒に寝るから。カレン、布団出してくれない」と言うとアリシアが呆れた顔をしているが僕はそれどころではなかった。僕の中のもう一人の自分、クロとカレンの事がどうしても心配になってしまったので 仕方がなく僕はクロを抱いて布団に入り、すぐに眠りについた。そしてクロも僕が疲れていることを理解したようで、僕の胸の中で静かに眠っていたのであった。僕達はその日、お互いの温もりを感じ合い、お互いに、この世界で出会った新しい仲間との絆を確認しあいながら眠ることができたのであった。

僕とカレンとクロの三人で、これからの旅について話をしながら食事をしていると僕の頭に念話で声が響く。

『ゆうき。わたし、こせいつかえたの』

と念話が聞こえてくる。その念話の相手は、僕の妹である白雪(シラユキ)

で僕の妹の一人で僕をこの世界に送り込んだ女神様の分身でもある。僕の事を心配して定期的に僕の元に来ては「スキル創造」で作った魔導書を僕に渡してくるのだ。

僕は念話を飛ばして白桜に確認をとる。

『え!? 今なんて?』

僕は思わず大きな声で反応をしてしまったのだが周りにいた、他の四人の人達も突然僕の体が、びくっとなり驚くので

「あっ、いやすみません。急に、変な奴から、僕に連絡が来たので」

と咄嵯に誤魔化すとカレンに「大丈夫?何か、あるの? 」と真剣な表情で問われたので再び、白桜との話の内容を話すとアリシアが、僕の方に駆け寄ってきて僕を抱き寄せると「今は、私が一緒だから大丈夫です。必ず守り抜いてみせます」と言って僕に寄り添うように、抱き寄せてくれたので僕は、ありがたく甘えることにしたのである。

「あの、僕の家族は、今、何処にいるのでしょうか? できれば一度で良いので会いたいのですが」

と言うとアリシアが困った表情になり アリシアは暫く考えてから答えてくれた

「私の国で会わせてもらえないか頼んでみても良いでしょうか?一応、聖王なので少しは融通はきくと思うのですが、あまり無理な要求はしないであげて下さい」

と、言ってくれたので僕は「アリシア、ありがとう」と伝えてからカレンに

「ちょっと、行ってきます」

と言い、カレンの転移の魔法陣の上に立つと僕は光に包まれ視界が暗転すると僕の目の前に広がったのは城の中の謁見の間の様な場所の様で僕は、そこに立っていた。僕の後ろの方では先程まで居なかったはずの騎士の人が数名とアリシアが控えており

「お帰りなさいませ。勇者様、聖王様が御待ちになっています。こちらに、おいでください」

と僕を案内してくれて僕は謁見の間に通されると玉座に座っていた少女が立ち上がり僕の前に近づいてきて口を開く。

「初めまして。私の名はアリスティア アリシアの姉であり、貴方をこの異世界に呼び出した張本人です。そして貴方のお父上の事はお悔やみ申し上げます。私は貴方に対して、できる限りの支援をしたいと考えておりますので、どうか、宜しくお願いします」

と彼女は言うと僕に近づき、そっと手を伸ばしてくると、いきなり僕の手を握り締めてきたので僕は驚き「あぅ」と、いうとアリシアが僕を守るかのように間に割り込むと「お姉ちゃん、いい加減にしてよ!」

と、叫ぶのである。それからは二人の話し合いになったので、僕は二人が落ち着くまで黙って見ていたのであった。

数分後に落ち着きを取り戻したのか二人は話す事を止めたので僕は質問をした。すると僕の父は「勇者召喚術」を使い魔王を倒す為、僕の母と弟達と一緒に旅に出たそうだ。だが母は途中で死んでしまい。残った3人で、しばらく生活していたのだと教えてくれる。それから数日して僕と弟の裕二(ユウジ)は二人で暮らしていたらしい。そしてある日、僕達はモンスターに襲われたが、その時に、僕の弟である、ユウジがモンスターの呪いを受けてしまったのだという。

ユウは命を落としかけたが、その時に女神が現れ、女神から僕の話を聞いたユウは「俺は、お前が生きてさえいてくれれば、後は何もいらない。俺が、この世界の勇者としてお前を守ってやる。お前は安心して待ってろ」と僕を庇い亡くなったという事を聞いた。その後僕は女神様の力により異世界へ呼び出され、そこでクロと出会い今に至るまでの出来事を話してくれた。女神様も、その話しは聞いているそうで、女神様からも、「ユウくんを生き返らせることならできますけど、本当にいいんですか? 今の私にできることは、ここまでしか出来ませんよ。いいですか?」と聞かれたのだけど、僕は「いいよ」とだけ言って僕はユウの事を思い出すのだった。すると涙が出そうになったが堪えているうちに「わかりました。では早速始めましょうか」と言うと同時に眩い光が僕の体の中に入り込んできた瞬間 ユウが、まるで生き返るかの様に、その場で起き上がったのだ。

僕は慌てて「ユウ!!」と言うと「んぁ!? あれここは何処だ? それに何だか力が沸いてこねぇーんだけど。もしかして、死んだとか言わねぇよな?」

と言うと僕に向かって剣を構えるのである。

僕は驚いて「ちょっ、まって!! 僕は君が倒した筈の魔王だよ! 」と言うとユウの顔が一瞬強ばるが僕の目を見て嘘じゃないことを確信したようだ。そして僕とユウはお互いに自己紹介をしあい。事情を説明したのである。すると、すぐに納得してくれた。どうやら、僕の顔と瞳を見ただけで僕が本物であることを理解し「すまない。俺は君の事を完全に信じていたわけじゃ無いから、少し試させてもらっていたんだ。悪かったな。疑ってしまって」

と言われ「あはははっ そんな事で気にする必要は無いさ。だって、もし君に殺されていても僕は文句を言う権利が無いぐらいだしね。それと僕は今ここで君と戦うつもりもないし。それに今はこの世界を救う為に力を貸して欲しいんだよ」

僕は素直に謝る彼に謝罪を受け入れ許す。なぜなら彼が今此処にいる理由はこの世界の危機を救うためだから僕は彼の力が必要なのだ。彼は僕の言葉を聞いていたが突然、アリシアの方に視線を移すと彼女の事をジロリと見つめると彼女に近づくなり顔を近づけて匂いを嗅ぎ始めたのである。その行動で僕の中に嫉妬の感情が生まれてくるがそれをグッと抑えているとシロとクロが彼の前に現れると クロをじっくり見たあとシロを見ていたがシロの体に触れると僕の方に向き直り話しかけてくる。

僕は彼の問いに対して正直に答える。

シロは人間で、シロとクロの体には僕達の体に入っているシロとクロがいる事を。するとユウは驚いた顔で「シロが、クロの中に入ったって?マジかよ。ってことは今クロの中には誰が入ってるんだ?まあいいか。それよりシロが無事で良かった。俺の妹を助けてくれてありがとな」

と言ってくるのでクロがシロの代わりに僕が答えてあげた。クロの話では、ユウと、クロの二人がこの世界に呼ばれた時にクロが瀕死状態で意識を失いかけていた時。たまたま近くにいたクロのお母さんの「シロの心臓を使ってクロにあげなさい」と助言があったみたいで。それを実行したところ。無事に助かりクロ自身も「ありがとう」と言ってクロの体内で一緒に暮らし始める事になったみたいなのだが 何故かシロが僕の方を見るなり僕の背中に隠れてしまった。

僕達が不思議そうな顔をしているとユウが

「その子がシロなのか?なんか随分変わった格好をしてる子なんだな」と言うので「この子の事を知っているのかい?」と言うと「ああ知ってるよ。なんせこの子は俺の妹だからな」

と言うとシロは僕の背後に完全に隠れてしまう

「大丈夫だよ、この人悪い人では無さそうだから、出てきてあげてくれないかな」と言うのだが、なかなか出てこない

「しょうがないですね。ほらシロちゃん。出てきなさい。大丈夫ですよ」と言うとシロが出てきた。シロもクロ同様に僕に好意を持っているようなのだが なぜだろうか。

僕は二人に対して全く興味が無かった。それは何故だろうと考えるのだが思いつかない。なので二人に対しては僕ではなく 別の女性に対して、もっと愛情を持ってあげてほしいと願っていたのだが。なぜか僕の胸の奥にチクリと何か刺さった様な痛みを覚える。そして僕は自分の考えに違和感を覚えた。今の考えで間違っていないと思うはずなのに何かが引っ掛かる気がするのだ。でも結局その引っかかる事については分からずじまいになってしまったのであった。

僕とユウが話している間。シロは、アリシアに色々と教えてもらっている。その姿を見ていたアリシアの笑顔を見ると少しだけ寂しさを覚え、それと同時に「あはははは、僕、なに考えているの?今更」と思わず自虐的な思考になり苦笑いをしてしまいそうになるが ユウは僕の様子が変わったのに気付いたのか僕の肩に腕を乗せてくる。僕は少し動揺しながらユウの顔を見る「どうした? お前、ちょっと元気がなさそうに見えたからさ。気合いを入れようと思ってさ」

僕はユウの言葉で、気持ちを持ち直すとユウの手を握り「ありがとう」と伝えてから二人に「とりあえず話はまとまったから、また詳しい説明をするから部屋に戻って話をしようか」と言うと話しを切り上げ僕は皆を連れて転移を行い城へと戻って行ったのであった。

僕達は先程の部屋に戻ると先程とは変わって、アリシアの隣に勇者も居たので勇者にも話をする事にしたのだ まずアリシアに勇者を紹介してもらい。次にアリシアには勇者とクロとクロの中の人の事を勇者に伝えるように頼む。アリシアに頼み事をした後に、勇者の前に行くと勇者が僕の目を見ながら問いかけてきた。「俺は勇者として魔王を倒さないと元の世界に帰れないと聞いてきたんだが本当にそれでいいのか?お前が俺と一緒に居たくないのであれば仕方ないが。もしも帰る方法があるのならば、その方法を模索した方が良いんじゃないかと、俺は思うんだが」

僕はその言葉に戸惑う。なぜなら今の言葉は僕に対する配慮から出たものだと思ったからである。しかしユウは僕の目を覗き込むと「お前は本当に元の世界に帰りたいと思っているのか?お前の本当の望みは違うんじゃないのか?もし本当に心の底から帰りたいと願っているなら。今の質問で心の声が漏れているはずだ。それが聞こえなければ今の質問は無意味だ。だから、もう一度だけ聞かせて欲しい。お前はこの異世界で生きていけるのか?」と聞かれてしまい僕は返答に困ってしまったのである。

僕は確かに勇者と別れたくはなかったのだけど。だけど今この場で勇者が「わかった。なら俺は帰らせてもらうわ。今まで楽しかったぜ」

と言われ別れてしまって。その後僕が、どんな人生を歩むことになるのかというと おそらく何も出来ないまま、ただ無力感に打ちひしがれ生きることに絶望した末に自殺して終わりを迎えるのが関の山だろうと予想できるのだ。しかし、その結末を回避できるのは勇者だけで。それ以外の人間達では絶対に不可能だった。だからこそ勇者を元の世界に戻し、そして魔王を倒した後は僕の記憶を消して普通の生活を送らせてやろうと決めたのであった。しかし、それを実行するためには、勇者と魔王の対決で勇者に勝って貰わないと行けない。だが勇者には僕と戦うつもりなど微塵もない事は明白だった。そこで、勇者に「勇者様は今迄何人くらいの女性を救ってあげられたんですか?」と聞くが「はぁ? 何をいきなり言ってるんだ?そんなこと聞いて何になる?」と言うので僕は続けて「私は、今から十年間ほど異世界を救い続けた事があるんですよ。ですので、あなたの行動は私の参考にしても良いのでは?と 思ったものですから」と言うと 僕の思惑通り「そんな事を聞いても意味なんてないだろうが。それともお前は、俺と一戦交えたいというわけなのか?」と問われ僕は「別に戦うつもりは無いのですが。あなたが戦いたいというのなら私としては構いませんよ。私が負けるかどうかは別としてね。どうしますか?」と言うと。

僕の言葉に嘘はない事が理解できたのだろう。勇者は剣を抜き僕に向けて構える。僕はそれを合図にして お互いに戦闘体制を取ると僕は、すぐさま空間の扉を作り中から一本の刀を取り出し腰に差していた。すると、それを見ていたシロが「あっ!それはお母さまがタロウに作った魔道具。もしかて、お母さまは貴方の味方になったのですね」と言ってから、僕に近寄ってくると。

シロとクロは僕の身体に入り込んだのだ。僕はシロを撫でながらクロに向かって「君は、この世界で、なにが出来るか、確かめてくれるかい」と伝える。クロは笑顔になると「わかりました」と応える。そしてシロが「私も、お手伝いします」と言ってくれた。僕は二人に「ありがとう。よろしくね」と言って。僕は改めて、この二人の少女の力を確かめることにしたのだ。

僕は刀を構える。僕が持つのは「神龍王 天叢雲 」である。僕と、勇者が向かい合った状態で睨み合う事になっているとアリシアが僕の側にきて話しかけてくる

「タロちゃん、頑張って」と言うと勇者が僕の方を見てニヤリとすると、「お前に、この俺が倒せるわけが無いだろう。俺が、ここで、こいつを倒せば お前らの計画は全て水泡に帰すわけだしな」と言い僕を馬鹿にしているようだったので、僕もその挑発に乗ることにする。

僕は「試すかい?」と言うとアリシアに「アリシア。僕に力を貸すと思って、僕に支援魔法を掛けてくれるかな?それとクロは、シロの体を使って攻撃するんだよ」とお願いをするとシロが僕の中から抜けてきて 僕を後ろから抱き締めると僕を光りで包みこむ。するとクロは、僕と、シロに支援魔法を使い。さらに僕とクロの体が淡い白い光を放ちだす。そしてシロは、シロの姿のまま僕に寄り添ってくれたのである。僕達が今の状態で出来る最大のパフォーマンスを発揮しようとしているのだが。

シロは僕から離れない。そして僕はクロに「僕が指示を出すまでクロも攻撃を開始しちゃ駄目だよ」と伝え。クロとクロの中の人に任せる事にする。

そして僕と勇者が向き合い対峙すること数分。お互いの動きが止まった状態でいるとアリシアとクロにクロの中の人が声をかけてくれたようでアリシアが僕の傍に来ると、クロの意識が途切れ僕の意識が浮上し始める。僕の目が開くのと同時にシロが僕から離れた。

僕は自分の体に意識を向ける。シロが僕の身体の中に入ってくる。僕はシロの温もりを感じ取りシロの存在を感じる。それから、僕の背中には黒い大きな翼が生えたので シロの力が僕に流れ込んでいることが分かる。僕はシロに意識を集中させていくと。

僕の周りに小さな竜巻が発生し僕を守るようにして回転する。その風に乗ってシロから、かなりの量の魔力を僕に流してくれたのだ。僕はそれを受け止めて、自分の力に変換すると僕の体は一瞬にして変化して行く 髪の色も変わり、全身に漆黒のオーラに包まれ 顔には仮面が現れる。その姿を確認した僕は自分の手を確認する。僕は左手にクロの、右手にシロの、それぞれの力を感じていたのである。

シロに頼んで、シロの中に戻って貰った後、僕と勇者は向かい合って対峙していると、アリシアと勇者は何かを話し始めたのだが。僕とシロの耳には入らなかったのである。

僕が勇者に攻撃を仕掛けようとした時に ユウが間に割って入ってきた。「ちょっと、ちょっと。待て。落ち着け」と言うので僕はユウの顔を見るとユウが話し始めた

「なぁ、俺達は友達じゃ無かったのか? お前ら、本気で戦うつもりなのか? こんな狭い場所でお前らが本気で戦ったら 城が吹っ飛ぶんじゃねぇのか?」と聞かれたので僕は、ユウの言葉に驚き「なんの事だい?」と返す。僕が疑問をぶつける前に、アリシアが口を開いた

「ごめんなさい、タクト君。私達の国の為に 私達は争う必要があるの。分かって」

その言葉を聞いた僕の頭の中には疑問が溢れかえっていたが、ユウが説明を始めた。

「魔王討伐が終わり元の世界に戻る時 魔王は元の世界へ帰れず。この世界に留まる事を選んでしまうかもしれない。そうなったらこの世界に災いをもたらす事になる。だからこそ、この世界を滅ぼさない為に魔王に勝つために俺は戦う。その相手としてクロを選んだ。だが俺達は、お前達と、この異世界に来て初めて出会ってまだ数時間も経ってない。そんな相手を信頼する事など出来ない。だからクロはクロの中の人に、俺の代わりに魔王を封印してもらおうと考えた。そして俺は俺の意思を貫き通したいと思ったからこそ、お前に挑んだんだ」

僕と勇者の闘いが始まる寸前で、シロに頼んで僕の中に一旦戻ってもらい僕はシロの能力を開放する 僕の目の前には僕を覆い隠せるほどの大きな壁が出現していた そして壁の外側には 僕を中心にして直径五メートル程の円状の結界が展開していた 僕はシロに「シロ、僕を守ってくれ。頼むよ」と伝えるとシロが「任せて」と言ってから 僕の後ろに待機した ユウの言葉を聞いても、僕がシロの力を使う気になれない理由は単純で、 僕は、まだこの世界に残って居たかったからである。だけど僕は、もう後には退けない立場にいる事を自覚しているため、覚悟を決める事にしたのである。しかし僕は、ユウに対しての気持ちが変わらない以上ユウを殺す事は不可能だった為。「なら、ユウ君の提案を飲む代わりに、僕との勝負を受けたらいい」と答えるのであった。ユウは驚いた表情をして僕を見ていたが僕は続けた。

僕と勇者の闘いは、勇者の攻撃から始まり戦闘が始まったのだ 勇者の斬撃をかわして反撃をする 僕の戦い方はシンプルである。シロの力と、クロの支援魔法の力を使って 勇者を圧倒していっているのだ 僕は勇者の攻撃をかわしてから、反撃をしていくしかし僕の攻撃では、あまりダメージを与えられなかった 僕は攻撃を続けながらも 勇者の剣さばきを観察した 僕は攻撃を続けて勇者の動きを見る しかし勇者には僕が使っているような能力が備わって居るのが分かる。僕の力は僕のオリジナルであり僕にしか使えないと思っていたのだけれど、どうやら勇者も同じことが出来るらしいのだ。しかし僕は勇者と闘う事で、ある程度、この世界で自分が何が出来るかを理解することが出来ているので 僕にとって不利になることは無いのだ。それに僕は勇者を倒すのではなく、この場で捕らえるつもりだった。

僕は攻撃しながら、シロとクロに話しかける「シロ、クロ 今から全力を出すから僕の事を見ててね」

シロは僕の事を見ながら笑顔になると。

「わかりました。頑張ってくださいね」と言う 僕は返事の代わりとばかりに笑顔を返すと。僕は ユウに、この戦いに勝ったとしても、ユウは納得しないであろう事は予想できていたので、ユウと約束した通り ユウと戦うことになっても殺す事はしないと決めているのだ。なので、このまま戦っていても僕が勝つ可能性は極めて低い そう思った瞬間、勇者の剣が振り降ろされる、僕はそれを避けずに受けたのである。

僕は痛みを感じたのと同時に 今まで経験をしたことのない衝撃を受ける。

僕に勇者が剣を振り下ろした際。剣に込められていた 全てのエネルギーが解放されてしまったのだ。僕には勇者が放った攻撃の余波だけでも致命傷となる。そのため勇者が剣を振り切った後に起こる衝撃波をもろに食らう。僕は壁に激突してしまい意識を失ってしまったのである。

勇者が「ふぅ」と言って一息つく

「シロ、クロ、大丈夫か?」とシロとクロに尋ねる クロは「私は問題ありません。クロも大丈夫」と答え シロも「タロウの意識が回復すれば私達の勝利ですね」

と言って笑顔になる。ユウは「ありがとう」と二人に礼を言う ユウは僕と、クロ、シロの力を理解し始めていた。

勇者は自分の持つ剣の力を知っていたし その使い道を心得ていたため勇者の一撃をかわす事が出来た 僕の攻撃は全て、僕に直撃していたのだ それは何故かと言うと、シロの魔法によって守られた僕の身体にユウの剣が当たっても、ユウが力を流し込みすぎて僕を倒せなかっただけなのである。僕の身体が壊れても、僕の身体はクロとシロの身体なのだから修復は可能であるため、僕がいくら死んでも問題がないのである。だから僕がダメージを受ける事を恐れることなく全力をだせたのである。僕が死ななければ、僕はクロの力で生き返る事が出来るので、クロには絶対に僕の事を護るように伝えてあったのだ。そして僕は、ユウに向かって質問をする 僕には疑問があったからだ

「君は本当にクロで良かったと思っているのか?」と聞くと。

「お前には関係のない話だ。俺は俺の意思を貫くだけだからお前は黙れ」とユウが言う シロも僕と同じ考えなのか、「クロもシロも、タロウも私も関係ないでしょ?あなたはユウで私の親友でしょ?」と言うと。

「うるさい、俺が俺として存在できる時間が少なくなってるんだから仕方が無いだろう?」と言う ユウに何かを感じ取ったシロは、「わかったわ」と悲しげに呟く。クロはシロと入れ替わったのである。そしてシロと入れ替わることで本来の自分の身体を取り戻したシロが話し始める

「私の大事な弟分に手を出した事を許さない。貴方が誰であろうと私がここで貴方を殺すから安心しなさい。そして私達姉弟の怒りをその身をもって受け止めて貰うから覚悟しておきなさい」と言うのであった。ユウは何も言わない。ただ一言だけ発した

「やってみろよ、俺に勝てるわけ無いのによ」と言った後ユウは無言のままシロを睨み付けていた。その目に怒りを感じることは出来なかった クロに入れ替わった後、僕は意識を取り戻して立ち上がるとシロも立ち上がり僕の元に近づいてくる。クロと僕は、ユウの方を見るとクロが僕に「大丈夫ですか?怪我とかしていない?痛いとこある? ごめん、ごめん。ごめんなさい」と言ってくれる。

僕はその言葉を聞けたことで嬉しく思い、シロに目配せすると、シロは「タロウが、シロに頼んだんだよ。だから、クロは悪くない」と言うと ユウは僕とシロのやりとりを聞いて、ユウの目は更に冷たい視線になっていた。僕は「君が、僕の家族を殺したことは許さない」と言うとユウは「だからお前の家族を殺してないだろ?俺に文句をいうんじゃねぇよ!」と言い返した。そして僕の目の前に一瞬にして移動すると僕の腹部に蹴りを入れたのだった。僕が吹き飛ぶと ユウが追い打ちをかけようとする 僕は自分の体から流れる血を見た時に自分の限界が近付いていることを悟る。そしてシロにお願いしてクロを呼んでもらうことにした。

ユウの攻撃を避けるのは容易いことだった。僕の動きに合わせてクロと、シロの援護が入るからである。しかし、僕の体はボロボロだった。僕が攻撃に気がつくのが遅れた為に 勇者が繰り出した回し蹴で、僕の身体は回転しながら壁へと叩きつけられたのだった。勇者はそのまま僕に近づくと。僕にトドメをさそうとした時、僕と勇者の間にクロとシロが現れて僕を助けてくれた。そしてシロは僕の方に向き直ると、僕はクロの能力を発動して傷を治してもらう。そして僕はクロの後ろ姿を見てクロを抱きしめたい衝動に駆られる。そしてシロも僕の元へ来て僕を抱きしめてくれる。

僕は、シロに頼んでクロと変わってもらい。クロに頼んでシロの意識を交代してもらって。

そして僕は、僕を抱き抱えてくれている二人の頭を同時に撫でながら

「シロ クロ 僕の為に頑張ってくれてありがとう」と言う 僕はシロと入れ替わっているので僕を心配そうな顔して見つめているシロに対して笑顔を向けると。

シロとクロに「少しだけ離れてくれるかな?」と頼むと二人は僕から離れて僕の方をじっと見つめてくる 僕は、ユウに対して「僕の大切な家族の敵を取らせて貰う」と言ってから。僕はユウに攻撃を仕掛けていく。しかし僕の攻撃を、ことごとくユウは受け流していったのである。ユウは僕に「いいかげんにしろよ!お前みたいな奴に、俺達が殺されるなんて冗談じゃないんだよ!」と言う。僕も、もうすぐ死んでしまうかもしれないという焦りを感じていた。シロが僕に話しかけて来てくれるが僕は返事をすることができなかった。

ユウの攻撃をまともに受けると僕の命は無いと判断した僕は クロと入れ替わった。クロと入れ替わった僕の視界は、いつもと違っていて。僕はユウを上から見る形になっている ユウは、僕が急に消えてしまったのを見て驚いていた 僕はシロとクロが居た場所に居たからである 僕はユウの背後に瞬間移動で回り込むとユウは僕の気配に気づいていたが僕がどこに居るのかまでは分からないらしく そのままの状態で僕に攻撃される 僕とクロが入れ替わりクロの攻撃に意識を持って行かれた事で、クロはユウの動きを止める事に成功したのだ 僕は、クロにお礼を言って。クロに攻撃の指示を出してクロに攻撃させる。

クロの一撃が、勇者に命中するが。ユウにはクロの力が通用しないのかクロの攻撃を簡単に避けるとクロは攻撃してきた方向に向かって、まるで見えない敵に剣を振るっているような状態でユウはクロに向かって歩き始める。クロは慌てて僕との入れ替わる。ユウは、クロから逃げるように、シロと僕から距離を離すために、僕に背中を向けた状態のまま走っていた 僕とクロの意識は繋がっているので、僕はユウを背後から追いかけるような形で、僕達は走り続けたのである。

ユウも、自分の体が異常に疲れ始めているのを感じ始めたのである。僕はそんな、ユウを見ていた。僕は、このままユウを追い込んでも、僕の勝ち目が薄くなっていくことを理解していたので、これ以上、ユウの体力を奪いたくないと思ったので僕は、ユウに話しかけたのだった。僕は、シロに僕の体の主導権を渡してもらいシロとクロに僕の頼みごとをしてユウの前に姿を現したのである。シロはユウの目を見ながら「貴方は本当にクロなの?私は信じてるから、クロなら分かるはず」と言う 僕は「僕はシロとクロの友達のタクロウだ。僕がクロだ」と言うと。ユウは、何も答えなかった。

ユウは、クロに化けている誰かが僕の事をクロだと勘違いしている事に気づくと「お前ら いい加減に、そいつは偽物だ クロは俺が殺した」と怒鳴るが クロは僕をかばうようにして僕とユウの会話に入って来る「貴方の狙いはなんなの?」とユウに質問をしたのである。

「俺の事はどうだって良いだろう」

クロはユウを見据える。そして「貴方の願いは何?」とユウに尋ねるとユウが口を開く

「俺の目的が、お前達にわかるわけが無いだろ!」

クロは、「わからないから聞いている」と言う ユウがクロの質問に対して「教えない!」と言う クロは、クロに化けたタロウの体を見ている タロウの体に起きている現象がシロやタロウとリンクしていた。クロはその異変に気がつき。「クロ 私の考えで、多分 この人の目的がわかると思う」

クロがユウに問いかけた。ユウは「だから俺は知らないんだって」と言い返すが。クロに何か思うところがあったのかクロの言葉を聞く ユウは、僕達の事を知らないのは当然なのである。なぜならユウには、クロとシロの事を僕を通して伝えていたからであり。ユウはクロとシロの存在など知らなかったのだ。

僕はクロが出した答えを僕も感じ取っていた。ユウも感じ取ったみたいで、シロの質問に「俺はクロとお前らが邪魔なんだ」と言うと、シロは「貴方の目的は、私達を殺すこと?」と言うとユウはシロの問い掛けに答えるかのように。「俺の目的に気がついたからといって もう手遅れだがな」と言い残してユウは自分の空間に消えたのだった。

クロは、クロの姿に戻ってから「私のせいで貴方のお父さんを救えなかった。ごめんなさい」と言ってからクロの身体に亀裂が入る シロは、クロを抱き抱えてからシロはシロの姿で「私の方こそ、ごめんね。タロウの事をちゃんと考えてあげられなくて、タロウの身体に起きる変化が、どんな結果をもたらすかわかっているけど。それでも 私とクロが選んだ道を進まなくちゃいけない。だから 私はタロウにお願いをする」と言ってきたのであった。僕は、シロとクロに僕の意識が宿っている身体の事を話していないが。クロとシロにはわかってしまう事なのか。僕も、自分が死ぬ前に二人に僕の意識が入っている事を伝えたのだった。

クロとシロは「うん だからだよ」と言う クロは、僕の目を見ながら「だから タロウを絶対に死なせないように頑張らないとダメ」と言う シロは僕の頭を撫でてくれる。シロは僕の耳元で囁く「私が、タロウのお母さんになってあげようか?」

クロはシロが何を言っているのかがわかったようで「それは、私の役割。譲れない」

シロは、クロの言葉に笑みを漏らしながら「それじゃぁ 三人で一緒に、幸せになりましょうか」と言ったのだった。

それから僕は、僕の中に居て。クロとシロの事を心配している人達に事情を説明すると、みんなが僕の事を抱き締めて泣いてくれた アリシアだけは泣き崩れて言葉にならない声を上げながら僕の名前を連呼していて。それをアスタさんが落ち着かせようと抱き抱えるとアスタさんは号泣する。僕はそんな光景を目の前にして自分の命に価値を感じた 僕の命が、みんなの心に光を与える事ができるなら僕の心は死んでいないと思えるようになった。そしてシロとクロも僕を優しく見守っていてくれたのである。

ユウとの戦いが終わった僕はシロとクロが僕の為にしてくれた事に感謝をしていた。クロが僕に話しかけてきたので。シロの体を使って僕はクロと話す。僕がユウと戦っていた間に何が起きていたかを シロが、クロと話してクロの考えた作戦を実行することにした。シロは僕がクロの身体を乗っ取っている間。僕は、シロに体を貸すことになったのだが。シロの身体が動かなかった為。クロにシロを僕の中に連れてきてもらったのだった。

シロが僕の体に入り込むとシロの意識は、僕の体の主導権を握り。僕がクロの意識を借りて動くことができるようになっていた。シロの体を動かしてクロに攻撃してもらうとユウにダメージが与えられていた クロはシロの攻撃方法を考えていた時に

「タクロウが使う能力が役に立つかも」

シロは、僕の記憶を覗いていた そして僕が使う能力を見てクロに教えたのだった。クロは、シロの話を聞いてから僕に「ねぇ、クロの能力を使いながら戦うことはできる?」とシロが尋ねて来たのである。

シロに言われて、僕とクロはお互いの能力を共有することで、僕とクロの身体は一体になっていた。しかし、その状態を長時間維持することは困難だった。そこで、クロは、自分の意識が僕に宿っている時限定で共有する事を提案してくる。クロと僕でクロの能力を使えるようになるので。僕とクロが、同時に僕の身体を使っている間は、僕もクロの使っていた技を使うことができるようになったのである。僕が使っている能力は。

僕自身の魔力を使うので、僕の持っている魔法のレベルが高ければ高いほど。魔法を使う際に必要な力は少なくなっていく。僕とクロは、シロに、クロと僕の身体を共有したままでも、ユウと互角に渡り合えるのかを確かめてもらうことにしたのだった。クロの一撃がユウに直撃すると、ユウにダメージを与えることができたのだ。

僕はシロの口からクロの声でユウに向かって「これでお前を殺せるかもしれない」と伝える ユウが動揺していると「俺を殺すだと?やってみろよ!どうせ出来ないんだろ?出来るならやって見ろ!」と怒鳴ってくるユウに対してクロは冷静に対処した「貴方には出来無い」と言う。続けて僕はユウに向けて、「お前の目的はなんだ?」と尋ねたのだ するとユウは自分の正体について語り始めた。「俺の名前は サトルと言うんだ 俺は 異世界から来たんだ。この世界に来た理由はこの世界を侵略するため 魔王として君臨するつもりだったが。魔王様の力を受け継ぐには条件があるらしく。勇者を倒さないといけないみたいだから。この世界に来れば、必ず 俺を殺そうとしてくる奴がいると思ったんだよ。俺はそいつを利用して魔王になるための力を手に入れようとしたんだ、まさか勇者が現れるとは思ってなかったが それに、そいつの仲間の女を人質を取っておけば簡単にそいつに手を出せないだろうと思っていたんだ。なのにそいつは、そいつに殺されたんだ。俺は そいつが許せなかった。」

僕とクロは クロの身体で戦っていたのである。ユウは僕の質問に答えると。シロがユウの事を抱きしめてから「どうして そこまで あの人にこだわるの? 私は 貴方が苦しんでる姿を見たくない 貴方が本当に望んでいる事はなんなの?」と聞くと。

ユウは「そんなこと決まってるだろ お前達を殺し この世界を手に入れる」と言い放った。ユウの本心を吐き出させた僕達は、ユウを倒すことを決めた。

ユウの望みは僕とクロを消す事なのだが。ユウに僕の力が通じないと分かるとユウはシロと僕を始末しようと考えたようだ。ユウが攻撃を仕掛けてきた瞬間 僕はユウに隙が生まれた事を見逃さなかった。ユウの身体が一瞬硬直して動かなくなる 僕はユウの背後に回り込み、ユウに膝蹴りすると同時に。クロがユウの顔を掴みそのままユウの体を地面に叩きつけた。シロは、ユウが動けなくなった事で僕とシロの身体を繋げる事に集中できていた。クロがユウの体に馬乗りになり ユウの身体の自由を奪っていくと ユウの体が発光しだした。シロがクロの身体から飛び出し。クロの体を使ってシロがユウの体を抑え込んだ。シロの体はユウに捕まれてしまい。僕は慌ててシロの方に駆けつけようとしたが。クロが「タロウの身体で無理しない」と言ってくれた。クロがユウとシロに何かをしているのかわからないけれど。シロが僕に笑顔を見せて。「タロウ大丈夫 私はここにいる」と言うと クロが僕に声をかけてくれる「クロのお母さんは無事」と言い僕を励ましてくれる。

僕は、シロの言葉を信じた そしてシロは僕の身体を気遣いながら僕の手を取り。僕の目を見ながら「クロにまかせましょう」と言ってきたのだ。クロが何かしらの行動をとっているのは確かなのだ。

シロとクロの言葉を聞いた僕はシロとクロに僕を託してユウをじっと見つめたのであった。

シロがクロからユウを引き離すことに成功して。シロはユウの意識の中に入るとユウの心が悲鳴を上げている声が聞こえてくる シロはその光景に戸惑っていた 何故ならば。シロが見たのはユウとユウの中に居た人物との会話の内容だったからだ。ユウの中に居たのは女性で、クロの母親である

「クロママを返して」と言っている。シロはその言葉を聞き。自分がクロを傷付けていた事を理解できたのだった。しかしシロが「貴方がクロのお母様なのね。私の名前はシロ。貴女の娘さんにクロという子もいるの。私はクロの身体を借りているの」と伝え。ユウが意識を取り戻してから。クロに自分の母親とクロがどう言う状況になっているのかを伝えた。

ユウはクロの母の姿を見て驚き、クロの母は「クロが貴方を助けようと身体を預けてくれた」と話すと。ユウはクロに自分の母の事を頼み。ユウはシロに自分の過去を話し出す シロとクロに、ユウが自分の記憶を見せるために。ユウの意識に自分の心を移した その出来事が切っ掛けで、ユウは自分の目的を忘れて、ただ。クロの母親の事を守りたいと願い行動してきたのだった。クロが僕とクロの身体を共有させてくれたお陰で。シロが僕の心で見ている光景は、シロにも伝わるようになったので。僕は、シロの記憶を共有している。そして、クロもユウが見せようとしているクロの両親の思い出を見せてくれていたのだった。

僕はユウとシロの話を聞いて。クロに心の中で話し掛ける「ありがとうクロ」と僕は伝えた クロの両親はユウを優しく受け入れていた。ユウもクロの父親であるクロに謝罪をするが。クロは、「お前は、俺の息子の大切な家族を守ってくれた 俺も娘が、家族が増えたような気持ちになったからな もう気にするんじゃないぞ 俺の事は、父さんと呼んでくれるだけで十分だ」と言う言葉を聞いて。シロとクロはユウを父親だと認めていた。それからクロの父であるユウの家族に対する愛情を感じられたのである。ユウが、クロとクロの母を大事にしているようにクロとクロの両親もユウを大切に思っていたのだ。僕は、この光景を見た時に、ユウが、シロやクロを自分を犠牲にしても助けようとしていた事を理解して。僕は、自分の命の価値を再確認したのである。そしてシロが僕の心に話しかけてきた クロがユウを抱きしめながら「これからは私が守る お父さんは私が守る だから、安心してほしい 私達が一緒にいれる未来のために戦う だからお父さんが、守ったこの命を無駄にする事は許さない」と話すと ユウは泣きながら。「わかったよ ごめんな」と言った シロが「それじゃぁ約束してくれる?ユウちゃんとクロとクロのお母さんを守る為に、どんな困難があっても負けないで」と言うとユウはシロの手を握って「必ずお前達の幸せにしてやるからな」と答えた。それからシロが僕の顔を見ると僕にキスして。「これで私はタロウの妻」と頬染めしながら言って来たのである。クロとユウはその様子を見て微笑んでいたのだった。

シロが僕から離れてシロが僕の体から抜けるのを確認してクロは自分の体に僕を呼び戻すのであった。

それから僕達は、クロの母を連れて城に向かうことにしたのだが。僕達を追いかけてきた勇者パーティの女性達は全員僕達の味方になると言い出して来たのだ。僕は、アリシアに尋ねるとアリシアに説得されて納得していたのだ 僕達について行きたいと志願した彼女達はクロ達と共に城に同行することを決める。その話を聞いてから勇者は「お前らまで俺に着いて来る必要はない お前達は勇者の仲間だ 自分の国に戻るといい」と勇者が告げると 彼女は勇者に向かって、いきなり抱きついて「バカ」と叫んで。勇者に自分の唇を押し付けたのだ。

それを見ていた勇者の仲間達からは黄色い歓声が上がり 他の仲間からも祝福され始めた。その行為に対して勇者は動揺しており。僕達に助けを求める様に見てきた。

僕は勇者の仲間だった人達に声を掛ける事にした。

「君たちは、勇者の仲間だよね? その考えを変えて欲しいんだけどいいかな?」と問いかけた それに対して、彼女の名前は『サラ』と言い 聖属性の魔族である。

この世界では聖属魔法と言うものが存在している それは光魔法を使える者しか扱えないのだ。僕は サラに対して。「僕は君たちを傷つけたくはないんだよ」と告げると サラは、僕を見て。「貴方が魔王だって話は聞いているわ それでも、貴方の話を私は信じたいと思っているの。お願い 私の話を聞いていただけないかしら?」と尋ねられて。僕が答えに困っていると、僕の前に、クロとシロが現れたのだ。シロとクロに気づいた サラは、「魔王に加担する者に制裁を与えなさい!」と言って。僕に襲い掛かってきた。

クロは、そんなサラに向けて攻撃すると、シロが僕の元に駆け寄ってきて。僕の体を抱きしめ「クロの好きにさせる 任せる」と言ってくれた。僕はシロの温もりを感じると クロの攻撃が止みシロはクロの元に向かい。「お母様」とシロはクロを抱き締める。シロに抱きしめられているクロの体は発光しているように見えた。するとシロの体からシロが出て来て。「シロに身体を渡す 私は疲れたから少し眠るね」と言い。クロが僕の顔を見て 僕に笑いかけてくれていたのだ。シロが出てきた事によって。クロが僕の身体を自由に使う事ができた。僕はクロに身体を任せて、クロと一緒に行動することにしたのであった。

僕とクロはシロが作り出した精神世界で。僕とシロの身体を使って行動できるように準備を整えていた。

シロとクロには、僕の意識が眠っている時は、身体を僕に任せてもらっていたので、僕が起きているときは、クロが表に出ていた。僕はクロの身体を借りて。クロが表に出た時の身体の扱い方をクロに伝え。僕はシロに意識が切り替わったときに、シロの身体に異常が無いか確認してもらうよう頼むのであった。クロとシロが僕に教えてくれたのは 僕が寝ているときに、シロが僕の代わりにクロと身体を共有すると言う事だ。

僕が身体を動かしシロの身体を使うのにクロの意識が消えてしまうと僕に何が起こるか分からないと言う事なので。僕が起きていてシロに身体を渡している時にはシロがクロの身体を使うという事になった。僕はシロの意識を乗っ取った状態で、僕自身の肉体を動かしたり出来るのかと質問してみると。「大丈夫。クロとクロの母のお母さんがシロの身体に干渉できないけど、シロはタロウが望むように動かせる」とシロは言うので 僕は、クロとシロの母であるクロママさんの身体を借りられない理由を尋ねる事にした。

シロは、自分の母親を僕に紹介するのが恥ずかしいのか。クロがシロを抱きしめている その姿を僕は羨ましく思った。シロに、クロとクロの母であるクロママさんに会った時の為に挨拶をしておかないとと思い。僕はシロとクロと会話をしながら、クロママさんに会いに行く事を楽しみにするのだった。それから、僕はシロとクロが僕に意識を移すのを確認してから、クロに「クロにクロを預けておくからクロが僕の代わりに身体を動かしてくださいね よろしく頼みますよ」と話してからクロが「分かった。シロも、クロが身体を上手く扱えるように指導してあげてね」と言ってくれたから。クロは嬉しかったのか泣いてしまった

「ありがとう お姉ちゃん」と言っていた。僕は自分の心の中で思う「本当に仲の良い姉妹になったなぁ」と思ってしまうと僕は微笑んでしまうのである。僕はクロ達との話を終えて。僕の体に戻っていく 僕とシロが入れ替わると。アリシアが心配そうに近付いてきて。「何か変だったりする所は無い? 無理に話そうとしないでもいいから」と言われたので「大丈夫だよ。僕もそろそろ限界だったみたいだから、休める時間が貰えて良かったよ。アリシアには感謝しないと行けないんだ 助けに来てくれるって信じていたんだ だから助けてくれて本当にありがとう」と言いアリシアに感謝を伝えると、僕の言葉を聞いたアリシアが突然、泣き出して、僕を強く抱きしめてくるのだ。そして、涙を流しながらも。必死に訴えるように話し始めたのだ アリシアは泣きながら僕に対して「ユウくんは死なないでね」「ユウくんがいない世界に意味なんかないんだからね」「絶対に帰ってきてくれると信じているから」と話すのだ 僕はアリシアを抱き返し頭を撫でながら落ち着くように話しかける するとシロとクロが現れ。シロは僕の体に手を触れながら回復魔法をしてくれた クロは自分の母親の姿を見ると涙を浮かべながら抱きつくのだ。クロの母は優しい顔つきをしているが、やはり年齢的な事もあり。体中ボロボロになっていた。クロの両親はクロが無事な姿を見る事が出来たからなのか お互いに手を取り合っていた。シロが僕の体の方に近づいてきて。「タロウはシロとクロを家族として受け入れてくれたから、タロウはもう私の家族なんだ 私はタロウとクロのお母様に身体を返すの」と言い シロが僕の身体から離れて行くのを感じられた。シロが僕の身体から抜けて。クロはクロの母親の手を握るとクロがクロの母親の中に入っていくと。クロは僕の身体に戻りクロとクロの母親は目を覚ましたのだ。クロとクロの母の目の色は綺麗な空の色だったのだ。僕は「クロのお母さん 初めまして。ユウと申します。この度は私とクロを助けていただき、そして命まで救っていただいて、本当に感謝してもしきれません」と言うと。クロの母が僕の言葉を聞いて微笑み「ユウちゃんね。娘を宜しくお願いします」と言われて、僕に頭を下げてお願いされたのだ。それから、シロとクロとアリシアと勇者パーティの女の子達は、一緒に村を出ることにした。僕は勇者にお礼を言うことにした 勇者の表情からして僕は嫌われてしまったようだ。しかし勇者に、どうしても聞きたいことがあり、質問したのだ

「貴方の名前は?」と尋ねると。勇者は驚いた顔をして

「なんのことだ?」と聞いてきたから。

「いいから、早く名前を教えて欲しいのですが」と言ってみる 勇者の表情はどんどん険しくなり「俺の名前を聞く前に、お前が俺の名前を知らなければなら無いはずだ!」と言って来たので僕は

「では改めて自己紹介させてもらいます 僕の名前は『神原 太郎』です。以後お見知りおきを」と僕が名乗ると。勇者は驚き

「そんなわけあるか!!」と叫ぶが。勇者が、この世界に来て初めて僕に対して、怒りの感情をぶつけてきているのがわかったのだ。そして僕は勇者に「では僕からも教えましょう。僕は貴方の知っている『佐藤 裕二』とは同一人物ではないんです でもね 貴方が思っている以上に貴方が嫌いですよ」と告げる

「ふざけるのも大概にしろ!! 貴様は、いったい何様のつもりだ!!!」と勇者が怒声をあげる 僕が何も反応しなかったからだろう。僕は少し考えて

「貴方が『僕の知っている人物』かどうかの確認をしたいと思います」と伝えると

「さっきも言っているが。それは、どういう意味だ」と言うから

「まず。僕の知る人物であれば、その証拠を見せてもらえませんか? 例えば貴方は、どんな人ですか? 僕の事を覚えていますか?」と僕が聞くと

「俺が誰だろうと関係ない 俺の事を知っているかだと? 俺だって好きでこの世界に飛ばされたわけではない そもそも俺は、お前みたいな子供と会うのは初めてだ!」と言う 僕は、「わかりました。それでは他の人に確認してみましょうか? それと貴方はこの世界に召喚されて、どのくらいの期間になりますか?」と言うと勇者は何も言わずに睨んできた。僕は無視をして話を続けたのだ。「とりあえず質問を変えますね。あなた方の世界で言うところの国教ってありますよね? どこで信仰されているものでしょうか?」

僕が質問をする度に、イラついているのを感じることができたが僕を無視して質問に答えてきたのだ。「なぜ、そのような事を聞きたがる!宗教を聞かれても、答える必要はない」とだけ言い残し 僕が呼び止めるが振り返らずに去って行ったのである クロの家族は僕達が住んでいる街に行く事になったのだ。そして、アリシアとユウキには魔王軍の情報を集めつつ。アリシアはユウナと一緒に行動してもらう事になる 僕はシロとクロと一緒に行動をしてもらう 勇者が言っていた通り、僕は異世界に呼び出された勇者の一人なので僕は、勇者の情報を集めるようにしたのだった。勇者から得た情報からすると。この世界での、僕の記憶が正しいか確認できたのであった。僕はシロとクロを連れてクロの家に向かうのであった。

シロの家に着き。家の中に入ると、シロの妹が出迎えてくれて「お姉ちゃんお帰り」と言ってくれた シロは妹を抱き抱えながら 僕を見て「紹介するね 妹のクロちゃんだよ」と言うと。僕はシロの妹にクロを預けるのである。シロの妹は「お兄さん。クロを可愛がってくれて、ありがとうございます」とお辞儀をしてくれた。クロが嬉しそうにシロの妹に抱きつく シロの妹は、シロより年下なのだがクロの事を抱きしめて頭を優しく撫でてくれる シロの妹が、クロに話しかけ「シロと仲良くしてくれてありがとう 良かったねクロちゃん お姉ちゃんに会えて嬉しいんでしょ」と言い シロは、クロを抱きしめている姿を見ていると 涙が出てきたのか、シロは泣き出し クロも涙を流しながら

「お姉ちゃーん」と言っていたのだ 僕が、その様子を見ているとシロは泣き止んでクロを僕に託してきて、シロは、そのまま家から出て行ってしまったのだ 僕はクロを慰めながらシロの後を追いかける事にした クロの家は村の入口近くにあった。

シロの姿を見つけると僕は話しかけようとしたが シロの隣にいるユウキに気が付き僕は二人に近づく事にしたのだ 僕はシロに声をかけようと思いシロの横に立ったのだが。なぜかユウキと目が合ってしまい 僕は黙り込んでしまった。ユウキは僕の目を見ると

「あんたは確かシロの知り合いだったな」と言ってくるから。僕は無愛想に「そうだが」と答えてユウトを見る。

ユウトは「シロはお前達と一緒に行動するのか?」と聞いてきたから 僕は「そうだよ。僕とシロとクロで村から外に出る」とだけ伝え ユウトがシロに向かって「お前はどうするんだ」と言ったからシロはユウキの事を「もう一緒に行動できない これからは別々でやるべきだと思うんだ」と言い出す クロは「えっ!?」と言いながら泣きそうな表情を浮かべてシロの方を向いていた 僕がシロに対して。「一緒にいた方がいいよ」と伝えるが。クロが「私はユウくんと一緒に行く シロにはユウくんがいるもん」と言うのだクロはシロに対して「ユウくんが一緒じゃないと嫌なの シロはユウくんと別れてクロの傍にいて」と言うのだ 僕は二人の間で板挟みの状態になってしまう ユウキがクロに「俺は、このままシロと旅を続けないで。魔王軍に加担していると思われる人物を探して殺す シロとは一緒に行動しないんだ シロとは別れてもらう それが一番の近道だ」と冷たく言うのだ クロはユウキの言葉に反論しようとしていたが。クロを手で制して僕はクロの代わりに口を開いたのだ シロに「どうしてユウキの意見に反対するの? 僕はシロの考えをちゃんと尊重して欲しいと思っているんだよ」

シロは僕の言葉を聴くと「私は勇者としてこの世界を平和にする為には。魔王を倒して勇者が、こっちの世界に戻ってくる事が大事なんだと思うの その為に、この世界に害を与える存在を消していかなきゃならないんだ」と シロの言葉に僕は心の中で同意していた しかしユウキが「その話は終わったはずだ シロが言った言葉は正しい。だけどな シロは間違ってる。お前が言った言葉はお前自身を否定する事だ 俺だってお前と同じように考えているが。お前は、そんな事も理解出来ない馬鹿なのか?」と辛辣にシロの事を批判してくる シロも「そんなの分かってる。だけど私はユウ君が好きなの だからユウ君がいない世界なんか生きてても意味が無いんだよ 私とクロが生きている意味なんて無いんだ」と叫ぶのだ 僕が二人の間に入る ユウキが僕に「おい!そこをどけ!そいつらは俺が始末する」と言って僕に剣を突き付けてきたのだ ユウキの行動にクロが怒りだしユウカに突っかかると。クロの頭上に、光の輪が出現してクロが地面に倒れて苦しんでいたのだ。シロが駆け寄ろうとするが、シロにユウカが魔法を使って攻撃してきたのだ シロが回避しようと動き出した時、クロが起き上がり「お姉ちゃんに手を出さないで」と叫ぶと同時に。光輝く鎖がシロの周りを取り囲みシロを拘束してしまう。僕は急いでシロの元に行き。僕達が使う言語ではなく違う言葉を使い始めるのだ クロも僕にならうようにクロの知らない言葉を使い始めて。クロの周りにも光輝く盾が出現して、クロを護るように回転し始める。クロはシロを縛っている。魔法の発動を強制的に止めていた。僕はクロに「よく我慢したね もういいんだよ クロが抑え込まなくても」と言うと クロも「お姉ちゃんに、これ以上傷つけさせはしない ユウくんは、シロを頼む」と 僕とクロの二人がかりでの魔力による結界が展開された その光景をユウトとユウカは驚きの表情を浮かべながら眺めていて。

「まさか。あの女は魔族か?」と言うとユウナは

「あぁ 間違いないだろう だがクロって名前に覚えがないぞ」と言い 僕は「クロを知っているのか?」と尋ねるとユウトは

「シロの妹なんだろ?」と言ってくるから

「それは嘘だ。クロは僕達が住んでいる国でクロと名乗っている人物で。クロはシロが付けた大切な友達の名前だ それに僕達の知るクロと外見が全く同じだったとしても。クロは僕の知るシロの妹ではない クロにはシロの本当の気持ちが分かっているはずです。僕も、クロから聞いた話なので詳しくはわかりませんけど。シロがクロに対して罪悪感を持っていることだけは分かります。そして、シロ自身も。シロは優しい子なんです だから、クロを手にかけるような事は、シロ自身が許せないはずですよ」

とだけ僕は言ってシロとクロに目を向ける クロも、クロもシロの事を良く見ている 僕は、それだけは確信できた。シロとクロの姉妹にしか分からない絆があるんだと シロが意識を取り戻し「クロちゃんが助けてくれたんだね」と言う クロは、シロが目覚めた事で安心し「大丈夫?お姉ちゃん?」とシロに声をかけた クロに抱きつくようにして泣きながら。クロに謝罪をしているのが聞こえてきた 僕はシロとクロの傍に行く シロはクロから離れようとするが。僕は、シロに優しく抱きしめて頭を撫でる シロもクロも泣いていたが。

「クロ、お姉様を助けてくれてありがとう ごめんなさいクロ」と言うのだった。

クロがシロに。

シロはクロに お互い謝っていた クロがシロの背中をさすり「気にしないで」と言う シロがクロの頬に自分の顔をくっつけて「ありがとうクロ」と言い。クロの頭を撫でていた クロは嬉しそうにしながら、シロの胸に顔を擦り付けて喜んでいる シロはクロの頭を優しく抱きしめている それからしばらくするとクロがシロの体を起こして「お姉ちゃん。少し離れてくれる」と 言い。シロは僕から離れると シロとクロが何かをするのを感じたのだが僕は何も出来なかった クロは、ゆっくりと手を上げる 僕は何が起きるのかわからなかった クロが「お姉ちゃん。ごめんね 今迄ありがとう。さっきの魔法ね 私が考えたオリジナルのスキルなの」とだけ言い

「ユウちゃん。ユウくん。私のわがままで巻き込んで、迷惑をかけてごめんね。それと、お姉ちゃんの事よろしくね。お姉ちゃんを泣かせちゃ駄目だよ。あとね。私はユウちゃんが大好きだよ。お姉ちゃんをお願いね」と言って微笑むと。クロは光に包まれていく 光が消えるとクロの姿が消えてしまう シロが泣き崩れると。ユウキは「やっぱりお前も、その力を持っていたのか」と言い ユウキが剣を抜きクロがいた所に切りつけると そこにクロはいなかったのだ シロは「なんで殺したんだよ。ユウキ」と怒鳴る。ユウキが「シロの願いだろう。俺には関係ない事だ」と吐き捨てる シロがユウキに殴りかかろうとしたが。ユウキが剣を振り下ろすのを僕が止める 僕はシロに向かって「シロが、どれだけ辛かったかを考えてあげてよ」と叫ぶ。ユウキは僕の方に目を向けてから。シロに視線を移す。僕は二人から距離をとる事にした。

するとクロが僕の横に姿を現す クロが僕に「私のせいで。ユウちゃんとユウトを傷つけてしまった。私はユウくんの側にいない方が良かったんだよ。でもね。私はユウくんと離れたくないんだ。クロの事も忘れてもいい ユウくんが幸せならクロは、それでも幸せだもん」と言うと

「クロの言う通りかもしれないな。僕がシロに、こんな事を言ってしまったから。

辛い思いをさせてしまっていたのはわかっていたよ。だけどな。僕は、クロに生きていて欲しかったんだよ」と僕もクロに言葉を返すと。クロの目には涙が流れ落ちる クロは、涙を流しながらも僕に向かって笑顔を見せて

「ユウトのバカ クロだって本当はユウトと一緒にいたいんだよ。だけどユウくんはクロの希望なんだ。ユウくんの生きる未来が クロは見れないの ユウくんの側にずっといたかったのに」と言って。ユウキとユウナがいる方角に向き直して歩き始める ユウキとユウナはお互いに顔を見合わせる クロがユウキの剣に触れようとした時に 僕は「待て!ユウキの剣を折ってくれ 俺の為に」と僕は言うとクロが僕の方に振り向く

「どういう事?クロが、やればいい事だよね?」と言ってくる

「そうだ。クロに頼みたい事がある。この剣は俺の親の形見で。俺はクロに託す。俺は、クロの事を絶対に嫌いにはならない クロと約束したろ。シロを護って欲しいと この世界を救うのに必要だから。シロの事は、任せたぞ。だからクロがクロ自身の力でシロを護ってほしい。クロならできるはずだ」と クロは、ユウキの剣に触れる

「ユウキの大事な形見ならクロが預かる。ユウくんの想いは必ずシロに届いているはずだもん。この剣は、必ずユウくんが取りに帰って来る時まで。クロが、大切に預かっていてあげる。クロもね。絶対に迎えに来てくれると信じてる」と ユウキは、剣を受け取ると「分かった」とだけ言う クロが僕を見て「これでクロはいいの?」と尋ねてきた 僕は、シロに駆け寄り。シロの手を握ると

「ありがとう」と言葉をかけた。

クロが「それじゃあ。ユウくん行ってくるね。ユウくんの気持ちが、シロに伝わるように。頑張る」と言葉を残して。

クロが光に包まれて、その場から姿を消した

「本当に、クロにクロを託したんだね もう後戻り出来ないぞ これから先。君達二人で世界を救わなければならない。魔王を倒すには、シロの力が必要だから」と。

僕とシロはお互いを見つめて、お互いがお互いを必要としている事を確認したのである。

それから僕とシロがどうなったのかを話そう シロが、意識を取り戻した時には。僕はシロのことを抱きしめていた。僕はシロに対して「心配させて、悪かった。それにクロが僕のために。犠牲にしてくれたのに。ごめんな。ありがとう。クロの分まで。クロとシロと過ごした時間を大切にして、僕が守っていくから。僕を信じてくれないかな」と言うと シロが、泣き出し。そのままの状態で、しばらくの時間が経つ 僕達は、食事もせずに宿屋の部屋で過ごしていた。

しばらくしてから。シロの体の痛みも、和らいできたらしくシロが起き上がると「拓斗さんは、大丈夫ですか?私の魔法は完璧じゃないので」と言うのである。僕も自分の体に問題ないかを確認しながら、僕達の周りには結界が貼られていることを伝えると。僕達は安心できた。そしてシロは自分の身に起こっていることを、確認するように呟いていたのだ。そんな事をシロがしていたのだが。僕達が宿を出て、街の広場に行くことにした。

僕は、シロに手を引かれながら歩くのだが。シロは、自分のステータスを確認するかのように、何かをつぶやくのだ。そして「シロちゃん?」と、僕が尋ねると。シロは「はい。何でしょう」と返してくれるのだった。僕達が街の中心に着くとそこには大きな石像があり。

シロが僕の横に立つとシロが、石像を睨みつけて 僕がシロに声をかけようとして シロが僕の方に、目を向けると

「拓斗さん。あれはですね。私達の住んでいた国では有名な、勇者様の石像が建っています。そしてその勇者は異世界から、召喚された人物です。ですからシロの言っていることは、当ってますね。私は、その異世界からきた人物の魂を引き継いでいるのかもしれません」

僕は、「どうして、その話がわかるんだ?」と問いかける シロは、少し悲しそうな表情をしながら 僕とシロは手を繋いで、一緒に街を出る しばらく歩いてシロが突然足を止めると シロが、シロと同じような見た目の少女が現れたのだ

「やっと見つけた。お兄ちゃんと、お姉ちゃんだよね」と少女は僕達に告げてくるのだった。

シロが「お姉ちゃんは、確かに貴方のお姉ちゃんだけど。今は違いますよ」と言うと。少女が「私はシロだよ。記憶は、あるんだけど。なぜか思い出せない部分もあるし」と言い 僕は「僕の名前は、結城 優斗だ。君が知っている人の名前を借りて、この世界に来ているんだよ」と言うと シロが、いきなり走り出して ユウキに向かって抱きつくと「クロちゃん」とだけ言い。泣き出したのだった。ユウキとシロが抱きしめ合って、泣き続けていた 僕は、二人を眺めていた 僕は二人の事を、見ていた 僕は二人に近寄る 僕はユウキとシロに向かって ユウキの肩を叩くと ユウキとシロがこちらを振り向いてくれる

「お待たせして、ごめんな。迎えに来たんだ」

ユウキが僕に

「お前。なんでここに」とだけ言うと 僕とユウトは

「さてと、シロに、クロのことを教えないとね」と僕が言うと。

ユウキが、ユウトに剣を手渡して「これはお前が持っているといいだろう。俺が持つよりも役にたつと思うからな」と言って剣を渡すと。ユウキはシロに近づいていき。

「ほら、帰るんだろ。お前はこっちに来るべき奴なんだ。お前が望む未来が、きっと向こうで待っている」と声をかける シロは「ユウちゃんは、ユウちゃんだよね。ユウちゃんの大切な物は全部ここにあるもん」と言って、ユウキの傍から離れる事はなかったのであった。

僕がシロに向かって「とりあえず、ユウキが生きている世界に帰ろうか」と話しかけると ユウキとユウナに視線をやり

「うん」と一言言うので僕は、シロと手を繋ぐのだった。

するとクロとユウヤの姿が見えてきて。僕達の近くに姿を現したのだった。

ユウトとユウキは二人を目にして、驚きの表情を見せるのだった。

「なぁ。この子。クロだよな?」とユウキがユウトに確認をする。ユウトが答える前にクロがユウキとユウトを視界に入れると。ユウキとユウナに駆け寄ってきて

「ユウくん、お兄ちゃんだ」と言ってから、クロは僕に抱きついてくるのであった。

僕とシロとクロとユウトとユウキとユウナとクロと僕とユウキとクロがユウトの前に姿を現すのだった。ユウトがシロの頭を撫でてから

「俺とクロが、ユウトがクロと二人で話したいことがあるみたいだから、少し席を外すぞ」と伝えると。ユウナはクロに笑顔を見せて「ユウキが生きていた世界に行っておいで」と言うとユウキがユウトに耳打ちするのだった。

クロがユウキと一緒に消えるのを確認したユウトが「クロは元気そうだったか?」と尋ねてきたので

「あぁ。クロの体の中にはクロがいるぞ。ユウキが助けてくれなければ死んでいたけど」とユウキが言うとユウトも「そっか。クロを助けてくれたんだな」とだけ言うのだった。

ユウトはユウトの方に顔を向けて、ユウカを指差しながら

「俺達もあちらの世界に戻らないとまずいから、一旦。戻るが。お前の方は、俺達のいた世界に戻ってきたときに。お前は、この世界での記憶が消えてしまうかもしれないから。それで良いなら連れて帰っても良いが。それで構わないか?」と言うと ユウト「あぁ、分かった。クロには、もう会えないと思っていたからな」とユウキが言うと ユウト「クロにはクロにしかできない事が、この先待っていてくれているはずだから、シロの事よろしく頼むな」と言うとユウトは、シロに「クロにクロを任せた。クロに色々と教わって。しっかり生きていくように伝えておくよ」と言うと。

ユウトはユウカを見て「ユウちゃん。私の事覚えていられるかな?もし、私がユウちゃんと、離れたくないって言っても怒らないかな?」と涙目で言うのである。ユウトはユウマを抱きしめながら

「絶対に、俺を忘れたりはしないよ。俺だってユウナとの時間を沢山過ごしたかったんだから。クロには、クロしか出来ないことが、たくさんあって、それがクロが望んでいることだから、ユウコに教えて貰いながら。クロの事を頼んだぞ」とユウトがユウカに告げるのだった。

そして、ユウトとユウトが元の世界に戻ることになるのだが。僕は、クロから頼まれていた。

クロから僕に「拓斗さんは。お兄ちゃんの大切な人だよね。シロちゃんはね。お兄ちゃんの大切な人には幸せになって欲しいんだ。それにね。お兄ちゃんがね。シロとクロが仲良くしていた頃を思い出したいって言っていたの。だからお願いします。お兄ちゃんに幸せを運んでください」

僕はクロの言葉を聞くと。クロとシロの願いを聞き届ける事に決めて、僕も一緒に元の世界のクロとクロの中に居るクロに会いに行くのだった。クロとシロも僕の行動についてきて、僕はクロとシロの手を握って。クロの体の中のシロの所に行くことになったのである。

僕達はユウキとユウナの待つ場所まで戻ってくると、シロとクロの手を繋いで、僕達はクロとクロの体の中にあるシロの元に行くのである。シロとクロは、お互いに手を握りしめていた。僕達はクロの身体の中に入る事に成功して。

シロはユウキに抱きつき。泣き始めるのだった。

シロが、僕の方を向きながら、何かを言いかけて言葉を止めてしまった。そして、僕達は僕とユウキの住む家に帰ることにした。それからしばらくしてシロは「あの。拓斗さんは。どうしてお兄ちゃんの事をそこまでして、気に掛けるんですか」とシロが僕に質問してきた。

「ユウトの大切な人は僕の大切な人達だったからだよ。だからだよ。ユウトが僕の事をどう思っているのかわからないけど。でもね。僕は君達のことを大切に思っていたんだよ。だから、ユウキの事は大切にしたいし。君達をユウトに返すために僕は必死で戦ったんだよ」と僕が言うとシロは「ありがとうございます。私はお兄ちゃんともう一度お話がしたいです」と言い。僕は、シロとクロが会話できる方法を伝えることにしたのである。

僕達が、僕が暮らしていた世界に戻ったときにシロがクロの体から出て来て クロは、クロに話しかけて クロがシロに「これからは、私達二人に協力して下さいね」と言うと クロは僕とクロを見つめてから「お姉ちゃんに聞きました。お兄ちゃんの為に、ここまでして頂いて、私が出来る事なら協力させてもらいます。クロちゃんと、シロちゃんに、私が出来そうなことを何でも聞いてくださいね」と言ってくれたのだった。

僕とユウキとシロとクロとクロと僕とシロが元居た部屋で話をしていると 僕達がこの世界に戻ってくる前までの話を始めるのだった。

僕はクロに「シロに、クロの記憶を取り戻させてあげたいんだ。手伝ってくれないか?」と言うとクロは微笑んで「はい。お兄ちゃんの頼みだもの、シロちゃんの記憶を取り戻す手伝いをするわ」と言うのだった。僕はクロに クロが僕に「シロに記憶を思い出させることが出来る魔法みたいな物は、存在しないですか?」と聞かれた僕は、僕とシロとユウキの体の一部を取り込む必要があると説明したのだ。するとシロが「それは。私と、クロにも、ユウトと、ユウキさんの体の一部を摂取して記憶を呼び起こして欲しいんです」と言われ。僕達4人で、話し合い。

シロが「それじゃあ。私はシロちゃんとして、クロは、クロで行きましょう」と言い。僕とユウキは、それぞれ。クロとクロの体の中のシロに自分の髪の毛を渡すことに決まった。

シロは「クロにお任せするわ」と言いクロに「クロは、シロの体が欲しくないんですか」と聞くと クロは、「えっ?いいのかな。私がシロちゃんになってもいいの?」と言うと クロは「当たり前じゃないの。シロはシロなんですよ。ユウくんはユウくんなんだから、私は、クロがシロになるなら大歓迎ですよ」と言うとシロは「わかったわ」と答えるのであった。

僕達は、お互いの顔を見ながら「俺の体は好きに使って構わないぞ」と僕とユウキは答えたのである。するとシロが「わかりました。シロがユウキになり。クロは、ユウキになり。シロがクロちゃんになり。ユウトはユウトになるので良いですね?」と言うと僕が答える前にクロが「うん」と言うと、すぐにシロは自分の体をクロの体内に吸収し始めるのである。そして、シロの体内に吸収されていくとシロの体が発光しはじめるとシロが光に包まれていき光が消えるとシロとクロが、シロの姿になっていたのであった。そしてクロの髪の色は白くなり瞳も白く変わってしまうのである。

僕達三人は、僕が僕とユウキの体の一部である髪の毛を手にして。ユウナの髪の毛を手に入れると。

クロが「これで準備ができました。後はユウくんが、私の髪の毛を口に入れて、飲み込んでくれれば終わりです。そしたら、私はクロに戻り。ユウトも、ユウキもクロちゃんになれるはずですから」と言ってきたので。ユウキは「わかった。俺の事はユウトと呼んでくれ」とクロに言い。

クロは「私の事もクロちゃんで良いわよ」と言うので。

ユウトはクロの髪を一本手にしてから、クロの頭に生えている白い毛に触れると。

「俺の事を忘れても絶対に。俺の大切な妹であることは変わらないから」と言ってからクロにキスをして クロの体の中にユウトが自分の髪を飲み込んだのだった。するとユウトが輝き出すと。

シロはクロを、シロはユウキを抱きかかえて。そしてユウトは、ユウナと僕の体から流れ出した髪の毛が混ざり合いながら集まり始めるのだった。

ユウトが、クロに吸い込まれるように、ユウナの体の中にユウキとクロが入っていき、そしてシロとクロはユウトと一緒に僕に近づいてきて僕を包み込み。僕達の体も発光する。僕達もお互いに抱きしめあうとシロとクロとユウトとユウナの体に吸い込まれていくと。

ユウナの体の中から、ユウカが姿を現した。そのユウカにシロが声をかけると。

「お久しぶり。クロちゃん」と返事をする。

それから、シロとクロとユウカとユウナで僕達のいた世界に戻ることになり僕達が僕達の住んでいた家に転移することになる。僕達の家の前にはユウコとユウマとサラが立っていて、僕は彼女達に事情を説明してユウカの体を元の世界に戻すための儀式を行ってもらうことになったのだった。

僕は、ユウキが心配だったので、シロとクロが僕から離れてユウキの方に向かっていると、ユウキはシロを抱きしめていたのだった。

それからシロとクロが僕の方に近づいてくるとシロが僕に近づき。シロが、僕の頬に触れて何かを言おうとした時、シロが消え始めて、僕の目の前でシロが消えたのだ。

僕は、僕の体の中のシロを呼び出してみると、僕の中から出て来たシロが僕に「どうしたの?拓斗」と尋ねてきたのである。

シロはクロを呼び寄せるとクロと会話をしているみたいで。シロは僕を見つめながら話を始めた。

シロ「ねぇ。クロが言ってるんだけど。私に拓斗から渡された物があるから。クロに飲ませて欲しいって」と言うと 僕「ん?なんのことだろう」と言いながら、シロがクロと僕の記憶を取り戻した時に僕がクロに手渡していた小瓶を手渡すとクロが僕の中に戻ってきて、僕の中に居たクロが出てきて クロ「これだよ。お兄ちゃん」とシロの持っていた、記憶喪失になった原因となった薬の小瓶を見せてくるのである。そのクロに僕は、この世界に戻って来たときにクロが倒れていた事と。ユウカやシロとクロとクロの記憶を取り戻すために必要だったことをクロに伝えた。

僕がクロとシロと話をしていると。ユウキはユウナが僕の手を握ると。

ユウナが「拓人様」と言うので、僕はユウリの体を見つめて、それからユウナが握っている僕の手をユウリに触らせるとユウナは驚いた表情を浮かべている。そして、僕に話しかけてきた。

ユウリ「私と、ユウカは双子なんです。そしてこの世界の私達は死んでしまったようです。私は私の意思とは無関係に、私の中にあるもう一つの魂が勝手に動いている感じがします」と言い。僕を見ていると 僕が、僕に「ユウリスは無事なのか?」と尋ねると、僕の意識の中にユウキの記憶が流れてきて ユウキが「大丈夫だ」とだけ言うとユウキはユウリスが眠っているベッドに視線を向ける。

ユウリは、少し考えた後に、僕の顔を見ると「今、ユウちゃんには私の記憶はないんですけど、私が、私である限り、私は、あなたの味方ですよ」とユウナが言うので僕は、 僕「ありがとう」とユウキに伝えるとユウキは微笑むとユウトは僕とユウキの側に居てくれた。僕はユウリスの顔を見ながら僕は、「またいつか。必ず会えるよ。だからそれまで、お別れ」と僕は、僕自身とユウキに語りかけると、僕とユウキの体が輝き始め僕は、僕の意識の中に戻っていった。僕は気がつくと自分の部屋のソファーで寝転んでいたのだった。

するとユウキが ユウキが「おかえりなさい。タクト」とユウキの声を聞いて、僕も「ただいま。戻ってきたよ」と答え 僕達はお互い見つめ合うのであった。

僕は、僕を見つめるユウキに、今までの事を話すことにしたのだ。僕は、僕の記憶を取り戻すまでに起きたこと。

僕達を襲ってきた奴らとの戦いのことを話すと、ユウキも僕に、この世界に飛ばされた時の出来事を話し始めたのであった。

僕が、ユウトの体の中に入ったことを説明すると、ユウキが「ユウトさんが。ユウキさんの体を使って私の前に現れたんです。私も最初はビックリしました」と微笑んでくれる。

僕は僕の中にクロがいた事を伝えようとするとユウキが先に話し始めて。

ユウキが僕達を襲ってきた集団の話をすると、僕は「それは俺も同じだ。俺はクロとシロと一緒に戦っていた」と答えると。

ユウキが「拓人が私と入れ替わっていたんですね」と言い出すので。僕がクロとシロが僕の体の中で生きている事をユウキに教えてから僕達はお互いに笑いあったのだった。そしてユウキが

「ところで、ユウちゃんが気がついたとき。周りに誰もいなかったみたいなの」と言うと僕は「それなら俺がクロを呼び出してみたよ。そしたらシロも出てきたんだ」と言うと。

僕達はクロとシロにも話を聞くと、シロは僕に「ユウちゃん。クロが、ユウちゃんの中に、いるみたいよ」と言うと。ユウトが僕を睨みつけていたのである。

ユウトは、クロとシロを呼び出してから「私は。クロです。今はユウトに私の体と私の力を託すために。ユウトと体を融合してます。私の体は拓斗が持っているはずなので。後で拓斗に聞いてください。それで、ユウくん。拓人の体を返すのはもう少し待ってくれませんか?私は。私達を襲ってきた連中の正体を突き止めるために。私とクロとシロの力が必要です。私の体が元に戻ったら、ユウくんの体に返しますのでそれまで、ユウくんの体を貸してください。それと、シロとクロも協力して下さい」と言うと。

クロが「いいわよ」と言うと。クロの体内に吸収された、僕以外の全員が、それぞれの肉体から抜け出すことができるようになっていたのだが。シロは「ごめんなさい。もうしばらくこのままでお願いできないでしょうか」と言うので 僕達は、それぞれ自分達の家に帰り、シロは僕達が借りてる家に戻るとクロも僕と一緒に家に戻ってくる。それからユウトがユウキに「おい!お前何考えてんだ!せっかくシロも元に戻ったのに。俺がクロからもらった薬でクロを取り込むなんて。クロは、クロのままでいたいはずなのに」と言うとユウトは僕に抱きつきながらユウトに「だって、この薬があれば。私達の世界にいるクロを助けられると思ったから、だから」と僕にしがみつくのだった。

僕が「まあ、確かにクロの体を使えばあいつらを撃退できたかもしれないし。でもさ。もしクロの体を使っていた時に。ユウトの人格と、クロの意識が、消えてたら。そうすると僕達の世界にいるユウキの体を使う事になったと思うんだけど」と言うと。ユウトとクロは俯く。

僕は、ユウトに「クロを責めるな。僕達はクロがくれた薬を使っただけだからな」と言うと。ユウキが僕の手を握りしめて「ごめんね。クロ」と言って謝る。するとクロがユウキの手を握ると。

クロ「大丈夫。気にしないで、私。嬉しいから」と言うので。僕はユウキとユウキが握った手に自分の手を上から重ねる。ユウキはクロに「ありがと。本当に」と言うとクロが微笑んでいる。

それからクロとユウナが僕の手を握ってきて僕は2人を抱きしめるとユウナは涙を流しながら「クロ。よかった」と嬉しそうな表情をしている。ユウナを見てユウトは複雑な気持ちになっていたのであった。それから僕は、ユウキが持っていた小瓶を手に取る。

(これは、あの世界で僕達が飲まされた薬と同じだ。それにしてもクロはなんで。この小瓶を持っていたんだろう?)と思っていると 僕がクロから貰った薬は記憶を失ったりしないようにする薬で記憶を消すような薬ではないのである。だから僕達はクロがこの小瓶を持っていることが不思議に思えたのだ。そして僕はクロと会話をする事ができたので僕はクロに「なぁ。どうして、この小瓶を持ってきたんだ?」

僕がクロに質問をしてから数秒経つとクロは答える事はなく僕を見つめて悲しげな表情をするだけだった。そしてシロは「拓斗。ちょっと話したいことがあるんだけど?」と言ってくるので。僕はユウカに話を聞くことにするとユウキが僕の腕を抱きながら。僕と会話しているシロを見つめて涙を流す。

僕「とりあえずユウコさん達の所に行って話を聞いてきたらどうだろう?」と言いユウキに声をかけると 僕「わかった。シロは一緒に来てくれるのか」と聞くとシロも付いて来ることになったのである。

僕達3人はリビングに向かうのであった。

シロに連れられて来た場所は、ユウキの家である。

僕がユウカと話し合っている時にユウキも混ざって、僕達はユウキの家族に会う事にした。僕は、家のチャイムを押しても返事がないのでドアを開けようとして鍵のかかっていないドアを開けると、中に入るとそこにはユウキの母親と父親がソファーに座っていて僕を見るなり僕に近寄って来た。

母親「あなたがユウキのお友達なのですね」と話しかけてきて僕は、 僕「はい。ユウキと仲良くさせてもらっています」と笑顔で言うと。母親は僕の顔を見つめて笑顔を浮かべているので。僕は少し恥ずかしかったのだ。

父親「君は、どこから来たのかね?」と僕に訪ねてきたので。僕は、「僕が異世界に転移させられた時の世界です」と答えてから「僕は、貴方方に謝罪しなければならない事があります。僕には僕の本当の両親がいましたが。僕が小さい頃。両親は亡くなってしまったのです。その日、僕は、僕の住んでいた村では、流行病が発生したため僕以外全滅してしまったので僕は両親の故郷に帰ることになったのは覚えています。その時の僕の年齢が6歳くらいだったので」と言うと父親は、「なるほどね。それじゃ君の両親の名前を聞いてもいいかい」と言うので僕は「僕の親の名前は。拓海 悠斗といいます。それと妻のユウミです」と言うと母親が

「ユウト。拓人と。ユウキと同じ名前だわ。それで貴女の年齢は」と言うので僕は「14歳です」と言うと父親が「それなら、うちの息子より少し年上だね。私は息子の父だよ。よろしく頼むよ」

と言うので僕はユウキのお父さんの顔を見た。ユウトの顔を見るとユウキに似ているのが分かる。僕は、ユウキと初めて出会ったときに感じていた感覚を思い出していた。僕はユウキの父に 僕「はい。こちらこそ、これからお世話になります。僕は。自分の世界でユウちゃんにお兄ちゃんのように優しくして頂いたので、僕にとってお姉ちゃんみたいな存在です」と言うとユウキのお母さんも僕をじっと見つめてから。

「ふぅーん。そうなの。ねぇ?ユウちゃん。お母様の目をみてくれないかな」

と僕に向かって言ってきていた。

ユウキが「うん」と言って立ち上がると僕とユウキのお母さんの顔をみる。ユウキは僕のことをじっと見ているが僕はなぜか恥ずかしくなっていたのであった。

しばらくして、ユウトの母の「私達も、あなたのことは聞いておきたい事があるの」と言われてから僕は、僕とユウキの事を詳しく話し始めて。それからユウキがユウナの事を、僕達に話すと、二人は驚いてユウトの事とユウナの事を真剣に聞いていた。僕は話し終わってから 僕「これで、ユウキさんから聞いた話は全て終わりました」と言うと。ユウトが「僕も聞きたかったことがあったので。教えてくれませんか?」と言うので。僕は自分が異世界での出来事を話すことにしたのである。僕は、ユウナと、ユウトの2人が入れ替わった事。クロとシロが僕の中で生活をしていた事などを全て話してから、シロとクロはユウナの体で生き続けていたのに僕がユウトの体を奪ったことで、僕の体に取り込まれたことを話し終わるとユウトとユウトの母は泣いていたのである。

ユウトは、シロが元に戻ってから、僕とクロの話を聞いて、 ユウキがクロの体を取り込んだ事で、クロはユウキの中に吸収されたけど。クロの記憶や、クロの感情が、消えることはなかったと言う事実に気がついたから。そして僕は「それで。僕達がいた世界で。僕は、シロとクロの体を使ってあいつらを倒した。だけど。あいつらが、僕達から、奪おうとした力も。僕達の物になったんだよね。でもさ。その力は僕の中に、まだ存在しているんだよ。それを使うためにはさ。僕自身が強くなる必要があるから。だから僕に稽古をつけてほしいんです」と僕とクロの話をユウキとユウキのお母さんに聞かせたのである。

それから、ユウキが僕とユウキのお父さんに「私の身体を返してください」と頼み込んでいたが。僕とユウトの2人で説得をしてから。僕は「ユウト、僕の体の方は頼んだぞ」と言うとユウトは「分かったよ。ユウちゃんのこと任せて」と言ってくれたので僕は安心することができたのであった。

僕は今ユウトとクロと一緒にいる。クロはシロに、ユウトの身体を返したのである。そして僕は、今。ユウトから体を借りて、僕自身の体で生活しているのだ。ユウトの体を借りるのは初めての事だった。僕は、ユウトの家にお邪魔していて。僕はユウトから剣を教わっていた。

「ねぇ。僕の事を呼び捨てにしてもいいからね」と僕に言うので僕は、僕の中のユウトと、呼び捨てにしても問題がないのか聞くとユウトは

「全然構わないし。僕がクロで、君がユウちゃんで良いんだから」と言うので。僕は「わかった。ユウトは強いのか」と言うとユウトの頬が赤くなり照れながら

「そんなに。強くはないと思う。それにさ。ユウトが持っているのって。クロがくれた小瓶じゃないの」と言うと。僕はユウナのアイテムボックスの中にある。記憶を失う薬を取り出すとユウトは驚いた表情をしていたのである。

僕が「やっぱりこの小瓶を持っていたんだね。これは記憶をなくす薬なんかではないんだけど。この小瓶の中には僕の作った薬が入ってるんだけど。これを使えばクロと僕だけと、意思の疎通ができるようになって、僕は記憶が消えることもないし、僕がクロの力を扱えるようになるんだ」と言うと。ユウナは、「じゃ。私と会話できる小瓶もあるんだ」

と言うとユウトは「えっ。小瓶の中に入っていた薬はクロの作ったもので。僕の持っているのは僕の作ったものなんだ。クロが作ってくれたのは。この小箱に入れて持ち歩いているんだ」

と言いながら、ポケットの中から綺麗な小箱を取り出してから「これが、僕が作った小箱なんだ」と言って僕に見せてくれたので僕は「すごい。とてもいい品だね」と言うと。

ユウトが「ありがとう。それなら。ユウナにも、何かあげるよ」と言ってくれるので。僕は「僕の作った。指輪とか。どうだろうか」と僕が言い出すとユウキが、

「あっ。僕も作る約束してたんだった」

と言い出してくるが、そのタイミングで僕の手を握る女性が現れる。

「拓斗は私の物だよ」

と言い出した女性は僕の姉である。拓海姉さんである。拓海姉さんは僕に抱きついてくる。僕よりも年上で26歳の拓海姉さんとは姉弟としてではなくて恋人同士で交際をしている関係だ。拓海姉さんの顔が目の前にあり姉さんの顔を見つめていると、僕は「もう離れたくない」と思ってしまうのだが。僕は姉さんの胸の膨らみを直に感じていたのだ。するとユウトが僕を見ていて。僕に話しかけてきたのだ。

ユウト「お二人さん仲が良すぎですよ」と笑いかけてくれる。それからしばらくしてから。ユウナが

「私は。シロに体を貸した状態では。ユウトと会話する手段がないわね」と言うと、ユウトは、「ユウキから、僕達を助けてもらったときのユウちゃんに渡すはずだったネックレスをあげるから。それを首にかけて」と僕と、ユウキに言うと。僕はユウキに「僕からはこれをあげようかな」と言うと僕は、指輪と、ピアスを手渡す。僕は、「僕も姉ちゃんにはこれを渡しておかないとね」と言うとユウキの姉は「嬉しいよ」と言うと僕の姉は嬉しそうに僕から貰った物を自分の手につけている。僕は姉とユウキの顔を交互に見つめてから、「ユウちゃんはこれからどうしたい」と聞いてみるとユウナは少し考えこんでしまい「私も強くなりたいから。訓練は続けようと思っているのよ」

と言うと僕は「そっか。無理だけはしないようにね」と伝えると。姉が僕をじっと見てから。姉も僕の方に近寄ってきて「ユウキは。本当に女の子になったんだね。それに、拓斗の大切な彼女で、弟分なんだもんね。これからもよろしく頼むわね」と言うのだ。そして、姉とユウキの二人は帰って行ったのであった。

僕は、今日もユウキの家に来ていた。そして僕達はリビングにあるソファーに座って話していた。ユウキが僕に話してくれたことだが、実は先日の魔王軍の襲来の際。ユウキも僕と同じく。ユウトと一緒にいたらしいが。勇者の力はユウキも持っておらず。ユウキは僕と同じようにユウキのお母さんが守ってくれたという。ユウトはその時の事を思い出していたようだが。

ユウキが「僕の母様はとても強かったから。僕の事も守ろうと必死に戦っていてくれたんだ」と言ってから、ユウトと、ユウキの2人は、お母さんに「お姉ちゃんを守ってくれて。お姉ちゃんはお姉ちゃんだから。お姉ちゃんを、大切に思って欲しいの。そして私を救おうと、お城から抜け出した。ユウキが、一番頑張ってるんだから、私も、ユウキのお陰で。今生きていられるの。ありがとう」と言うと。ユウキは「ううん。お母さんが。僕達を護ろうと戦ってくれたんだ。僕はそのおかげで生きているんだよ」と涙を流してから。

それからしばらくして落ち着いてから、ユウトにユウナの件で話を聞きたいと、ユウキに言われてからユウトに話すと、僕はクロと話せるようにと小箱を作ってもらうために。

クロを呼んで、小箱を預けてから「クロにお願いがあるんだけどさ」とユウトに話すと、僕はユウトから、ある事を頼まれたのであった。それはユウナの持っている薬を僕に分けてほしいと言われたからである。ユウトは、クロから薬の事を聞いて。自分と、シロの記憶が消えた原因が薬だと知ってから、僕の薬で、僕みたいになりたいとユウトは言ったので、僕もユウトは、ユウキとクロに、体を鍛えてもらうから、僕の力を分けてほしいと言うとクロは僕から薬を取り込んでから。すぐに僕の身体に溶け込んでいったのである。僕はその後、シロの身体に入って、シロの身体を動かしてみることにした。

僕は今、ユウキとユウキの家族がいる部屋に向かって歩いている最中である。そして部屋の扉を開けると僕は、ベッドに腰掛けていて「あっ、おはよう。ユウト」と声をかけるとユウトは「おっ。おう」と言うと僕を見ているのだが何故か、目線がおかしい。僕の胸に視線を向けてからまた、僕の顔を見るとユウトは、僕の頭を優しく撫でてくるのである。

それから僕はユウキに、僕の身体に異変はないのか聞くとユウトは僕の体を見つめながら。「いや。別に特に異常はないよ」と答える。

僕は「そうか。よかった」と言ってから僕はユウキをじーっと見てしまう。そのせいなのかわからないがユウトは、顔を真っ赤にしてしまうので、僕は「あれっ?熱でも出てるの?」と言ってみる。すると、 ユウトは「えっ。なんで、僕の事を知っているの」とユウトは僕に言ってくるのだ。僕は、「ユウキって言うんでしょ。僕はクロから、君の名前と、身体に異常がないことを教えてもらっているよ」と言うと。

ユウトが「そっか。僕と、クロちゃんは、クロちゃんがユウキの体を操れるようにして、クロちゃんの体にユウナが乗り移っているから。ユウちゃんはクロちゃんに、身体を貸した状態では、私達とも意思の疎通が出来るんだね」と言うので「そうなんだ」とだけ答えてから僕は、シロの方を向いて「シロ。君にもユウキの体の方は頼んだからね」とだけ伝えたのである。僕はシロが「わかりましたよ。お任せください」と答えてくれたことに安心して「ユウトの事はお願いね」と言うとシロは「大丈夫です。任せて下さい」と言う。そこで僕は、自分の家に帰ることにした。そして自分の部屋に帰ってきた僕はユウキの体の方のクロを呼び出すと僕はクロに、「クロの体もクロが使うことになるかもしれないけどいいよね」

とだけ言ってクロの返事を聞く前に僕はクロに自分の魂を移すと僕の意識がクロに乗り移りクロと入れ替わることになったのだった。

僕が目を覚ますと、そこには、僕の家の天井が見えて僕は、ユウキにクロの体を返してもらいながら。ユウトとユウキを入れ替えてから僕は「僕の方こそごめんね。急にユウトの意識の方にクロが行ってしまって」と謝るとユウトは気にしない素振りを見せながら、「僕の方からお願いしたんだしね」とユウトは笑顔を見せて言うので、ユウトもシロの身体を借りていて体が入れ替わった状態だけど普通に生活出来るんだなと思うのと同時に、シロの方に僕の体を戻してからユウナが、僕に会いに来るのを待つことにした。そしてユウナが来て、ユウトの体を使ってユウナが僕の所にやってきて「私のユウト。会いに来たよ」と言ってから僕に抱きついてきたので、僕も、ユウナを抱きしめて、ユウキに聞いたのだが、ユウキと、ユウキの家族の人達の会話を盗み聞きしている限りでは、どうやら。僕はクロの肉体にユウナの魔力で作りだした魔結晶を埋め込んだことで。ユウキが、ユウマになったらしい。

ユウナ「拓斗は私の彼氏だよ」と言うとユウキが、少し顔を赤くしながら、「うん。拓斗君は僕の大好きな人だから」と答えるので、僕は「そうだ。今日からユウキと僕は、ユウナの彼氏と、お嫁さんだね」と言うと、ユウナは僕をじっと見てきたので、僕が「ん?何か僕に言いたいことでもあるのかな」とユウナに声をかけるがユウナは顔を俯かせてしまい「何でもないよ」と言いながら離れていくのだった。そしてしばらくすると。僕がクロを呼んでいる事に気づいたのかクロが、僕に話しかけてくると「お呼びでしょうか」と言ってくる。僕は「クロ。これから、シロの方にユウナを行かせるから」と伝えると、クロは「了解しました」と言ってから僕の中に消えていった。

そして僕と、クロは入れ替わりに、シロは僕から抜けてから、僕もクロと、ユウトと、ユウキと、クロの体を順番に借りていくことにしようかなと考えることにするのであった。

ユウキは「僕はユウトだから」と僕の家にやって来た時に僕に話しかけてから、僕の横に座っている。そして僕は「僕達って恋人同士だからさ」と言うとユウナは、「そうだね」と恥ずかしがりながらも嬉しそうに答えてから僕を見つめていた。すると、クロが僕の身体から出てくるのを確認出来たのとユウトが僕の目の前にいるのを、僕は確認出来ていたので。僕は二人を見てから口を開いた。

「これからは。クロを、シロを呼んでもいいからね」と言うとユウトがクロと、クロを憑依させているユウナと話をしていた。クロから話を聞いたシロが、「ユウナ。これからよろしくお願いします。あなたとは、長い付き合いになりそうな気がしますから」と話すとユウナは、笑顔で、クロを見ながら、僕の身体に入り込む。

ユウトは、自分の身体に戻り僕と一緒にいるのを喜んでくれると嬉しいなと思って僕は、クロを召喚する事にしたのである。それから僕がクロを呼ぶとクロが僕の元に飛んできて僕が、クロに「僕の身体の中に入る?」と聞くとクロは、ユウキがいるのを確認してから、「はい。ユウト君のお身体に入らせていただきます」と言うと僕の中でクロは僕が寝ている間、身体を使う事を許可してくれたので僕は、ユウキの身体から、シロを、クロを身体から呼び出した。

クロが僕から出ていくのを見たユウトも僕が、クロと、シロと、話をしているのを見ていたが、そのあとにシロが自分の姿を晒すと、驚いた表情をして「あっ」と言う声を出す。

シロは自分の姿を見せた後すぐに僕に身体に戻っていた。それからユウトは僕に近寄ると、僕を抱きしめて、「やっと、会えたね」と嬉しそうに言うので、ユウトを抱き締め返して「あぁ。ずっと待ってたよ」と話すとユウトは涙を浮かべていた。

ユウナが僕から離れてくれなくて、そのままでいようと思っている時だった。アリシアがやってくるとアリシアは僕に近づいて来るなりいきなりキスしてきたので驚いているとユウトは頬に両手を当てていて僕達の様子を見ているだけだったのでアリシアは僕の胸を優しく触り始めたのである。僕はそんな事をされて、気持ちよくなってしまい、このままだとまずいなと思いユウト達に気づかれないようにその場を離れようとしたのだが、ユウトに服の裾を引っ張られてしまったのだ。

僕は今、何故か。僕の横に座って、何故か僕と腕を組みたがるユウキに困惑していた。ユウトは何故か。ユウナの方を向いているので、ユウナは「私が拓斗の一番なんだから。絶対に負けないからね」と言うとユウトは、苦笑いしていて、僕には何が何なのか分からないまま時間が経ち。お昼になるとユウナ達が家にやって来てから一緒にご飯を食べることになったのである。それから僕は、クロとシロも一緒にご飯を食べないかと誘ったところクロは、僕の身体の中に戻ろうとしたので、僕は慌てて「駄目」と言うと、クロは渋々、ユウキの身体に戻ったのである。それから僕達は昼食を終えてから部屋に戻る事にした。すると僕は部屋に着くと「あれ?ユウキがいない」と不思議に思い僕はユウキの部屋に向かった。そして部屋に入るとユウキはいなかった。僕はクロの部屋にユウキの身体を運び込む事を提案するとクロはすぐに僕の部屋に現れたのだ。そしてユウナが、「えっ?」と言う反応をしたかと思ったら僕をじっと見ていたのだ。僕が、「ユウキの体。ここに置いとくからね」と言うと僕は部屋を出ることにした。そしてユウトは、部屋に戻ってくるとユウナはユウキがユウマとして自分の身体に帰ってくるのかと思うと、寂しそうな顔を見せるがユウキとクロの二人が入れ替わっても問題なく、ユウマと、クロは意思の疎通ができるようにはなっているみたいだし、特に気にしないことにした。その後、ユウキの体をベッドの上に置くと僕が寝るまで隣にユウキがいたが、僕が目を瞑ると同時にユウキは起き上がって「拓斗君」と名前を呼ばれた。

僕は「ん?」と返事をすると、僕の上にユウキは乗ってきたのである。「あのさ、私を幸せにしてね」とユウキは言うので僕は「いいよ」と答える。ユウナがユウトに何をしているのかわからないけども僕もユウナの体に自分の体を乗り移らせる事にして、ユウトとユウナに意識を移したのである。僕はユウナとクロを僕の身体に戻してから自分の体の方に戻る。

ユウトは僕の身体に入ってくると僕の唇を奪ってきていた。僕も、僕の体の方に来るとユウトを抱きしめてから、「おはよう。ユウト」と言うと「うん。ありがとう」とだけ言ってから僕の身体の方で動き出した。そして僕はユウナも自分の身体に入って来るまで待っていた。しばらくして僕の身体に入ったユウナが僕の目の前に現れて僕の体をギュッとしてくると、僕は、自分の身体で起きている事が気になりクロを自分の身体に戻すとクロをクロの体から呼び出すと、ユウトがクロを見てから、シロと話をしていた。

そして、僕は、ユウナを、ユウナとクロを連れてからリビングに行きユウナに、クロを紹介する事にした。ユウナは、クロを、じっくり見て、「拓斗君の彼女?奥さん?になるんだよね?」と言うので僕は「うん。僕の大事なパートナーだよ」と言うと、ユウナに、クロと、僕とで、クロの分身体を作りだせるか試してもらう為に頼んでみたのだった。

そして僕達は、魔王城の近くにある村に向かう事にしたが、道中。シロと、クロの二人だけで魔物を倒すことにしてもらった。ユウナが、「シロさんに、クロさんは凄く強いんだよ」と言っていたのを聞いて、僕はユウナの言葉にうなずいていたのだった。そしてシロは、剣を使い、魔物を次々と切り裂いて倒していき、クロは魔法で、次々と焼き殺していったのである。僕はシロの戦いっぷりを見ているだけだった。そしてクロは、シロが倒せなかった魔物を次から次に、倒していっていたのである。

シロが、全ての魔物を倒した時にはもう夕方になっていて。シロとクロに僕の元に来てもらい、シロとクロの体を順番に僕に入れ込んでいき、シロの体からはシロが出ていき、クロの身体からクロが出る。それから僕は、シロに、僕の中に入ってもらうようにお願いして、クロを僕の身体に入れる。クロを、僕に入れた後。クロの体を僕の体に移動させてから、クロを僕から追い出してからシロを、シロの身体の中に入れ込んだ。

そしてユウトが、「シロちゃんにクロ君は本当にすごいな。僕の攻撃は殆ど当たらなかったのに。二人の強さなら僕がいてもいなくても、すぐにこの村の人たちを助けられるかもしれないな」と言うと僕は、「じゃあ僕は、クロを、クロの身体の中に入れてクロを僕の身体の中に戻してから僕達は、村長に会いに行くよ」と言うと僕はユウトとユウトに憑依させているユウナと、アリシアと共に魔王城近くの村にたどり着くと、そこには沢山の村人たちがいたがその人々は皆、元気がない感じでうつろな表情をしているのであった。僕は、そんな人達を見つめながらクロを呼び出して、シロと一緒に行動させるのだった。

僕がシロと一緒に行動をするようにクロに頼むとクロが僕の身体から出て行き、クロは、シロと一緒に行動する事になった。僕は、シロとクロと別れた後にアリシアと一緒に、僕達は村長の元に向かう。それから村長に話を聞き、事情を知ることが出来た。

アリシアが、クロと一緒に行動する事になっているため。僕はアリシアと一緒に、アリシアがクロと一緒に行動するために使っているテントで一緒に過ごす事になる。僕はアリシアと一緒に過ごして分かった事はアリシアはとても優しい人で僕に尽くしてくれようとしている。そして僕に「私とずっと一緒にいてくれるかな?」と言ってきた。

それからクロにお願いしてクロの体を借りる事にする。シロを僕の中で待機させたので、僕の身体にはユウキとユウナが二人で入って来れる状態になっている。シロとクロがいなくなったのは僕の能力のおかげで、クロと、シロを呼び出したり出来るので問題はないのだが。僕は、シロの体の中で眠るユウナに話しかけると、すぐに、クロの身体の中から出てこようとしていたのである。そしてクロの身体から出てきたユウナはクロを撫でている。僕は、クロがユウナの膝枕で眠り始めていたが、シロにお願いしていた仕事が終わっているのかどうか気になったのでシロと話すためにシロを召喚することにする。召喚を行う為の準備を始めるとユウナも僕の様子を見ていて「シロちゃんはどこから現れたのだろう」と思っていたようだ。

僕がシロに呼びかけると、すぐに、僕の中に戻ってきて、今度はシロの代わりに僕と話をしてくれる人が出てきてくれたのだ。その人のことをユウトは知らない様子で、僕の方をずっと見ている。それからシロはユウナの事を見るが、「私は、ユウナさんの味方ですから安心してくださいね」と言いながら僕の事を見ていた。それからユウナと僕が話をしている間。クロが、ユウナの横にいた。それからユウナの事を僕が、自分の中に招き入れる。すると僕の中に入るなり。シロと同じように僕の体の中に居着いたのである。僕は「これからよろしくね。ユウナ」と言うと、ユウナは僕の事をじーっと見てくる。ユウナの顔が赤くなって行くのを見た僕とクロはお互いに微笑み合っていたのである。ユウナの頭の中ではシロの事で混乱していたのだ。ユウナが落ち着きを取り戻すまでの間。僕とシロとクロの三匹が、ユウナにシロについて教えていたのである。

それからシロとクロとの話は一時間程続き。僕が、クロとユウナが一緒に行動していた時に、クロは何をしていたのかと聞くとクロは「クロも頑張ったのですよ」と言うとユウナの頭を撫で始めてユウナの身体に、気持ちいい感覚が流れ込んでいたのであろうか、クロと触れ合った途端にユウナの身体に変化が起き始め、ユウナが大人の姿に変わり始めた。そして僕はユウナが大人の女性になっていく姿を目にしてしまい。少し照れてしまい、ユウナの視線から逃げるように目を背けてしまったのだ。するとユウナが僕の耳元で「拓斗君のこと。大好きだから、私を見てくれてもいいんだよ」と言うと僕の背中に手を回してくるとユウナがキスをしてくる。そのままユウナと唇を重ねるがユウナが、「拓斗君に抱きしめられているみたいで凄く幸せなの」と言うと僕もユウナの事を抱きしめる。

それからユウナはクロが僕の中にいることに気づいていたが、ユウナの意識が覚醒した時すでにユウナの意識は僕の体の中にあるクロとは、会話が出来なかったみたいで僕が、クロと話している事を聞くのは初めての事であり、シロとクロが話していたことに驚いてはいたが、「クロは、拓斗君を癒せる子なんだね」と笑顔で話し始めたので僕が、「クロが、クロが僕達の為にしてくれたんだよ」と言うとユウナにクロが「私のお腹をなでてくれたのはあなたなんですね」と言う。僕は「そうだよ」と言う。するとクロのお腹から赤ちゃんの声が響き渡り。

僕は「もしかしたら。僕と、ユウナの子どもかもね」と言うとクロもユウナもお互いを見合いながら笑っている。するとユウナは、シロに近づいて、「ありがとう。シロちゃんも」と言うとユウナがクロと同じようにしてシロを触ってあげていたのである。シロが、「ユウナさん。私がシロだとわかったのですか?」とユウナに対して聞いてくる。

シロの問い掛けに、ユウナがシロを見てから、「だって私にはクロがついているもん」とシロに向かって言っていた。それから僕は、クロに「クロ。シロの体にクロを戻して欲しいんだけれどできるかな?」と言うと、クロは、自分の体の方に意識を移動させると、クロは自分の体に戻ることに成功したのである。そしてクロの体にクロが戻ったと同時にクロの身体の中にユウナが入る。

それからクロの身体の中に入っているユウナに僕達は、僕がこの世界の人族と魔族の国の争いの原因になっていることを話してから、僕は、この世界にいるユウナとシロそしてクロにも協力してもらえるかを聞いてみたのである。

するとシロとクロはユウナに力を貸す事を決めてくれたのだった。

僕はシロの身体を借りてからアリシアを連れてから村長の家に向うことにして、村長の家で事情を聞いてみると村長の話では、村の近くには小さな祠が存在しており。そこから魔物が出てくる事があるらしい。魔物は、普通の人間よりも強く。そして村人達に被害を与えてしまうと言うことで、村の人たちでは対応できず。勇者を召喚して、助けを乞う事にし。村長の娘と村長が勇者を召喚し。勇者は、村人達を守る為に魔物を倒し続けていた。その繰り返しにより村の周辺の安全を確保する事ができたのだが。村長が言うには。その魔物を討伐する時に、ある少女に命を奪われてしまったという。

僕がその言葉を聞いて、僕は思わずアリシアの方を見てしまうとアリシアが僕の顔をみて「拓人様が知っている方だと思いますが、恐らく。村長の孫の女の子だと思うのですが、その女の子が私達の元の世界で言う魔物になってしまったみたいなんです」と僕に伝えてきたので、僕達が今置かれている状況を説明することにしたのであった。僕が話を終え、僕の説明を聞いていたユウト達は驚きのあまり声が出ずに固まっている様子であった。それからしばらくして。ユウトとユウキとアリスが僕に、「僕はこの世界に残ろうと思っている。僕のスキルで、僕の事を救ってくれたユウナを絶対に幸せにしないと、そう思うから、この世界で生きる」と言ってきた。僕は、アリシアを呼んでユウキ達と別れるように伝えると、アリシアが僕に抱きついてきて、離れようとはしなかった。アリシアに、僕の考えを話すとアリシアが、納得してくれなかったのだが。ユウマに説得をお願いすることにした。

それからユウナを呼んて僕の中に入ってもらうと。ユウナにアリシアを説得してもらい。僕達は、それぞれの家に帰ることになる。アリシアには、クロにお願いしてクロの中に避難してもらうことに。ユウトは、ユウカに事情を説明してから、ユウヤに話を伝えてもらうとユウトは、僕に「俺はここに残ることにするよ」と告げ。僕とシロと一緒に行動をすることを選んでくれた。僕は、シロにクロの中に戻っていて欲しいと頼み。クロには、僕の身体の中にいて、ユウマと、ユウナの事を見守って欲しい事をシロに伝えるとシロとクロの了承を得た。そしてユウマが僕の手を握ってきて、「僕とアリシアを守ってくれよ。タク」と言ってきたので「僕に任せておいてくれ。必ず守る」とユウマに返事をすると。

ユウナは、ユウマと手を握りあい。二人で一緒に帰っていく。ユウナは最後まで名残惜しそうだったが。ユウキに「また会えるから」と言われて嬉しそうな表情をして。僕にお礼を言うと僕とユウトと共にクロの中に入った。

僕が、僕の体の中に戻ってくると。シロとクロの体の中に入り込みユウキとユウマは僕とアリシアがいる場所にやってくると、ユウキが僕に話しかけてくる。「僕はタクが好きだから、僕の命を捧げる。これで、僕は魔王として生まれ変わることが出来るはずだ」と。僕も「俺の命で良ければ、受け取って欲しい」と言う。すると僕の視界が暗転していくのである。それからしばらく時間が経過すると。目の前には魔王化した僕が立っていたのである。

僕は自分が何故魔王化してしまったのか理解できたので。自分のステータスを確認してみるとそこには、今までとは全く違う表示がなされていた。

【神格】:S+

【魔力容量】:S 【状態異常耐性】SS- 〈称号〉

:勇者

:世界の支配者 と記載されていたのである。そして僕のレベルは、200を超えてしまっていて。さらに僕の種族は神族となっていた。

それからユウナはと言うと僕の中で寝息を立てている様子だった。

ユウトは、シロの体内の中に入って眠っている様子であり。

ユウナは、僕の中で気持ちよく眠りこけていたのである。

それからユウトは、「僕の力を使ってくれると助かる。僕とアリシアが、僕とユウナとアリシアの故郷で待っている。それにこの世界には、まだ仲間が大勢いるから、きっとみんなも、この世界に来てしまうと思うんだ」と言ってくれた。

僕は、「僕とアリシアを頼んだよ」と言いユウナを抱きしめる。

「大丈夫だよ。僕は、もうすぐ消えてしまうけど、僕は消えてしまうかもしれないけれど。僕の心は君に受け継がれるから。君は僕にとって最高の友人で家族だから。僕はいつまでも君を見守っているから。君達の未来をね」

ユウマが、最後にそんなことを言ってきていた。

ユウマとユウナは、僕の身体の中に吸い込まれていくと、僕は意識を失ってしまった。そして僕が意識を取り戻し。目を開けようとすると僕が意識を取り戻したのがわかったみたいで。シロとクロとアリシアが心配そうに僕を見てくる。それからユウマとユウナが、シロの体内にいた時の出来事を話し始める。ユウナは、僕の事を心配してくれていて、そしてユウナが僕の身体の中の中に入ってきた時は、「拓人君のこと好きになったみたい」と告白されてしまい。僕は照れてしまいユウナと話すのも少し恥ずかしかったのは確かだが、それでもユウナと話しながら僕の中の状況を説明してくれたのである。

僕は、自分の中に意識を向けて、僕が魔王になったことでどうなったかを調べてみることにしてみた。

それからシロが、ユウナに僕を襲わないように伝えてくれるように頼みユウナが僕の中に入る許可をもらい僕の中に入ると、ユウナが、シロに向かって頭を下げているのである。そしてユウナは、クロとシロにも挨拶をしていた。それからユウナも僕に抱きついて来て、「ずっとこうしていたいな」と言っていた。

僕は、ユウナの頭を撫でてあげながらユウナが落ち着くまで待つことにした。それから僕はクロから、この世界で何があったかを説明される。まずはこの世界を滅ぼそうとした人物がいたと言う話をクロから聞かされる。その人物は僕の前世の仲間である。ユウナとユウトの母親のミホがユウナに殺される前のユウナを、僕の前世に呼び出しユウマとユウナがこの世界にやって来て、この世界を救う為にこの世界の人達に戦いを挑んだというのである。その結果はユウマとユウナが勝利をおさめ。この世界を救ってくれたという。しかしユウトの母親である美帆さんと。アリシアとリリカさんとサラさんは勇者の力に飲み込まれる事を恐れてユウジが作り出した空間の中に逃げ込むことに成功していた。その事実をこの世界の創造主であるユウジがこの世界に来たばかりのユウナに告げると。ユウナの心の中にもう一人の自分が生まれたのだと説明を受けたのだ。それは魔王と呼ばれる存在になり。自分の意思とは別に破壊を繰り返すだけの存在になってしまったらしい。

僕はユウトとアリシアの二人をクロの体から出してからクロを戻してからユウキとアリシアにクロの中から出てくるようにお願いした。そしてユウキとアリシアがクロから出てきたところでシロがユウナに声をかけたのである。

『私と、私の娘を救っていただきありがとうございました』と伝えると。「私は、貴方の娘ですか?」と言われるが、ユウマとユウキとアリシアを見て、『貴方達のお陰で私の娘の魂が完全に消滅したわけではなく。私達の力が解放されると、その力で私の分身体を作ることが出来て、その子は今眠った状態です』と言うと。僕達がクロの言っていることを不思議そうにしているとユウキは理解できたようで。

それからアリシアが、僕達の元の世界では、僕が魔王となりユウナを操りユウヤがユウナを殺し、その後僕が、ユウマとユウトをこの世界に連れてきてユウトを救い出し、僕が、魔王を倒そうと旅に出ようとした所でアリシアに出会いアリシアと恋に落ち結婚することになった事を説明した。それからシロにユウナとユウマの事について聞くことにした。

ユウナは、僕の話を聞いて「そっか、あの子は。やっぱり死んでしまったんだね。この世界でも私が殺したようなものだった。でも今はタク君がいるからそれで良いかな。これからよろしくお願いします」と言ってから、僕を抱きしめて来る。ユウトがユウナに抱きつき。ユウナは、僕からユウトにキスをするのであった。その様子をアリシアは嬉しそうに微笑んでいた。そしてアリシアとユウトとユウナが、僕の家に住むことになった。そしてクロとシロの事も紹介してクロとシロはお互いに自己紹介を済ませるのであった。そしてシロはクロの中に入ってきてクロの中にいる事になったのである。クロにクロの中にいることを伝えてからクロに確認をしてみたら。クロは、ユウマやユウキとならクロの中の空間にいるだけで満足なので問題はないと伝えてきた。クロに僕の身体の中にいてもらったのも理由があって。シロは僕の事が大好きで、いつも僕のそばから離れないので僕と一緒に行動することにしたからである。僕としては僕の中にいてもらうよりも僕に常にくっついていた方が良いのかもしれないと思ってしまった。それからユウトは僕の中に入っている状態になっているのだが。ユウトは僕の事を気に入ってくれたらしくて「僕もタクと同じ部屋で寝泊まりするよ」と勝手に決めていたのである。それを知ったシロは怒っていたけど。クロがシロを止めてくれたので、問題ないと思っていたのである。

シロは、クロの中に入ってから。クロの中でユウトと話し合う事にしていたのだった。そこで、僕が、どうしてここにいるのかと説明すると。僕の前世が勇者だったことを知ると、嬉しそうにしていた。どうやら僕が魔王を倒してくれると信じていたらしい。それから僕はクロとシロを連れて、ユウトとアリシアと、アリシアの息子のユマとユウトの娘であるユートにクロを紹介した。ユウトとアリシアの子供達は僕の子供みたいなもので僕もユウトに甘えることにした。

そしてアリシアとユウトの子供達に、僕が魔王になった経緯を説明すると。ユウナとユマは僕を魔王にした人物に対して怒りをあらわにしていたが、ユウトが冷静な口調で「あいつらのせいじゃないから、タクを恨むのは間違ってる。僕達を助けに来てくれたタクに感謝すべきじゃないかな」と言う。ユウマも、それに賛同する形で「タクも気にしていないみたいだから許してくれると助かるんだけど。どうかな?」と言ってくれた。僕は二人の意見に賛成するとユウトは安心してくれたみたいだった。

それからユウマに僕のステータスを見せてもらい。自分のステータスと比較して見ると、【神格】の項目がSになっていたのである。そして僕のレベルが300になっていて、ステータスも異常なまでに強化されていたのである。そしてユウナとユウマのステータスを見てみると、二人は僕よりレベルが上だったが、ステータスは圧倒的にユウナの方が強かった。これは、僕がレベルを強制的にあげさせられていた事で。ユウナが、本来の自分の強さを取り戻すことが出来たという事になると思う。

シロのスキルを使って、僕とアリシアと、クロのレベルを上げようとしたが出来なかったのだ。おそらくだけど。僕以外の誰かをレベルアップさせると僕は死ぬようになっているようだと思ったのだ。それに僕は僕の身体の中から魔力を感じ取ることが出来るようになっていた。それもかなりの量を感じることができるようになったため僕の魔力量が尋常じゃなくなっていることがわかったからであった。そして魔力量を測定出来る装置を作ってもらい魔力を測る機械で測ることが出来たのだが。数値は表示されなかったから恐らくだが。魔力容量がSSランクだからかもしれないけど、その辺の数値は分からないので調べることは出来ないみたいだ。

シロの作った魔力量を調べる事が出来る装置はユウキにあげることにした。僕も一応は作れるのかもしれないが僕は魔法が得意ではないため作ろうとはしなかったのである。

それとクロの話によるとこの世界に来た時の僕の力は、この世界で最強の力を持っていたようだった。この世界で最強の力とはどんな力なのかと言うと、それはこの世界の住人が使う魔法を一切無効化するという物でこの世界にやって来たときに手に入れた能力らしい。そのため僕は、この世界では誰にも負けないという事になるみたいで僕が戦うと相手が泣いて命乞いをしてきて僕が殺すまで戦ってくれなかったのが悩みの種になったそうだ。しかしアリシアは、この世界の人達を皆殺しにするつもりで戦えばよかったのではないかと思っている。そして僕のこの世界に来たばかりの時の名前は「レイ」という名前で。この世界の勇者と、ユウマの幼馴染で勇者の仲間である女性と、魔王の部下の一人の女性が恋人同士で。魔王の僕に、魔王討伐の依頼を受けてこの世界に来ていたが僕に殺されてしまうことになる。しかし、この三人の勇者と、この世界の人間達は、異世界召喚の魔法陣を使い僕の目の前にこの世界の人間を連れてきて、僕の復讐の手伝いとして魔王を倒して欲しいと言われ。僕はその提案を受け入れたことでこの世界の人間は、僕と敵対関係になってしまったのだと。そのせいで僕はこの世界を憎むことになってしまいこの世界で暴れたのだと教えてくれたのであった。

僕はクロとシロの二人に、この世界で起こった出来事について説明を受けていたのである。まずこの世界には、「勇者」という特別な人間がこの世界に存在していて、僕とこの世界のユウマもその一人になる。勇者というのは、この世界の人間の中の一部の者が選ばれるらしい。ユウナが選ばれなくてよかったと心底思った。そしてユウトとユウナとアリシアとリリカさんと、この世界の人達は勇者の仲間に選ばれるために、この世界に来る前から、訓練などをして来たのである。この世界の勇者である、ユウトはこの世界のユウマと幼なじみという関係で仲が良く、そのユウトの妹のリリカさんとも、ユウナとリリカさんが友達だったので仲良しになりユウナとはリリカさんの紹介で知り合ったのだと言う。ユウトは、そのリリカさんが大好きでこの世界に来る時に告白をしたらしい。しかし振られてしまったらしい。ユウト曰くこの世界にいるリリカさんの事が好きだからだそうだ。その話を聞いたユウナは少し寂しそうな表情をしていた。

それからこの世界でも魔王がいるらしくて、魔王を倒すために僕が呼ばれたということらしい。僕を呼んだ張本人達は「貴方に倒してほしい」と言ってきていて。倒さなければ殺されると脅されたので倒すしか無かったのだとか。そして僕が魔王を倒した後は、他の魔物も従魔にすることが出来ないようにしておいたので安心して欲しいとクロは言っていた。僕のレベルが上がった原因は僕の身体がこの世界にやってきた時からすでに強くなっていたから、レベルが上がることによってさらに強い力が使えるようになっていて。本来ならばこの世界で魔王を倒した後の僕とこの世界の住民達の力の差があまりにも大きかったため。僕の力をある程度セーブする為に、僕が魔王にならずこの世界に来てしまったことが原因みたいで、僕の本来の力をこの世界の住民は知らないのだという事を教えてくれた。

僕も自分が最強だという事を知っていたけど、僕を召喚した者達がこの世界の人々に、僕の強さを伝えずに倒せと指示を出してきたので、倒せなかったのだという。

この世界での僕とこの世界の人々が戦いをする前にこの世界に来てすぐにクロと出会い、僕の仲間になってくれた。クロに、僕の記憶から、クロの過去も見させてもらって。僕はこの世界の人々の事を信用できなくなりクロにお願いして僕の家族を守ってくれるように頼み込む。クロは僕のために喜んでと言ってから僕の家族の事も守ると言い出してきてから僕の中で眠りにつく。僕の家に帰る事にしたのであった。

僕はシロから聞いた話を聞き終わった後、自分の家に帰ることにした。クロは僕の中にいてもらう事にしたので家に戻る途中でユウト達と合流してから家に戻った。家に着くと、家の中がボロくなっていたのを見て愕然としてしまう。僕は急いでシロと、アリシアをクロの中に戻すと僕とユウトだけで王城に向かって行った。するとそこには大勢の騎士が集まっており、その中に国王もいたので事情を説明してから。アリシア達を保護してくれる様に頼んだのである。それから、僕はユウマにユウキを呼んでもらうとユウトが「なんで兄貴がいるんだよ?」と言った。どうやらユウトは僕のことを心配してくれていたようだ。僕はそんな優しい弟にお礼を言ってから抱きしめる。するとユウトは「何があったのか、聞かせてくれないか?」と言ってきた。僕はユウキに話すのと同じようにユウキとユウマにも今までの事を説明したのである。するとユウキは「お前も大変だったな。俺は、いつでも力になってやるよ!」と言ってくれた。ユウマはユウトとは違い、かなり驚いていたが僕を心配して怒ってくれていたのが分かっていた。だから僕は、感謝を込めて頭を撫でてあげたのである。そして僕とユウトの二人は王城に呼ばれてしまい。ユウナに謝る事にしたが、どうやら既にユウナがアリシア達に話をしていたみたいで僕と、ユウトは一緒にユウナの部屋に向かうのであった。ユウナが扉を開ける前にノックをする。僕がユウトと一緒に入った部屋の中にはリリカと、その娘のユイが待っていたのでユウトとユウナとユマはユイに話しかけているので、その間に僕はユウナとリリカと三人っきりにしてもらいユウナに謝罪することにした。

「ユウトから聞いたと思うけど本当にごめん。俺のせいで辛い思いをさせちゃって」

僕がそう言い頭を下げるとユウナが僕の身体に優しく抱きついてきた。僕はそんな彼女に戸惑ってしまい。ユウトを見ると「いいんじゃないかな」と言うので、ユウトは僕がこの世界で初めて出会った友達なので僕はユウトにユウナのことを全て任せることにすると「分かった。責任取るよ」と言う。それから、この国の女王様と、王様が来てから僕は自分のステータスを見せてもらったのだがレベル300なのには驚かれてしまったがステータスが異常な程高いと言う事は信じてもらえたのである。そこでユウナが「私のレベルを上げてみて下さいませんか?それで、ステータスを見てください」と言う。

僕とユウナのレベルを、上げてみる。ユウナのステータスも僕より低いレベルだったがレベルは30になっていて僕より低かった。しかし、スキルが圧倒的に僕より多かったのだ。だから僕と同じレベル100ぐらいまでは、レベルを上げることが出来たのである。レベルを最大に上げた後にステータスを見て見ると。

名前:レイ 性別 男性 種族 神族(魔神)

年齢 20 体力 55000/5500

(103400/10000000,10000)

魔力 43000/43000(29000 /200000,200万)

(256000/1000000,500)【+1500】

物攻 2900 魔力 4000 物防 1900 魔攻 2500 物防2000 魔防 2000 敏捷 13000 運 99 耐性 全属性攻撃無効 物理攻撃軽減 魔法攻撃力増大 即死攻撃無効 成長率増加 アイテムボックス 経験値上昇 必要経験値減少 言語理解 気配感知 危機察知 魔法適正 風 雷 闇 火 光 水 聖剣召還魔法陣(未解放解放済み?未使用不可魔法)

特殊魔法強化魔法陣 スキルポイント上昇率超倍増 ユニーク称号魔法神の申し子(異世界からの来訪者限定特典魔法陣獲得可能回数倍化、異世界の言語翻訳可、レベルアップ時に取得経験値1.5倍に増加、鑑定、転移門、アイテムBOX、アイテム召喚 収納数無制限、時間停止、生物以外自動修復機能付与可能、空間移動能力使用可能。尚、この力は、元の世界に戻ると消失します。

特殊技能「剣術」「武術」

状態異常耐性LV1〜999 精神防御魔法LV999 魔力消費半減 無詠唱発動魔力回復力増幅LV50 〜魔法一覧 初級火魔法 中級風魔法 上級土魔法 特級雷魔法 超級光魔法 古代闇黒魔法(暗黒創造術、終末終焉魔法等、現在封印されており、使用することはできません。なお、勇者の力を使えば、使用できる可能性があります。

神炎魔法、聖天治癒魔法、魔皇結界、魔竜闘気等 固有特殊能力、限界突破LV1、全属性適性LVMAX、完全魔力制御 無詠唱発動、思考速度上昇LV8、並列思考 MP効率上昇 魔力消費激減 多重思考 多重操作 経験値増量 必要経験値固定化 経験値返還LV3 アイテム回収、蘇生 復活 不老不死化 レベル上げ効率化 経験値20倍の指輪、ステータス隠蔽スキル スキルレベル向上スキル、経験値譲渡、アイテムボックス、レベル上限無効化 勇者の称号効果UP、スキル強奪成功率極大アップ、スキル進化、スキル合成可能、職業変換、装備強化 全魔法威力2倍 全武器攻撃力2倍以上 HPMP吸収 HP自然回復、SP高速回復 状態異常回避、状態異常ダメージ減 自動回復 無限アイテム召喚 アイテム強化 経験値増加EX 必要経験値1/2、ステータス上昇値増加、 ステータス表示、ステータス改竄、経験値取得制限解除、 魔物支配、罠発見、解錠マスター、鍵生成、宝箱開封、偽装工作、トラップ強制起爆、罠破壊 魔力供給、魔力共有、眷属化、眷属使役、テイムモンスター服従化 眷属会話、使い魔作成 魔王、魔王軍、悪徳奴隷商人 その他称号詳細』だった。

僕の事を信じていなかった者達が僕を見る目つきが変わる。僕はユウキに「この人達に説明しておいてくれるか?」と言ってから王城を出て行った。そして家に帰る途中に僕の事を殺そうとしている奴が襲ってくるので殺そうとしたら僕の事をユウトと、アリシア達が止めてくれた。それから、アリシアに何故僕に敵意を持っているのか聞いてみたが「魔王を一人で倒した事に対する嫉妬と、ユウトさんとユウナさんの婚約者があなたと仲が良いという事でユウナさん達を取り返すために私を攫おうとしたみたいです。だから、私が死んでからこの国に戦争をしかけるつもりだったみたいですね」と言ってきた。どうやら僕の事を召喚した人間たちはユウナ達を取り戻すためにユウナとユウトを殺してしまうつもりで召喚を行ったみたいだ。しかしユウナは僕に好意を抱いていたから僕のためにこの世界に残ると言ってくれた。僕はそれを聞いてとても嬉しかった。

僕は家に帰る事にしたのだがユウト達はユウナを連れて帰って来た。僕はユウナがユウトの事が好きなのにどうして僕に付いてきたのだろうと思ったので聞いてみると、「拓斗君のことが好きだから一緒に居たいって思ってね。私は貴方の事が好きだからついて来ちゃったの。でもね、私はまだ子供だから大人になるまで待っていてほしいのだけど良いかな?」と言われてしまったので、僕は彼女の告白に答えることにして付き合うことにした。ユウトは「良かったじゃないか!これからも頑張れよ!」と言ってくれるので、ありがとうと言っておいたのである。

その後僕は家に戻り、アリシアと二人っきりになってからキスをしてお互いに気持ちを伝えると「好きよ」と言ってきてくれて「俺も」と答えてからしばらくするとお互い疲れて寝てしまい。僕は目が覚めた時には夜中になっていた。そして僕はアリシアに服を着せてあげた後、自分も服を着替えてリビングに向かい。皆が起きるまで僕はテレビを見ていたのである。しばらくして全員が起きた後に全員分の料理を作った。僕が料理をしている最中に僕以外のメンバーはそれぞれ話し合っているようだった。

どうやらリリカは僕とユウナにお礼を言いに来たようでユウマが僕がユウトと一緒に旅立った理由を教えてくれたので僕とリリカはユウナの話をすることにしたのである。

「ねえリリカ、僕達の関係を詳しく話していなかったから話しておくね。僕とリリカとユウマは幼なじみなんだ」と言うとユウマはリリカがユウナに惚れていたのを知っているので「リリカちゃん、ユウトにフラれたんでしょ?なら俺にしときな」と軽い感じで言ってきた。その言葉を聞いた瞬間ユウナの表情が一気に変わってしまう。ユウトはユウトで「なんだよ。俺は、まだユウナに告白なんてしていないぜ」と言い始めるので僕とユウカはため息をつく。それから少ししてから僕は自分の過去を話すことになった。僕には妹がいたのだが、両親を病気でなくしていて、妹はその時のショックと、ストレスによって精神を壊された状態で入院していたので。そんな時に現れた妹の担当医の先生が僕に話しかけてきた。僕の妹はその時からずっと意識がない状態である。医者がいうには長くとも、長くないらしいのである。しかし、妹はこのまま一生目覚めないとも言われてしまった。しかし、僕の両親が必死にお金を集めてくれていたので、なんとか病院に通い続けて妹の治療を頼み込んだのである。そしてついに僕は妹に会える事になった。僕は妹を見た瞬間、衝撃を受けた。なんと妹は身体のいたるところが腐っていたのであった。そこで僕は自分がどんな行動をしたらいいかわからず混乱してしまったのである。そんな僕を見て、担当の医師は「落ち着いて下さい。大丈夫ですよ、この薬を使えば必ず治ります」と言うのである。僕はとても感謝をしたが、妹の状態を見るとすぐに治るわけがないと思ってしまった。

そう思ってしまったせいなのか、担当医師の言う通りに、その薬品を使っても、全く変化がなかった。そこで、別の方法を探してみると、ある特殊な機械が必要らしい。それを持ってくれば絶対に良くなるはずだと言われ、その機械は、日本にしか存在しないものだったらしく、日本の病院で取り寄せるしか無いと言われたのだ。

僕は両親に相談した結果、両親は僕の為になるならばということで、僕が日本に行く事を許可してもらえた。ただ条件としては、僕だけが行くことでは無く。家族は僕についてくるという条件になってしまったので、仕方が無いことだと思いながらも渋々納得したのである。僕は日本に向かって出発する時に、妹の症状が良くならないか調べてもらったところ。既に手遅れの状態になっていてもう助かる可能性は無いかもしれないと言われたのだ。

そして僕は日本に着き、まずは日本にある大学に行き。研究チームに参加させてもらう事にしたのだった。

僕は日本から戻ってきた後で妹に会ったのだが妹は既に虫が湧いて腐敗しており、死んでいたのだ。僕は泣き叫び絶望した。僕のせいだと後悔したのと同時に、あの担当医師を殴り殺そうと決めたのである。そしてその数日後。僕は妹の仇を討つためだけに復讐をするために、あの憎い医師を殺しに向かった。しかし僕より早く行動を起こしていた人がいたため、結局殺しそびれたのである。

それが僕の親友であり幼馴染でもある、「神崎裕也」だ。彼とは同じ高校の同級生で友達でもあり。同じ部活に所属していた。彼が妹を治すための機械を手に入れるために協力してくれた人である。彼は僕と違ってとても優しくてイケメンでスポーツも万能という完璧な存在だが僕とは気が合って一緒に遊んだりしたこともあったのだ。そんな彼のおかげで妹の治療法を見つけることができたが、僕があの担当医師を殺そうとしている事が彼にバレてしまい僕は彼の手によって殺されることになる。はずだったのだが僕は死んだはずなのに生きているのだ。それは何故か。僕は気が付いた時には真っ暗で周りが見えない空間の中にいた。そこには一人の老人がおり、僕が死んでしまったことを謝罪してきたので僕を殺した犯人が分かったので怒りをぶつけたが、逆に怒られてしまう結果になった。僕は仕方なく謝ることにしたので許してもらい、僕は気がついたら家のベッドの上で目を覚ました。

僕が目覚めた時はなぜか僕が殺された場所ではなく、ユウマの店だった。僕はなぜユウヤと別れた場所に僕が居るのか分からなかったがユウトに聞くことにした。ユウトは「ああ、ユウキの転移で帰ってきただけだけど、なんかお前の知り合いが心配して俺に電話かけてきたからとりあえず連れてきただけだ」と言われてしまったのである。

僕はとりあえずユウマが用意してくれたご飯を食べることにした。メニューは僕がユウキと食べに行ったラーメン屋の料理と似たような物が出てきたのだった。どうやら僕の為にユウキに教えて貰いながら作ってくれたものらしく。味はかなり美味しかった。ちなみに僕の好物の一つだ。

食事が終わった後、僕たちは話し合いをしたのだが、その結果としては僕は勇者であることを忘れることに決まった。理由はユウトに言われたのだが勇者としての力を悪用されると面倒だからということにされたのでそれに従うことにし。僕達はそれぞれの家に帰っていくことになったので別れる事にしたのだった。ちなみにアリシア達は僕のステータスを見たあとで僕と一緒に家に来るという結論に落ち着いた。

そして翌日になって、僕は皆に挨拶をしてからユウトの家に戻ることにしたのである。

「ねえねえアリサ!私と勝負しない?」そう言い出したのはアリサの姉的存在の人妻さんであるアリサよりも大きい胸を持った人妻さんだ。そして彼女はアリシアの事をライバル認定してアリシアに対して挑戦的な言葉をかけた。

それからしばらくした時、僕達が乗っている馬車は盗賊に襲われてしまい。僕は剣を抜き戦い始めた。

僕の戦い方は、相手が武器を持っていたらそれで戦うのだが、相手がナイフや槍と言った近接用の武器を持っていない場合に限って、素手での戦闘に切り替える事にしている。なぜなら、相手の武器が長すぎるから僕が持っている武器とぶつかりあって折れてしまう可能性があるからだ。それに僕は武器を使った戦闘は得意じゃないのだ。

しかし相手からの攻撃が来ない限りはこちらから攻撃をするつもりはないのだ。なので、今は魔法で作り出した水の球を相手に投げつけて遊んでいるのだ。もちろん殺傷力は一切ないが、それでもダメージを与えてくる攻撃手段だ。しかも魔力を消費するから僕にとって一番相性が良い攻撃方法だったりする。そして、僕の相手をしてくれる盗賊達は、僕に攻撃を当てることが出来ないのでイラついているようで、「おい、いい加減に当てろ!」「当てたら報酬を上げてやる!」と僕が水で作った小さな魚を盗賊達は必死に避けているのだ。

するとアリシアが盗賊達に「ユウト君に傷をつけた奴には私の身体をあげるわよ」と言ってきた。その言葉を言ったアリシアはものすごく嬉しそうな顔をしていて、それをみたアリシア以外の全員はアリシアを羨ましそうに見ながら、ユウトの方に顔を向けたのだ。そんなこんながあってしばらく経つと僕の作った水が突然大きくなり、僕を襲おうとしていた男の人を包み込んで溺死させたのである。そして残った男は、仲間がやられて、ビビって僕を殴ろうと思ったようだが、そんな隙を僕は見逃さなかった。僕のパンチをモロに喰らった男が、倒れ込み泡を吹き始めてしまったのである。どうやら完全に気絶してしまったようだった。

それから僕が馬車の窓から中を覗き込むとそこには縛られている人達がいることがわかった。そしてどうやらこの中にいる女の子は盗賊のボスの女らしい。その子の顔をよく見るとどうやら僕が以前助けてあげた女の子に似ていた。そしてその事を確認するためにアリッサの方を向いてみると僕に何かを言いたいような目線を向けていたのであった。

「ねえアリザ!僕達の仲間にならない?」僕と僕の周りにいた仲間たちは盗賊に捕まっていた女性陣を助け出してあげてからそう提案したのであった。それを聞いた彼女達はとても戸惑っていたが、僕はどうしても彼女が欲しいと思っていたので必死にお願いすることにした。それからしばらくしてアリシアは僕達の仲間になり、それからすぐに僕とユウマは馬車の荷台に残っていてもらうように言われてしまった。僕もついていこうとしたが、僕達の仲間のリリカが僕を引き止めてくれたのだ。「ねえあなたは今何歳?もしかしてまだ子供なの?」そう言ってきたので正直に答えることにした。僕はまだ十五歳で大人にはなっていないと答えると僕より年上なのになんで僕に敬語を使っているのか聞いてみたところ。彼女は自分が今まで出会った男性の中では一番強く見えたらしく、それでつい癖で、僕に対して敬語で話しているらしい。そして僕は彼女に、僕に対する呼び方は自由で良い事を伝えるとそれなら「兄様」と呼ぶ事にしたらしく、僕の方を見てきていたのである。僕は別に彼女のことを嫌いではないのでそのままで構わないことを伝えてあげると喜んで抱き付いてきて頬にキスまでされてしまった。

僕はそんな感じで少しの間過ごしていたのだが、そんな時にアリシアから急に話をされたのである。「ユウキ。さっき盗賊のリーダーに勝ったけど、これから先、もしもユウキより強い敵が現れた場合は逃げることも大切だから、ちゃんと考えて行動するのですよ。いいですか?」僕はその言葉で、自分の実力不足を痛感する事になったのである。僕は勇者としての能力を得てかなり強くなったつもりになっていたのかもしれない。そう考えるだけで悔しい気持ちになってしまうのであった。

僕はアリシアとの会話の後で馬車に戻り、そして僕たちは王都へと戻っていった。それから僕たちは王城に到着し。王様に今回の出来事を報告しに行くことにしたのだった。僕は今回起きたことを国王様に全て報告したところ、王様に呼び出されてしまい、その場で色々と聞かれるハメになったのである。

まず僕は「盗賊を退治した」という報告をした時に、アリシアが僕が倒したと嘘の報告をしたのである。それから僕はアリシアに質問をされ、それに対して答えたりした。どうやら僕が盗賊と戦った事に関しては、あまり触れないでくれたのだ。僕からしてもその方がいいから特に問題は無いだろうと思う。

そして次にアリシアは今回の騒動を引き起こした「盗賊のアジト」を僕の手柄にしてしまおうと考えたようで、僕の事を利用することにしたようである。まぁ確かにあの洞窟で戦ったのは事実だし。あそこにあった宝を貰ったので文句はないのだけど。僕としてはもう少しだけお金を貰えるのかなと思って期待をしていたのだけどね。しかしそんな事は口が裂けても言う訳にも行かなかったので、仕方なく了承することにし、僕たちの旅費は全て僕が持つことになったのだった。ただ僕はその前に、ユウマのところに寄って行くことにしたのでアリシアに断りを入れてからその場を離れたのである。

僕が向かった先は、「冒険者育成所」であり、そこでユウマと一緒に修行を行う為にここに向かったのである。僕がここにやってきた理由は単純に、僕はユウトが居なくなったことでユウマともう一度会う為にユウマが働いている「学校」という場所に向かっていたのである。ユウトに会ったときに、ユウマとアリサの事を紹介したかったし、アリシアについても紹介したかったので、僕は急いでいた。

それから僕がその場所に着くと、ちょうど僕が目指していた場所で授業が始るところのようで、生徒全員が座っており先生の話を聞いているところだと言うことがわかる。

僕が教室に入ると、生徒たちがざわつき始めて僕に注目したのだ。すると、その中の一人が声をかけてきた。それは金髪の少女だった。

「おい、お前はなんだ!ここはお前のような子供がくるような場所ではないぞ!とっとと帰れ!」と言われてしまった。

その言葉を聞いた他の生徒が、少女の事を馬鹿にするように笑っているので僕はムカついたのでそいつらに向かって水魔法の水鉄砲を放つと、そいつらは何も言わず気絶して倒れ込んだのだった。僕はそいつらが意識を取り戻して暴れ出さないうちに魔法を使い動けなくさせると縄でぐるぐる巻きにしたあと。

気絶させたまま連れ出すことにした。僕はそいつらを放置する事に決めて僕は再びユウマの元に向かうことにする。そして僕が再び目的地に着いた時には、もうユウマの姿はなかった。ユウマが何処に行ったのかわからなかった僕は困り果てていたのだが、ユウマのクラスメイトの一人から居場所を聞き出したのでその人物についていくことにしたのである。

その人物は「ユーラ」という男の子で、彼はこの学校に通っていて、この「学校の生徒会長を務めている男の子なのだそうだ。ちなみにユウトは生徒会書記であるらしい。

僕はユウトに会いたくなっていた。そしてしばらくユウナの案内のもと歩いているとユウトの家についたのである。僕たちが家に到着すると玄関の前に一人の女の子がいた。その子はユウトと同じ黒髪の色をしていてとても可愛い容姿をしていてスタイルもいい女の子だったのだ。

僕がその姿に見惚れていると彼女は僕の存在に気がついたのかこちらを見つめてきていたので僕は慌てて自己紹介をする事に決めた。するとその子は僕に名前を名乗ってから僕の顔に近づいてきたのだ。どうやら僕に興味があるらしく僕の名前と性別を聞くなり。

僕を自分の部屋に連れて行くといきなり服を脱ぎ始めたのだ。僕がその光景を見た時は流石に驚いてしまい固まってしまったのである。それから数分が経過してから、その子が僕に迫ってきてから僕の事をベットに押し倒し、キスをしながら、僕の服に手をかけて脱がせようとしていたので僕は、なんとか抵抗しようとするが、力の差がありすぎて、抵抗することができなかった。しかし、そこに運悪くユウヤが帰ってきたのだ。ユウマの友達だと名乗る女の子が現れ、僕が女の子に襲われそうになっている状況を目撃し、ユウナと女の子が取っ組み合いを始めるという事態に発展したのである。

ユウナはユウヤとユウトの兄妹でこの学校の副会長を勤めているらしい。そして、僕とユウヤがお互いに自己紹介を終えた後に僕の方を見ながらユウマの事で相談してきたのだ。ユウマは、最近ユウキに構ってくれないと言っていたのだ。僕はユウマにその事について尋ねるとそのことについて教えてくれた。

僕はその事に対してユウマに同情してしまったので僕は彼に「俺でよければユウマと仲良くするけど?」と答えるとユウナはユウキの手を両手で握りしめながら涙を流し、感謝を言ってきたのだ。僕はそんなユウナのことを不覚にも可愛らしいなと思えてしまい、見入ってしまった。そんな感じに僕の生活が少しずつ変わっていく予感がしたのである。

僕はユウトに会うべく王都の冒険者ギルドに足を運んでみた。僕達が「聖盾の勇者」に成り代わり、僕が盗賊のボスを倒した功績は、全て「ユウキ」のものだと偽って、盗賊を殲滅したことを、冒険者達に伝える為である。そして、アリシアに盗賊のアジトで見つけたお宝を貰う事になっていたので、それを換金しようと思ったからである。僕は早速アリシアに声をかける事にした。

「アリシア。僕はこれから盗賊達を倒した証拠を持って、ギルドに行こうと思っているんだ。それでね盗賊達のアジトーには結構いい物が沢山あって、それで君達に渡す分も含めてかなりの金額になると思うんだ。それを踏まえて僕が倒した分の報酬を受け取ろうと思うんだよ。だから、僕は一旦ギルドに行ってこようと思ってね。だからアリシアには申し訳ないけど、僕はこの場で待っていてもらっていいかな?」そう伝えてから僕が歩き出そうとしたら、突然後ろから何者かに腕を捕まえられたのだ。僕は振り返るとそこには銀髪を肩あたりまで伸ばしており、綺麗な緑色の目をしている女性が僕に話しかけてきたのである。彼女は自分のことを、アリッサと名乗り。それから僕の手を引いてどこかに行こうとしていたのである。

僕は、彼女に連れて行かれるがままに着いて行って、そして、何故か僕は彼女とデートをすることになった。しかし彼女はどうやら誰かと待ち合わせをしているらしく。僕にこう言ってきた。

「あなたが私の待っていた相手なんだけどね?実は私はあなたと初めて会ったような気がしないの。もしかしてだけど貴方って勇者様なんじゃありませんか?」

その言葉で僕は驚いた。なぜならばその女性はどう見ても、まだ子供にしか見えないからであった。しかし彼女はどうやら自分の見た目よりも遥かに歳をとっているようで、実年齢は僕より上の二十代前半であるらしく。さらに、彼女が言うには、彼女はエルフ族の末裔であるとのことで僕はその言葉を信じることにした。その事を話すとアリシアが僕の元に駆けつけてくるなり。

僕はアリシアに先程の会話を説明してあげることにしたのだった。

その説明を聞いてから僕は、アリシアの機嫌を直してもらう為に必死になってごまかすことにしたのだった。アリシアが納得してくれるまでは少し時間がかかったものの、何とか僕はアリシアの怒りを抑えることに成功し、アリシアを連れて盗賊のアジトに戻ってきたのである。そして盗賊の人達の目の前に立ち塞がり。僕は盗賊たちに告げた。「お前たち!俺は盗賊退治をするためにここまでやってきた!盗賊退治の依頼を受けている冒険者がいるから安心しろ。だからおとなしく縛につくがいい!」その言葉を受けて僕は「盗賊達」に「水魔法」を放ったのである。すると盗賊達は一瞬にして気絶して、全員その場で意識を失ってしまったのだった。その事に僕は満足し盗賊たちのアジトにあった「金貨の入った袋」だけを「アイテムボックス」の中に回収してから、僕は王都に帰るために馬車に向かった。しかし、そこで思わぬ邪魔が入ったのだった。それは盗賊のリーダーらしき人物だった。

その人物は、僕を見てすぐに攻撃をしかけてきた。しかし僕は難なく回避に成功するとそいつに向かって剣技を繰り出した。すると、そいつは自分の持っていた斧を僕に向けて振り下ろして来たのである。

その攻撃を僕は咄嵯に後ろに下がり避けたが地面には深い切り込みができてしまっており。僕は、こいつは普通の盗賊ではないと感じたのである。それからしばらく僕は、盗賊との戦闘を繰り広げたのだが、奴の武器が壊れない限りは攻撃を当てられないまま時間が過ぎていってしまい。次第に、僕の体からは血が流れ出ていた。そこで「盗賊」の攻撃が止まった。僕は疑問に思い「どうして途中で止めやがったんだ?」と聞くと、僕が身に着けている鎧に目をつけたので、僕はそのことについて質問をすることにした。すると彼は答えた。「確かに貴様が装備している「防具」はかなり頑丈だが、「魔法障壁付与」がされてないみたいだぜ。お前の体についている血の量を見ると、かなり無理をしていたようだし。どうだ、俺と取り引きをするつもりはないのか?「お前の命とあの女は俺の仲間に引き渡させてもらう」その条件を飲めばお前を生かしてやろう。どうする。今なら間に合うぞ。もし断れば、あの女は、ここで死ぬことになるぞ。さあ選べ。どうする?」僕はその問いかけに対して正直どうでもよかった。ただ一つ気になったのは、彼が言っている女の人はおそらくユウマのことではなさそうだという事だった。僕はそいつに返事をすることにする。

そして、僕はそいつの提案を受け入れることにしたのだ。

そいつの出した要求を飲むことにしたので、僕の仲間を解放することにした。そして、僕の仲間を解放するとそいつは部下を引き連れて去っていった。僕はユウマの元に向かうため、一度家に戻りアリシアと一緒に再び学校へと戻ることにしたのである。僕がアリシアと共にユウマのいる教室に入ると既にアリシアとアリシアの妹のユウナがいた。僕はユウナの事を妹さんですかと尋ねてみるとユウナはその質問に答えてから、自分はユウキの姉であると名乗ったのである。

僕が自己紹介をすると、今度は僕がユウマとの関係について聞かれたので僕は、そのことについて説明したのだ。そして、僕はユウマに近寄ると彼に話しかけた。

「僕が、ここにやって来た理由なんだけど。ユウマに言いたいことがあるからだよ。ユウマには黙っていたんだけど。僕の職業「賢者」の技能の恩恵を「勇者の力」で奪ってみたんだよ。その結果。「大賢者」というスキルが使えるようになったみたいなんだよ。そのお陰で、君の「聖剣」から「光属性魔法耐性」、「全属性無効」を吸収できたんだよね。

そして、君は僕の「魔剣士」の技能も持っているから。僕の技能を全てユウナに譲渡すればユウナは君と同じような存在になれるはずだよ。それじゃ、僕はこのへんで失礼させて頂くよ。それじゃあユウナまた後でね」

僕はそう伝えるなりユウナの手を取りながら、ユウマに背を向けてユウナに別れを告げることにした。そして僕はアリシアと共に家に帰宅することにしたのである。それから家に着くと僕はすぐにアリシアとユウマに、ユウマが所持しているであろう能力のことを伝えるとユウマが、僕が使った「技能略奪強奪の秘術書」に興味を示した。それから、ユウマとユウナは、ユウマの部屋に移動することになったのである。

僕とユウトはアリシア達と一旦分かれてからユウマの部屋にお邪魔をする事にした。ユウキに部屋に入ってもらって僕は「アイテムボックス」の中から、例の書物を取り出して彼に見せようとした。しかしその時僕はユウキからとんでもない言葉を聞かされたのである。

「勇者様。あなたが「魔王」を倒す為に、私から奪った能力は本当に「勇者の能力」なんですが、私は勇者様にお願いしたいことがあります」ユウトの言葉に対してユウキが何があったのとユウトに訪ねてきた。僕はそれを聞く為に二人のやりとりに口を挟むことはせずに黙ってみつめていることしかできなかったのである。

そしてユウトの話が始まった。その内容は、ユウキに「魔王」を倒してもらいたいとの事である。

「え?どういう事なんだい?「勇者」というのは、君では無く僕なんだよ?なのに君がなぜ、魔王を倒そうとしてるの?」ユウキがユウトに対して尋ねると。

ユウトがユウキに語り始めた。まずユウキがこの世界に存在する五つの国で召喚されている事実を話し、さらにこの世界に転生する前に神様に「異世界転移をしてもらう。その代わり「魔王討伐者」「四精霊使い」のいずれかの称号と「大魔王の呪いを無効化にする権利をもらう。

その事を聞いて僕は驚いた!まさかこの世界で僕以外の日本人に会えるとは思わなかったからである。しかし、この世界でも僕以外に存在した事に驚きながらも少し嬉しい気分になった。しかしそんなことを悠長に考えている場合ではなかったのである。それはなぜかというと、この世界では、他の国の人たちの事も全て調べ上げているらしいからである。つまり「日本」からやってきた人間が他にも存在するということだったのだ。しかもユウコまで存在していることが分かり。僕の中では焦りが生まれ始めていた。このままだと僕の存在だけが「忘れられてしまう」可能性が出てくると危機感を感じた僕は、ユウヤの願いを聞き入れると伝えてから僕はユウキに、その件に関しては了承する旨を伝えた。それから僕は、「アイテムボックス」の中に「賢者の秘技」と「勇者の力」をコピーし終わると、それから二人に向かって僕はこう伝えた。

「それでは僕は早速出かけてきま〜す」

そしてユウキが何かを言いかけるよりも先に僕はすぐに家から出ていくことにした。僕は家に帰るなりすぐにユウタと連絡をとると、彼の話によるとすでに「ギルド」の方にユウマ達が行っているとの事だったので、僕もまたそこに向かう事にしたのである。

僕は王都の冒険者ギルドにやってきた。そこにはアリシア達が既に到着していて何やら話をしていたようであった。僕がアリシア達に声をかけようとすると、いきなり誰かに手を引っ張られて建物の中に入ったのだ。その手を引いたのはアシアであり、アリシアに手を引かれて建物の中に入る事になった。

その建物には受付があり。そこでは職員が一人立っていて冒険者たちを対応している最中であった。

「アリシアさんじゃないですか!それにユウちゃんとユウトさんまでも一緒に来て下さったんですか!それで依頼内容はどのような物でしょうか?」

「えっと今日受けたいと思うのですが、どのような内容があるのでしょうか?」

アリシアは受付の女性にそう答えると。

「それならですね、ちょうど「オーク」退治の依頼を受けたいと言う方が何人かいらっしゃいまして。その方々の依頼を受注してもいいですか?もしよろしければ報酬は分け合いでもいいと思いますので!」

「はい。構いませんよ!」

僕はその言葉に対して何も意見を言う事が出来なかった。というのも、僕は、あまり人とコミュニケーションを取ろうとしてこなかったので人の意見に対して否定したりするような言葉を発言するのも気が引けた為である。それから、すぐに依頼を受けると、僕達は王都を出発し、森に向かうことになったのだった。

それから王都を出たところで僕たちは魔物に襲われることになる。僕達はまだ王都の周辺に出るレベルの弱い魔物ならば何とかなると思い。王都の外でレベル上げをしようと考えた。

その魔物の名前は、 ゴブリンである。僕はそいつの攻撃を受け止めてから反撃を行うと一撃の下にそいつを斬り伏せることができた。

「よし!!うまくいったぜ」僕がそういうと

「うん。でも、まだまだこれからだね」とアリシアは言ってくれた。

その後僕達の前にはゴブさんが10匹現れた。

「それじゃあ私が行きますね」

そう言ったのはユウナだった。ユウナが持っている剣の刀身が輝き出すと、彼女は「風属性魔法:ウィンドスラッシュ」と叫び剣を横薙ぎにして、目の前に現れた「魔族」の体を真っ二つにした。僕はそんなユウカの剣捌きに驚愕しながらも彼女に近づき、「怪我はしていないかい?」と話しかけた。

「いえ、大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます!!」とユウナはとても嬉しそうな表情を浮かべながら僕の問いかけに応えてくれたのだった。僕も負けていられないと思ったのか

僕は、「水氷系魔法初級:水球」の詠唱を始めたのだ。僕の周りに出現した3つの球体は「ウォーターボール」によく似ているけど明らかに違うものだと感じた。僕はその水の球に意識を向けると僕の意思に呼応するように動くようになったのだ。僕の周りを漂っていた3つの魔法の球体は、そのまま僕の指示に従ってくれて「敵」であるゴブリンたちに襲い掛かると、その身体を貫くと同時に破裂させたのだ。そして「敵」の数が一気に減っていったことで、残りの数体の「魔族」たちも、なす術なく倒されたのである。それから、僕たちの前に「光の壁」が現れたことで僕は攻撃をやめてその場から離れたのだ。

「光よ!私の盾となり我が仲間を護る壁となれ!光結界!!」

アリシアの掛け声で光のドームが出現して「魔族」たちを包み込んだ。

「みんな!!大丈夫!?」

アリシアの声でユウキとユウトが動き出して戦闘態勢をとったのが分かった。そしてその光の中でユウキが魔法を放ったようだ。「闇属性中級魔法:暗黒」を唱えると、その黒い闇の渦に吸い込まれた魔物が一瞬で消えてしまった。その様子を確認した僕は自分の魔法が役に立てなかった事を反省しながら

「ユウキ、凄いなぁ」と呟いた。

「ユウちゃん、相変わらず魔法も上手に扱えるんだよね。本当にユウキには驚かされるばかりだよ」

アリシアの言葉を聞いたユウナは

「はい。ユウト兄さん、私はあなたの「聖剣」なんですから。いつでもユウト兄さんの役に立つ為に、色々と勉強しているんです」と言ったのだ。それを聞いた僕は、その心遣いにとても感心していたのである。するとユウナが突然こんなことを言い出したのである。

「そう言えば。私とユウキの二人で旅をした時にね。ある町で出会った男の子とユウキは友達になれてすごく仲良くなっていたんですよ」

ユウナの発言に対して僕は

「へぇ〜、そうなんだ。それはいいことだよね」と返したのだが、僕が知らない間にユウキが女の子と一緒に行動をしていたなんて想像がつかない。僕はユウキに対して、どんな感じの人だったのと質問をすることにした。

「え?ユウト君?えっと。そうだな。その子は僕が持っている勇者の力で得た「賢者の力」を使って、ユウコっていう子を助けたんだ。だからその子と僕とはお互いに協力をし合って行動をしていた。そんなことがあったんだけどさ、実は僕はその時に、とある事件に巻き込まれて、その事で記憶が一時的に曖昧になっているみたいなんだ」

「え?ユウキ、それ本当なのかい?」

僕は驚いてしまった。だって「勇者」としての記憶が無くなっているとか意味不明な事を口にし始めたのである。僕は「本当にユウキって勇者なのかな?」と思い始めたのだ。

しかしここで僕はユウキに話しかけられて僕は思考を中断させられたのである。

ユウキに「勇者の力と、ユウマが持っている「勇者の魂」って、同じ力なんだろうか?」

「うーん。正直わからないかな?でも僕は僕だし、ユウキがユウキであることに変わりはないから気にしないで良いんじゃないの?」と僕はユウキに答えを返すと

「確かにそうかもね」と言ってユウキは笑顔を見せると

「それよりも僕はもっと強くなって、ユウマやユウナ、ユウタやアシアを護りたいと思っているよ」

そんな事を語り始めてしまった。そんな風に話をしている僕達を「光の結界」の中にいたアリシア達が羨ましそうに眺めているのに僕は気づいた。それからアリシアが僕のところに駆け寄ってくると

「ねえ、私達には内緒のお話してるの?だったら私たちにも聞かせてくれない?」と声をかけてきたのだ。その言葉にユウキは

「いやいや、別にアリシア達だけ除け者にしたりはしてないから安心して!ほら、もう戦いは終わったから外に出ても大丈夫だよ」と言うとアリシアが少し不機嫌になりつつ僕と手を繋いで「ユウキったら!意地悪してる!」と言い出してきた。

ユウキとユウナの二人はその言葉を聞くとすぐに外に出てきて「どう?この連携技はなかなかの物だろう!」と言うと自慢気にしている。

それから少し時間が経つと、僕達の前にゴブリンたちが持っていたアイテムを回収してから王都に戻ったのである。それから僕達はギルドに戻ると、受付嬢に声をかけられた。

僕達が「魔石」を持っていくと「この度の依頼達成報酬ですが、オーク討伐とゴブリンの討伐の報酬を合わせると「金貨二枚と銀貨八枚」です。よろしいでしょうか?」と聞かれたのだった。僕は、その金額に驚いた。何故なら日本円換算で100万円も報酬が出たのだ。その報酬額を僕はアリシア達に報告するのだった。アリシア達は僕が報酬を受け取ったことに驚くも、みんなが喜んでくれた事に嬉しく思ったのである。

それからアリシアにお昼ご飯をおごるという約束を果たすために、食事をしてからアリシアが希望する「武器防具」を一緒に見に行く事になった。そこでアリシアの買い物が終わると、僕は彼女を連れて「ギルド」に戻る事になった。ちなみに「武器防具」についてはユウナの希望の品を購入した後にアリシアはユウナのためにと「聖剣」を買ってあげていたのである。その代金に関してはユウナの給料を貯金から出すことでユウナ自身が支払う事になったのであった。

「ありがとう。ユウキ、大好き」と言うアリシアに対してユウキは何も言わずただ笑ってみせた。そんな様子をみた僕にユウキはこう言って来た。

「ユウト君、ユウナの事は頼んだよ。僕はこれから、ユウキとして冒険者を続けるつもりなんだ。それでね僕はいつかきっと元の世界に戻れると思う。でも、もしも僕が元の世界に帰る時が来た時には僕は僕ではなく、別人になって戻ると思う。だから僕の代わりとしてユウナを守って欲しい。僕の代わりにユウナの事を愛し続けて欲しいんだ。お願いだ。僕の分までユウナは幸せにして欲しい」

そう言うとユウトは僕の手を握った。僕はこの時初めて「僕が勇者じゃないかもしれないという疑惑」について考えたのである。そして僕も勇気を出して

「分かった。ユウナを大切にするよ。絶対に悲しませたりはしない。約束するよ」

僕も自分の決意を伝えたのだった。そして僕は改めて、これからはユウキが勇者では無くなるかも知れないと考えたのだ。もしかすると、もしかしたらだが「勇楯の勇者」の能力によって異世界転移した人は「別の人間になってしまうのではないか」そんな不安を覚えた。

それから僕は王城へと戻るのだった。「武器防具」の店では結局のところ、ユウトに買っても貰った「魔鉄」製の剣と、アリシアに選んでもらった魔導師が身に付けるための「魔銀」のローブを買った。

「これからよろしく頼むぜ!ユウキ」とユウトが言ってくれたことでユウキは、とても嬉しい気持ちになっていた。

それからアリシアは「聖女」に渡すために「魔法書」を、ユウタはユウトから頼まれてユウナに似合う「聖鎧」を、それぞれ購入していたのである。

こうして、僕達の「王城生活2日目」は、あっけなく終わっていったのである。

そして翌日からまたいつも通りの日々が始まった。僕が「勇者召喚の儀式」が行われると噂されている場所に「王城の庭」を借りて、「訓練所」を作った。そして僕は毎日のように訓練を行い、その傍らには、常にアリシアがいた。

そして「王城内」では、アリシアが僕といる時間を増やすために「ユウナを騎士見習いにする」という手段でユウナと行動することを増やしていったのである。それを知った「近衛騎士団長」と「王女」と、「王子」がアリシアの行動に不満を持ったらしく僕に対して「お前が勇者なのか!?」と聞いてきたことがあったので「そうだ」と答えた。それからしばらくすると、ユウキが僕の前に現れたのだった。

僕の前に現れたユウキの身体を纏っていた雰囲気が変わっていて、僕の知っている彼ではなかった。そして彼は僕に対してこういったのである。

「初めまして。ユウキではないんだがユウトさん。俺の名前は「ユウキ」と「ユウト」の間をとったものです。宜しく」

そう言ったのだった。僕はその言葉を聞いても何とも思わなかったのだが、なぜか彼の顔を見ると無性に腹立たしくなってきたのだ。僕はユウキに向かって「ユウキに用事があるんだ。少しいいか?」とだけ言った。ユウジも僕と一緒の部屋にいたが特に口を出す事は無かった。僕はそのまま部屋を出ると人気のない場所で彼に「なんで君は「勇者の力を得たユウキのフリをして、僕に話しかけてきているんだ?」

僕は、そう問い詰めたのだった。すると彼はこう返してくる。

「俺は「ユウキ」の「魂の器」だよ?つまり今の俺はユウキそのものってことさ」

そう言うと僕とユウキが持っている勇者が持つ「聖杯」を僕に見せてくる。僕が「それが何かを知っている」ような態度をしたので彼は僕に対して質問をしてきたのだ。しかし僕の口から出てくる情報は少ない。

しかしそれでもユウキは僕を信用してくれたのだった。そんな風に会話をしているうちに、ユウヤが突然やってきたのだ。ユウキと僕との話を聞くなり、「それなら話が早いじゃないか!」と口にする。

それから3人で「王城にある図書室」に移動すると、そこで話し合いを始めたのだった。

まず、ユウナが「勇者」の力に目覚める可能性とユウトが「勇者」の力に目覚めた場合、ユウキがどのような行動をしてくるかを、ユウナに確認する事になった。

しかしユウナは

「私自身は「聖剣」に選ばれていないし、私はユウキの「勇者の魂」に負けないぐらいの愛を持っていますのでユウキは私を傷つけたりはしませんよ。それに、ユウキは私の事が大好きなんですから私を害するようなことはしません。そんなの分かりきっているじゃないですか?」と言うとユウトとユウキはお互いの顔を見合わせて「うん、そうかもね」と言って笑ったのだった。

僕はそんなやり取りをみていて、少し嫉妬してしまった。何故なら僕がユウキの事を好きになっても、僕を一番好きでいてくれる人なんているのか疑問に思ったからである。そんな事を考えていた僕の元に「ユウナの侍女達」がやってきて「そろそろ、お休みの時間です」と言うと僕は「もう少し待ってください」と言うが「ダメです。規則なんです」と言われて強制的に連れていかれてしまうのだった。

それから、僕の元にはユウキが現れた。僕はユウキに対して、どうして僕のところに現れたのかを聞いたのだった。それに対してユウキは「君がユウナを愛しているから」と言う。それからユウキは僕を抱きしめて「僕が君の中に存在しているユウキだっていう事は分かってくれたかい?」と言うので、僕は素直に感謝の気持ちを伝える。

「ユウキのおかげで僕の中で勇者の記憶が戻ってきたんだ」

僕はその言葉を告げてから「勇者として戦った時の戦い方も、思い出せるようになった」と言うとユウキは笑顔を見せる。それから僕は、これからどうすれば良いかについてを尋ねたのである。ユウナが「勇楯の勇者」であるならば、僕は「勇盾の勇者」になれる可能性があるのではないかと考えていた。そんな考えがユウキの頭に思い浮かぶ。僕はそんな話をユウキにした。

するとユウキは僕に対して、ある提案をしてくれる。それは、自分が今着ていたローブを貸すので「ユウキとして」この国の「国王様と謁見する」というものであった。ユウナは僕が勇者でなくなった時に「ユウキとしての僕」がいなくなるのではないかと心配しているようだ。僕は「その話に乗る」とユウナに伝えてくれとユウキに頼んだのだった。

そうして僕が王城に滞在する事になってから2週間程が経ったのである。

ユウナは僕のために色々と頑張ってくれたのだ。僕はユウナに礼を言おうとして、僕とアリシアが二人でいた場所に訪れたユウナが目撃したのは、ユウナの目の前に立っている僕ではなく、僕の腕をしっかりと掴んでいるアリシアの姿だったのである。

そんな様子を僕とアリシアはただ見ていただけだった。そんな様子を目撃した僕に対してユウナは怒り出すので「ごめん、僕が間違ってた。君を悲しませるつもりはなかったんだよ」と言い訳をするが そんな言葉は彼女には届かなかったのである。そして彼女は僕がユウキだと気づくと泣き出してしまう。

「ごめんなさい。ごめっ、んなさぃ」と言うとユウナが、僕に抱きついてきたのである。それからしばらくの間は僕が勇者である「勇楯の勇者」で有ることを、証明するための試練を行う事になった。

僕はアリシアから「ユウキに買ってもらわなければ」と思い込んでいたため、「聖剣」を手に取ると勇者が使うための魔法「光弾」を発動させてみる。僕の手のひらから、光が溢れてそれが形を成していき。最終的には「光の矢」となって僕の前に出現する。そして僕はそれを「魔王城」の方に向けて放つのだ。そして放った直後に僕の身体には激痛が走る。僕はその激痛で気を失いそうになるがなんとか堪えて「ユウナとアリシアの元へ戻ろうとする」とそこには僕がいた。僕が2人いる事に驚いたアリシアが、慌てて「大丈夫?無理しなくていいよ?」

と言ってくれるが、僕にとってはユウナの方が大事なのでユウキに任せることにしたのだった。それからしばらくするとユウキが僕の前に戻ってくると僕を見て「やっぱり、僕の身体だ。僕と同じ事ができるみたいだね。僕の身体を大事に使ってよ」と言う。僕はそんな彼の発言に対して、違和感を感じずにはいられなかったのだった。

そんなこんなありながらも、僕が勇楯の勇者である事を証明するための特訓を僕達は行っていた。

ユウキは自分の「力」を使って様々な物を作ることができた。僕は「ユウトの体を使いながら」色々なものを創造した。その結果「僕とアリシアの部屋」が完成したのであった。

それから数日経って「王城」では大変な騒ぎになっていた。僕達が「勇者」の力を持っている事を知る者達は「勇楯の勇者」が誕生したことを喜び それ以外の者達から見れば 僕は、「聖盾の勇者」という称号を手に入れた事になり「神魔を討伐できるかもしれない希望が出てきた」ということで喜んでいた。

僕はユウキがユウキでなくなってしまったとしても 僕の中では「勇者」であることに変わりがないと思っている。なので アリシアとアリサには僕にとってのユウキは「ユウキで有り続ける」ということを伝えている。しかしアリサは ユウナとユウキに対して、とても優しく接するようになっていたのだった。

そんな日々を過ごしているとアリシアは僕の「身体」と、僕達の部屋に訪れてきて「ユウト、アリシアちゃん」と話しかけるとアリシアの表情が変わった。アリシアは僕の方に近づいてくると「アリシアさん」と僕に対して「様」をつけて呼びかけてきたのである。僕としてはそんな事は止めてほしいのだが、ユウキによると僕が彼女の前で「僕」を演じるのが大変そうだったから助けてあげるために行動しているのだろうと言っていた。僕はそんな行動をとる必要なんてなかったんだと説明すると、ユウナも納得していたのだ。

しかしユウナは「ユウキさん、いえ 私の前では、いつものように「ユウトさん」「アリシアさん」と呼んでほしいのですよ」と言われたのでユウキは「わかりました。でもユウトは僕にとっても必要なんです。ユウキのフリをするためにも しばらくは僕に「勇者」の力を使わせてください」と言う。するとユウナはそのお願いを聞き入れたのだった。

「それじゃあ僕たちはこれから、ユウトの「王都観光」に行くよ」とユウキは僕に言うと僕の手を取り「それなら、私の街を案内してあげますよ」と言う。僕はそんな言葉を聞いた後に、僕はユウキに質問する。

「僕が勇楯の勇者になった時って何をしていたの?」

その言葉を聞いて、ユウキは僕の目を見つめるなり真剣な顔をすると僕に対してこう話すのだ。

「君は「僕が僕で無くなった時」の事を怖がっていたよね?それは正しい感情だよ。だけど、君は君のままで良いと思う。君は君の「勇者の力」を使って自分の大切な人達を守る為に、勇者の力で人々を助ける。それが君にしかできない役割だから」

「僕にしかできない事かぁ、わかった。やってみる」

そう僕は答えた。僕とアリシア、それにユウナも一緒に街に足を踏み入れると、僕はアリシアに声をかけて、ユウキに教えてもらった場所に行こうとした。そこはアリシアと僕がデートをした公園だ。僕とアリシアは「恋人同士になれて良かった」と言う会話をしながらベンチに座って景色を眺めていたのだ。そんな僕たちの姿を少し離れた所から見ているユウトの存在には、気がつかないままだった。そう、その日の夜に「悲劇が起きるまでは」。

僕はユウキが用意してくれた服を着用しながら王城にある「図書館」で借りてきた本を読んでいるとユウキが現れたのである。僕は「これから何かあるのかな?」とユウキに尋ねるが「今は特に無いよ。それより僕と一緒に出かけない?」と聞かれてしまう。

「良いけど。何処に?」と聞くと「僕の工房に行ってみたいな」と言う。僕は「ユウナのお母さん」が僕とユウキのために準備してくれていた「部屋」に戻るが

「ユウナと、ユウキ」がいない。そこで僕はユウキが「アリシアのお父さん」と話をしているとこを目撃する。アリシアは、その光景を見て「お兄様」と呟いていたのである。

それからしばらくしてアリシアが「アリシアさん」と呼ばれて振り返るとそこには、アリシアの母親「アリス」の姿が見えたのだった。そしてユウキは、僕とユウナは「僕達で勇者の役割を全うする事」を約束させられるのである。それから僕はユウキと別れて「工房」へと向かっていく。

僕は「工房」に入ると、まず最初に、この「世界」の事や「勇者の歴史」が乗っている本がないかを探す。そんな僕に対してアリシアは声をかけてくれるが、僕は「後でゆっくり読むよ」と返事をするのである。

そんなこんなありながらも僕はユウキから借りていたローブを身に纏うとユウナが僕に対して

「そのローブが有れば、貴方は勇者では無くなるんですよ?」と言ってきたので、そのローブを脱ごうとするとユウナは僕の腕を掴んで離そうとしなかったのである。そしてユウナは「ごめんなさい。私はあなたを失いたくないのです」

と言われて僕はユウナが僕の事を本気で想ってくれていることを理解する。

「大丈夫。僕だって君を失うようなことは絶対にしないよ。安心して欲しい」

僕がユウナにそう伝えると彼女は嬉しそうな顔を見せる。しかし彼女は僕を心配させまいと無理をしているようだったので、僕は彼女を抱き寄せるのだった。そして僕とユウナは見つめ合うとキスを交わす。その後すぐにアリシアもユウナとユウキの間に入ってくると僕達に混ざるようにして、お互いに愛を確かめる行為をしていく。そんな様子を見た僕はアリシアが僕の耳元で囁いてくるのだった。

「もうユウトは、ユウキに負けないぐらいの、いやそれ以上の立派な男に成長したね。嬉しいよ。本当に君に出会えて幸せだわ」と僕に伝えるのである。そして3人でベッドの中に入り眠りにつく。すると不思議な事に僕は意識が途切れてしまい気がつくと見覚えのない場所にいたのである。しかもそこは薄暗い森の中で、僕の目の前には黒い服を着てフードを被った女性が立っていて僕に声をかけてきたのである。「はじめまして。勇者殿」とその女性は話しかけてきた。

それからしばらく経って、王城のとある一室では勇者の力についての話が行われていた。その部屋の主はこの国の王「ロイド=ドラスハイム」であり 彼の前には1人の女性「リリス」が立っていた。彼女の正体は女神の代行者であり、「勇者召喚」を行った者なのだ。その彼女が何故ここに居るのかは、今現在「勇者が目覚めようとしているから」と言う理由があるからだ。彼女は勇者の素質を持つ者を選定する役目を負っており この世界の神に勇者としての資格を与えられた者達が眠る場所に赴くとそこには「神」が待ち構えている。その神は「試練」と言う名のゲームを行うと、勇者が試練に勝ち抜いた暁に

「勇楯の勇者」は神によって選ばれて 魔王と魔王軍の討伐を依頼されることになる。その「勇者に選ばれる為」の方法は幾つか存在するが、最も手っ取り早い方法とは勇者の資質を秘めた者達の願いを叶える行為である。これは 勇者の力を手に入れるために必要なプロセスの一つになるのだ。勇者が目覚めた時には、魔王と、魔族の王「ダークロード」が「人間側」に存在する「勇者」の敵になるので、勇者の力を手にしたものは彼らを倒して勇者としての役割を果たす義務が課せられる事になっている。しかし彼らは、他の魔物達とは異なり 人族に対して危害を加えることを禁止されている。あくまでも「神魔」は「勇者の力を得たもの」の敵なので勇者の力を持っている存在が倒しても、それは問題にはならないとされている。ただし、もしも、勇者の力を悪用するようなことをすれば、その罪の重さに応じて勇者は神罰を受けて死に至り またその家族までも命を奪われてしまう事になってしまうのである。

しかし「聖剣」「盾」と呼ばれる武器を手にする勇者は、聖盾以外の全ての武具を使いこなす事が出来て、更にその勇者が聖楯に選ばれた時は、その力を使う事が出来るようになるのであった。その聖楯は盾の能力と、剣と槍の二つの能力を扱えるのであった。盾の力を使えば「聖属性の攻撃を無効にする力」を持ち。そして攻撃面では防御だけではなく相手の能力を奪う「強奪」の力もあるのであった。そんな特殊な力を有する盾を手に入れた勇者が覚醒すると「勇者ユウキ=オルファランス」が誕生するのだが 今の時点では勇者ではない普通の高校生でしかなかった彼は自分の母親から貰った手紙を頼りに 勇者になったばかりの少年に会いに行きたいと願っていたのである。そこでユウキは母親の遺品整理中に、ある「魔法道具」を見つけることになる。それこそが、彼が持っている聖楯に酷似した形をした「魔法アイテム」だった。それを見たユウキは確信していた。自分には何か大きな力が宿ったと。それを確認する為に 王城へと赴き国王に頼み込むが許可が出なかった。しかし「ユウトとアリシアが一緒に居れば勇者になれるのではないか?」と言う事を言われるので ユウキは二人の部屋を訪れてから王城に戻ってきたと言う訳だったのである。そして王城に戻った後でユウキはユウナに話しかける。

僕はアリシアと一緒に王都に遊びに出かけるとユウキと別れた時にアリシアと手を繋いでデートを楽しんでいたが、途中でユウキとユウナと合流をすることになる。そんなユウナに僕は

「さっきはゴメンね。いきなり飛び出したりして」と言うとユウナは

「大丈夫ですよ。お兄様から聞いたのですか?私がユウトさんと離れたくないって事を」と言われて僕は首を縦に振る。すると彼女は嬉しそうに僕の手を引いてユウキと合流すると3人で街中を散策して楽しんだ。そしてユウキは「今日は僕達の部屋に泊まりに来て欲しい」と言われるので僕は断る事もせずに了承をした。

それから少ししてからアリシアはユウナに「先に部屋に戻っていて」と言われたようで、僕はアリシアと共に部屋に戻るとユウキが僕達の前にやって来た。

そしてユウキは「二人には見せておく必要があるものがある」と言って、ある魔法を発動させた。その光景に僕は驚いたのだった。なぜなら「僕の記憶」の一部が僕の中で映像となり浮かび上がったからである。それは僕が勇者として覚醒した後の記憶だったのだ そう勇者の力は、勇者自身が望めば記憶を呼び覚ますことが出来ると言う「特殊」な物で、勇者の力を得る前の事は思い出せないようになっていると言うのが常識だが稀にその力に目覚めた者が、自分が体験した事のない出来事を思い出したりすることがあると言う。それがこの世界において「勇者の力を持った」と言う事でもあるのだと理解する事ができた僕は「これからも宜しくね。僕の事を大切に思ってくれる人達のために頑張るよ」と言うのであった。それから僕はユウキとユウナに甘えるようにして夜を過ごす事になる。

それから数日後に、王城内では会議が開かれていた。そこには勇者ユウキが同席しており、勇者は一人だけだと決まっているにも関わらず この世界には存在しないはずの人間が2人も存在していたのである。しかも、その内の1人は、勇者と血縁関係には無い。さらにもう一人の女性に関しては 勇者の力は持ってはいないが、特別な能力を有していたので勇者と行動を共にしていると言う報告をされていたのである。しかし彼女は何故か勇者に心酔をしており「勇者と行動しているのは当たり前」とばかりに接してくる為 王城としても勇者の仲間としては相応しいが、彼女の素姓を調べた結果が判明するまでの間は勇者と行動する事を禁止する。という決定が下されたのである。しかし、そんな事情など知らない勇者ユウキは勇者として認定される儀式を済ませてから ユウトはユウキを「お姉ちゃんの婿にするつもりでいるので結婚をしてほしい」と言い出したので、勇者である「勇者ユウキ」と「勇者ユウナ」の結婚が決まったのであった。そしてユウナは「私の義妹」となった勇者ユウナを勇者の補佐役である

「賢者アリス」として勇者を補佐する事になった。

そしてユウトはユウナと結婚した後で 王城を抜け出す事に決める。その事に気が付いていたのは、この王城にいる者の中でも「宰相と近衛兵長」だけであり 彼らは、ユウキの婚約者であるユウナとユウナの兄である勇者に付いて行くために「旅に出た」と思っているのだが 実際はユウナが王城の外へと出た直後に 王城の者達の目を掻い潜ってユウナとユウキは「勇者として旅に出る準備をする」と言う理由でユウナはユウキの部屋へ、そしてユウキはユウナと合流して、ユウキが元々住んでいた家に戻り、その家でユウナは「勇者」の力を手に入れていたのだった。

そんな勇者になったばかりの少女が 王城を抜け出した理由は 勇者として旅立つのに必要な「装備一式」を買い揃える必要があったからだ。その目的を果たしたユウナとユウキの二人は王都を離れ「神」がいると言われている場所を目指して、その足を進めていた。ちなみに神が存在するとされている場所は王都から離れた辺境の街に存在していると噂されているが、そこが何処にあるのか誰も分からない状態になっていたのである。

僕とユウナとユウキが出会った次の日の朝、僕の部屋の扉が開かれるとアリシアとリリスが僕の元にやって来る。そして二人共笑顔で僕の傍に寄ってくるので 一体何があったのかと思って、二人に聞いてみると どうやら、アリシアとリリスは、昨日の夜、お互いに話し合いをして意気投合したみたいだった。

リリスは僕の隣に腰をかけると僕にもたれかかるように寄り添うので、それを見ていたユウナが不機嫌な顔を見せながら近づいてくる。しかし、リリスはユウナに視線を移すと、彼女は笑みを浮かべて「私は、もうあなたに嫉妬したりはしないわ」と伝えるとユウナは「あら、そうなんですか?」と尋ねる。するとリリスは「私も勇者に選んでもらえる資格はあると思うわ」と自信ありげにユウナに伝える。それを聞いたユウナは少し考えた後に「いいでしょう。認めて差し上げましょう。ただユウト様を裏切ったりした場合には容赦無く殺させていただきますから、その覚悟を持ってくださいね」と忠告をする。その言葉を聞いても、まるで余裕がある表情をしているリリスに対して アリシアも何かが引っかかったらしく「ねぇ、どうしてユウナに喧嘩を売るような態度を見せるの?」と不思議そうにしている。そんなアリシアの様子に気がついたリリスは 彼女の方を見て「ごめんなさいね。アリシアさん。実は私はユウト君の事を愛していて結婚したいとまで考えているんだけど。彼は、勇者の力を持つユウキさんと一緒に旅をしていて、今は離ればなれになっているの。だけど彼は必ず戻ってくると信じていて その時に一番最初に会えるのは自分であるべきだと考えてしまっていますの」と説明して、それを聞くとアリシアが納得をした様子を見せた。それを見たユウナがアリシアの方を見るが、その目線に答えるようにアリシアはユウナの耳元へと移動してから、そっと「私も同じだから」と伝えて、それに驚いていたのが印象的であった。そんな会話を終えた頃にユウナの従士であるリリカとサチが現れて「お目覚めですか。皆様朝食の用意ができています」と案内されたので ユウナが先に行く。僕はアリシアに手を引かれてから「ユウト君」と呼ばれるのと同時に唇を奪われたので驚いたが、僕はそのままアリシアを抱き寄せてから深いキスを交わすと「朝から凄く幸せです」と頬を赤らめて恥ずかしそうにしていたのである。それから少ししてユウナと合流してからは一緒に朝食を取る事になり、その食事が終わった後に、僕はユウキの元に向かう事にしてユウキの部屋に向かったのだった。

勇者として認定されて旅立ちの準備を整え終えた僕は ユウナと一緒に王城へと戻る。その際には、ユウナの従士であり僕の仲間でもあった「リリス」と アリシアも一緒に連れて行こうと考えていたのだが ユウナは、この国でまだやりたい事があるからと、僕と離れ離れになってしまっても、ユウナとアリシアは僕達の仲間である。また会う事ができる日が来るはずだから、その日までは元気で頑張ってほしいと伝え アリシアにユウキのことをお願いしておくことにしたのだった。しかし、この時に僕は「魔王」について説明をしなかったのである。ユウキには「勇者」の力を得てから魔王の存在に気がついてもらいたかったから。それはアリシアも分かってくれていたので あえて僕は魔王についての情報を伏せたままにすることにするのであった。こうして僕達は王城に別れを告げて、僕とユウキは再び旅に出ることになる。そして王都を離れる直前で勇者として認められる為の儀式を行う為に、王城から程近い神殿へと向かったのであった。僕は、この世界の創造主によって異世界転移させられて、「勇者」の力を与えられた。この力は勇者にしか持つことができない特別なものであり「神」から与えられる力だと伝えられている。僕に与えられたのは3つの力であり 1つ目は「勇者としての覚醒能力を得る力」

2つ目は「魔法属性の能力を得る力」

3つ目が「武器を装備する事が可能になる」というものである。この世界に存在する「神」はこの「勇者の力」を持つ人間に力を与える存在でもあり「勇者の力を持った」人間しか扱う事の出来ない剣が存在していると言われている。その情報は、王城にいる「勇者」に選ばれた人物だけが知っており、僕もその情報を得た事で 王城を脱出しようと考える事になるのである。ちなみに僕は、ユウキに「これからは勇者として行動してもらうよ」と伝えてから、僕は「神が創りし聖魔具」の一つを取り出し「この魔道具を使う時は心の中で強く願いなさい。さすれば道は開けよう」と教えてから ユウキを神殿に送り込むと、僕とリリスとアリスとで旅を再開する事を決めるのであった。それから数時間後には この国の王都を後にして 王都を出て、近くにある「港町」へと向かう事になったのである。

ユウトは、リリスと勇者であるユウキと別れた後、アリシアに王都の外で仲間を探すように頼んだ後で、再び王城に戻ることにする。そして勇者に認められて「聖剣」を手に入れたら王城へ来るように指示を出した。その時に「賢者の証を授けてやる」とも伝える。それからユウトは王都を出る準備を終えると、アリシアとリリカを連れて「港街」に向かい出発をするのであった。そして道中で魔物を討伐したりしながら数日をかけて到着した。その町の名は「ラガン」と言って、この町は冒険者が集う「冒険者の聖地」とも呼ばれており「王都」よりも栄えている町である。ちなみに冒険者は、この「ラガガン」を拠点に活動している冒険者が多く、そのためこの町には数多くの店が存在していて ユウトはアリシアとリリカの2人と相談した結果で「ラガガン」では、なるべく目立ちたくないので「フード」を被る事を決めた。そしてユウトはリリスに「僕の従士の格好をしてくれ」と頼む。その言葉を受けたリリスは「えぇ~。私、こういう服は着たことがないのですよ」と言いながらもユウトの命令に従い、自分の部屋に戻ってからリリカとサチの手伝いもあってか着替えを終わらせてからユウトの元へと戻って来る。

リリスの服装が普段とは違う雰囲気に見えてしまう。なぜならば彼女は「魔女のような衣装」を着ており、頭の上には黒いとんがり帽子を被っている。

そんな彼女を見たリリカとサチの二人は「リリス姉様が可愛すぎてヤバイ」「こんなに可愛い従士がいるなら王城の外に出しても問題ないですね」と言うのである。

それを聞いたリリスは、嬉しかったのか頬を緩ませて「そんなに褒められると照れちゃいます」と言っているのを見て ユウトも微笑ましくなり、その様子を見ていたユウキとリリナも笑顔になっていたのだった。

ちなみにリリスの従士の制服は「リリカと同じデザイン」である。ちなみにリリカとリリスの身長は同じなのでリリカの服を着ることもできたのだが、それだと動きにくいからという理由でリリスの着ていた「魔女のコスプレ風の衣装」を着用した。

ユウキはアリシアに「僕の事は気にしないで仲間を探してきて欲しい」と告げるとアリシアが心配した表情を浮かべていたのだ。しかし、すぐにアリシアは表情を変えてくれる。その表情はユウトを安心させるために浮かべた優しい笑みだった。

ユウトの気持ちを理解したアリシアは「うん。分かった」と答えた。そしてアリシアが「じゃあ私は、私に出来る事を頑張るからユウトは、ゆっくり休んでて」と優しく語りかけるとユウトは「アリシア、本当にありがとう。でも僕は大丈夫だよ」と感謝の言葉を伝えてから、リリスとサチとアリシアを宿の入口まで送るのであった。

こうしてユウトは「勇者」としての旅を始めることになったのであった。

俺は「ラガン」の町に到着したユウキ達は とりあえず、ここで拠点を確保しょうと考えたのでユウキ達は宿屋の手配をしていた。その最中 ユウトの元にリリスがやってくる。リリスは自分の服に目線を移すと恥ずかしそうに顔を赤らめながら「その服ってユウトさんが着せたんですか?」と尋ねると 僕は苦笑いをして答えたのである すると「私の体には大きすぎますよね」と寂しげに語るのを見て 僕は、そんなことないとフォローを入れる。そのやり取りを見つめているアリシアの姿が見えたので「リリス、君を僕達の旅に連れていきたいんだけどいいかな?」と問いかけて返事を待った。その言葉を聞いてから、リリスが僕に抱きついてから「わーい、嬉しいです。是非連れて行ってください」と答えてくれた。それから僕はリリナにアリシアの様子を見てきてほしいとお願いしてから僕は「ちょっとだけ時間良いですか?実は話しておきたい事があるのです」とリリナに伝えたら、彼女は僕から少し距離を取ると、リリカとアリシアの2人と一緒に部屋の中へと入っていったのだった。

僕はリリスに対して「僕が勇者として選ばれたのは知っていると思いますけど、僕にはまだ力が完全に目覚めていない状態なんです。それで僕の中にはもう一人の人格があるのは理解していますね。それは今は眠りについている状態で、僕はその眠っている力を解放するために勇者の力が目覚めた場所へ向かうつもりです。その場所で魔王の復活を阻止する手掛かりを得られるかもしれないですから。そこで僕が勇者として目覚めて魔王を倒せる力を得られたら魔王を封印して、その後で僕が元の世界に戻る手段を見つけるつもりです」と 僕の話を聞いたリリスは「それならば私もユウトさんに同行します」と宣言してきたので僕は慌ててしまったのだった。しかし 僕は「君にはリリカという大事な従士がいるんだ。それに王城にいる勇者の仲間達と一緒にこの世界で暮らしていく事もできるんだから、無理についてこなくても構わないんだよ」と話すが

「ユウトさんの従士になった時から覚悟は決めていますから。ユウトさんから離れるなんて嫌です。例え世界が違ってもユウトさんのそばにいたいと強く願っているから。それに私がいれば、いざと言う時に役立つと思うから、だから同行させてください。お願いします」

彼女の想いを知った僕は、僕達はこれから旅をする仲間になるわけだし リリスの同行を許可する事にしたのである。

「ところで、どうしてリリスが王城に来た時にリリカに話しかけなかったの?」と疑問を尋ねてみる。その問い掛けを受けてから「ユウトさんは気付いてくれませんでしたから、リリカちゃんに「私には妹がいないからお友達になってほしい」と声をかけたんですよ」と返答する それを聞いて僕は「なるほど、そういう事があったんだ」と言うのであった。それからしばらくして ユウトは王城に顔を出す事になったので、リリナの案内で城の中に入り、それから謁見の間で王の挨拶を受ける。ちなみに僕達が召喚された勇者であることは 国王にも知られているのである。僕が勇者の証を見せる前に王から僕に向かって話し始めて来たのだ。「勇者よ、この世界の為に力を貸してくれ。お前にしかこの世界を救う事ができないのだ。だから、どうかこの世界の人々を救うために協力して欲しい」

僕はその言葉を聞くと「もちろんです。この世界に平和を取り戻すために協力しましょう」と宣言した。そして、僕は王城を出る時にアリシアの従士の証となる「聖騎士の証」を手渡される。この証を持つ人間は アリシアの護衛役となり、そしてアリシアの傍から離れられない制約が発生する。この証を受け取った瞬間に 勇者の力の一部を受け取ることができる。勇者として認められた証拠でもあった 僕はその日はアリシアに宿に戻って休むように言う。なぜなら僕は これから旅支度を行うからである。僕達のパーティーメンバーにアリシアを加えてから旅立つ事にしたのだ。そのため、リリカにアリシアを任せる事にして部屋で一人にさせた。それからサチと共に王城の中にある「冒険者ギルド」に向かった。目的は当然の事だが冒険者として登録するためだ。僕は王城を出る際に王から金貨20枚を受け取っている。これは王からの感謝と激励の意味を込めてのお金であった。なのでその資金を使い まずは、冒険者の装備を揃える事にしていた。

それからユウトは「冒険者の武器屋」へと向かう。その道中では王都の景色を見て回っていたが 僕は、リリカからアリシアの事を頼まれている以上は なるべく、アリシアに寂しい思いをさせない事を決意している。そのために僕はリリカとリリスを連れて行くことに決めた。

「二人共、今日からよろしく頼むね」と笑顔で語りかけると 二人は笑顔で返してくれる。リリスは嬉しそうな表情をしながら「ユウトさんの役に立てるなら喜んで頑張ります」と宣言すると リリカは僕に対して 抱きつきながら「私はリリス姉の付き添いで来ただけだし、別に私もユウト様の役に立てれば嬉しいですから」と照れながら伝えてくる。そんな様子を微笑ましく見守りながら「僕達は仲間なんだから敬語は止めよう」と提案をしたのだ。その言葉を受けたリリカとリリスの二人は驚いたような顔になっていた。そして二人はお互いの顔を見合わせていた。僕はそんな二人の様子が面白かったので「やっぱりリリカが姉なのかな?」と問いかけてみたのである。

そんなやり取りをした後に僕達は冒険者になるための店へと到着をして受付のお姉さんに声をかけて、冒険者になりたいと告げると店の奥にある倉庫の方へ案内をしてくれた。そこで僕は剣や盾、鎧や服を一式を渡されたのである。ちなみにリリカの分とリリスの分の装備は僕が全て預かっておくことにした。僕は受け取った防具を自分のアイテムボックスの中に入れてから自分の装備に付け直していく。その光景を見ていたリリナとアリシアは驚いていたのだ。しかし 僕は二人に対して「この道具があれば誰でもできるから安心して」と言ってから作業を終えるのである。その会話を聞いていた店員が僕達に声をかけてくれる。その女性の名前は「ミーナ」というらしい。その女性が僕達に語りかけてくる「ユウトさんは、こちらの世界に来る前の記憶がないみたいですね。その状態でも大丈夫ですか?」と言われてしまう その質問に対して、ユウトは「記憶が無いなら無いなりに楽しんでいきますから、気にしないでください」と伝えるとリナは納得してくれていたのだった。その後 僕達は、リリナとリリスを連れて宿屋へ戻ることにするのだった。宿に戻るとアリシアが出迎えてくれる。そんな彼女を安心させるために僕は微笑むとアリシアは嬉しかったのか、僕に抱きついてきてくれる。それを見ているサッチが「私には、いつもアリシアさんのような可愛さは無いから、私ももっと頑張って魅力的になりまーす」と宣言して なぜかサッチまで僕に「抱きしめて下さい」と言い出してくるので僕は苦笑いをしながらも、二人の体を抱きしめるのであった。

それからしばらくすると 僕の部屋のドアを叩く音が聞こえたので「は~い」と僕は答える。その答えに応じて部屋の扉が開くと、そこにアリシアの姿があった。その姿を見てから僕は、ベッドに腰かけると、アリシアが僕の隣に座ってきたので「何か話したいことでもあるの?」と優しく問い掛けてみると、アリシアが「うん。ちょっと相談したい事があって」と話し始めた。

その相談内容とは、どうやらアリシアは自分の実力不足を感じているらしく、この先の戦いで、足手まといになるのではないか?と感じ始めているのだというのだ。そんな彼女の悩みを解決する為に僕はある事を提案したのである。その方法こそが「魔導師と従士を同時に育成する方法を教える」という内容だった。

それを聞いたアリシアは少しだけ考えてから

「そんな方法があるんですか?」と聞き返すのだった。それからアリシアの従士になる事になったリリスは少しだけ戸惑っていたのである。その話を詳しく聞いた僕が、アリシアの従士になる事に同意するように促すと彼女は、僕の提案を受け入れて

「分かりました。アリシアさんと旅が出来るようになるなら どんな事でも受けいれて、一緒に戦い抜いてみせます」

リリスの決意を聞いてから僕は彼女に向かって話し出す。それは僕が持っている特殊な能力についてである。僕はその能力を

『魔力共有』

と名付ける事にした。

その効果とは「相手の体内に自身の血液を入れることで 互いの生命エネルギーを共有する事ができる」というモノだった。これによって 僕の体に流れている血液を相手に注入することで、相手の力を強化することができる。

しかしデメリットも存在する 相手が異性の場合には、お互いに性行為を行わなければ、相手に力を注ぎ込むことができない また 相手の体内に入った僕の血液は徐々に消えていってしまうので、長時間 その状態を続ける事も難しい。ただし 僕が相手に与える事が出来る力は強大であり、僕が今まで戦ってきた勇者の仲間達の中だと最強の存在である魔王ですら僕には太刀打ちできない程なのだ。それ故に僕は勇者の中でも特別な存在として扱われているのだが そんな話はともかくとして、僕はリリスに向かって 彼女に「僕を信じて付いてきて欲しい」と真剣に伝えると リリスは「はい、私はユウトさんの役に立つ為だけに存在しているのですから、私に出来ることがあるのであれば何でもお申し付けください」と答えてくれた。それからアリシアにも同じことを告げたのだ。すると「分かった。ユウト君の言う通りにするよ。私はまだこの世界では弱いままだしね」とアリシアも覚悟を決めた表情で語ってくれるのである。それからアリシアは僕に近寄ってくるとキスをしてきた。僕が驚いているとアリシアは恥ずかしそうな顔をしながら

「これで私の命はユウト君に預けます」

と伝えてくる。僕は、それを聞いてから、アリシアの体を強く抱きしめるのであった。

僕達が王都を出発してから約二週間の月日が経過した。その間に魔物と遭遇した回数は3回だけだった。その理由は ユウトはレベルが上がりすぎたために経験値を得る必要が無くなっていたのだ。

僕がクロの中に居る時の話だが。

シロの中に居た時にユウトはユウトは、

レベル:1

筋力値 :225万0000

体力値:1000

速度値:5000

耐久力値:255/255

知力値:158/154

精神力:150

幸運 :5000 となっていた。それからクロの中にはユウトのステータスは引き継がれていた。

そして今、アリシアとサリスの二人が僕と向かい合っていた。これからアリシアの特訓を行う為に 僕は彼女と対面をしていた。アリシアの特訓の内容は、まずは、リリカと同じ魔法剣士を目指す事にしたのである。僕はアリシアに 僕自身が使うオリジナル魔法である『氷魔法』を伝授する。

そして、リリカは、その魔法を使えるように指導したのであった。その説明を受けたアリシアが、早速 魔法の習得を試みるのである。

「アイスニードル!!」

そう叫ぶと地面に剣を突き刺すのと同時に、アリシアの頭上に無数の氷の矢が出現していき 上空から降り注いでくる。それを全て避けるのは困難なので僕は剣を振るって、その全てを相殺させる。

するとアリシアは僕の行動を見て「どうして 避けられると分かっていて避けないの?」と言ってきたので

「それはね。その程度の攻撃なら簡単に防ぐことが出来るからだよ」と伝えた。その答えを聞いたアリシアは、驚きを隠せずにいたのである。その光景を見た僕はアリシアに 次のステップに進む事を伝えるのであった。

アリシアの剣術の訓練は終わり 次は、サリスと同じように 槍を使った訓練を開始する。しかし、その時には リリスに手伝ってもらうことにしている。

それから僕達は二人で訓練をする事になる。それからリリスはユウトに「私もユウトさんのように、もっと強くなりたいんです。だから色々と私にアドバイスをしてもらえませんか?」と言われたので、僕は「もちろんいいですよ」と笑顔で答える。そして僕は、リリスが少しでも早く強くなれるように指示を出す。その内容としては、「とにかく基礎を固めること。それから実戦経験を何度も繰り返すこと」という指示を出すのだった。僕は二人にアドバイスを終えると、リリスの従士としての実力を確認するために、模擬戦をすることに決めるのであった。

そんな出来事があり、二人は無事に模擬戦の相手を務める事が出来た。その結果として、二人の実力が、どれ程のモノなのか把握する事が出来た。

アリシアは僕の「スキル強奪」の能力のおかげでレベルが上がっているが。そのおかげで身体能力が向上しており、普通の冒険者の平均レベルの能力まで引き上げることに成功していた。ちなみに僕がアリシアのレベルを上げた時 彼女の能力は 筋力値が10倍になっている状態だったのだ。

サリスの現在の実力がどれほどかは不明だが おそらくサリストとアリシアよりは高いはずであろう。その予想通り、彼女は僕が「リリカの修行の時に使った槍を使ってみてくれ」とお願いをすると すぐに使いこなせるようになっていた。しかも僕が使っていた時よりも素早く動き回って攻撃を仕掛けてきてくれる。この分ならば、かなりのスピードを誇る魔人族のリリカと対等に戦えるだけの実力を身に付けられるかもしれない。僕は二人の成長ぶりに驚くと共に、これからの戦いに備えての切り札になり得ると判断したのである。

それから数日の間はアリシアもサリスも それぞれ違うメンバーと、この世界の冒険者としての仕事をする事になった。二人共 かなり張り切っているようで、毎日 頑張っていたようだ。そんなある日のこと、僕達は、ギルド本部に呼ばれてギルド長から呼び出される。どうやらギルド本部は、僕が異世界から召喚された人物では無く、勇者の一人であるリリカの仲間として同行していたという情報を既に得ているらしい。それで 今後は、勇者であるリリカやアリシアやサリスの手伝いをしてくれると有り難いという話を聞かされてしまう。

僕はそれを聞いて少し困ったような表情を浮かべながら リリナやサリスに視線を向けて、意見を求めることにした。すると アリシアが僕達三人に話しかけてきた。どうやら 今回の件は僕達のせいだと言うので 僕はアリシアに「僕達の事を知っている人が居るんだから仕方が無いんじゃないかな?」と慰めの言葉を言う。アリシアが僕の言葉で気持ちが落ち着くと彼女は改めて僕達に謝ってきたのである。それから彼女は僕に向かって「私も あの時、一緒に旅をさせて欲しいと言えば、ユウト君は、一緒に来てくれたんですか?それにユウト君だって私と別れるのは寂しかったんですよね?」

その言葉を聞いた僕はアリシアの頭に手を触れる。僕は優しく彼女の頭を撫でてから

「確かにアリシアとは別れたくなかった。僕にとって アリシアとサリスの二人と過ごした日々はかけがえのないモノなんだ。だから僕はリリスに、ある事を提案した。それは僕とリリスの従士と従士としての立場を変える事だった。その方法とは 従士の職業を持つリリスに僕の中にある血液を与えて、お互いの力を高めるというやり方だ。

だけどね。もしもアリシアが本当に仲間になるつもりなら、その時は また別の方法を考えようと思っている」と答えた。その答えを聞いてから、アリシアは「私もユウト君と一緒に戦い続けたい」と涙を流して言うのである。僕はそんなアリシアを抱き寄せてから「大丈夫だよ。絶対に死なせないから安心してよ」と言い聞かせるように言うのであった。そして僕は、リリスに向かって、ある頼み事をする。その願いとは

「僕の体の一部を使って欲しい。僕の血液を使えば 僕自身の魔力が上昇するだけではなくて、リリスの持つ力を引き出す事も出来るはずだ」

僕はそう言ってリリスに自分の腕を差し出したのであった。それから僕は「僕の中に有る血を使いきっても構わないから、全力でリリスの力を引き出して欲しい」

僕はリリスに向けて、真剣な口調で頼む。するとリリスも「分かりました。必ず私の力が貴方のお役に立てるようにします」と力強く答えるのだった。

僕達がギルド本部からの帰り際に、僕はリリスにある提案をした。それは、この世界に転生する際に得た もう一つの力を使う許可を求めたのだ。僕は、その能力を使用することで、一時的にではあるが、レベルがカンストしている状態になれると伝えた。それを聞いたリリスは 最初は戸惑っていたが、すぐに理解をして 了承してくれたのである。それから僕はリリスを連れて空間の中に入る。

僕達は リリスをレベル100の状態にするために行動を始めた。まずはリリスを眠らせる。それから僕は彼女に ある薬を手渡した。この薬は、リリスの体内の血液を入れ替える事でレベルを上昇させる事ができる薬であった。その説明を受けたリリスは、早速、その薬品を飲み始めるのである。しばらく様子を見守っていたのだが、しばらくして 効果が表れ始めたのか、体に変化が訪れるのであった。

リリスの体が淡い白い光を放ち出すと リリスの顔色が悪くなる。それを見ていたリリスは自分の身に起きている現象に困惑していたのであった。

「うっ!ぐあああぁぁぁ!」と声を上げ始め、苦しむリリスの姿を見かねた僕は、すぐさま回復魔法を彼女にかけて治療をするのである。そして彼女が落ち着きを取り戻したのを確認してから、今度は、リリスの血液が入れられている瓶を取り出し、その中の液をすべて飲むように命令を出すのであった。それからリリスは リリカと同様にレベルを上げる為に 僕はリリスに対して魔法を発動させた。その魔法の効果を受けた事で、彼女は 今まで経験したことの無い程の激痛に襲われたのである。僕はその苦しみを少しでも和らげる為に、リリスの手を強く握りしめていた。そして数分後、その激しい痛みから解放されたようで、落ち着いたのを確認する。すると、リリスから「私は今、どんな状況になっているのでしょうか?」と言う問いかけを受け 正直に話すことにする。するとリリスは僕の目をじっと見つめて話を聞いていたのである。

それから僕は、自分の持っているもう一つの能力である「スキル奪取」を使って、リリスからレベルが200になった時に手に入る経験値の能力を奪わせてもらう。これで僕は、一気に200ポイントを手に入れることが出来たのだ。

それから、僕の方もリリスと同じようにレベルアップが出来るか試してみる。

すると あっさりと僕のレベルは100の状態にまで到達する。それを確認してから、僕はリリスの体を触り その体に僕の中に存在する血を注ぐ。その行為を終えた僕にリリスが心配そうな顔で「あの、もう体は元に戻ったのでしょうか?」と聞いてきたので

「そうだね。僕には時間を巻き戻すことが出来る能力があるからね。今の君の肉体年齢なら、まだ元に戻すことは可能だよ」

僕は微笑みながら 答えると、リリスは、ほっとした表情を見せるのである。それから、僕は、この能力を使った事で「スキル奪取」の効果によって手に入れたポイントの使い方について悩んでいたのだ。僕はリリスに相談する事にした。

そして「この能力を使って、僕が強くなるために必要な事は何か分かるかな?」と質問する。するとリリスは しばらく考えたあとで「ユウトさんは、リリナさんやアリシアちゃんを守りたい。そういう事なんですか?」と聞かれるので 僕は、首を横に振ってから その理由を話していく。僕が強くなろうと決めたのは リリナやアリシアがピンチになって、助けられない自分にならないために もっと強い力を手に入れたいと願ったからだと説明した。

すると僕の言葉を最後まで聞いたリリスが、「わかりました。私に任せてください」と言うと 僕の目の前に、突然画面が表示される。その画面には『リリスがレベルをリセットされました』と書かれていた。つまりリリスの肉体年齢は、現在の年齢に戻るということだ。

それからリリスが「それでは、行ってきますね」と言ってから僕の手を握る。

すると僕の視界は暗転し、気が付けばリリスと一緒にベッドで寝ていたのである。僕は何が起きたのか、さっぱり分からなかったので、慌てて体を起こすと リリスも起き上がり「おはようございます。ユウト君」と言い、笑顔を見せてくれるのである。僕は、どうして リリスの肉体年齢が変化していたのかと尋ねると、どうも、この部屋にある水晶が、特殊なアイテムらしく、それが僕達の意思を読み取ることで、この世界での行動に適切な年齢になるように調整してくれるらしい。それから僕は、自分が強くなった事を確かめてみるために 外に出て訓練を行う。その日、ギルド本部から呼び出しを受けても 対応ができるよう準備はしておく必要があるから。その前に リリスが着ていた服を 洗濯場に取りに行ってから着替えさせてあげると、リリスの綺麗な長い髪はポニーテールのように後ろで束ねられ、いつもより可愛く見えた。その髪型を僕が誉めると、リリスはとても喜んでくれて「今日はユウト君のために お弁当を作って来たんですよ」と言うのである。僕は、それを聞いて、リリスが料理ができる事が驚きだったので「本当にリリスが、作ったの?」と聞くと

「はい。ユウト君に、食べて貰おうと思って頑張って練習したんですよ」と答えて、僕がリリスから渡された包みの中には、大きなサンドイッチが入っていたのである。僕は、それを嬉しく思いながらも、リリスの頭を優しく撫でると彼女は気持ち良さそうに「えへへ~」と声を出し 幸せそうに笑っていたのであった。

それから、リリスと一緒に、この施設内にある中庭に出ると、そこにアリシアが立っていたので、声を掛けることにした。アリシアも「私だって ユウト君の為に頑張らないと」と言い リリスと同じように 自分で作った料理を持ってきたようだ。僕は二人に感謝の言葉を伝えた。二人に用意してくれたのはありがたいが せっかくの機会なので アリシアの手作りの味が知りたかったのだ。

僕は リリスに作ってくれたサンドイッチとアリシアの持って来てくれたパンと肉と野菜を一緒に焼いたモノを交換してもらう。それから三人で楽しく昼食を食べる。その時に僕は 自分がレベル99である事を伝えることにした。二人は凄く驚いていたが、すぐに納得してくれて「流石は、私とユウト君の子供ね」と言ってくれたのであった。

それから、僕達は、お互いに自己紹介を行い 親睦を深めて過ごす。しばらくしてリリスと二人で話をしているとアリシアが僕の所に近づいて来て 僕の腕にしがみ付いて「わっわたしの こともっかい なまえでよんでっ!」と恥ずかしそうにして言うので僕は

「わかったよ。アリシア」と返事をして 彼女の事を名前で呼ぶ事にしたのである。すると彼女は嬉しそうな表情になり「えへへと笑って 照れくさそうにしている姿を見ると とても愛くるしいと思ったのだ。それからしばらく時間が経ち、僕は、二人の為に 僕なりの全力で戦う決意をしてから リリスに話しかけた。リリスの体に血を入れるとリリスがレベルを100に戻したので、リリスのレベルは 999まで上がっていた。僕と同じ数値だった。それからリリスのステータスを確認すると 彼女は自分の持っている力が桁違いだと知る。

僕は、これからリリスの力を 自分の物とするために 彼女に力の使い方を説明し始めるのである。僕が、リリスから奪った能力の使い方を 説明しようとすると、シロとクロは、自分の主人の力を自分のものにしようとしている事を知ったようで。リリスに対して敵対心を抱いて攻撃を開始しようしていた。

それを見た僕は 二人に対して「やめろ!!僕達は仲間なんだぞ!!」と言うと シロは、「申し訳ありません 我が主様。しかし 我らが主の力になる為には 致しかたがないのです」と言った。

それから、僕は、シロに 僕のスキルについての説明をするのであった。それから僕は「スキルを強奪して自分のものに変えれるんだ」と伝えると それを聞いた リリスは かなり驚いていたのだ。

それなら話は早いと僕は、スキルを奪うための能力をリリスに説明する。リリスはその話を聞くと「それは本当ですか?」と言われ 僕も「試したことはないけど きっと出来ると思う」と伝えると リリスの表情が一気に明るくなる。そして「お願いします。その力を使って私のレベルを1に戻してください」と言われた。それから僕は 彼女に対して「わかった」とだけ答えてから、彼女の手を両手で握る。すると、再び僕の意識が遠のき始めた。そして僕は、その感覚に身を任せるのである。

僕が再び気が付くと、リリスの体の周囲には魔法陣のような光輝く円が出現していた。

その魔法陣は、僕達の体を徐々に包んでいき リリスの体には光が吸収されて、代わりに僕の体内にはリリスの持っているスキルが流れ込んできたのである。

僕のスキル「憑依」を使って 僕の中にあるリリスのスキルを奪い、僕の体に定着させ、リリスは「憑依」で僕の中に存在しているリリスの魔力が枯渇する前に 僕に「魔道師」の称号を与えてくれる事で レベルがリセットされた状態で レベル999になった。

その後 リリスが、「この能力は一体なんですか?」と言うので

「これは、相手のスキルや身体能力などを奪える能力だね」と教える。それを聞くとリリスが、目をキラキラさせながら 僕を見つめて「凄いですね。ユウト君は 神様なんですか?」と言って 抱きついてきた。僕はリリスに、どうすればリリスの体が、この世界に来る前の状態に戻るかを話す。その話を終えると

「ありがとうございます。この体を元に戻す方法がわかりました。ユウト君のおかげです。私 必ず強くなってユウト君の力になりますから」と言われたので僕は微笑みを浮かべて「ありがとう。リリス」と答えた。それから アリシアにもリリスと同じような事を行い 二人ともレベルが1000にまで上がると、二人共、元の年齢に戻っていく。アリシアは、リリスにお礼を言うと 僕に、甘えてくるので、頭を撫でてあげる。アリシアは、気持ち良さそうにしてから僕を上目遣いで見上げると、頬を赤くしながら、「えへへ 大好きだよ。パパ」と言う。その姿は可愛いなと思ってしまうが 同時に、僕の理性が崩壊しそうになった。するとリリスがアリシアを叱り付ける。その姿を見ているだけで僕は、心が落ち着くのだ。それから僕は、二人に僕の「固有結界」について説明すると二人は驚いてから僕に対して感謝をしてきたのである。その日の夜、リリスに リリナとアリシアに渡してほしいと手紙を書いて貰うように頼んだ。

それから 僕は 二人に「これから僕と一緒に戦って欲しい」と告げると 二人は嬉しそうに「もちろんです」と言ってくれるのである。そして「私は、ユウトさんの足手まといになんてならないように頑張ります」と アリシアも言ってきたのであった。そんなやり取りがあった次の日 僕は、この施設にある武器庫に向かう。僕はそこで自分に合う剣を選びたいと思っていた。そうしないとリリス達も守れない。

それから しばらくするとこの世界の最高級品のミスリルの素材で作られていて、攻撃力が25000以上ある。伝説の剣が僕の前に現れたので、僕は 鑑定を発動させる。すると『レジェンドソード』という名前の武器だった。その効果を見る限り、僕の考えていた事が正しかった。

僕が、この世界に飛ばされて、レベルが強制的に999まで上がり全ての能力値が10倍になってる今の状態では 普通に戦っても勝てないかもしれないが、リリス達が 協力してくれると、可能性はあると思い僕は、この伝説級の剣を手に取ることにした。

僕は「クロ これを僕が持つよ」と言うと「はい。ユウトさん 私をお願いします」と言われ僕は この武器を装備することにする。すると「この装備には、所有者固定の呪いがかけられています。ユウト様が装備した場合、この装備品を外す事が出来ません。また、他の者では、装備できません」と言われる。

それから、僕のレベルが上がり 新たに追加された 称号の欄を確認すると。そこに【聖女の加護】が追加されていたのであった。そして、僕は リリス達に自分の力で戦うために、皆の力を貸して欲しい。僕に付いてきてほしい。一緒に戦ってくれるか?と言うと 二人は「当たり前じゃないですか」と答えてくれたのである。その日から僕達は、お互いの事を、呼び捨てで呼ぶようになり、それから数日間の間 僕は自分の力を伸ばす事にする。その間、僕が「転移」の能力をフル活用して移動を行う。そしてクロの空間魔法で作った、亜空間で休憩する事を繰り返していく。そして僕は、クロの作った特殊な訓練用迷宮に入る。そして僕は 自分一人で戦い続け リリス達の力を借りる事無く 僕はレベルを上げることに成功する。そのレベルは500まで上がっており。それから僕は 自分が持つ最強の技である。神刀「月夜」と、魔刀「紅蓮」を同時に発動させて 二つの神刀による 一閃攻撃「斬滅」の修行を行い始める。リリス達は、僕に対して 心配そうな表情をしていた。それでも僕は自分の意思を貫いて「強くなりたいんです」と言うと

「分かりました。ユウト君に全てを任せます。その代わり絶対に死なないでください」と 言われ

「ありがとう。僕は絶対に死にはしないよ」と答える。それから 数日が経過し 僕は 遂にレベル500になることが出来たのである。

その頃になると僕は自分の中に眠っていた力が目覚め始めてきたのだった。僕はリリスの体でレベルを上げたことで

「剣術」や「棒術」「短剣術」といった技能を取得して使えるようになっていた。更に僕は自分のステータスに表示される、新たなスキルに気付くのであった。それは、「気配感知」と「身体強化Lv5」の二つであった。このスキルの使い方は分かるので問題はなかったのだが、僕はリリスのステータス画面を開いて ステータスを閲覧していくと、リリスは「闇魔法の熟練度が高いみたいですね。私のステータス画面に表示されている「属性付与」という技能を覚えれば、闇の魔法を使う際に、必要な能力値が大幅に下がります。ただ闇魔法を使うのに必要な素質があるかないかは、やってみないと分からないんですよね。私の場合は、「魔力耐性」があるので覚えられましたが」と言われ リリスは自分のスキルについて教えてくれていた。それから僕が、「ありがとう。リリス」と言うと彼女は、「いいですよ。私の方こそ。ありがとうございます。私と妹を救ってくれただけでなく、こんな私を受け入れてくれるなんて。だから私は、一生 貴方のために生きます」と、涙ぐみながら言うのであった。僕は「分かった。よろしく頼むね。でも無理はしなくていいからね」と言うと リリスは「もう私は、あなたの妻なのですから、これからはもっと頼って下さい」と言ってくれたので リリスに抱きつきながら僕は泣きそうになってしまうのであった。その後、僕は、この世界での戦いに備えて、新しい必殺技の開発を始めたのである。

リリスとの約束の期限まで後一日と迫った日の朝、僕はこの世界に来た時の服装を身に着けて王城の前に来ており その側にはリリアナの姿があった。僕がリリアスの所に向かって欲しいとリリスに伝えて貰ったがリリスはまだ僕の中で生きている状態になっている。しかし 僕の体は既に魔王の手に渡っている為 リリスは僕の中に居続けることは出来ない状況にあったのだ。その為 リリスはこの世界に来て初めて外に出ることになるので その事を心配したリリアナは僕の傍を離れようとしなかったのである。僕が「ごめん。リリアナ どうしてもリリスの側に行かなきゃいけないんだ」と言うとリリアナは寂しげな表情を浮かべて「はい。わかっております。私とリリスは ずっとユウト様のお側でユウト様にお仕えすることを誓わせて頂きましたから」とリリスと全く同じことを言うのである。その言葉を聞いて、僕はリリスを抱きしめてあげたい衝動にかられながらも必死に抑えると

「リリスの事お願いします」と言う。するとリリアナは微笑みを浮かべて「お任せ下さい。必ずリリスのことは無事に保護致します」と言って 僕の前から姿を消す。それからしばらくすると リリスが姿を現す。その体は ボロボロになっていたのであった。リリスに駆け寄り 回復魔法をかけようとした時に 僕は「リリス。リリアスに何かあったんだろ?」と問いかける。するとリリスが俯き「リリスさんには、ユウトさんを助けに行くのを止めさせられました」と言ったのである。それを聞いた僕は リリスに対して怒りが込み上げてくるが 何とか我慢して「それで どうなったんだ?」と聞くと リリスがリリアナにリリスの肉体が乗っ取られた状態で、リリアナが「リリスちゃんの事は諦めてください」と言われたらしいのだ。

それを聞くと僕は、リリスに対して「リリス お前が気に病む事はないんだよ。僕だってこの世界で、リリスが僕の体の中に入ってなかったら とっくに死んでたんだと思うし、この世界に来てからは、ずっとリリスに救われてばかりなんだから、僕は、リリスとリリスの妹に命をかけて守られてるから この世界でも戦えるんだ。僕にとって 二人の存在は無くてはならない物になってる。そんな大切なリリスと、リリアナの幸せを奪うようなことをする奴がいたとしたなら、その時には、僕は絶対に許さない。だから今は辛いかもしれないけど、リリスとリリアナは二人一緒にいて欲しい」とリリスに伝える。するとリリスは「私は まだ完全に復活出来ていないので すぐにユウトさんの中に戻ります。ユウトさん お願いがあります。どうか リリナさんだけは ユウトさんがこの世界に残って欲しいんです。私が、この世界に来るまでは リリナさんの意識は、この世界にありませんでしたが、今は完全に、リリナの魂はこちらの世界に存在することになりました。

リリスさんと私も出来る限りの事はするつもりですが、もし私達がこの世界から離れる事になれば、この世界に残されたリリナさんを守る人が必要になってくるのです。お願いします」と言われる。

僕が「僕には、リリスやリリアナがいてくれるじゃないか」と言うと リリスとリリスの体を使っているリリアナが僕を優しく抱きしめてきたのだった。そして僕の唇にキスをしたのであった。そして「この世界に居る間だけでいいんです」と言われると僕には断ることが出来ず リリス達と共に行動することになってしまうのだった。そして 僕はこの世界に残す事になるリリナに、メッセージを残して、この世界を後にしたのである。

僕が、リアリスと話をした後。この世界に残した妹 つまり リリスとリリアスの姉妹と、別れの言葉を交わしてから。

この世界の人達と、この世界で最後の夜を過ごした。僕はリリアに「明日は早いんでしょ?寝たら?」と言うと「はい。そうさせて貰います」と言いベッドに入り眠りについたのである。僕が、目を覚まして部屋の外に出ると。僕が、この世界で一番信頼を寄せている、リリスが既に起きていて「おはよう。リクト君 朝ごはん用意できてるわよ」と言われ 食卓の椅子に着く。リリスは、僕が起きる前に 朝食を用意していたらしく。リリアとアリシアは席についており、三人と朝の挨拶を交わす。それから 僕は食事を終え。準備をして部屋を出てから転移で王城に向かうことにすると、皆も付いて来るという事で転移を行う事にする。僕達は転移を行い、僕達の家の玄関へと移動したのであった。僕はリリスとクロを呼び出して。クロにはリリスが乗り、僕はリリスと一緒に転移を行うと、転移を行った場所にはリザードマンの少女 リリアがいたのである。リリアが言うには、リリスの事をリリアスと呼び間違えていたそうだ。そして リリアに「あのね これから行くところに お姉ちゃんもいるんだけどね」と言うと「リリスが ここに来てるんですか?リリスに会いたいです」と言うので。

「うん わかった。じゃあ行こっか」と言うと クロの空間魔法を発動させ。クロはリリスが待つ場所まで向かうと。そこには リリスとリリスの体を乗っ取ったリリアナの姿が確認できた。

「リリス」と僕は呼ぶとリリスは

「ユウト様」と言って僕に抱きついて来る。それを見ているリリアが、「えっ!ちょっと リリスだけずるいわよ。私だって、本当は、お兄ちゃんのこと好きなの知ってて、こんな姿になったから 少しぐらい 甘えても良いよね」と言うと リリスは 僕の胸から離れ、リリアを抱きしめたのであった。

それから僕たちは、リリアの案内のもと、とある施設に連れていかれる。そこで僕が目にしたのは、地下に作られたダンジョンだった。僕は、このダンジョンを見た時に「ここが リリアの言っていた リリアスの隠れ家なの?」と聞くと。リリアは、無言のまま首を縦に降り、そのまま 地下に続く階段を下りて行く。リリアは、「ここから先は、リリスは来ちゃダメだよ。リリアとお母さまで話がしたいことがあるから」と言うと 僕とリリスを入り口に残して リリアとリリアナは 地下にある、ダンジョンの中に姿を消してしまったのである。僕とリリスは顔を見合わせてから お互いをギュッと抱きしめ合うと 二人でダンジョンの中に入っていったのであった。

「ねぇ お兄ちゃん。私って やっぱり邪魔者なのかな?」

と寂しげに僕に語りかけてきた。リリアナを一人 リリアに残してきて大丈夫かなぁと僕は心配していたが。それでも僕はリリスの事が気になり「そんなことないと思うけど。それよりさ リリスに聞いて欲しいことがあるんだ。」と言うと リリスは 僕の顔を覗き込みながら、僕に問いかけてくる。「何?」

僕は、まず初めにリリアナと初めて出会った時にリリアナが リリスの事を知っていた事を伝えることにした。

リリスに僕の妹である、リリアと、初めてこの世界に飛ばされて最初に出会えた、リリアの友達だった、エルフのサーシャが、この世界で生きている事を告げると リリスは涙を流して喜んでいた。僕は、その後、リリアが、この世界のリリアスと入れ替わっていたことを話す。

するとリリスは、僕から離れて「お父様。私は あなたの敵ではないの。私はあなた達と戦うつもりなんてないし、私は、あなたが大好きで愛しているのだから。でも 私にはまだ力がない。それに今の私では、リリアスの力を借りる事も出来ないの。」と真剣にリリスに告げるリリアが、リリスに対して敵意がないように感じた僕は、とりあえず「リリス 今は、まだ話せない事が多いだろうけど、僕に、リリアスの事を任せてくれる? きっと悪いようにはしないよ。それと 僕もリリスにお願いがあるんだ。この国にはリリアスの妹 つまり リリアの双子であるリリアって子がこの国に暮らしてるはずなんだ。だから 僕は その子にも 幸せになって欲しいと思ってるんだ。僕の妹として生まれてくるはずだった、この世界の女の子が リリアみたいに 不幸になるのが 僕は嫌なんだよ。だから 僕に協力して欲しい」と言うと

「私は 私の大好きな お父様の為に協力する事は構わないの。だって私にとって この世界に残してきた家族よりも、この世界で一緒に暮らす事になった お父様と過ごした時間の方が 長くなってるもの。だけど、私だって、この世界のリリアスや 私にとって とても大切な人。リリスとリリアのことは 大事だと思っているわ。私はこの世界で 自分の役割を全うするまで リリスには 待っていてもらいたいの。私が、この世界に来る前は、ずっと私がこの世界に居てリリスをこの世界に呼んであげられなかったの。そして その役目が終わっても 今度は、リリアに私がリリスを呼び出す機会を作ってもらう事も出来なくなってしまったから 今度こそ、この世界を救って そのご褒美に、リリスを呼び寄せることが出来るようになるかもしれないでしょ?」と言われ 僕は

「そう言えばそんな約束をしてたか」と納得した。

リリスとそんな話をした後。僕はクロにリリアの元へ連れて行く様に指示を出すと クロの背中に乗り移動する。クロに乗って移動中 僕がクロの背に乗ることを クロもリリアもリリアーナも気にする事なく受け入れていたのだ。僕はクロから降りて 目の前にいる人物を見て

「えっと リリスのお祖母さんですか?」と言うと「ええ リリアスと よく似ていたものですから」と言われたのである。僕は、「初めまして リリスの父 リクトと言います」と挨拶すると「ええ。私はリリアよ。リリスの母親よ」と言われて、僕は「リリスが、僕と結婚したことで、リリアさんの娘さんと、リリスの母娘で、この世界に転移されたのですか?」と聞くと リリアは 首を横に振り「リリスは 私達が この世界に呼んだのではなく、ある日を境に いきなり この世界に転移してしまったのよ」と答えてくれる。それを聞いた僕は少しだけ安心したが

「じゃあ リリスは 突然 こちらの世界に転移して リリアさんの所に来たのですね」と答えると

「そうなの。その時は 驚いたわ。リリアは リリアスの体に魂を移したばかりだったからね」と言われると 僕はリリスの事をリリスに確認をとると「はい。確かに 私の体です」と言ってくれていたのである。

僕は「リリア ありがとうございます。おかげでリリスのお母さんに会えることが出来ました。本当に嬉しいです」と伝えると

「ふふ どういたしまして。それより、貴方と一緒だと いつもより リリアが可愛くてしょうがなくなるわね」と言うので 僕は、「リリアスも可愛いですよ」と答えるとリリアが僕の後ろに回り込み 抱きしめてくれたので リリスも負けじとリリスが僕を後ろから抱きつき、僕は 両手を拘束されてしまった。そんな様子の僕らを見て リリアが「相変わらず仲が良い親子ねぇ。羨ましいわ。」と笑うと リリスがリリアを手招きする

「んっ?」と疑問を抱きながらリリスに近づくリリアがリリスに手を掴まれ引っ張られる 僕を離したと思ったら リリスと入れ替わったのであろうリリアの姿が僕の目に飛び込んで来たのである。リリアは、僕を見ると「あっ リリアちゃん」と言ったので 僕は「お兄ちゃんでしょ?お姉ちゃん?」と言うと「お兄ちゃんでした。つい 間違えちゃいました」と笑顔で答えてくれる 僕とリリアのやり取りに 呆れているのか微笑んでいるのかわからなくなったリリアに「リリア 私もお姉ちゃんに なりたい」と言うので僕は、「じゃあ僕がお兄ちゃんって呼ぼうか?」と言うと「それは ちょっと違う気がするので リリアのままで良い」と言っていたのであった。

僕は「そういえばリリアに聞きたかったんだけど。どうしてリリアと入れ替わった時、アリシアの声を真似て僕の前に現れたの?」とリリアが「えっ?」という顔をしながら 首を傾げてたので僕は「あれっ?リリア 忘れてしまってるんだ。」と呟くと リリアは 僕を見つめながら

「ううん。私は お父様と会った時の記憶は残っているけど。お父様の言ってくれた事だけは覚えていない」と言うので リリアに、僕が初めて出会った時に言った言葉を聞かせる。

するとリリアは

「お母さまと同じような事を言っているのに。何故か お父様に言われてから思い出せた」と言っているのを聞いて 僕はリリアの頭を撫でていると リリアが「お父様は 私達と、リリアを幸せにしてくれるの?」と聞いてくる。僕は「そうだなぁ 僕の考えでは。まずは僕が、皆を幸せにする」と言うと

「リリアも リリアとリリアの双子を、リリアスと、お母さまが ちゃんと生きていくことが出来るようにしてから。僕は 君たちを幸せにしたい」と答えたのであった。リリアが「そっかぁ。わかった。それでリリアはいいと思うよ。リリアには幸せになる権利があると思うし、私とリリアには、これからもずっと一緒にいてね。」と言うと リリアは「もちろん。お姉ちゃんとリリアとは、いつまでもずっと一緒にいるつもりだよ。それに私にも妹が居るんだよ」と言うとリリアは 嬉しくなったようで僕にしがみついて「やった。リリアの妹だ。会いたい!早く会いたいよ。リリアの妹に!」と喜び 僕もリリアが喜んでくれてよかったと思うのである。

その後、リリスとも、お話をした。僕の知っている事をリリスに伝えておく必要があるからだ。そして、リリスが「私からも、一つ 話さなければいけない事があるの」と言ってきたので僕は「何?」と尋ねると「私は この世界を救う使命を持って、リリアと一緒に、こちらの世界に来ているのです。私はこの世界の神によって作られた人間。そして私は、リリアと入れ替わる前のリリアの記憶を受け継いでいます。私は あなたに会えて良かったと思っているの」

と僕に伝えると、僕に近づき 唇を重ねてきてくれたので 僕も応える。キスが終わると「これが 私が持っている 全て 私には力が無い。でも私は この世界で、大切なものを守るために、戦い続けると誓う」と言われてしまう。僕は「大丈夫。リリスは強い。この世界を救って欲しい。でも僕もリリアやリリスを守り続けて行くつもりだ」とリリスに約束するのである。リリアは「ありがとう」と言ってくれた。

僕は「ところで、この世界で この国の名前なんて言うんだ?」とリリスに尋ねると

「この国の名ですか?今はありませんよ。昔 この国に勇者が居て。彼が この世界の魔族を倒した際に、彼は元の世界に帰ることになり。その際に、自分の国を作って 自分の家族を呼び戻す為にこの世界で建国したのが、この世界の初代国王です」と説明してくれたので「そうなの!?この世界の建国の理由を知ってしまった。この世界を救った後、もし僕の家族もこの世界に召喚されるなら その家族がこの世界に来る事が出来る様に 僕は、僕自身の役目を全うしてから、この世界を去ろう」と思っている そして、この世界にいる間に、この世界の為に、僕のできる限りを尽くそうと思っているのである。

シロに乗って移動する。今回は、アリシアが一緒だったから アリシアも一緒に移動している。

アリサも、クロに乗りたがっていたけど。僕が、今回も却下させていただいた。前回のように僕達が転移させられた場所から、そう遠くはない所に飛ばされたので、僕は転移させられる前に見た景色を思い出して、クロを走らせると、直ぐに目的地に着いた。そこにはリリスがいた。僕達は再会の喜びに震えていた。そうして暫くの間、お互いに抱きしめ合ってから。クロがリリスを見てから、少しだけ怯えているように見えた。僕もリリスもクロに気付くとクロもリリスと、とても懐かしい感じに思えたようだ。しかしクロに怯えられてしまったリリスはとても寂しいそうな表情をしていたので、僕は、クロが、少しだけ びっくしただけみたいだと、フォローを入れてから、リリスに事情を聞くと。「クロさん。本当に久しぶり。私の事を覚えてくれてるのかな?」と言うので僕は「きっと 忘れてはいないよ。僕だって、最初は、いきなり現れて来たからびっくりしたけど すぐに受け入れたから」と言うと、リリスに、僕の方を見ながら「えっ?そうなの?」と聞いていたので僕は「まあね。リリスのおかげで 今があるようなもんなんだよね」と言うとリリスは 笑顔になっていた。そんな様子の僕とリリスを見たリリスも、笑顔になった。

そして、リリアに案内されて僕とリリスはリリアの家に向かう 僕達がリリアの家に向かっている途中シロとユウが突然現れた魔物を倒していってくれていたので僕達がリリス達に会うのに、時間はほとんど必要なかった。

僕達が家に入るとリリアの祖母 リリアと、双子の姉であるリリアが出迎えてくれる 僕は 挨拶をしてリリアの両親と祖父母である二人を見て僕は「リリアス 貴方が僕にくれた。この世界での生活は、とても楽しく過ごせています。本当に感謝しています」と頭を下げるとリリアは、僕を見て涙を流しながら僕を見ていた。

そんな様子を見た僕は、リリアのお母さんに「何か悲しい事でもあって、泣かれているのでしょうか?」と尋ねてみたのだが。リリアは「いいえ ただ貴方の優しさに触れられて 感動してしまっているようです」と答えてくたのだけど「僕が?」と僕は疑問に思うので、僕はリリアに「どうして?」と答えを求めてみると。リリアは「ええ リリアとリリアの母である私のおばあちゃん。それにお父様と私とお母様の事も。大切に思ってくださっていると感じて嬉しかったのです」と答えてくれる。僕は、「そうですよ。僕の出来る範囲での事はしますから、頼ってくださいね。リリアの事を大事に思いながら、これからも 仲良くさせてください」と言うとリリアは、笑顔になってくれた。僕は、次に、リリアの父であるお父さんの所に行って。「僕の願いを聞き入れてもらい ありがとうございます。僕の力になれたらと思っています。リリアスの事 よろしくお願いします」と言うと「ありがとう。君がリリアにしてくれた事に、どれだけ私が救われたかわかりません。リリアには幸せになってもらわないといけませんでしたから 本当にありがとう」と言ってくれるので「僕は当たり前の事をしたまでなので。リリアと幸せになりましょう。」と言うと「リリアは、君の事をどう想ってるの?」と言うので僕は

「僕はリリアスを誰よりも大切だと思っているよ。だから、リリアスが望めば僕は、いつだって君を受け入れるつもりです。君もリリアスも、僕は愛してます」

リリスと、僕とリリアの両親は 驚いていたので、リリアのお母さんが「まさかそこまでの関係にまでなっておられたのですね」と言ってきていたが。僕としては、僕自身がリリアの側にずっと居たかったという事もあったから リリアスの事もリリアの事を考えて行動してきたつもりだったのである。リリアスもリリアのお母さまに、僕と恋人同士では無いと伝えてから、僕と二人で話をするために 部屋に来て欲しいと言われた。リリアは、自分の部屋に戻っていった。僕は、僕が転移されたあの日から今日までの出来ごとと、これから先何が起こるか分からない事を話したんだけど。リリアスは「そうだったのですか リリアの気持ちは理解できました。でも私も貴方の事は好きなので、これからは 今まで以上に、リリアと一緒にいて幸せにしてあげてください」と言われる。

それから、僕はリリスと話をしていた。僕が異世界に来た理由を話した時に 僕に会えて良かったと言ってくれた。「僕もだよ」と答えたので リリスが「貴方にお会いした時は、私には生きる希望がありました」と言われてしまう。僕は リリアの時と同じようにリリスも救う事ができて本当によかったと思ったのであった。リリアは、僕に抱きついてきてキスをしてくれていたので、僕もそれに応えていた。僕はリリアを抱きしめてリリに口づけを交わす。

僕は アリシアに、リリアスとリリスと、シロとクロの面倒を見てもらうために、クロの身体を借りてシロとクロの3人で一緒に行ってきます。

アリシアは 僕にリリアとリリスの事を託してくれると言うので リリスとリリアと一緒に 僕の屋敷へと帰って行く 僕が シロに指示を出すと リリスとリリアを連れて移動をすると リリスとリリアを僕の身体の中に吸収するのと同時に 僕は僕の中に取り込んだリリアとリリスと感覚を共有した。

僕の中の空間を歩くと。シロが僕達三人の周りで楽し気にしていたので「楽しいか?」と尋ねると「はい ご主人と一緒なら、どこに行くでも大丈夫でーす」と喜んでくれているようだ。「そうか。じゃあ 今日はゆっくりするか」と僕は言うとリリスが

「そう言えば。

リリスさんには聞いてなかったのですが。リリアさんの時みたいにはなりたくないので」と言われてしまったのである。そこで僕は、クロにリリスも 僕に体を提供してほしいと伝えた。

僕がクロに話すのと同時に、アリシアは

「リリスさんにも 体を預けて貰えるようにしました」と話してくれるので、リリスとクロは お互いに 顔を合わせて お互いを、見つめていたのである。そして僕は、リリスに「僕の体の中に入る覚悟はある?」と問いかけると。「もちろんです。私は貴方の為にこの身を捧げたい」と言ってきた。そして僕は「じゃあ、始めようか」と言いながら。リリスに僕の体に入ってもらった。僕が意識を失いそうになるのと、同時に、クロも僕の身体を乗っ取り、僕の体にリリスが入ってくるのを感知したので、僕は僕の精神をリリスに移して クロの精神が僕の体に入った瞬間にクロの魂に僕の記憶を植え付ける事にしたのだった。僕とリリスは、クロが僕達の体を乗っ取ったタイミングに合わせて僕達が元々存在していた肉体に戻った。その時に、僕の体が光り輝き始めたのだけど クロが僕から奪ったリリスの人格が僕の身体に定着したようでクロの表情に少し変化があった気がしたのだ。

リリスから僕へ、僕の中に残っていたクロの感情が流れ込んでくる。それを感じ取り。僕は僕の中でリリスからクロに切り替わる瞬間を待つのであった。しかし僕が思っていた通りにクロの体は僕のものと違っていて、クロから流れてきた記憶の全てを受けとった時には 僕は 少しだけクロの思考と知識を手に入れていたのだった。それは「魔族の王」と呼ばれる存在が クロに憑依し。そして魔王として君臨することになった。クロの種族が「魔人族」である事。そして「魔王」とクロの会話を聞くと クロが元々は普通の猫だったのがクロとクロにクロという名前を付けた人物との思い出によって。人間から魔物の類になってしまったと言う事。そして「魔王」の器になっていたらしいのだが、クロとクロに名前を付けてクロに家族のように大切にしてくれた人物にクロが心酔し。その結果。

僕は僕の意思に反して 僕は僕の本来の肉体では無い 別の誰かに入れ替わってしまって、クロから与えられた僕の新しい肉体を使い。僕の知らない僕が、僕の元の世界での出来事を思い出し。

そして僕の中にあるクロの残像の様なものが僕の頭に浮かび上がり。

僕は自分が 今置かれている状況を把握することが出来た。僕の本来の肉体は 僕に名前をくれた人の形見として、僕のお守り代わりに持って行こうと思ったのだけれど 何故かそれが出来ない状態だったので。僕は僕に出来る限りの事を考えていく。僕は僕が使える魔力やスキルを確認する為に。まずは自分自身の能力を確認したのだけれど 僕は自分の能力を見る事が出来るのだなと思う。それにステータスが表示されているのだから。僕は僕自身の能力を見てみる事にしたのだった。僕自身に鑑定をかけると

「レベル1」「性別男性」となっていたのだけど。ステータスが僕が思っているのとは違う内容が表示されたのを見て驚いた。「ステータス表示(仮)LV10」

ステータスが僕の予想していたものと違う表示がされた。「経験値上昇補正」、「成長速度増加大」が僕の持っている能力なのだけど

「魔法攻撃力」や「魔力」といった、本来僕が持っていたであろうと思われる数値が無く。

僕は、僕の持つ魔力と体力を確認してみる事にしたのだけど。僕の身体は 僕の思い描いた通りの物では無かった。僕の身体には元々無かったはずの。僕がクロに授けた「スキル」が組み込まれていて、僕の元いた世界の人間が使うことが出来る魔法の威力が大幅に上がっていたり 僕の身体能力が、クロが得たスキルの影響なのかは分からないけれど 凄まじいものになっている事が判明したのである。僕は僕の今の状態に 戸惑いながら

「僕は僕の肉体じゃない。僕の本当の肉体ではない。僕は誰だ」と考え始めていたのだった。

そんな風に考えていた時に、僕の周りにリリアとリリスが現れた。僕が二人を見つめていると、リリアが「貴方はリリアの恋人であるユウ様です」と教えてくれた。

僕は

「どうして ここに」と疑問に思う。僕の言葉にリリスが「貴方に私の全てを託すために来たのです」と言うので僕は、クロの記憶を頼りに リリスの肉体に、リリスとリリアとシロとクロを宿らせ。リリアの魂には アリシアを住まわせて 僕は クロに自分の意思を委ねたのだった。それから僕の意識は途絶えるのであった。僕が目覚めた時、僕とクロと、僕に寄生している魔人が僕の前に立っていた。僕は、自分に起こった出来事を思い出す。僕達は

「魔王城」と呼ばれる場所で、これからの戦いに向けて 打ち合わせを行っていたのだ。「お前は本当に俺を裏切るつもりなのか?」と僕に聞いてくるクロに「俺はもう疲れちまったんだ。だから これから先の人生くらいは好き勝手にさせてくれないか?」と言うので僕は

「お前の好きなようにするといいさ」と答えておいた。すると

「なら この世界を支配するために動き始めるとするか」と言いながら 僕は僕の身体から抜け出していった。僕は僕の意識の中に入り込むクロと、クロと入れ替わった魔人と、僕の中にクロが乗り移ってくるまで、自分の体を動かすことにして 僕の中にクロが入り込んできた。それから僕は自分の肉体を使って自分の意思で動く事ができるようになり

「お前は これから何をするつもりなんだ」と、僕はクロに向かって言うと

「決まっているだろう? 世界を恐怖に陥れる。

そして俺こそが、世界を統一する」と自信満々に答える。僕は僕の中にいるクロに質問をした。「クロよ。何故、俺の肉体を奪うような真似をした?」と聞くと

「俺には 俺を裏切った奴らが許せないからだ」と言うので僕はクロの事を「馬鹿者め」と罵倒するが。

クロには全く通じなかったようで。「馬鹿だと お前に言われる覚えは無い!」と言う。「では お前に問おう。もし、お前が、今ここで死ぬ事になったとしても、それで構わないというのであれば、俺は別に それでもいいんだが。ただ そうすると お前が俺の中に入って来れなかった場合。

俺の中にいる もう一人の人格が暴走するかもしれないから その覚悟だけはしてもらいたい。どうする?」

僕が

「なら クロの願いを叶えよう」と、クロと僕で相談した結論を言うと。「ならば。

この世界に生きる生物全ての生殺与奪の権利は、魔王である俺が握ろう」と言ってくるので。「お前には それしか 選択肢が無いのは 理解しているので、何も言わんが せめて、人類は絶滅させてくれるな」と僕が言うと。「それについては問題無い。

既に手は打ってある。

これで 暫くの間は 時間が稼げる」

僕は「何の手を打ったんだ?」と聞きながら。僕の中からクロを追い出しにかかるのだけど

「まて。まだ 話したい事がある」

クロは、僕を説得するような言葉を並べてくるので、僕がクロを押し戻そうと必死に抵抗をする。

しかし、僕はクロを僕の中に閉じ込める事に成功し、僕も クロと同じ様に僕の中にクロの精神体だけを封じ込めたのだった。僕の中にはクロの精神体が居る。そして僕の目の前には、僕と僕が作り出したクロの精神体が存在している。

「俺は、この身体から抜けたいのだが この身体の持ち主の許可がない以上 抜け出す事は出来なくてね。

そこで頼みがある。君の力を少しだけ借りてもいいかな」と言ってきたので僕は、クロのお願いを引き受け そして、クロと僕の会話は終わる。

「クロ。

これから 俺に どんな命令を下すのか言ってみろ。

ただ 俺は、クロに、お前の手足になれと言われただけだからな」僕は僕の中にクロが居座るのを受け入れ。僕の中にクロの精神体が留まることを許すことにしたのである。僕と、僕が作り出し、クロの精神体を封じ込めた僕の精神体が話し合いを始めた。まずは僕が、クロから聞こうとしていた話を僕はクロに問いかけた。「まず、お前の目的から教えてくれないか?」僕は、僕の中にクロがいる。

僕は僕の作ったクロと対話をしていたのだけど。クロは僕に自分の目的を教えてくれる。僕はクロが魔王と呼ばれるようになってからの行動を聞いてから クロと僕が知りたいと思っていたことをクロに確認していくのだった。クロが答えたのは。

僕が僕に聞いた。「クロ。

お前が僕に対して要求することを述べろ。

お前が魔王となってから今までやってきた行動を全て教えて欲しいんだが」と言うと クロは僕の質問に全て答えてくれたのである。

「俺の目的は、この世界の征服だな。だが、これは あくまで 俺達魔族が生きて行くための環境を整える為に必要な事であり。俺に歯向かわない限り、敵対する気は無い」とクロは僕に伝えるのだけど。クロの言葉を聞いた僕はクロが「魔族は この世界の人間達に恐れられているのは知っているのか?」と言うと クロは「それは 承知の上だよ。でも、人間は俺が思っている以上に愚かで 傲慢だったんだ。人間の勇者は俺の邪魔ばかりをして、魔族の領域に足を踏み入れようとしなかったから 仕方が無く この世界で最強と言われている種族である。エルフの姫を 俺にくれと言ったら。あっさりと了承してくれたので。俺がこの世界に君臨するのは容易だと思ったのだけど。何故か知らないけど。あの勇者が俺に喧嘩を売ったせいで、他の国や地域の人間からも狙われ始めて、俺としては大変迷惑をしているんだ」と言ってきて僕は「俺には関係ないが 一応、お前が この世界の生き物の敵だということは良く分かった。なら、次は、クロ お前に問うが 僕に協力してくれ。お前は今の状況が嫌になったから、この世界に戦争を吹っ掛けた。なら僕がお前に協力するのは、筋が通っていると思わないか?」と僕はクロに提案を持ちかけるとクロが

「それはいいが。協力するに当たって条件を付けさせて貰う。

魔王であるお前が、もしも お前以外の者に負けることがあれば、お前の命を頂く」とクロは言ってきた。僕は クロに「僕がお前よりも先に死ぬ様なことになれば、この世界に存在する僕の仲間達の誰かが、お前を倒す。それでいいんだろ?」と聞くとクロは僕の言葉に同意した後で。

「ああ そうだ」とクロは答える。クロの話を聞いた僕は 僕の中にいるクロが僕の中で生きている理由を尋ねると「俺は、俺の中のリリアとリリスが俺のことを信頼しているからこそ、お前の身体に入り込んで生きて行くことが出来ている。それに、お前の肉体は俺に完全に支配されている訳では無く。

お前の意識もあるみたいだし。

俺は、この世界にお前の身体を使って生きる権利を与えられたに過ぎないのだから。

俺がリリアやリリスの信頼を失うことはしないさ。それと、お前に俺を消滅させる術があるかと問われたら ないと言うしかないだろう。ただ 俺にも、リリアとリリスを消滅させる力も無い」と言うと。「なら 話は早い。俺に身体を渡して貰えるなら 俺は全力を持って 魔王城に攻め入り そして魔王城を制圧する事を約束するよ」と、僕はクロと話をした。クロは僕との話が一段落するのを待って「さっきの話に戻るけど。俺は、魔人の中にいる、俺と俺の同類を殺す為にも動いている」とクロは言い。「お前は、これから何をするんだ? そして これから、お前がどうしたいと思っているかを聞かせて欲しい」とクロが聞いてくるので僕は クロに、これから僕がしようとしていることを話したのであった。クロは「そうか。

俺には何も言う資格はないので 好きにすればいいさ」と僕に伝えてくると 僕の中のクロは僕の中から消えていき 僕が作り出したクロの精神体は僕の中から抜け出して。そして、僕は自分の体を取り戻した。僕の中にいる僕が僕に語りかけて来たので。

「お前が僕に取り憑いている間は。

お前の意思は無視して、勝手にお前を動かすことになる。

僕を裏切る行為は絶対にしないと言うなら。僕は お前の力になろう。僕は今。

この世界の全ての生き物が、僕の仲間になって欲しいと本気で思ってるんだ」と言うと僕は「クロ。

俺がお前の言う通りに動けば、俺の願いを一つだけ 叶えてくれないか?」と僕が言うとクロは僕に対して「お前の望みは何なんだ?」と質問してきたので。「僕の願いは、全ての生物と友達になりたい。それだけだよ。

それが出来ないのであれば。俺は僕の身体の中に存在している クロの精神体の力が使えるというだけの。只の男でしかなくなる」と僕が答えるとクロは「そんな簡単な事なのか?」と呟き そして 僕の中にいるクロの精神体からクロの声が響いてきて「その言葉 確かに聞いたぞ。俺を失望させないでくれるといいんだがな」と言うと。僕の中にあるクロの精神体が僕の肉体を乗っとって行き。

僕の中には 僕を乗っ取り肉体を支配をしたクロの精神体と、僕の作り出したクロだけが取り残される形になるのだった。僕が、この場に残るクロに向かって「僕を殺せると思うなら殺せばいい。その前に、僕にお前を殺せなくても、僕はお前の願いを聞く気はない」と言うとクロは僕の中にいるクロに向けて「今から お前の中にいる クロの人格が暴走を始めてしまうかも知れないが。

僕はお前を消すつもりは無いのだけど 僕の話を聞き入れる気はあるのかい?」と僕が問い質すと。クロは「それじゃあ、お前が暴走したら俺に止めを刺してくれないか?」と、僕の精神体に頼むので。僕はクロを自分の支配下に置きながら、僕の精神体を通してクロの人格が僕の自我に侵食されないよう。僕の作ったクロを、僕の精神体を通じてクロの支配が及ばないようにしながら、クロと話をする事になる。僕の中にクロの人格が混ざる事で、僕はクロの身体を使うことも出来るようになるし、僕は僕の中にクロを取り込みながら、僕の中にクロの精神体とクロの身体を取り込む事が出来るので。僕の作り出したクロの身体の中に、クロの身体を支配することが出来る僕の身体が存在しているのである。僕に宿った僕の作り出したクロの精神体が「お前の肉体を、この世界にいる魔族達が支配する事は認めてくれるんだろ?」と言ってきたので。僕は「僕は お前に肉体の支配権を与えただけで 支配を認めた訳ではない。僕が、僕の仲間の身体に僕以外の者が入り込むことを許したのはあくまで例外であり お前は 僕の中にいた存在としてではなく お前自身だと言うことを理解しているのか? 僕の仲間達は僕以外の人間達とは違い、魔族と友好関係を結んでも良いと考えてくれた人間達だけで構成されている。僕が作ったお前の身体が僕の作った身体であるとしても、僕はお前を僕の中に閉じ込めた覚えは無い。僕が作り出したクロを僕の配下とした事で お前の行動を、僕の配下として行動させているんだ。それを、勘違いするんじゃない。僕は、お前に肉体を与えてやってもいいとは思っている。お前は、僕の命令に従うことで、自分の目的を果たす事ができるだろう」と伝えると クロは「まあいいさ。俺はお前の配下になることを受け入れてやろう」と言うと。僕は僕の生み出したクロの意識と僕の身体を支配しているクロを切り離した後で 僕の中で眠っていたクロの精神体を自分の意思で操れなくしてから。僕は自分の体に戻ったのだ。僕の目の前に僕がいる状態になっている。

僕は僕を自分の部屋に連れ帰り。ベッドの上に寝かせることにした。僕は自分と僕の間に魔力で作った薄い膜のようなものを作りだしたのだけど。僕が、自分の部屋の結界を強化してから 自分の部屋に戻って来て、ベッドに腰掛けて。先程の戦いについて振り返ることにした。僕とクロとの戦いで。僕がクロを消滅させようとしたら、僕の作った魔族のクロを消滅させたのは クロが作り出した魔族の身体の中に、僕の作り出した僕の精神が入っており。

僕が作り出したクロは僕の中にいる僕の存在を消滅させる事が出来ずに そのまま僕の中に残り続け、そして僕は自分自身の意識が有る状態で肉体の操作が出来るようになっていたのだ。

これは。シロの身体を使って、魔王と戦った時に。

魔王が言っていた。

自分が作った魔物の体内に、他の人間の意識が取り込まれ。

肉体操作されるのを魔王に防がれたことと同じ現象が起きていたのだった。

魔王が僕の中に存在していたクロの存在に気付いたかどうかは、分からないけど。僕はクロの能力を解析するために、僕はクロに能力を使わせてみた。

すると僕の中にあるクロの能力を発動させれば発動させるほど。僕はクロの中に存在する僕自身がクロに侵食されていくのを感じた。このままの状態でいれば僕は完全にクロに取り込まれてしまい 僕の人格が消える可能性があったので 僕の中にクロがいる状態を解除する。その後で、クロは僕の事をどう思ったかを聞いてみると。クロは「お前は、俺の事が怖いと思ったのでは無いか?」と言ってくる。僕が「お前に僕の身体を自由にさせる代わりに、お前には僕の配下のふりをしてもらうと言ったけど。お前が 僕に取り憑いている間のお前が 僕にどんな影響を与えてくるかまでは。僕はコントロールすることが出来ないんだ。だから僕はお前の中にクロがいた状態でお前と戦えば 僕は、お前の力を完全には使いこなすことが出来なかったかもしれないんだよ。僕はお前の中にいた時の僕に負けるようなことはしていないよ」と僕は答える。

クロは「俺の事を 完全に消滅させる術が無いのは お前も同じことだろうに」と言い返してくると。僕はクロの言葉を否定しなかった。僕は「そうか。お前は俺に勝てない事を認めているんだな」と、僕は僕がクロに勝った事を認めないので。クロは、僕の言葉を無視して「俺に、俺の精神をお前に同化させるから、それで我慢して欲しい。

そして 俺とお前が協力すれば。お前が俺を殺さなくても。俺が魔王を殺した後は 俺の魂を喰らえよ」と言うと。僕の中に入って行った。僕も僕に入ってくる クロを受け入れる事にしたのだけど。僕は僕の中からクロが離れるのを待っていたのだけど。僕は僕の中に、僕とクロを分離させることに失敗する。クロの人格に僕の精神が侵食され始めてきてしまうので。僕は僕が僕の作り出した僕の肉体を操作するための僕の力を使ったのだった。そして、僕の肉体にクロが入り込んだ状態の僕は僕の身体を操れるようになり 僕の中にある、僕の精神体からクロを引き離そうとした。僕はクロの中にいる僕の人格と 僕の中のクロを切り離して 自分の身体にクロを取り込んだ。僕が僕を見ていると そこには僕と クロの姿が存在していた。僕は、僕に問いかける。

クロの中にいる僕の分身を クロから追い出したいんだけど 協力してくれないかな?」と僕は聞くと 僕の中にクロが 僕の中にいる僕の人格を 追い出す為に手を貸してくれると言うので。

僕が「僕の中から 僕の中にクロが存在する理由と原因を クロに説明しても良い?」と僕が僕に問い質すと 僕は僕に 僕の中に存在するクロを僕の身体の中に入れることを許してくれないか?」とお願いしてきたので 僕は僕の中にクロがいることを許した上で クロに僕の状況を説明し 僕の作ったクロの肉体の中にクロの精神を融合させることで。


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「異世界」に飛ばされた僕、どうせ死ぬなら『スキルガチャ』を引いてみる。 あずま悠紀 @berute00

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