最終話「4人の決断」(奈由、陽夜編)

私達が出会ったのは中学2年生の最後の方。

私が一目惚れしてアプローチしまくって、告白して「いいよ」と言われ、デートも週に2,3回していた。6年間付き合って「結婚しよう」と言われたのは私が誕生日の12月25日。クリスマスの日。クリスマスデートをしている時にプロポーズされた。

もちろん、返事は「よろしくお願いします!」だった。嬉しかった。

そこから5年。私たち夫婦の間には

「愛」の言葉がなくなり「偽」の言葉が生まれた。それは私たち夫婦にとって「愛」よりも幸せな物だった。


(奈由編)

今日は8月10日。一昨日は陽夜の誕生日だったが、今日は糸の誕生日だ。今日もケーキを頼んで、料理をして、糸を家に呼んだ。

「お邪魔します。…いい匂い。」

「あ!糸!いらっしゃい!座って!」

「今日は陽夜は?また仕事?」

「そう、みたい。今日も夜までって。絶対違うけど。まあ、糸は気にしなくてもいいよ!大丈夫だ!さささ、料理が冷めないうちに食べよ!」

今日も陽夜はお花の匂いをつけて帰ってくる。

お花の匂いはとてもいい匂いだ。そしてとても嫌な匂いだ。

「糸、美味しい?」

「めちゃくちゃ美味しいよ。ありがとう。」

この時間が一生続けばいいのに。

神に願っても叶う確率がないに近い。それが苦しい。

「ちょっと手洗ってくるから、食べててね!」

「うん。わかった。」

私が洗面台の前で落ち込んでいる時に、

糸が後ろから抱きしめてくれた。

「奈由。どうしたの?落ち込んでる時は糸が抱きしめてあげる。」

「…うん。ありがとう。」

嬉しかった。でも鏡に映る私たちは落ちない汚れのようだった。

私たちは食卓へ戻った。

「奈由、今日元気ないわね。」

「そ、そんな事ないよ!」

「糸ね、今日奈由に話さないといけない事があるの。」

「何...?」

「後からね。今は食べよう。食べた後、ベッド行こう。」

「うん...。」

また陽夜に悪い事をしてしまう。

そんな事分かりきっているのに。

糸からの愛を欲しがる私はとても醜くて

気持ち悪かった。

「ご馳走様でした。ありがとう。奈由。」

「うん!ご馳走様でした。」

「ベッド行こう。」

「う...うん...。」

陽夜には申し訳ないが、糸とこういう事をすると愛を感じられて嬉しいのだ。

数十分後、私たちはベッドに寝転がっていた。すると糸が立ち上がって服を着始めた。

「今日で最後か。」

「糸どうしたの?」と私も服を着て言った。

糸は服を着たあと、荷物を持ってこう言った。

「私、束縛激しい彼氏が嫌になって奈由と遊んだの。そしたらいつの間にか奈由を好きになってた。奈由は既婚者なのに。」

と糸は泣きながら言っていた。

「私も既婚者なのに糸の事いつの間にか好きになってた。」

「糸ね。昨日その彼氏にプロポーズされたの。断りたかったけど断れなかった。奈由、愛してる。宇宙一。でもこれ以上愛したら苦しいの。だから、バイバイ。」

「嫌よ!糸とは離れたくない!私のしてる事は最低よ!でも!最低なことしちゃうくらい糸の事愛してるのよ!

だから、嫌...!離れないで...。嫌...嫌...。」

私は泣きながら糸の手をぎゅっと握った。

「離してっ!!!」

糸はそう言いながら私の手を振り払った。

そして私に謝った。

「…ごめん。」

「…うん」

「陽夜…さんを嘘でもいいから愛してね。

バイバイ。」

「…うん。バイバイ。大切にするよ。

糸、愛してる。」

そう言いながら約1分間キスをした。

「バイバイ。」

糸はそう言って家を出た。

そして私は静かに陽夜の帰りを待った。

この糸の香水の匂いも落ちている1本の髪も消さずに。


(陽夜編)

今日もすぐ仕事を片付けて未夢の家に行った。

「お邪魔します。」

「陽夜!待ってたよ!」

「ありがとう。今日はベッド行ってもいいよ。」

「え!何...?急に...?どうしたの?」

「なんだよその反応(笑)」

「じゃあ早速だけどベッド行こう!」

そう言い未夢は服を脱いだ。

「未夢、案外ムキムキだね…。強くするなよ?」

「そんな強くしないって!陽夜には優しいから」

「やばい...。」

俺はそう言い未夢をベッドに押し倒した。

「陽...夜...?」

「ごめん。我慢できねえ。」

俺は魅力的なその体がたまらなかった。

……………………………………………………

「陽夜。ありがとう。」

「興奮したらああなるからやりたくなかった。」

「逆に興奮した方が気持ちよかった…か、も?」

「なんだよそれ(笑)」

「陽夜。」

「ん?」

「愛ってなんだろうね。愛っていくつあるんだろうね。」

「どうしたんだよ急に(笑)」

「いや、俺と陽夜は学生時代から一緒で。

出会った時から陽夜に惚れてたんだ。それでさ中一の時告ってあの時振られたけどさ、その後奈由と付き合って嫉妬したんだ。」

「そうだったんだ…」

「そして去年、突然俺の家に招いたあとに俺がキスして仮の彼氏になった。」

「そうだね。でもなんで愛の話?」

「奈由と陽夜は嘘をついていて、偽りの愛って言ってるじゃん。」

「うん。」

「でもその偽りって陽夜が奈由の事信じてるからつける嘘なわけで。でも普通の夫婦とかバカップルとか相手に嘘をついてバレるのが怖いから嘘ついてなくて。」

「うん。」

「だから、嘘の愛と真実の愛以外にも愛って沢山あるなって。まあだからって浮気は良くないよ。俺が言えることじゃないけど。」

「だね。」

俺は奈由を信じているのか。

俺は奈由を愛しているのか...?

「俺ね陽夜に離れて欲しくない。陽夜とずっと一緒がいい。無理かもしれないけれど陽夜とずっと一緒がいい。」

「無理だよ...。この関係はもうすぐ終わる。この事は未夢にもわかるでしょ...?」

「わかるよ!!わかるけど...自分がしてるのは現実逃避だってこともわかってるけど...。現実逃避したいくらい俺は陽夜を愛してるんだよ...。」

「俺も未夢の事は愛してる。俺最低だよ。

浮気して。」

「だね。」

「未夢」

「ん?」

「話があるんだ。服着てくれないか。」

「う、うん...何...?」

未夢は服を着ながら言った。

俺は服を着た。

「俺最後にめちゃくちゃ最低な事する。」

「だから何?ってば」

「俺奈由のところに行くよ。だから別れよう。」

「え...?嘘だよね?」

未夢は引きつった顔で言った。

「俺奈由の事は愛してないけど奈由といたらなんか落ち着くんだ。そして奈由にこれ以上嘘つきたくない。」

「なんだよ...それ...嘘だろ...?」

「…」

「ねえ...嘘だろ...?返事すれよ!」

「嘘じゃねえ...!!これ見ろよ」

俺は花珠から来たメールの文面を見せた

「花珠が「未夢はおれが守る。今まであんな怖いことしちゃって未夢には申し訳なく思ってる。だからもう一度やり直させてくれ」って。未夢が花珠のメールアドレス消しちゃったから俺が未夢にこれ見せることになった。」

「なんだよ...。そんなに俺が嫌だ...?陽夜。」

「嫌じゃないよ愛してるよ」

「でも、じゃあなんで!花珠のメールだって、どうせあんなの嘘だ...。」

「俺は嘘には見えない。電話でも話したけど花珠は未夢を俺よりも愛してた。恋人からでいいからって。」

「俺...花珠のところ行ったらどうなるんだろう...。」

「幸せになる。」

「そっか。」

「うん。」

「バイバイ...したくない...」

未夢は泣いて言った。

「俺もだよ。」

「俺ね高校の時裏で虐められてて。なんかゲイってことバレてたんだ。誰に俺ゲイだって言われたか殴って問い詰めたら前に付き合ってた彼氏にバラされてた。その時ね、ゲイってやっぱりキモいんだってなった。でも陽夜の事忘れられなくて陽夜の仮の彼氏になって。この人は俺の事受け止めてくれるんだなって思ったんだ。なのに...。」

「未夢...。」

「花珠は好きだ。好きだけど陽夜には離れて欲しくないよ...」

「ごめん...。ごめん...。」

「でも、違う幸せもいいかもな...。」

「そう...だな。」

「バイバイ...。愛してる。あと、嘘でもいいから奈由を愛してね。俺は陽夜が奈由をちゃんと愛してあげるって信じてる。」

その時未夢は俺にハグをしてきた。

その姿は鏡に映っていた。

それは落ちない汚れのようだった。

この関係も今日で最後か。

「バイバイ。俺も...未夢を愛してるよ。奈由を愛する事を誓う。」

そういい笑顔を見せようとするが上手く作れなくて涙が出てしまった。もう愛していないのだろうか。それとも愛しているから悲しくて笑えないのだろうか。その答えは誰にも分からない。だから俺はこの関係に幕を閉じた。

未夢は、全て終わってスッキリしたような笑顔で泣いて手を振った。


俺は走って俺たちの家にむかった。


(陽夜・奈由編)

靴の音は私達の家の道で交互に鳴る。

それは玄関の目の前で止まった。

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「ふぅ......。」

俺はそう深呼吸をして鍵を取りだした

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鍵の音が聞こえる。

「ガチャ」そう聞こえた途端私はなぜだか涙が出て笑みが出た。

「ただいま...。」

「陽夜!!!」

私は陽夜にハグをした。

陽夜のお花の匂いは違う人の匂い。

でもそれが逆に居心地が良かった

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「ただいま...。」

俺はそういうと奈由は泣きながら嬉しそうにハグをしてきた。

その時の奈由の匂いは俺たちの家に無い匂いだった。

逆にそれが居心地が良かった。

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「「浮気者...」」

2人は口を揃えて言った。そして笑った。

その時の陽夜の笑顔は偽りの笑顔だった。

その時の奈由の笑顔は偽りの笑顔だった。

でも2人はこう決めたのだ。

死んでも愛そう。嘘でも愛そう。

奈由を、

陽夜を、

愛するんだ。『真っ赤な嘘で』。












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3年後

未夢はオランダでは同性婚が認められているらしいと知り、花珠と結婚した。

もちろん。陽夜と奈由はそこに出席した。

「ありがとう!」

未夢は満面の笑みで言った。


そして

糸も。結婚して今は1歳の赤ちゃんがいる。

名前は咲優。

糸の友達に聞いた。

結婚式の時に

「ありがとう。幸せに生きる。」

と言われてから2年半、

メールも電話も来ていない。

逆にその方がいい。


そして

陽夜は

ある会社の社長に就任した。

奈由は

スカウトを受け、今はメディアで活動している。

そして、この間

赤ちゃんがうまれた。

名前は由優(ゆゆ)。女の子。

今は家族で幸せに暮らしている。

偽りを愛しながら。





こうして

奈由、陽夜、未夢、糸は

それぞれ幸せになりましたとさ


めでたしめでたし。


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真っ赤な嘘で れーよ @HAHA7

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